Taki's HP

登ったり 観たり 読んだり ひっそりと・・・

Free AVGの感想
直リンクはおやめ下さい、http://taki.at-ninja.jp/にお願いします

WEBで公開されているフリーのアドベンチャーゲームのしょぼいプレイレビューです。
偏った(オカルト系)タイトルが多いかもしれません。見方も偏っていると思います。
作者の方々には、いつも感心させられるばかりですが、あえて辛口な部分は、
将来のフリーソフトの発展を思えばこそですので、平にご容赦ください。
評価の基準をうかがい知る文章
ツールの値踏み
独り言&NEWS: 2011/5/13更新。だいぶ前に読んだものを少しだけ追加してみた。


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・Lazy Endless One Week ・煉獄のユリカ
・Lost in Morgue〜序章 ・LONGESTCAPERUNNER
・勿忘草の夜 ・忘れものと落とし物 ・わたしのせかい ・破鍋に綴蓋

No.タイトル感想評価
1ひぐらしのなく頃に体験版何故か、昭和58年を舞台にした田舎での殺人事件をテーマにしたサウンドノベル。あまりに有名なのでいまさらかもしれませんが、いい出来なのでお勧めです。絵でかなり引いてしまいましたが、見慣れてくると全然気になりません。むしろ、内面的な描写の上では非常に巧みな絵作りをしているように思えます。音もうまいし、雰囲気でどんどん引き込まれます。精神的にぐっと来る怖さで、別にオカルトではないんですけど、「えっ、・・・」とか「うそ・・・」とか言いながらプレイしてました。鬼隠し編だけがフリーですがちゃんとこれはこれで完結してますから安心ですね。でも、なぞが残りますので、他のもやってみたくなります。但し、パラレルな展開ではありますけど。
追記:これを書いてる時点で皆殺し編まで出ている訳ですが。既に謎のからくりは殆ど明かされているにも関わらず、これ程までに完結編である祭囃し編が望まれている所に作者の底力の物凄さを感じます。正直、体験版の段階でこれ程の展開を予想する事は出来ませんでした。物語が端的な犯人探し等ではなく、パラレルに展開される物語の中からその普遍性と、非共通性を結びつけ、システムの全体像を推理し、作中の登場人物達が、この「ひぐらしのなく頃に」というゲームそのものをTrueEndへ導くというストーリ展開自体、もう神がかっています。その奇抜さゆえに色々と言われたり、落胆したプレイヤーも多いと聞きますが、そんな必要は無いと思います。竜騎士07さんが伝えようとしているテーマは非常にシンプルで純粋です。そしてその伝えようとしている事が本当に昇華されるのが祭囃し編だとプレイヤー達は気付いている筈。政治的イデオロギーが含まれない、日常の幸せを大切に感じられる、素晴らしい完結が得られる事を私は信じています。
2ANGEL WHISPER 第一部ゲーム作家の体験するすごく不思議な物語。ゲームデザインや絵が硬派な感じで良いのですが、これも第一部だけフリーで第二部はシェア。中途半端なとこで終わりますから、すっごい消化不良になります。一応、最後までの話は知っていますが、ものすごく壮大なスケールが広がっていて、「ゲーム」と言う物がとても崇高な物になってしまう、少し妄想の入った面白いゲームです。
3柵の淵オカルトな感じの洋館ものです。色々な展開が楽しめていろんな柵が垣間見れます。ちょっと、主人公のお父さんが行っちゃってる感じですが、なかなかうまい登場人物の書きわけで、少し切ない感じがいいですね。全部解き終わった後に作者にメールを送ると、後日談のダウンロードが出来ます(返事が送られてきます。作者の方はとても気さくで親切な感じでした)、これもなかなか良く出来ています。全体として、絵がちょっと痛いですが、十分楽しめます。最後まで油断しないで頑張ってください。
4時の故郷時間がテーマのファンタジーものなんでしょうね。恋愛物に近い感じがしますが、True endにたどり着くまではまってしまいます。最後が結構しんどくて、忙しいのですが、何度もがんばって解きました。それなりに感動のラストです。よくまとまっています。
5人形の傷跡第一部「ちょっと怖い」ぐらいのホラーです、実はサイコですけど。姉を探して大学にやってくる妹が主人公で、徐々に姉が存在しない事に気づいていく話です。これも、二部がシェアです、謎謎なところで一部が終わるので、「シェア嫌い」はやめたほうがいいかも。やって損は無いしストーリも悪くないです、ただツクールなのが痛いです(マック用にブラウザ版も有ります)。クローン関係の研究って、SFのモチーフとして良く使われますけど、映画でさえ科学的考証に乏しい事が多く、誤解や無用の不安を煽っているように思えてならないのですが、このゲームも、「こんな大学の研究室無いだろ!」って感じました。ただ、お姉さんの「明日美」に対する人間的な、愛情には素直に共感しました。結構、先に進めずつまっている人が多い様ですが、マニュアルや作者様のページにヒントがありますよ。
6ひとかた伝奇物サウンドノベルってやつですね。すごく長いですが、最後は感動します。感慨深いストーリーです。ただ少し古き良きゲームの感じがしますな、また、少しだけアレな部分もあります。脚本がいいんですけど、特に登場人物の書き分けが良く、長いドラマのおかげでそれなりに重みがあります。ラストあたりの主人公の葛藤は、とても感情移入します。絵は無く背景だけですが、これはお勧めです。オリジナルのmp3版も良いですけど、midi版も結構良いですよ、背景とかも違いますけど。※現在公開中のMP3版は、修正が入っているようです。MIDI版のシナリオは元のままのようです。
7DANGER ZONE1,2現在、1がYuuki!でリメイク、2は公開終了です。色々なツールを試して回っている様ですね。ホラーですが、マッドサイエンスな雰囲気に仕上げてあり、「こんな企業ねーよ」と突っ込みたくなりますが、まあまあ遊べます。新入社員研修所に行くところから始まり、最後には研究所から脱出するところで終わります。part 2では取り残された奴が主人公になりゾンビ殲滅の戦いを繰り広げます。音とかで煽られる感じですね。現在は3(最終章)も製作中とか。
8無垢-鬼の涙-シンプルな絵のサイコものです。あまり記憶に残らなかったので、良く覚えていませんが、少年に監禁される浮浪者の話です。もう5年ほど経ちますが次回作が出ないので、序幕などと大風呂敷を広げては見た物の、続かず、放棄してしまった様に見えます。ただし、これ自体はそれなりの出来だったと思います。
9ガラスの中の少女/Does Anybody Really Know What Time It Is ?

(林檎坂通信BLOG)
スタイリッシュなサイコノベルです。多重人格の女性の内面世界と現実世界が交錯していくストーリーです。これやって、村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を思い出したのは私だけではないはず。最後は謎解きがあり、ゲームの完成度は高いです。写真はとてもきれいです。
10Moonlight Blue幽霊物のファンタジックラブコメというべき物でしょうか。前半はふざけた感じですが、後半からラストはかなり切ない感じです。意外と脚本が読ませます。また、1.5になって少し絵が改善されています。
11天雨月都
ver. 5.1
主人公が異能者同士の戦いに巻き込まれていく伝奇物です。絵は結構痛いですが、伏線の張り方が上手く、話は非常に読ませます。また、素材ではありますが、音楽の選択と使い方が非常に上手く、展開と合わせてあり、サウンドノベルとはこういう物かと納得させる良さがあります(特にオープニングが上手い)。恋愛物というべきストーリー構造を成していますが、パートナーごとに謎が明かされる様になっており、現在の所、メイン二人と、三人目のパートナーの話が半分まで公開されています。タイトルが気になっているんですが、今回の公開で、ようやく「月」が出たって事なのでしょうか?
12氷雨2004年9月にHPもダウンロードサイトもあぼんしていましたが。最近復活したみたいです。ver.は3.0に上がっています。分岐が多くて難しいのですが、がんばって制覇しました。たまには戻るのも重要。館での謎解きとサスペンス・・・これってかまいたちみたいだね。
13学校七不思議1,2,3,番外学校の七つ目の不思議を知ると失踪しちゃうよって話。学校ものの怪談が大好きなので楽しめました。そんなに怖い話じゃないし、普通の人にはつまんないかも。
14消火栓バグって強制終了が多くて手間取ったけど一応ほとんどクリアしました。犯人をマークしないと展開しない分岐があるので結構大変でした。全寮制の高校で起こる窃盗事件の背後には暗い人生を背負って隠しながら生きる若者の姿があったとさ。
15Elevator of Horrors都市伝説を集めただけのもので、ゲームとはいえない。HPで知っている怪談を読むような物。不可
16勿忘草の夜演劇部の合宿に向かった主人公は宿泊所の廃校で怖い思いを・・・、女性向けかも。ホラーとしては写真が良く、雰囲気がすごく怖い感じが出てる。しかしストーリーは並。でも一応、分岐制覇完了しました。
17首がない子の話都市伝説の一種、首が無い子の話を作った子が首が無い子になって次々と・・・。完成度は高いですが、元々目指しているレベルが並なので、分岐を埋めるのが少ししんどいゲームです。でも、作者様のページに攻略があります。クリッカブルマップです。それでもわからん時はもう・・・って、あんただれだっけ?
18Second Anophelesハードボイルドな探偵が、少女の依頼を受ける。よくある展開だが、その少女が実はあの人で、何故???って感じの不思議なお話。完成度は非常に高い、最後にやられちゃったあの子は、実はLCRで・・・とかかいても、やってない人は分けわかんないですね、だいぶ前なんで筋を忘れちゃいましたが、すごく面白かった。雰囲気もすごくいい。秀作
19碧の黙示録学校でクリスマス会をしているうちにクラスのみんなが恐ろしい世界に迷い込んでサバイバル。ホラーゲームらしい作りで、しかもAVGとしてのゲーム性も持ち合わせており完成度は高い。詰まり易いですが頑張ってやってみてください。
20赤い部屋暗い話で女の復讐をただ読んでいるだけでした。私にはあまり合わないみたい。不可
21梶河の雪と消えぬ探偵の代わりに高校生のカップルが遺産相続の絡む殺人事件を解く話。システムが古い感じです。そんなにのめりこめなかった。不可
22殺意の旋律とある女性に頼まれて名も無きピアニストの交通事故死を調査する探偵ものです。絵がきれいでフリーソフトのレベルを超えています(一時停止していましたがDL再開しました)。システムは典型的な選択型の推理ゲームで、ストーリーも典型的な構造ではありますがかなり濃厚になっており、結構やり応えがありました。色々な人間関係を捜査しながら、問い詰めるを繰り返し、犯人を捜します。オススメです。もし詰まったら、道路を良く見ようね。
23Cronosnowやってみましたが、私にとっては、怖くもないし、ゲーム性も感じない、趣旨もあまり好きになれませんでした、すみません。不可
24AngelMake大学のサークルのメンバーが山奥に肝試し?に行ったら、変な建物の中で化け物に会う話。少し「1999ChristmasEve」に似てるのかな・・・。ゲームとしては成り立っていますが、あまり面白くなかった気がします。「刀」がわりと好きです。
25風の殺意放送部の合宿で別荘に来たら、人間関係の柵から、殺人事件が・・・。少女漫画っぽい絵ですが、結構うまいです。話は主人公以外、結構色々どろどろしていて大変ですが、頑張って全分岐解きました。完成度もそこそこ、まあまあ面白かったです。対人高感度がポイントになってエンディングが変わります。エンディングによってはBLっぽいのも有りますが、明子姉ちゃんみたいになってる主人公が可愛かった。それから、あのシェア版の宣伝は一体何?!変に商売づいているあの絵は何かやだ・・・。
26余韻ファンタジック・ホラー。受験勉強中の少女が寄り道して小学生の男の子と彫刻を作るお話。シンプルすぎてどうも物足りないのですが、それもその筈、作者が中学生のとき作られたそうです。「一家心中の原因は母親の脱税…」って云うのは良いです。「どんな脱税やねん!」と突っ込みましたもん。不可
27■外道狩り■悪霊を見たり払ったりする職業をやっている主人公が自分の能力の原点を見る話。脚本のテンポが非常に良く、結構面白かった。文系的AVG
28開けるな短すぎて、ノベルともゲームとも言えん!不可
29いつまでも忘れない結構いい話でした。自分で勝手に、こうなってこうなって、どんでん返しはこうだろう、と思ってプレイしていましたがいい意味で見事に裏切られました。Danger zoneよりこっちのほうが良いんじゃないですか?主人公の内面の問題とか、猫とかストーリーにちゃんと繋がっていて、少し物悲しい感じですね。2も製作中だそうです。
30orgel/オルゴール館で仕掛けを解きながらオルゴールを探すミニホラーゲーム。シンプルですけど、短いですけど、ツクールですけど、面白い。ゲーム性がとても高いので最後までやると達成感があります。しかも、エピローグがまた読ませます。敬遠してたけど、こういうのも(ゲームとして)有りだよね。でも、難しい!
31九人九色ペンションにとまりに来たたくさんの人の内面をザッピングして覗くノベル。登場人物それぞれどろどろな部分があって、それなりに読めた。
32平凡怪奇小説の様に各章を順番に読んでいく。それぞれ、つながりを持っていて、いろんな伏線を楽しめる。小説としての完成度はまあまあだろう。コミックメーカなので、飛ばせないのがいらいらする。
33可愛そうな若き修道士の話。「こら、また!」「いわんこっちゃない!」「あほか、何べんやったら学習すんねん!」と言いたくなる展開。オマケ付。
34-車-ショートホラーだそうです。VBでオリジナルに作られているのでシステムが使いづらく、絵や脚本はちょっと・・・。ですが、話は一応まとまっています。分岐があり、最後まで行くのは結構しんどい。不可
35死神雪夜スキー部が合宿に行って、元スキー部の姿の雪女に酷い目にあうストーリーです。短い話ですが、分岐も戦闘(?)もあります。脚本が質素なのでなかなか話しに気持ちが入りませんでした。登場人物に共感できないのも残念です。
36恐怖の花子さんこういう花子さんもありなんだ、というびっくりの設定。脚本での子供っぽさがとてもうまかったです。それほど面白い話ではありませんでしたが・・・。※ver.2.0に上がっています。
37LONGESTCAPERUNNER長崎を舞台に中国マフィアと長崎大の学生がものを奪い合うストーリーです。血なまぐさくて、あっけらかんとした異常な主人公(二人)がザッピングしながら追いつ追われつします。これやった後にたまたま長崎に旅行に行きましたが町の配置が非常に良く分かり助かりました。ゲームとしてはちゃんとした作りですが、話が砕けまくってて、ちょっとついていけなかった・・・。公園行くと、アノフェレスの二人がいます。
38遺失物短いノベルですけどちゃんと絵がついてます。ほぼ全てがバッドエンドでトゥルーエンドでも不幸というのが救いの無い気がしますが、それなりにテーマ性があるように感じられます。人体をパーツ売りしている小売店の店番の女性が主人公です。シュールですね。
39都市伝説研究レポート(1)「Elevator of Horrors」と同じ、「ミミズバーガー」「人面犬」の説明が聞けます。それだけ。(DLサイトはあぼんの様です) 不可
40最後の夏短編サウンドノベル。写真や音楽が非常にきれいで演出も巧み、プロ並みですね。内容はありそうでないオリジナル。短いながらもそれなりに登場人物の個性がさりげなく描かれている。クオリティの高い作品ではあるのですが短すぎて読み応えが無いので残念です。
41終末によせてちょうどいい長さのサウンドノベルです。終末までの数日を若い5人の主人公が過ごします。ザッピングしまくるので、最初ちょっと抵抗ありましたが、シナリオはすごく良かったです、よくあるストーリーですが。幸せを掴んだと思ったら、この世の終わりだなんて、なんだかとても切ない感じですね。終わり方が私の好きな雰囲気でしたので評価、高めです。
42205オルゴールと同じコンセプトの幽霊・洋館・トラップ・脱出ものです。やはり良く出来ていますが、オルゴールの方が難しいし、エピローグもよさげです。
43ホームタウン殺害された生き別れの兄の犯人を探る為に、主人公が彼女と兄の家に訪ねていく話です。しかしその結果、意外な事実を知る事になります。ノベルとして申し分ない出来です。ストーリーはほぼ破綻なく、登場人物の言動も細部まで良く考えられ、伏線や話のひっくり返しも見事です。数の多いエンディングも、N-scriptなのでストレス無く完全制覇出来ます。ただ、ストーリーはTrue endを一回見れば全て分かる仕組みですけどね。結構はまりました。
44精神破壊/完結編西暦が二回の大戦で終わり大陸暦が始まって600年ほど経った世界で、妙にさばさばした高校生の主人公が、次々に置きる残虐な殺人事件に直面して、その裏に潜む謎に迫っていく話。操作系はオリジナルで正統派のAVGよろしく、コマンド選択方式。登場人物の台詞やストーリー展開、絵が、古き良き時代のAVGを髣髴とさせる。内容的にアマチュアと言うより商業ベースに乗せても遜色ない出来。フリー版とシェア版が有り、フリー版は本編と呼ぶべきもので、シェア版はそのプロローグとフリー版のZappingシナリオ、でもレジしないと途中までしか出来ません。ちょっとエグイですが、オススメ。
45CRIMSON RING22年前の自殺に纏わる呪いの指輪によって引き起こされる学校内での殺人事件の真相を、優等生の主人公が解決します、最後はハッピーエンド。恋愛サスペンスものかと思いきや実はオカルト、でも変身のシーンの描写は伝奇ものみたい。13個のエンディングはかなり難しいですが、頑張ればオマケがあります。シナリオもストーリも非常に高いレベルですし、かなりはまります。残念なのは背景と立ち絵。決して「下手」だとか、そういうんじゃなくて、「絵なんか、もうどうでもいいんだー」的に使われている気がするので、どうせなら無い方が良いのではないかと・・・、ノベルとしては申し分なく、台詞やカット割りも良い出来だと思うので絵の演出に気を配って頂ければと悔やまれますが、それでも十分お勧めです。
46魔夏
(DL)
動機無く自殺した妹、その妹について語り始める自分の彼女、その時主人公は・・・。全編ホラーらしい映像と音楽で、ヒヤッとさせてくれます。最近、こういうのに飢えてたので満足しました。雰囲気とかはすごく好きなのですが、話に物足りなさを感じてしまうのは、私の贅沢なのでしょうか?さすが吉里吉里なので、分岐制覇はらくらくです。※HPあぼん
47犬森荘殺人事件/唄ウ人形三話古い木造5階建てのアパートに住む住人と一匹をザッピングして、一人の住人の死の真相が語られます。内二名がアパートを出て続編の主人公として、日本的オカルトな世界を繰り広げます。敢えて二つの作品をセットにしちゃいましたが、別々の作品としてそれぞれ楽しめる物です。でも一応、登場人物が被っていますので、「唄う・・・」は続編と言うべきものです。ただ、「犬森・・・」は短編推理小説なのに対し、「唄う・・・」はオカルトチックなオムニバス・ノベルになっています。私は、続編の方が気に入っています。(先にやったのもこっちでしたし・・・)文章はとても上手いし、音楽やカットの入れ方といった演出も素晴らしいのですが、起伏が無くしっとりしすぎて、話があまり面白くない気がします。感動とか、小説を読み終えた時の様な達成感はあまり無いです。
48キャバ嬢 A GOGO !!キャバクラで働く女性たちが過去の重荷を抱えつつも、お互いを励ましながら、前向きに成長していくちょっといい話。キャラの立たせ方は流石ですし、台詞は感情移入するに十分な重みがあります。まじめに、ストイックに、キャバクラのあり方を描いた秀作で、お勧めです。話が少し短い気がしたのですが、分岐のボリュームが結構有りますね。各登場人物についても、魅力的に活き生き描かれています。脱帽です。
49茜街奇譚「茜街」には普通ならざる物が多く住まうが、その事を人々が意識する事は無い。無気力に暮らす主人公の女性は、巻き込まれるとも知らず、妹と猟奇殺人のニュースを眺めていた。その街の片隅で、不釣合いな二人組の男女は、その事件に潜む影を探っていた。・・・伝奇ものです。作品世界は「空の境界」みたいな雰囲気、ゲームデザインは「アノフェレス」ぽいです。渋くて、落ち着いてて、「唄ウ人形三話」の様に文章は非常に洗練された感じですが、ちゃんと山があり、後半の物語の盛り上がりはかなり引き込まれました。吉里吉里の強力な効果を利用しての演出は感動ものです。映像・音楽(音)・ストーリーがかなり高いレベルで融合しつつあります。作者のセンスが光る秀作です。パーティションとして使われるアイキャッチの使い方がまたすばらしい!このままのスタイルでシリーズ化できそうですね。※続編に手をつけられた様子です。
50家族の肖像絡まれていたところを男に助けられた娼婦が、その男の館に連れて来られ殺されそうになって館を逃げ出す・・・、これが第一部。第二部以降は、その男の息子や恋人、伯父が主人公となって、その性的異常者一族の血の性と戦う。4部構成になっています。それぞれの話が別の話の展開に影響を与えているので、二部を終わらした後に、三部をやると話の展開が変わったり、三部をやってから二部をもう一度やると話が進展したりします。凝った仕掛けが多く、攻略に時間が掛かりますが、話の組み立て方に意気込みが感じられます。元々はコミックプレーヤだったそうですが、流石にN-scripterでないと私は投げ出していたかも知れません。しかし、その一方で、人物の掘り下げが甘く、「」でも同じ事が言えますが、登場人物がどれも「一様」に単純な思考回路を持つので、一見キャラが違っても、そこから想像される人物像が全て同じに見えます。テーマのオリジナリティは高いのに、惜しい作品です。
51I'm〜心の向こう側にある日突然、自分の頭に誰かが入り込み、しまいにはそいつが現実に現れちゃうお話。ファイルサイズが大きいのはまあ良いとして、ダウンロードしてから解き終わるまで時間掛かりました。あまりのギャルゲーっぽさで、すぐ投げちゃって、暫く寝かせてましたが、もう一度やり直そうという気になり、やり終えてみて結構面白かったなと思いました。ただ、本編までの道のりが長いのが頂けません。他にストーリに厚みを持たせる方法は無かったのでしょうか?それを除けば、快適なシステム、音、絵ともに丁寧なつくりで好感が持てました。「Moonlight Blue」に似たとこあるけど、全部やり終えると感動するストーリーなのです。分岐は誰に会いたいかによって決まっています。よそ見してると全部ぱあになっちゃいますよ。
52ハーバーランドでつかまえて関西の嫌いな主人公が、転勤でやって来た神戸で女の子に出会い、街も人も好きになっていくお話。味のある絵と見覚えのある写真が好印象です。あっさりしたしゃべり方でも、ちゃんと魂の入ったヒロインの描写は、関西っぽい感じが出てます。関西弁の台詞の書き分けは、読んでいて違和感を感じるように上手く作ってありましたし、震災ネタも嫌味は全く感じませんでした。でも、実際のあの場所は、いっつもおっさんが釣り糸たれてますよね。ゲーム途中で、頻繁にウェイトが掛かるのは何とかして欲しかったけど、それ以外は嫌味のない、短いけど心温まるいいお話です、選択肢さえちゃんと間違わなければね!
53こ〜こはど〜この箱庭じゃ?上手い!デザインもきれいだけど、ありふれたコンセプトをFlashで可能な限り実現した所がすばらしい。続編が作れないのが悲しいけど、もっと精神的にぐっと来る演出を楽しみたいです。Flashを隠れ蓑的に利用するこの演出手法は高い可能性が感じられる。あと、マウスを使った細かい仕掛けも面白い!
54Duolith(デュオリス)セカンドアノフェレスの続編になります。今回は吉川ではなく麻田が主人公。OSのセキュリティホールを狙ったウイルスでネットがダウンするのを何とか防ごうと頑張る公安のお話。つまり、劇場版●△レ※バーのTとUを足して二で割ったお話です、パロディかと思った。脚本とか、設定とか流石お茶電さんですね、凝ってますよ。それから、時間の概念が有りますから寄道せず小まめにセーブしましょう。Good Endは一つしかありません。正直、理解できなかった部分が一杯ありますが、これはアノフェレス【蚊】とどういう風に繋がるのか、誰か分かる人は教えてください。
55ポロメリア上京した主人公の女性が田舎に帰ってきて、精神的なショックで失くしてる記憶を思い出すお話。シリアスでネタ的にちょっと痛くて、とても短いノベルです。題名の意味がよくわかってないのですが、「毒のある花:プルメリア」って事?う〜む
56Bathroomコレ、結構怖いわ。なんて事ない話だけど、音と文字と動きの演出だけでここまで出来るとは、正直感動しました。Flashってスクリプト系のノベルとクオリティの格が違うような気がする、やはりホラーノベルの目指すべき姿はここにあるって気がします。ただ本作品は、話その物が実験的な「習作」の様に思えます。この演出力を長編のノベルに使ったら・・・、私の求め目指す物がそこに有る筈。でも、Flashは分岐とか制覇がしんどいよね、「演出待ち」とか飛ばせなかったり、セーブが自由に出来ないし、その点はスクリプト系ノベルシステムの方がプレイヤーに親切。しかし、う〜む、MX2004どうするか・・・
57A Story of Black恋愛ノベルらしいのですが、そんなにそれっぽさを感じさせない爽やかなお話です(少なくとも本編は)。なんと恋愛ノベルにあるまじき事に、本編終始ほぼ立ち絵・背景無しですが、それと言うのも主人公が盲目だからです。しかも記憶喪失。怪奇現象も起こり、話はミステリアスに、しかし穏やかに進展します。本人が誰なのか?怪奇現象の正体は?という謎で、本編終了までプレーヤを惹きつけ続けます。クリア出来れば、ザッピングストーリが発生し、ようやく絵が出てきます。それ程長くは無いのですが短くも無く、ちょうど良い長さでした。お約束ですが、「そんな大企業はネーヨ!」と、言ったとか、言わないとか・・・。本編と違い追加されるストーリの方は、恋愛ノベルの甘ったるさと、バイオレンスと、小学生によって踏みちゃちゃくりにされています。サイドストーリとかも現れて、何がなんだかよく分かりません。読者サービスのようなものでしょうが、正直、本編と、暦の続編だけでまとめた方が良かった気がします。続編の分岐は買い物の後が重要みたいですね。
58グッバイトゥユー物語の構造上、伝奇ものと呼ばせて頂きます。相手の攻撃を読めてしまう特殊な能力を持つ高校生の主人公が、探偵バイトの最中に偶然殺人現場に居合わせてしまい、運命的に秘密結社の仲間になっていくストーリー。まだ完結していない途中のお話ですが、ほとんど「優」に近い「良」にさせて頂きました。と、言うのもまだまだ先が見えない謎だらけの状況なのに、適切にプレーヤを誘導してストーリー展開を想像させ、その事によってプレーヤを惹きつけ飽きる事無く読ませ続ける能力にこの作者が非常に優れているからです。また、話の盛り上げ方や主人公への感情移入のさせ方はすばらしく、どっぷりハマリました。特に田崎のくだりでの主人公の感情は、プレーヤの心を激しく揺さぶります。また、キャラクターがみんな魅力的でイキています、個人的には、吉岡さんの豹変振りが、今後心配される所ですが、杞憂(勝手な想像)に終わる事を祈っておりまする・・・。ちなみに選択を間違うと即GAME OVERです。
・・・と、ここまでがver.2の感想で、今回ver.3をやってみましたが、凄いです。一気に最後までプレイしてしまいました。気が付けば深夜2:30です。映画みたいに途中であくびが出たり眠くなるような所は在りません。やり終わると今度は、来週のジャンプ発売日を待つ少年のような気分になっていました。ver.3はver.2と異なり、先行バージョンを包括していません。つまり、ver.3はいきなりver.2の続きから始まります。主人公が通う事になった学校での薬物に関わる事件と、「美術館」の因縁が絡むお話となっています。前回同様、どの登場人物達の活躍ぶりも、読んでいてワクワクするのですが、今回は特に民谷の活躍が目立っていましたね。また、他のグループも幾つか出てきて、その中でも今後の展開に影響を与えそうな伏線が幾つか在りました。何と言うか、読めば読む程期待が膨らんでいくいいAVGですなGTYは。「ひぐらし」の謎がほぼ出尽くした今となっては、GTYは現行のフリーゲーム中では最も期待の大きいベスト・タイトルと言えるでしょう。今回のver.3でもまだブリッジと言える所まで話は進んでおらず、メインテーマに辿り着くにはまだまだ時間が掛かりそうですが・・・、とは云え各バージョンごとに章立てが上手く出来ていて、毎回素晴らしい読後感があるのはやはり作者さんの腕がいいからですね。なんか、完結を待たずに、アニメ化とかされちゃいそうな予感。でも、キャラ芝居させるのが難しい脚本だよな、うん。決して揚げ足を取る訳ではありませんが、反応速度「0」には違和感が有りました、反応時間の誤植と思われます。あと、エンディングの後の予告が上手く動いていなかった様です、正直これは仕様なのかもしれませんが、ver.3の予告(正確にはver.4)が選択肢に無いというか、いつの間にか見終わっていたというか、???でした。また、私の読む速度が早すぎるのかも知れませんが、アイキャッチの出現頻度が多すぎる気がします。あー、早く次が見たい。
Ver.4の感想:あれから二年、随分待ちましたが、ファン納得の出来栄えでしたね。まるで担当編集者が居るのではないかと思わせる程のしっかりとしたプロットで、先が気になって気になって読み進むのを止める事が出来ませんでした。結局、夜中までかかって読了し、その後も中々寝付けない始末。次の日、誕生日有休じゃなかったら死んでたよ・・・。
 Ver.4はVer.3の続きからいきなり始まるので、初めての人は要注意!今回の主役は「奈津美」と「夏川」。K-typeとして圧倒的強さを見せ付け我侭放題の奈津美が、非常に深刻な事態に陥るお話です。仲間同士の「戦闘」も夏川が「奈津美に勝って」しまう展開ももえますが、私は北浜が過信の余り「人質」になるところが印象的でした。K-type同士の腹の探りあいというか、行き詰まる心理戦っていうのが凄く上手く表現されていたなって思います。
 それから、これは毎回思うことですが、脇のキャラまで人物造詣が非常に良く出来ていて「お前はそこでそういう事言わない。」っていう、違和感のあるシーンが全く無い。細心の注意を払ってネームが作られているのを感じます(それが故に、担当編集者が居るのではないかという疑念に陥るのです)。最後はいつも通り、鳥肌が立つ位に感情移入してしまい感動もひとしおでした。奈津美となのかの馴れ初めもなるほど、納得でした。奈津美が鎖に繋がれた瞬間、現実に引き戻される描写も凄く斬新で良かったですね。複雑な感情を複雑なまま表現しているというか・・・、ちょっと出来ないですよ、ああいうのは。
 そのシーンで使われている絵もそうですが、今回、立ち絵のデッサン力が向上されているのを感じました。二年も経てばプロでも絵の雰囲気が変わったりしますが、顔の描写に独特な印象が出てきて、書き慣れてきたせいも有るのでしょうが、それが作品に与える印象として、良い方に行っているのか悪いほうに行っているのかは正直微妙なところでした。
 いやー、それにしても相変わらずの出来栄えでしたね、ですが作者ご自身も仰っているように、ストーリの進行という意味において今回はあまり重要では無かった気がします(まあ、色んな奴の能力は分かりましたが・・・)。さながら初代ガンダムシリーズの「ククルスドアンの島」の様、されど特筆に価する味のあるサブタイトルだったりする、そんな感じです。結果的に「奈津美」が幸せそうで何より。・・・・・・そろそろアニメ化ですか?(笑)
【誤字】「買い物に行きたい」のシーンでなのかが柄にも無く「やったーーーー!!」とか言ってる。多分、奈津美の間違い。
59UFOを探しに!UFOを探す為、中学生の三人が山にキャンプに行く話です、でも本当の目的は・・・。短いお話ですが、懐かしい香りがして、なかなかいい感じでした。特に、キャンプの描写は非常にリアルで共感する所であります。私もあの頃は、食べ残しを猪に鍋ごと盗まれたり、野犬に囲まれたりしてました。本編中に出てきた、自衛隊予備軍のような集団にも所属して、相当上まで行きましたが何度も地獄を味わいました。女の子とキャンプなんて有り得ませんけど。でも最近は、あの集団も男女共同らしいですね? どうでもいいか、そんな事。エンディングは、確認できただけで四つありました。こういうのって、中学生、男一人に、女二人ってのが多いけど、王道ですか?
60「M」
リンク切れ
最後の痕跡
両親を失くした青年が、不可解な手紙に導かれて館を訪れると、そこには、一人の少女と自分の知られざるルーツが隠されていました・・・・・・という、コミックメーカで作られた洋館物の正統派ホラーゲーム。しかし、ホラーと言う程にはあまり怖さは有りませんでした。TRUE END 1個とBAD END 11個のマルチエンディングです。一応、読み飛ばしが有りますが、なかなか上手く止められず、コミックメーカなので選択肢でのセーブができず、結構分岐制覇に梃子摺り、結局一個だけエンディングを埋められませんでした。少女漫画風の立ち絵は、数は少ないですが、性格がよく表せていましたし、コミックメーカにしては演出にも気を配ってありました。面白いのは、脚本が過激な描写を抑えた少女漫画的であるのに対し、プロットがいわゆる二昔前のそっち系洋館物を彷彿とさせる所です。やってる内に、「なんかに似てるな」と何度も思ったのですが、思い出せませんでした。コミックメーカにしては出来のいいAVGだと思います。TRUE ENDを観るとサイドストーリが有ります。
61それじゃあ、またね。銀河鉄道の夜みたいに、電車の中での生と死の不思議な世界が描かれている作品です。ホラーの様に紹介されていますが、やさしい雰囲気のファンタジックな作風で、殆どのシーンが白黒で描かれており、電車の効果音とピアノの静かなBGMがよくマッチしています。プレイしていると、ノスタルジックな夢見るような心地がしてきます、この辺の感覚はアニメ銀河鉄道の夜とか、銀河鉄道999の3話で出てくるトンネルとクレアの話を思い出させました。分岐無しの一本道でしかも短いお話なので長く雰囲気に浸れないのが少し残念ですが、写真や絵を自作でやられており、両方ともかなり良い出来なのはすばらしい。白黒写真はアンダー目の露出が適正だし、被写界深度の取り方が立ち絵と完全に一致しています。これは、自前の素材だからこそできる事で、また立ち絵の絵柄と白黒背景の違和感ない一体感は、それだけで作品完成度を上げています。写真と立ち絵を上手く合わせられているノベルって殆ど無く、たいていがどちらかが立ってしまって、浮いちゃいます。ただ描き込むのではなく、写真と物語の雰囲気に上手く融合させて、始めて立ち絵が作品の一部になると言う持論を再認識させられました。確かに少し悲しげな良いお話ですが、プロットや脚本よりも、全体的な演出に高い将来性を感じたので、今後の作品に期待です。
62遠来これ結構有名ですよね。SFものではよく出来たフリーソフトで、背景は素材ですが音楽や絵がオリジナルで秀逸です。SFと言えば科学考証や時代設定ですが、人類が宇宙航海時代を迎え、銀河連盟に加盟した世界の話で、この辺は概ねスタートレック的な設定が用いられています。(加盟の条件が、恒星間航法と言うところも、"ファーストコンタクト"と似てますね)主人公フタバとAIのMIKANが地球そっくりの惑星に不時着する所からお話は始まります。ちょっとありがちですね。ま、そこでの文明は地球の日本そっくりで、文字は逆さ読みの世界です。そこで私は直ぐに、BBC放送レッドドワーフの第三シーズン、13話「世界は逆に回ってる」を思い出す訳ですが、当たり前のごとく関係有りませんでした。その星エンチの少女マヤオアと心の交流を続けるうちに、主人公がすっかりエンチを気にってしまい、去りづらくなってしまうストーリです。脚本は嫌味が無く読みやすいです。登場人物も灰汁が無く一人を除いては親しみやすく、ストーリに抵抗無く入っていけます。ただ、非常に残念に思うのはエンディングです。三種類のエンディングを見ましたが、どれも尻切れっぽく感じられるのは、私だけでは無い筈。分かりそうで分からない事や、ストーリが展開しそうでしない所が残ったまま、「ええっ」って感じで終わるのが、「気力が続かなかったのか・・・」と思ってしまいます。それを除けば、プロット・脚本とも非常にすばらしい出来のフリーソフトです。殺伐とした気持ちは晴れるでしょう。あと"Hyper Novel System"を使っている事でピンと来たんですが、途中で主人公とマヤオアが見た感動の映画(それだけでもう一本ノベルが作れそうなやつ)のストーリーって「Moonlight Blue」とちがいますか?作者さんの繋がりがあるので???また、私も似顔絵描きのバイトをやった事が有りますが、あれはいいモノだ・・・
63或る夏の物語

(DL)
主人公と友達の彼女とのひと夏の物語。幽霊ものの悲恋な恋愛ゲームって多いですけど、この話はエンディング(三つあります)によっては・・・ですね、痛い話も含まれてますけど。落としたのは結構前なのに、最近ようやくやり終えました。それ程長い話ではないんですが、ギャルゲーっぽいのはどうも苦手で。独自のシステムで作られており、よく出来ていますが、幾つか難点があります。読み返しが出来ない事、右クリックで読み飛ばせますが、早すぎて行き過ぎたり、キーボードを使用するとキー・バッファが効いて、長押しすると連続で飛ばされる等がそうです。セーブはフレームの上のほうにマウスを持っていくと出ます。説明が無いのでちょっと不親切かもしれません。また、XPの方は98互換モードでプレイされた方が無難かと思います。時々ハングアップしました。絵や音楽には特に申し分ないのですが、台詞や展開に何か違和感を感じる事が有ります、それは視点が急に変わったり、主人公の精神状態が読めなかったり、友達の感情が複雑過ぎたりといった所で、やはり少し引いてしまいました、済みません。状況が状況なだけに、主人公と友達の関係が良好って云う所は面白いと思いました。作者さまのHPでは何故か本作が紹介されていないのですが、何故・・・。とりあえず、DLサイトも置いときます。
64かかって来なさい亀ののろい。楽しんだか?と聞かれれば、まあ楽しんだ様な気がするし、だめか?と聞かれると、いや、そんな事無いけど、どこが良かった?と聞かれると、特筆すべき点が・・・、色々な意味で中途半端です(あっ、効果音と日付が良かった!)。フリゲだからここまでなんだ、っと言われれば、まあそうかも・・・と納得。一応、18禁らしいけど、断る必要もほとんど無いほど、暴力や性的描写は無かった様に思います。そもそも必然性が殆ど無い所で出てきてましたし。設定に関しても納得できない事や分からない事だらけですが、先生や悪がき達の心理状態が極めて不可解でした。エンディングは二個です(結果と照らし合わせると選択肢が理不尽だ)。やり終わったと言う意味を込めて、残しておきます。
65セイシュンのオカズ主人公と、名も知らぬ女生徒、クラスメートの女子の三人の何事も起こらない夕暮れ下校時間のお話。テーマは、青臭い「高校生の雰囲気」でしょうか。その雰囲気を作るのにもう少しBGMの数や、効果音に力を入れてもいいかなと感じました。背景や立ち絵が自作で好感が持てるのですが、光の出し方は上手いのに、統一感が無く、線画と塗りが不自然で違和感を感じました。立ち絵の微妙な表情の出し方は、上手くいってましたね。これから作るノベルの登場人物紹介といった感じで、のっぺりした起伏の無いお話です。エンディングは8個らしいのですが、私は何故か9個でした。きっとどれかと被ってるだけだと思いますが。その内二つが、各ヒロインのBest endの様に見えました。全部見ると、次回作の紹介が見られます。
66ヒサルキ
(DL)
久しぶりのホラー物だけど、これ都市伝説の外伝ですね。赤フィルターを通した様な白黒の背景とか、BGMとかは悪くないんですけど、絵が痛いね。前作よりは良くなってますけど、2chネタとか、厨房臭い感じが何とも・・・。確かに2chは便所の落書きみたいな物だけど、それと怪奇現象が公園で起きるのとは何の繋がりが有るのでしょうか・・・。少々説得力に欠ける部分は有りますが、一応落ちもあり、ゲームとしては成り立っているかと思います。
67The HOUSE
(作者)
プレイ時間は短いですが、すごいの見つけました。これは、結構きますね。「怖すぎて、クリックでけへん」「しょんべんちびった」人続出のフラッシュです(ちびらないけどね)。主人公が、一家心中のあった家に入っていく所から始まり、ダイニング、風呂、キッチン・・・5つの部屋や順番に観察していきます。自由に動けません、画面の気になる所をクリックしていくだけです。色々仕掛けがあり、あっと驚く演出がてんこ盛りです。その中で、一家の心中の原因が段々分かるようになっています。お化け屋敷みたいな感覚ですけど、私が理想と考えている音楽の効果(繰り返し、場面に合わせた変調)や、モノクロームな世界(白黒だけじゃなく、もう少し色に変化があったほうが良いかも)、予測できない演出、が見事に実現されています。ただ、精神的に来る怖さとは少し違っているかもしれません。それはこの作品がストーリを追うのではなく、とにかく演出に徹したお化け屋敷を目指しているからです。しかし、その演出センスには圧倒されました。多分作者の方がB級ホラー映画を知り尽くしているからではないかと想像します。(虫の飛んでいる表現や、フィルムのゴミなんかも細かいけど、雰囲気作りを大切にしているのが良く分かる)これ英語なんですけど、作者の方はタイの人だそうで、HPを見るとFlashの使い方や写真の撮り方、音楽の使い方がものすごく上手い。まだ若いのに本当にセンスのある人が世界には居るんだなと感心しました。別にスプラッタと言うわけではないですが、少しグロい表現が有りますので、お子様や、心臓の悪い方以外には、絶対お勧めです。※帯域幅問題でサーバが移ったようです。世界的に相当な人気だったみたいですね。作者ホームページからも、Portfolioの07の4で行けます(繋がりにくいですが・・・)。
68Twelve Doorsホラーですね。しかも、アクション付のアドベンチャー。操作系は違うけどバイオハザード2みたいな感じですかね。私の不得意なジャンルです。でも、気のせいかDANGER ZONEにも似ています、モチーフがそっくり、でも似たような設定のゲームなんか幾つでもあるか。そんな事言ってみてもクオリティはこちらの方が遥かに上です(Flashだもんね)。主人公は施設の中で記憶を失っています。異常事態の起こっている施設内を探索して、状況把握と脱出を目指します。幾つかエンディングがあるようです。Goodエンドなら、設定が読める様になっています。セーブは無く、キーワード(数字)で途中から始められます。E.G.Fとかテロメアとか、さりげなく生化学専門用語が出てきたりして、ちょっとそれっぽさが演出されていていい感じです。結構、長かったけど最後までものすごく楽しめました。効果音も良いし、何より絵を自作されている様ですが、人物は写真と見まがう程の上手さがあり、モデリングやテクスチャーで非常にリアルに造形されています。あらゆる意味で個人のレベルを超える出来です。ちゃんと、自力で謎を解き明かしていくので、アドベンチャー好きにはお勧めです。
69赤い部屋(Flash)前出の「赤い部屋」とは全く関係有りません。Flashで作られた、一本道のホラーです。「赤いちゃんちゃんこ」とか、「赤いはんてん」とかに似た(自作?)都市伝説で、稲川淳二のよくやる『あなた、キュル、キュル、キュル、でしょ?』の電話ネタをミックスした感じです。正直、全く怖くはないのですが、これもフラッシュの効果をうまく使っているので紹介程度に。作者さんとは全く関係無いそうですが、「赤い部屋完全版」と言うのも有りますので、探してみてください。こっちの方は怖い、と言うか、びっくりさせられる感じです。(上手く動かない時は、Yahoo!ツールバーを外しましょうね)
70My Diamond Baby密室脱出ゲームです。一応、感動のストーリも有ります。色々凝った仕掛けとパズルがふんだんに盛り込まれ、非常に濃い中身になっており、とっても頭を使います。Flashですので、セーブ機能が無く不便も有りますが、ムービーなど映像的な演出なんかはとても丁寧だし素敵でした。譜面がらみのパズルは私には少し難しかったかな。あと、棒がなかなか手に入らなくて困りました。まさか、○○から持って来るとは思いもしませんでした。マグネットトレーサーロボって現実に存在するんでしょうか?
71Succession of the Life前作「CRIMSON RING」で評価の高い、phylectorさんの第二弾です(出てからもうだいぶ経ってますけど)。今回は、主人公が大学の研究の為に、田舎の集落にやってきて色々調査するうちに、この村の秘密を知る事になり、そして終には自分の過去と向き合う事になる、というお話。やっていて、何故か「ひとかた」を思い出してしまうのですが、全然違うストーリなのに、舞台や登場人物、設定に若干かぶる部分があるからでしょうか、生と死のテーマが共通するからかも知れません。微妙な絵の具合がもう何とも、癖になりそうなんですが、しかしアノ背景は、写真から立ち上げて、わざわざ(藤原カムイが云う所の)ヘタウマ風にアレンジされており、感心して鑑賞しております。また、この作者の方も文章を読ませるのがとても上手いです。中だるみは一切無く、途中で飽きずにぐいぐい最後まで引っ張られました。是非、これからも作り続けて欲しいと陰ながら応援しております。
72水槽と雨
(更新停止)
 割と短いFlashのノベルです(攻略にはかなり時間を要しますが)。主人公の高校生が、東京での課外学習を抜け出してヒロインと共に「心の風景」に会いに行くお話しです。システムが独自のもの(汎用ツール化されてます)を使っておられる様です。保存が出来ない所が痛いですが、スキップが出来るので、攻略には役立ちました。しかし、ログが読めないので叩き過ぎにはご用心です。
 エンディングの数は確認できたもので4個、まだ有るのかも知れません。しかし、このマルチエンディングのシステムでは、途中の過程が複雑になっており、経路が異なっても落ち着く先は一緒になっているようです。従って、一見グッドエンドの様に見えても、実は何も分かっていない経路を通っている場合もあり、要注意です。なんとなく、これが物語の本質かなと思える経路は一本だけでした。
 音楽(と言うかループサウンドですが)はチョイスがすんばらしいです。とある海外のフラッシュ用リソースを使用されてる様ですが、私も音楽を使うなら此処だと心に決めております。でも、良い音は作品を選びますから合わせられるクオリティのノベルは限られる事でしょう。その意味でもこの作品は写真の加工や文章など、音楽に遜色の無い出来です。作者の方は、文章書きが本分の様で、確かに作品の雰囲気を上手く作り上げてはいますが、少々間延びしており、取っ掛かりで平凡な描写が続くと、プレイを続ける気力が無くなりそうでした。文学的では有りますが、映画的な見せ方が必要な「ノベル・ゲーム」としては、引っ張り方が弱すぎます。でも不思議と、クリアしたのに時々プレイしたくなるんだよね、雰囲気のせいかな。
 一方、テーマとしては非常に共感を持ちます。私も高校生の頃から心にはっきりとした風景が刻まれています。それは夢の様でもあり、自転車で長い山越えをした時に見た夜の町の明かりの様であったり、私が生涯追い求め続ける心の風景であります。それは何十年も経った今でも、心に色あせる事無く在り続けています。ミスチルの「シーラカンス」のようなものですが、生活の中にその風景の欠片を見つけるとき、私の心は思い出すべき感情を見つける事が出来ます。「水槽と雨」はそんな物に少し似ているかもしれません。
73CRIMSON ROOMFlashの密室脱出ゲームで、赤、緑、青の三つの部屋が楽しめます。このカテゴリーでは結構有名なタイトルなのですが、私にはちょっと難しいというか、理不尽な感じがするので苦手です。ストーリはなく、暇つぶし程度に、気楽に遊べるのは良い所です。黄の部屋の番号は、何度やっても使えない事があり、しょうがなく最初からやり直しました。一応クリアしましたが、納得いかない気分でした。クリアの後の、料金請求もあまり喜べないオマケですね。
74顔風船Flashのちょこっとアクションアドベンチャーゲームです。めちゃくちゃ短いですけど楽しめるんで、ご紹介させていただきます。オープニングで風船になって飛んでいった自分の顔を少女が回収しにいくだけですが、絵が面白いのとアイデアと表現が新鮮で思わず笑ってしまいました。パズル(と呼ぶほどのものでも有りませんが)では少しはまってしまいますが、地道に何度か試せば何時かゴールです。気分転換に良いし、こういう新鮮さが頭に新しいアイデアを吹き込んでくれるかも。
75少年少女の相死相愛 学園物ホラー・サスペンス・サウンドノベルです。まだ、完結していませんが(1/3位?)、先行公開版をコンプリートしました。これは、所謂「街」系ゲームですね。現在、4エピソードで4人の主人公の視点から七夕までの3日間を過ごす事が出来ます。
 色んな視点から、物語の謎に迫っていく訳ですが、この謎というのが、非常に上手くちりばめつつ小出しになっており、「あー、そこで繋がるわけか」と、発見を堪能しながら、「この描写が思わせぶりだ、伏線か?」等と推理を働かせつつ、平凡で退屈な日常描写を耐え抜くゲームです。そして物語の根底に流れる高校生活の描写こそがこの物語の本当のテーマであると同時に、目的でもあります(と勝手に結論付けてみる)。
 しかし、未完なのに登場人物は20人と、メモ帳無しでは全く関係を把握できませんでした。やはりこの手のゲームはメモ必須ですね。とにかく一番最初の平和で退屈な描写で諦めずに頑張って読んで下さい。七夕がやってきて目が覚めます。おー、と良い感じに盛り上がって来たとたんに、何か降ってきていきなり終わっちゃいます(一人完了)。この辺から、この物語輪郭が見え徐々に面白くなってきます。次の人は、また日常描写からやり直しですが、既に他人の視点を経験済みですから、ザッピング感覚で背景が分かるので、余裕で楽しめます。
 それぞれに共通する謎として、過去の7/7に何があったのか?犯人は?アノ三人組(ここでも男1女2の中学生)は?と云うのがあり、特に三人組は各エピソードのプロローグで、彼らの物語の片鱗が織り込まれています。また、過去の事故に関しては開発中の続編で語られる事とは思いますが、作者様のHPにさりげなく紹介されています。茜街奇譚の作者様だけに、文章は流石と言う他ありません、しかし、画面は少し単調過ぎるかも。そして、前作の「茜街」も実はちょっとだけ出てきます。徐々に面白くなってきているので、今後発表される続編も、マッタリ楽しんでいこうかなと思っとります。
 この話は結構、生徒会がらみの活動や登場人物が出てきますが、私も高校生の頃は生徒会やっとりました(副会長です)。だから生徒会の雑用係り的扱いや、下校時間を越える超高校生的活動描写が一々リアルでシンパシイを感じてしまいます。しかし思えばあのような経験(暗い学校に差し込む月明かりや、広い構内にぽつんと灯った消火栓の赤い光等を心に刻む事)こそが長い時間を経て、学校にノスタルジイを感じる原点になったのような気がしてなりません。そしてその高校も、統廃合により消滅してもはや在りません、時の流れとは無常です。
 ところで、現在この先行公開版はDLできません。続編も製作中ですので、入手は困難です。作者さまに置かれましては、お体をご自愛して、どうぞ完結まで我々をお導き下さいませ。陰ながら応援しております。
76苦情
(DL)
わいわい☆工房さんの数分で終わるホラー・ノベルです。本当にただ読むだけですが、ちゃんと一本の怪談として完結していますから、「なに、たったこれだけ?」っていう事にはならないと思います。さっぱりしている絵のセンスも良いですし。話の内容は、どこかで聞いたような、多分、元になるモチーフがあると思うのですが、一応オリジナルだと思います。ですが、作者の方の実体験からの、「怒り」(呪い?)のような物がこめられている気がします。メニューが無く、セーブができません。
77selfじんと来る様な、まじめなお話だと思います。ファンタジックな良いストーリです。でも、「心臓病なのにそれかい!」って言う所に、笑いを狙っているような、なんかやらせ臭い感じがしてきます。これも、一昔前のそっち系っぽい作りですね、悪い意味じゃなくて、ベタな演出も型がしっかりしていますし。しかし、敢えてこのプラットフォームを使わなくても良いのになぁ、とは正直思いました。やっぱりこれも一昔前を感じさせる巧みな演出の一つでしょうか?ピアノのBGMは最高です。オリジナルだと思いますけど、ストーリに良く有っていますし、使い方もうまかった。18禁と言う事ですが、たいした描写も無いし、ぎりぎり自主規制のレベルですかね。
78百色眼鏡体験版大正チックな雰囲気といい、フォントといい、「あ、こりゃ凄いね」と、思わず感想が漏れてしまいました。この体験版を見る限り、絵と演出はかなり期待できます。この世に別れを告げつつある80歳の老人が見る走馬灯のような夢をモチーフとしているようです。ファンタジックで少しホラーチックな世界を3エピソードだけ体験できます。細かい事ですが、吉里吉里なのになんでNスクのクリックマークが出るんだろう?こんなんデフォルトにあったっけ?ところで、一応18禁のようですが、体験版のどこにもその様な描写はありませんでした。
79ベルゼブル 様々な趣向を凝らしたノベル系アドベンチャーという事で、勢い込んでプレイさせて頂きました。その結果、予想以上の質と量に圧倒され、プレイ完了まで大変時間が掛かってしまいました。
 この世界は、剣と王制の支配する中世ヨーロッパ(風)で、現実と少し違うファンタジックな要素として「能力」を持つ人々が居ます。この能力は目からビームを出すというのとは少し違っていて、GTYに出てくるk-タイプ(あそこまでディティールにこだわってはおりませんが)のような、知覚・記憶能力の延長線上に有る物が多いです。その能力者たちによってなる探偵集団に属する主人公は、メンバー唯一の無能力者で、うだつの上がらない丁稚状態です。それでも、自分なりに存在価値を見つけようと頑張っている、明るい女性です。そんな主人公のいる探偵事務所に来た領主からのパーティへの招待状、それこそ様々な謎と柵を呼び起こすきっかけでした・・・。
 作者の方は、毎回テンポ良い文章で、登場人物の書き分けや命の吹き込み方は、さすがと言うより他ありません。更に今回は、文書量と演出に磨きが掛かっています。特に後半の主人公が活躍するくだりの演出は、踊る大捜査線の最終回辺りの盛り上がりを髣髴とさせるものでした。また聖書の引用など、作者の方の勉強量は並々ならぬ物と想像致します。作る度にクオリティが上がってきて、フリーでやるには、もう限界かもしれません。
 しかし、私はこのような作品がフリーで作られる事に重要な意義を感じています。シェアでやれること、フリーで出来る事は私の中では全く別物で、「遣り甲斐」と「成長」の捉え方も違うのではないかと考えています。これは、作り手と受け取り手、両方に言える事だと思います。当たり前の事ですが、私はこのような挑戦的なフリーゲームが何かを刺激し、更に新たな何かを生み出す、その素晴らしい循環と人間の創造力に感銘し、また感謝しています。
 最後に、推理物と言う事で抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんが、心配しなくても、ほぼ最後まで読めます。私にとっては、犯人は分かりましたが、トリックはちょっと・・・、難しかったかな。しりとりはまだやってません。ネタバレしないように書けて良かった・・・。
80DroomおなじみFlash密室脱出系ゲームの一つです。難しいのは暗号"bunco"の解読だけです。この手の元祖ってミステリーハウスかと思うんだけど、最近分かってきたのはこういうゲームって、すごく作りやすいのかも知れないなぁと・・・。殆どストーリ無しで、しかも一部屋分のモデリングだけで済むとなると、後はアイデアだけの勝負となるのですが、この辺は金庫、鍵、パズルのモチーフを組み合わせるだけで本質的には差が殆ど無い訳ですね。探偵推理物のノベルだって同じようなモチーフじゃないかと思うんですが、何が違うかと言うとストーリが有るか無いかなんですよ。だから逆手にとって密室脱出を散りばめた、ストーリ重視のノベル系AVGってアイデアは受けませんかね?これってただのコマンド選択式AVGに分類されちゃうかな・・・
81ごがつのそら。就職間もない青年と、女子高生の分岐なし恋愛ノベルです。最初、退屈な日常描写から始まったんで、やめようかとも思ったんですが、神社からピアノって所で、「おや」っと思いとどまり、その後巫女が出てきて、「もういいよ」ってなったんですけど、結局、なんだかんだ感動のラストまで読み続けて、なかなか面白かったって言うのが正直な感想です。こういう話にはやっぱりピアノのBGMが良く合います。元々、一章ごとに分けて、一週間おきにFlashで公開されていたようです。明らかに、ノベルシステムに向いてる内容なんで、Nスクに纏まっているのはありがたい事です。演出的には、各章のプロローグにハイライトを持って来るのが良かったですね、こういうのはアバンタイトルっていうんですが、ストーリに関心を持たせる事に成功してます。後日談の「八月の雪」は、とても雰囲気が良かったです。本編よりも気に入ってます。五月病もテーマの一つになっている訳ですが、私も大学入って5〜6月位に、なんとなく虚無感に襲われている時期がありました。幸い、賄い付の下宿に住んでた事とか、殆ど毎晩誰かの家に遊びに行っていたので、そんな状態は直ぐに消えてなくなりましたが、この主人公みたいに、人との交わりが少ないと、結構掛かりやすいモンです。5月に関わらず、とにかく生活と環境が急激に変わって、二、三ヶ月目ぐらいが目安ですね。他にも、会社辞めたくなるのは、三日、三ヶ月、三年目とよく言われますが、結構当たってます。
82天使の降りた街
Web版
いきなり死の宣告を受けて、社会福祉に励むようになるOLの話。こうやって書くと全然違う話に思えるな、でも嘘は言ってないよね?女性用のノベルをやったのはこれが初めてです。クリアすると、女性向けではないシナリオ(SFというより伝奇物っぽい?)が発生しますが、なんか凄い事になっとりますな。シナリオをクリアする度におまけが出てくるのはYuuki!ノベルらしいところです。主人公の女性のみ部分的に声が当てられており、一生懸命やってらっしゃるのでしょうが、耳を劈く程のヒステリックさで、巨神ゴーグのドリスを思い出しました。思わずクリックが早くなり落ち着いて文章が読めませんでした。
83Foster
(DL)
旅館で起きた殺人事件の犯人を探る娘が主人公の探偵物AVG。さらっとしていて感情移入しにくい(書き手の照れを感じる)ものの、割としっかりしたプロットで、良く纏まっていると思います、あくまで湯煙殺人事件みたいなものを目指したとしたらですけど。絵も音楽も、地味ですが良く合っていて、優しい感じでした。しかし、ゲームデザインにはものすごい問題があるような気がします。難しすぎて、もうずっとのどに刺さった棘みたいに、心につかえて居ましたがようやく痛みが取れました。何回やったかわかりませんが、とりあえず私の探偵度は60ポイントらしいです。気を付けなきゃいけないのは、第二の事件の後、桔梗の間で不倫話を聞くことですね。で、これを聞く為には、黒宮敏明に合いに、牡丹の間に行った後、必ず桔梗の間でいやな事言われる必要があるって事しょうか。色々腑に落ちない事は有りますし、確かに難しいんだけど、それはそれで心に残る作品でした。正直、この主人公がどんな生活を送ってきたのか、気になってしまいましたが・・・。ちなみにfosterとは里親って意味があります。あと、エンディングでいきなり声が出たのはびっくりしました。
84カレイドスコープひたすら写実的に事故で障害者になった主人公(達)の心の成長描いた感動大作です。プレイヤーがゲームに何を求めるかは人それぞれですね。嫌な事忘れたい、楽しくなりたいとか、そういう動機だと、この作品はちょっと重たくて敬遠したくなるかもしれません。いわば「蛍の墓」みたいなものです、説教染みた感じや、現実の非情さは歴然であり、ファンタジックな要素は微塵もありません。でも、だからこそ、主人公達の成長と行動に共感し、感動する事が出来るのです。私自身は、気持ちが重くなるのが分かっているから、この手のドラマはテレビでやっていてもあまり見ません。なんと言うか、痛すぎるので。それと引き換えに、健康である事のありがたさや、生きる喜び、普段見過ごしている大切な沢山の事を思い出す事が出来るわけですが、このノベルは一本道分岐なし後日談無しですが、まさにドラマの要素を十分盛り込んだ上、ただのドラマ以上に切実な内面を書き出しています。これが、小説だと音楽も無く、イメージがあやふやな訳で、TVドラマだと、味わっている間もなく勝手に先に進む訳です。ノベルで成功している部分が感じられると思いました。また、成長を描くと言う事は、ひとつの壁を越えるだけじゃなくて、幾つもの壁を乗り越えている姿を描かないといけないんだと言う事を十分理解いたしました。私的には良い小説を読んだ後と同じ読後感が得られたので、満足なのですが、一つ残念に思えたのは、作者の意図とテーマが明確すぎて、プレイヤーにその価値観を押し付けている点ではないかと思います。もう少し、投げかけて、受け手の想像に任せる部分があった方が深みが出たと思います。
85向こうの彼女短いファンタジックな恋愛ノベルです。クラスメートの少女は学校とゲームセンターで二つの顔を持っています。ヤヌスの鏡では有りませんが、その二つの顔に翻弄されるのは、少女ではなくあなたです。こういうのも「ツンデレ」の一種なんですか?やり終えると、何ともまー、居た堪れない気持ちになります。あの制服の後ろに付いている物は何なんだ、とそればっかり気になりました。写真は素材ですが、立ち絵は綺麗です、全体的な構成も短編の割には良く纏まっています。しかし、話の流れは理解できますが、登場人物の心情にはリアリティを感じられません。星新一のようなショートショートを目指したのか知れませんが、キャラの掘り下げがもう少し深ければ、プレーヤが物語に入っていきやすかったと思います。このままで、あの結末にたどり着かされたプレーヤは、みな一様に拒絶反応を起こすでしょう。
86ナルキッソス水仙の事らしいです。ギリシャ神話にもそんな名前がありますねナルシストの語源。若い末期ガンの患者二人が主人公の、ちょっと暗めのお話です。で、二人して親から盗んだ車に乗って花を見に海へ行く訳です、これ読んでて、何か知ってるストーリだなと思って思い出しました。昔(1998年)ドイツでディスコに行った時に見た「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」っていうドイツ映画(←こういう所が外国の面白い所、ろくに踊りもせず映画見てた)のストーリとそっくり。二人の末期がん患者が病院抜け出して、ギャングの車を盗んで、銀行強盗して、天国に行く前に海を見なくちゃ!っていう映画です。コメディなんですけど、何故か物悲しい、生まれも育ちも違う男同士の友情を描いた映画でした(ドイツ語だったけど何故か英語の字幕が出ていて助かった)。この作品は、主人公が男と女って違いは有りますけど、末期がんの二人が病院で出会うとか、出かけるのに薬を大事に持っていく所とか、海に行く所とか、死んじゃう所とか、読んでて良く符号が一致する所が見られました。これはただの偶然かも知れませんが、しかし、私にとっては懐かしい香がして、「あ〜、そういえばこんな映画だったよな」っと走馬灯の様に思い出が巡りました。それは捨て置き、絵も音楽も商業製作品並みの格調高い出来です。オマケに肉声つき、喋り方が某ヒロインに似てなくもないのですが、大変上手です。雰囲気もソフトな演出が良く効いて、センチメンタルな気分を盛り立ててくれます。この話は、救いの無い終わり方をしますが、そこから何を感じるかは、その人の人生観に由ると思います。何を持っていくか(何を思い死を迎えるか)、何を遺していくか(残る人達に何を感じて貰いたいか)は、その人の人生そのものなのですから。
※2ndが出来るみたいですね。絵がチョットすっきりした?なんか多言語版とかも出たみたい。他メディアの話!ふ〜ん・・・。
87call Angel Voice -truth-上司を殴って会社を辞めた主人公が交通事故で入院して退院するまでの出来事を描いたノベルです。エンディングは6種類、但し一個は後日談です。私、まだ一度も入院というのをした事が有りませんで、経験者と比べて認識が浅いのかも知れませんが、身内が入院したり、知り合いのお見舞いに行ったりで、入院の雰囲気みたいな物は少ないながらも知っているつもりです。病室のベットの横で一晩、泊まって思ったのは、看護婦さんてホント大変だなって言う事でした。この作品では、入院患者の気持ちとか、看護婦の気持ちなんかが丁寧に書かれているんだろうなと思いましたが、患者同士の連帯感は読んでて素直に共感できましたけど、看護婦の内面については患者ほどは書ききれていないなと感じてしまいました。正直想像の範疇でしか無いのですが、作品で描かれる患者と看護婦の感情の線引きには抵抗感を否めません。ノベルゲームに何を期待してるのかと思われるかも知れませんが、もうちょっと瞬間的で複雑な葛藤があるのでは?っと、期待を込めて思ってしまうのです。だから、敢えて看護婦の内面をさらけ出さずに客観的に描かれていればもっとリアリティを感じられたと思います。一方、幽霊はオマケの様ですが、絵本に出てくるお化けみたいで、何故か好感が持てました。絵についてですが、努力は感じるものの書き分けが甘く、キャラが一枚ごとに別人になるので、混乱しました。多分、何かのキャラ絵を参考に立絵を描いていらっしゃるのだと思いますが、その元絵の絵柄がばらばらだったんじゃないかなと邪推してます。最近、レビューの傾向が病気物に偏っているけど、別に意図的では無いんです、たまたま同時にプレイが終わる時期が重なっちゃって。次はもう少し怖いのが良いな・・・
88双鏡 -フタツカガミ- リメイク版謎の交通事故で生死を彷徨い、一命を取りとめた主人公、しかし、恋人の命は助からなかった。やがて、恋人の幻影を見るようになる主人公は、徐々にその意味に気付き始めていく。久々の伝奇物です。しかも、かなりクオリティが高い(Yuuki!Novelとは思えない位)、特に単調な繰り返し音楽、背景の加工センス、共に私の壺を刺激しました。また、リメイク版と言うことで、立ち絵はしっかりした画力で描かれており(どっかで見た事ある絵です)、安定感が有ります。私のホラーAVGへの憧れの原点はちょっと変わってますけど、「魔界復活」なんですよ。アレはスペランカー並に凄いゲームでした。本作品はホラーとは違いますが、制限された視野や、音楽(効果音も)と背景の生み出す雰囲気が、「魔界復活」のような、異世界に引き込む引力を感じました。また、テーマ的には伝奇、オカルト、SF、軍事物の要素も持っている、複合ノベルと言えるのかもしれません。ちょっと作者様のイデオロギーが強い気がしますが、なあに、かえって免疫力がつく。それから、確かな文章力で、読み進むのにストレスを感じないのは良い事ですが、時々、すっぽーんと展開が飛ぶので、「ポカーン」となりますね。多分、分岐のせいだろうとは分かりますが、それ用のケアも頂きたかったです。しかし、素敵な作品をやり終えて、とっても満足しました、有難う。
89Lost in Morgue〜序章やんちゃな女子高生三人組が主人公のホラーです。明らかに、「トワイライトシンドローム」を意識したように思えますが、それだけに、写真の加工や、イベント絵等にはかなり気合が入っており、あの雰囲気を再び有難う、と言う気持ちでプレイさせて頂きました。アレが分かる人にはこの作者が何を目指したか読めると思います。序章と言う事で、短めに纏めてあり、続きはHPで小説にしてありますって事なんですが、あえなく閉鎖となっております(ついこないだまで有ったんですが・・・)。まー、製作者同士で喧嘩してやめちゃうって言うのも悲しいものが有りますが、意外とこういうケースって多いのかもしれません。相手に期待しないと良い作品が作れないし、期待しすぎるとかえって重荷になったり、裏切られた様な気になったり、フリーでの共同活動って責任分担とか大変そうですよね。この作品は荒削りですが、もし続けていれば、何時か凄くいい物になった気がして残念です。私がネットで探していたジャンルの一つだったのにな・・・
ところで、攻略について少し書きますと、エンディングは多分一つです。その他は皆殺しです。意外と最初の二つの選択が大きい様です、ここで間違うとその後何やっても駄目みたい。人間、正直になったら駄目だよって教訓なのかしら・・・
90名残雪短編の探偵推理物です。オーソドックスなストーリ展開で、ワンプレイ数十分で終わります。エンディングに勝手に名前を付けると、「推理失敗」→bad End、「真相は闇の中」→Good End、「名残雪」→Best Endの三つかと思います。ベストでもハッピーエンドとは成りませんでしたので、ひょっとすると他にもエンディングがあるのかもしれませんが、一応、全ての仮説と証拠品は埋まっていました。絵も落ち着いていて見やすいし、音楽も雰囲気にとても良く合っていましたが、この作品で特筆すべきは、ゲームデザインです。驚いたのはシステムがオリジナル(サブフォルダの名称はちょっと吉里吉里に似てる・・・)にもかかわらず、使いやすく見やすいし、殆どシステム上に不満が無かった事です。これは吉里吉里やNスクに慣れきっているプレーヤにとっては珍しい事と言えるかもしれません。読み飛ばしや、バックログが無くても、ストレス無くゲームが進められると言う事も、AVGとノベルを分ける指標になるかもしれません。また、この作品のゲームシステム上の特徴として、唯一つの事柄について「考える」のではなく、仮説と証拠品の組み合わせで推理を発展させる「思考連結システム」が秀逸です。なかなか手強く、ゲーム性を感じます。逆に欠点を述べるなら、完全にアイテムを取れていないにもかかわらず、最低限の条件をクリアしてしまうと状況を理解していなくても強制的に先に進まされてしまう事でしょうか。その為、プレイヤーは強制的に先に進まされる条件を見つけて、避けてプレイしないと、コンプリートできないようになっています。システムは既に十分、優秀な推理物AVGを作れる器が有ります。次は是非、シナリオに力を注いで、JBハロルドシリーズの様な大作を作って頂きたいと、陰ながら応援しています。
91怪奇談〜本当にあった怖い話〜オムニバス形式の怪奇体験談です。体験版では三話しかプレイできませんでしたが、フリー化にて全12話+追加シナリオ2話の怪談が楽しめるようになりました。聞いたことある話も有りましたが、琵●湖のテケテケは初耳でした。あそこは霧が出ると落ち武者の亡霊が湖面を歩く事で有名なんですが、敢えてそれじゃ無かったですね。主に関西地区での実体験をベースに「あなたの知らない世界」風に合成写真やムービー付で演出されており、寝静まった夜中に電気を消して一人でプレイすれば最高の作品です。今までもこういう趣旨のものが沢山あった様に思いますが、私が見てきた中で、音楽、ステレオサウンドの使い方、実写ムービー、静止画の合成・加工において一番良く出来ていて、大変感心させられました。特に実写オープニングは「夕闇通り」を髣髴とさせ、凄いクオリティと情熱を感じました。ただ怖いと言うより、作っている方々が凄過ぎてちょっとびびってます・・・。コンプリートすると、心霊スポットマップが追加されますが、出てくる所が身近なのが堪りません。私は最初バグってプレイできなかったんですが、MOVIEフォルダ内のDATファイルの拡張子をmpgに変えればちゃんと動きました。更なるリメイク版も製作されているようです。
92刑事神南さつき「W・Eの殺人」「Man In Black」警部補神南さつきとなって事件を解決する正統派推理AVGです。「古畑・・・」みたいな感じですかね。「W・Eの殺人」はパイロット版と呼ぶべきもので、このシリーズのゲームシステムの肝である「KIM:keep In Mind」について紹介する為の、実験的作品。とは言うものの、プロローグや場面設定等はちゃんとしており、セーブできないくらいで十分遊べます。そして、「Man In Black」が"case 1"つまりシリーズ本作となります。推理物のAVGは選択肢の広さがゲーム性に大きく影響しますが、本作品ではKIMが非常に大きい自由度をもたらすと共に、難易度も高めています。捜査を進展させる過程で、主人公は色々な手掛かりや、遺留品、情報を入手します。しかしそれだけでは先には進めません、それぞれを組み合わせて推理を進めていく必要が有ります。RPGで鍵を使う時に、手に持ってから、ドアの所に行ってそれを差し込むのと同じように、一旦KIMのダイアログboxに自分がコンセントレートしたい事柄を(右クリックで)置いて、それから関連付けたい情報、アイテム、画面の気になるところ、会話などをクリックすると、それまでと異なる情報が得られたり、捜査が進展したりします。これにより、プレーヤの自由度が広がり、より発想や推理を働かせてゲームをプレイする事が出来るため、難しさがあまり苦にならず、逆にこれまでよりものめりこむ事が出来ます。他にもオリジナルのシステムが幾つか用意され、ゲーム性を高めています。非常に高い独自性と、渋いゲームバランスから考えると、十分最高評価に値する所ですが、二点問題があります。一つは、音楽が無いこと。BGMは演出の一部です、ただ流すだけでなく、僅かな変調等により、容疑者の心理描写や、ストーリの進展を示す大事な要素になりえます。もう一つは、ストーリにドラマ性が欠けており、殺人犯はチョット短絡的で薄っぺらい印象を受ける事。現実の犯罪なんてこんな物かも知れませんが、そんな事件は見るに値しません。この手の推理物には、事件の中に人生の悲哀が含まれていないと、ただの推理クイズで終わってしまいます。※次回作は中止になったそうです。とっても残念です・・・。
93スパルトイ 太陽系を舞台に、国際連邦軍の女性パイロットが、火星軍と戦うSFノベルです。衛星軌道→月面→火星と、上手く展開を練ってあり、人間関係の因縁や設定等、ロボットアニメを見ているような、スピード感のあふれる作品です。遺伝子異常(どちらかと言えば染色体異常に近い)による障害者への差別や優生学的なこともテーマに内包しています。エンディングはGoodが4、主人公とサブキャラとの好感度で変わります(中でもフラットとのエンディングがTrueのような気がします)。Badが2で、いずれも戦闘で敗北すると到達します。オマケとして、設定や作者様(アライグマ)出演の「後書き」が見られます、悪乗り感が面白いです。
 この作品で驚いたのは、ノベルなのにロボットの戦闘シーンがあったり、自作の3DCGを使って戦闘を表現している所です。STGやSLGではこういうのがゲームの一つの要素になっていますから、特に珍しい事では有りませんが、そのイベントシーンを集めてAVGにすると、こういう感じになるのかと感心しました。逆転の発想と云えるのかも知れません。また、音楽も作者様自作で、これがまた作品の雰囲気に良く有っていて素晴らしい。特に、"four cannons"はノリが良くて、戦闘シーンの緊張感を高めるのに一役買っています。立ち絵こそ素材ですが、オリジナリティあふれるパワフルなノベルです。余談ですが、私はこの作品でゼノギアスを思い出しました。・・・吉里吉里版も出たようです。
94星の無い空の下で主人公の友達に起こった殺人事件の犯人を探し出す長編の探偵物AVGです。セーブやロードの利便性など、システム面で敬遠しがちなツクールですが、その不便さを凌駕するほどの良作です。上手い文章、べっとりした恋愛描写が無く純粋にストーリを楽しめる点、話の展開に中だるみが無く、飽きずに最後まで読ませる等がその主な理由ですが、実際プレイしていてぎりぎりまで犯人が誰かわからなかった程、話の組み立ても良かったです。といっても、考察をよく読めば、ヒント無しで犯人を見つける事が出来たし、ヒントで答えは明白なので推理物が苦手な人にも安心してプレイできます。そして探偵物としては文句なしの完璧な読後感。エンディングは3個で、True、Normal、Badですが、Trueは悲しみを乗り越えていく主人公の切ない描写がプレイヤーに静かな感動を与えてくれます。オマケでプレイの得点が出ますが、私の追跡率は82%でした。※自費出版で続編的なものを小説にされたそうです。本作の二日前の遠野有希が主人公で、「雨のあと、晴れの前。」との関連もあり、ファンタジックな内容とか。絵が綺麗です。無料配布後の再版は有料配布だそうです。こういう媒体展開は面白いですね。
95雨のあと、晴れの前。「星の無い空の下で」の主人公の妹から見た、一本道分岐無しサイドストーリです。本編の切ない雰囲気はそのままに、少しファンタジックな内容になっています。RPGツクールXPで作られており、画面や文字は見やすくなっていますが、内容はチョット単調になっており、退屈な部分も有りました。本編のカーテンコール的な作品です。
96ゆめにっき
ver.0.09
 作者の方が内容に触れるのをあまり好まない様子ですので、出来るだけネタバレにならないようにさらりと。
 主人公の女の子が見る夢の中を冒険するツクール製作の作品(ホラー)です。
 目的は有りませんが、エフェクトと呼ばれるアイテムの様な物を24個集めて卵に還すとエンディングを迎えます。少しやり込んで、かってがわかる様になり、ネットで情報を集め始めるとハマります。
ただ、終わらせるのが目的と言うより、ひたすら夢の世界の不思議を発見し体験する事で、プレーヤが色々な事に想いを馳せる様に作られています。ある者はこのゲームの意味を見つめ、ある者は主人公の境遇に思いを巡らし、ある者は作者の精神状態を危惧するといった具合に云わば、「夢」と言う抽象画をツクールで描いた作品と言えます。
 夢がテーマなので、キャラや背景は非常に奇妙です。作者の方が実際に夢の中で出てきた物をそのままデザインしているのかも知れませんが、しかし良く見ると、ゲーム全体のデザインがアナーキーな反面、グラフィックデザインが良く纏まっています。また動かし方や効果に不自然さが無く、演出が非常に冷静な事が気になりました。商業作品並に高いレベルで作り込まれています。
 ちょくちょく、バージョンアップしており、現在ver.0.09ですが、1.00になるまでどれ位の時間が掛かるのか見当も付きません。このまま方向性の無いまま、マップが拡大していくのか、ストーリ性やゲーム性を付加していくのかはお楽しみですね。
 正直、あまり鬱な人にはお勧めできませんが、ホラーとして勉強になる作品だなと思いました。
2007.10.1:ver.0.10来ました。色々増えてる!自転車と電灯はふつうに有ったな。
97七年凪山中の洋館別荘で起こる元同級生達の殺人事件を描いたオーソドックスなかまいたち風のミステリ小説ですね。導入に何のインパクトも無い分、ストーリに入り込むのに時間が掛かりましたが、ある程度進んでくるとノベルとして面白く、素直にはまり込んで楽しめました。音楽の使い方や文章は非常に上手かったと思います。オマケとか、エンディングリストが無いので攻略しにくいかと思いますが、無数のバッドエンドを除けばGood endは全部で3個で、日記の真相がわかるED、犯人の動機がわかるED、犯人がわかるEDです。二週目以降、チョットふざけたAnother endも見れる様になっています(Yuuki!ノベルっぽいところですね)。欠点としては、犯人の動機がどうも納得いかない所です。それから、トリックや殺害方法については疑念だらけでした。犯人が壊れちゃってると考えればいいのかもしれませんが、それなら単なる無差別殺人事件の様な気がします。※旧バージョン(2005.09版)と選択肢が少し変わっています。最新版(2005.9.26版)をお勧めします。
98I Love Americaハードボイルドの一本道ノベルです。引退間近の治安協力士(CIAの裏切り者を抹殺)である主人公がCIAやNSA等のアメリカの暗部に立ち向かうハリウッド映画のようなストーリです。制作期間が3年と言うことで、非常に良くリファインされており、近年の世相を十分に反映した設定等は、作者の方が高校生(当時)と言うのが信じられない位よく勉強されて書かれています。しかしながら、所々「ん?」となる所があり(会社とか・・・、道徳とか・・・)それはそれで愛嬌があると思いました。プロットの立て方はオーソドックスかもしれませんが、ちゃんと伏線や少ない登場人物を上手く絡ませてあり十分長編として読み応えがあると思います。テーマとして、「何故人を殺してはいけないのか」「アメリカの愛国心」と言う事も扱っており、メッセージ性も感じられます。また、間違えると即ENDのミニゲームはアイデアに感心させられます(HPを見に行ったり、実際にはチョットめんどくさかったですが・・・)。素材の写真の使い方や音楽は、(ボスの事務所以外は)作品に良く合っていて素晴らしかったと思います。内容的には深みが無いもののハードボイルドの小説っぽさは良く表現できていたと思います。
99月穿つ狂想割と直ぐ終わる伝奇物のノベルです。小さな町の高層ビル周辺で起こる失踪事件に関する、霊魂とか魔物とかの話です。読んでる内に徐々に気付いたのですが、これはFORESTというノベルの事後談というか事前談な訳ですね。知らずにプレイしてました。ホラーっぽい雰囲気があったり、部分的にアニメーションがあったり、オマケとしてではなく、一本のノベルとして堪能しました。くどくも無く、さらりとしている文章で読みやすかったのですが、あまり印象が残らないのは視点の切り替わりが唐突な為かもしれません。結局最後まで主人公が誰なのかわかりませんでした。そんな者は必要無いのかも知れませんね。若干ですが、18禁な描写があります。
100神様ノ子守唄-ツギハギ殺人事件-連続殺人事件を、勘の良い高校生が幼馴染のガールフレンドと共に探偵よろしく捜査して、犯人を突き止めるという、金田一君のようなストーリですが、サスペンス・ミステリーかと思いきや、実は伝奇物でした。しかも結構典型的な伝奇物ですね。基本的に分岐の無い一本道です。物語終盤あたりの犯人確定以降は結構盛り上がりました。なんか、色々伏線のような物が残って終わるので、次回作もやってみようかなと言う気持ちになりましたが、いかんせん、登場人物同士の冗長な会話や、主人公の性格や口調(平たくいうと、いちびってる)は、チョット気持ち悪い感じが。あと、立ち絵の腰が気になってしまって・・・、絵師さんの持ち味なんでしょうが、悪いけど気になって気になって・・・。全身が出てくるとどんな感じなんだろうと、そればっか気になったのはどうでも良い事です。おまけシナリオもダウンロードできるみたいですよ。その三つ目のシナリオは簡潔な分、本編よりも良い出来です。
101逢魔時主人公の女子高生が夕暮れの公園であった少女は、実は希薄な存在でした。やがて、その少女の因縁が主人公を巻き込んで、過酷な運命の選択を迫ります。あなたは、無事にハッピーエンドに辿り着く事がでいるでしょうか。これも伝奇物です。エンディングは三つ、Trueが一つとBad二つです。分岐は二者択一で、回想シーンの有り無しでTrueからのズレが判定できるので、攻略は非常に簡単です。Trueを見るとオマケシナリオが追加されます(最大三個)。意外とイベント絵があるのに感心しました、ストーリも予想通りの期待を裏切らない展開で、オーソドックスですが、それなりに読ませました。本筋よりも過去の因縁のほうに気が行っちゃいますね。同名のPSソフトをやった事が有ったので、そういう気持ちでやってみたら全然違って伝奇物でした。
102機械仕掛けの鴉
〜前奏曲〜
ミステリという事で、後半、謎解きの有る、中位の長さのノベルです。理屈っぽい主人公が再会した幼馴染と共にマンションで殺人事件に出くわし、探偵宜しく謎解きをする中で、おかしな真相に辿り着くストーリです。結末はGood end×1、Normal end×2、Bad end×4の分岐を持ちますが、Good endだけが、かなり意地悪な選択支になっています。私などは、最初にその選択支を目の当たりにしたものの、選択できず、その後はその選択肢を出現できずにはまっていました。一見すると、バグの様にしか見えないんですよねこの仕掛け。不必要な形容詞が多くて、読みにくい上に、主人公とヒロインの冗長な会話にはウンザリ(後で気付きましたが、この点が修正パッチで修正されているそうです)。飛ばし気味に進めた事もあってか、ろくに捜査もせずにいきなり推理モードに入ってしまった感が強く、「え、これでおわり?」って思いました。それから、謎の真相ですが、全体的には最初の状況から推測される通りの、まんまの結末です(多分これは作者様の意図でしょう)。ただ犯人の動機は解き終わった今も理解不能です。音楽の使い方はとても良かったです。絵については、もう少し何とかして欲しいと思うのが一般的な感想ではないかと思います。
103踏切街系ゲームです。踏み切りにまつわる六つのオムニバスストーリ、それぞれは完全に独立しており、踏切の住人(これっておかえりの主人公かな・・・)がタモリのごとくストーリテラーとして各話の導入とプロローグ、エピローグを語ります。六つのストーリは、不条理な物、ファンタジックなもの、コメディ、現代的なものと、趣向も長さもまちまちで、「世にも奇妙な物語」そっくりです。各話に簡単に触れると、1.羨望・・・不条理物、ループ、主人公の不道徳さに嫌悪感。2.アルミ缶・・・記憶喪失のホームレス、踏切で記憶が断片的によみがえる。3.青春十八切符・・・コメディ、男性は共感、英語がヘンだ。4.海・・・一瞬で終わる、英語が読めない、予知夢? 5.男の戦い・・・「赤と黒」。6.おかえり・・・「OTHERS」、冗長な会話、ありきたりだがファンタジックで切ないストーリ。・・・となっています。全体として、サウンドノベルらしい出来で、イヤホンでBGMを聞きながらプレイするのも一興です。私は、おかえりが読後感が在り、良かったと思うし、ラストにふさわしい話だったと思います。ただ、所々書かれている英語が意味不明だったり、読み辛かったり、読んでる内に消えたり、ページ送りにしていると、読んでないのに強制的に次のエピソードに飛ばされたりとシステム面で不備が多かった気がします。バックログが見れなくなるので、セーブポイントは要りません。また、プレーヤに対する配慮が足りないとも感じました。回想を見ると、各話の読んだ回数が一瞬だけ表示されます。何か仕掛けが有るのかも知れませんが、二回見て何も追加されていなかったので、フラグチェックを止めました。違いが無いのに、5回も10回も見る人間は居ないと思いますが・・・。あと、おかえり以外の話の順番はランダムに変化する様ですね。
104cubic3分岐によってストーリを解き明かしていく、短編伝奇風サウンドノベルです。色んな人の一瞬の出来事が、断片的に組み合わさって話が成り立っています。やっぱ凄いわ、ここのグループ。百色眼鏡体験版の時に凄いのが居たなー、と思っていたのですが、ハイセンスな音楽とルーズリーフをスキャナーに取り込んだような壁紙が、立ち上げた時点で私の心を捉えました。各話の短くもインパクトを追求した演出、非常に洗練された独自性の高い立ち絵、本編の一部にまでなっているエンディングリスト・・・、単に話が短く、断片的過ぎて、実験的な作品であるという事以外は、全て、作品完成度として商業レベルです。タイトルから考えて、モチーフとして「cube」が有るのかもしれませんが、記憶が無い事位で後は似た部分はありませんね。特にエンディングリストの細かい更新は見ていて非常に楽しかったです。「話のプロットなどどうでもいいのです」と、言い切ってしまえる程、ゲームデザインが素晴らしかったのですが、やはりどうしても次回作ではもっと長編をとか、練りこんだシナリオを、と思ってしまうのは、人の悲しい性なのだろうか・・・。お願い、ホラー作って下さい。
105白学ミス研漫遊譚〜京都夜幻抄〜読ませていただきました。これは、女性向けのノベルだったのですね。修学旅行で京都に来た高校生達が、以前行方不明になった元学生の幽霊を目撃して、色々調べてるうちに、陰陽師とか、悪魔つきなんかが出てくるお話です。ミステリではなく、多分オカルト?です。出てくる登場人物が皆、オーソドックスな型にはまってるのですが、特に男性の描写のされ方が女性向けのノベルらしく、魂が入っていない感じですね。多分、男性が描く女性の描写にも過分にそういう部分が有るんでしょうが。特に、引率の先生は、「お前そんなんでええんか?」と、言いたくなるような張りぼて感があります。恐らく、女性から見たら「普通じゃん」とか言われちゃうんでしょうが、どうしてもこの手のノベルでは圧倒的に疎外感を感じざるをえません。登場人物全員(警察も含めて)、物心が付いていない設定ならOKです。少女漫画っぽい絵は、均整が取れていて、全体的に統一感があり、安定した作画力が発揮されていました。作者様初めての作品としては、各キャラの個別ED(分岐)もあり、良く纏まっているのではないでしょうか。
106風雲相討学園フラット
暫定版
完全版
作画力が非常に高い、複数ヒロイン(6人)攻略型ギャルゲです。商業作品と言われても違和感がない程、絵だけでなく脚本もクオリティが高いこの作品は、暫定版との事ですが何の問題も無く最後まで遊べてしまいます(エンディングがややあっさりしている様に思われる方もいるかとは思います)。そもそもギャルゲーは苦手な私ですが、結構わくわくしながら純粋にヒロイン一人一人の分岐を楽しんでしまいました。雰囲気は一昔前のelf作品のような感じで、体育会系の男子キャラ(実はヒートガイJですが・・・)がいたり、いい加減な主人公が何故かモテまくるシチュエーションが健在です。あの頃はまだ確立されてなかったツンデレな女性キャラが非常に魅力的に描かれている点や、委員長→実は腐女子なキャラが発生している点が進化している所といえます。登場人物のキャラ立てや芝居のさせ方が上手く、シチュエーションが読んでいてとても可笑しいのですが、特にまじめなシーン程、「あれ?」っていう、変な所が有る点が良かったですね。私は「キンバリーの隠された能力や家庭」と、「番長の両腕左手(普段腕組んでるから気付かない)」が気になって仕方がありませんでした(私的に壺)。オーソドックスとは云え、黒岩のツンデレ振りは、フリーソフトでは此処に極めた感があります。まだ色々隠された謎が残っていますが、完成版で明かされることでしょう。フリーギャルゲとしてだけでなく、フリーAVGとして最も優れた作品の一つ。
※完全版の感想・・・全員攻略が完了していると番長シナリオに突入できる様になります。始まって暫くすると何かやばい展開に・・・、あわわわ、ちんぷオバケ降臨の予感があぁー・・・、っと寸止めで耐えた感じです。番長の昔話に大変救われました。此処は戦時中の番長をプレイヤーに上手くイメージさせる事に成功しており、その後の説得で感情移入し易くなっています。最終的にはステロタイプな学園物で落ちました、大団円。ま、バカゲーっていう見方も有るかもしれないけど、それでも作者様の作画力と、漫画チックなキャラの立たせ方に底力と、昔のエルフ作品を感じずにはおれませんでした。細かい所では「エンドロールが早すぎる!」って言うのが気になった所ですかね、あと研究室の写真が、見慣れた日立SEMだったんでズルッと来ました。EDSもHORIBAだし。素材じゃないようなので、勤め先か知り合いに撮って貰ったんでしょうか。もう一個の装置はなんだろう、ラマンかな・・・等といやらしく眺めておりました。「どちらもロボット作るのとはあんまり関係ないような・・・」とか「いやいや、破断面の金属組織を確認するのかも知れん」とか「YAGロッドの不純物や焼き付きの不具合を調べるのかも知れん、いやスラブレーザかも!」とか、色々想像して楽しみました。あ、別に揚げ足取ってる訳じゃないですよ、何気ないガジェットもプレイヤーによっては非常に楽しめるって意味です。総合的に見て、暫定版での期待が大き過ぎたせいで、完全版での番長シナリオが若干蛇足の様にも感じられるものの、きちっと完成したと言う意味でも十分傑作フリーソフトの冠が付くと思います。作者様、本当にご苦労様でした。
107ROOM NO.404紹介HPのスクリーンショットで、大変期待していたこの作品(HP自体は何故か消滅しています)。ようやく完成しましたね。独立した作品と思っていたのですが、実は前作DANGER ZONE2の続編のような位置付けです。と言う訳で、バイオハザード系のお話となっております。・・・と云うか、内容(展開)は前二作と全く同じなんですね。期待していただけに、私的には随分がっかりしました。でも、ツールが吉里吉里に移行したお陰で、使いこなせていない感じや、文字のズレは有る物の、前作に比べて飛躍的に操作性が上がり、純粋にゲームとして楽しめた気がします。結構ボリュームのある内容で、最後までやり終えてみると、「ふ〜む、そうか。」って感じで、前作のキャラの末路やら色々あったり、ルームNo.とは関係ない所で伏線が有るんだなと思ったりしました。エンディングはTRUE×1、ANOTHER×2or3(忘れた)、BAD×無数、と思われます。最後の最後にメリーさんが出てきてちょっと怪談ぽくはなっていますが、基本的にそういうのとは非常に縁遠い作品でした。作者様は企業や政府の陰謀とか、日記とかがやたらお好きなようですが、オリジナリティとか、リアリティとかはどうなんでしょうか?(天然物化学がよく出てきますが、懐かしいです。一時期、Fine chemicalのせいではやりましたよね。スクアレン、スクアラン・・・、ステロイド系誘導体はテストに出るんで覚えさせられましたから今でも覚えてますよ。教えてくれた先生の(陰の)あだ名は"テルペン"でした。)ま、会社名からしてオィオィ、てな訳ですからそんな事言ってもしょうがないんですが・・・。そんな会社に入社した時点で、終わってる訳ですか、そうですか。でも、あんまり現実感が無さ過ぎるとこの作品みたいに、完全に醒めてしまって、物語に入り込めないんですよね、ホラーと思って馬鹿にせず、最低限のリアリティは追求して戴きたいものです。あの人が実写だったり、エンディングテーマがあったりと色々驚かされたし、音楽とか効果音とか、背景(スプラッタ以外)は雰囲気を盛り立てて良かったんですけど、肝心のお話が単純ゆえに残念。タイトルと内容がどうもしっくり来ないんですが、これは作ってるうちに「ちんぷおばけ」が降りてきて、いつの間にか前作とそっくりになり、仕方なくこじつけたのか、それとも私が読みきれていないのか・・・。最後に、「いつまでも忘れないvol.2」の予告があったので、そちらに期待しています。こちらの作品は結構気に入っているのですが、あの話で続編てどういう事?学園生活の日常とか、友美の心の葛藤を綴るのでしょうか?・・・どうやってドラマを発生するのかに期待です。
108月葬の城女性向け分岐ノベルです。女性向けではありますが、男性も十分楽しめると思います。それは、女性向けのノベルっぽく無いと言う意味ではなく、むしろ真に面白い女性向けノベルを目指した結果、良質のノベルが出来たって事だと思います。記憶を無くした聖女である主人公が、訳あって修道院から、自分がかつて暮らしていたお城にやってくる所から始まり、そこに住む人たちから自分の過去を聞きつつ、何故自分が城を去っていったのかを探る物語です。エンディングはTrue end×1、Bad end×2、二回Badを見るとヒントが出ます。そんなに考える事も無いくらい、素直な分岐なので詰まる事は無いと思いますが、同じ様な事を二回聞かれた時は要注意です。特に立ち絵が綺麗ですが、ストーリ展開も上手くて、徐々に読む人を惹きつけていきます。
109ずろうの棲処この作品はまだ前半だけの公開で、しかもまだ殆ど展開が読めない状態ですが、ホラーです。しかもかなり期待できます。音楽・音、演出、絵(セミプロ?)、シナリオ、全部唸らせる上手さがあり、此処に来てようやくLiveMakerのツールのポテンシャルを引き出せる器の大きいフリーソフトクリエイターが出てきたなーと思いました。とにかく良く動いてるんですが、立ち絵だけでなく、写真の加工も大変素晴らしく、ホラーとしても、(此処までは)全くホラーらしさを見せない明るいお話なのに、所々出てくるシーンは、グロとかビックリとかじゃなくて、精神的に来る怖さを感じさせる所があり、つくづく期待が膨らみます。早く、後半がプレイしたいです。作者の方は男性の様ですが、絵のやわらかさや、シナリオの感じが女性っぽく感じられ、女性向けノベルとは申しませんが、女性に受けそうなデザインですね。勝手な想像ですが、姉御肌の姉がいる弟って感じがします(大変てきとーな事を堂々と申しておりますが・・・)。もちろん男性も十分楽しめそうです。正式なレビューは後半をプレイし終わってからにします。
110ぼくとかのじょお盆の図書館で出会う二人の因縁の物語、非常に短い(10分くらい)ノベルです。一応ホラーというか、ファンタジックな、なかなか切ないお話でした(まあ、ベタかも知れんけど・・・)。エンディングは三つあり、Bad×1(@意味わからん)とGood×1(Aぼくとかのじょ)、True×1(Bなつのまぼろし)です。全部終わるとおまけシナリオがあります。私、最初のエンディングが@で、確かに意味わからんだったんですけど、Aを見た時、鳥肌が立ちました。これで終わってれば、神だったんですけど・・・、Bやって、あーあ、みなまで言っちゃった。ホントにね、Aで終わってれば「神」でしたよ。もうチョットAに情景描写的な説明要素(Bで説明されるような)を加えて、あの「すれ違い」のエンディングで終わってればと思うと残念です。音楽のチョイスとか、絵とかまだまだ発展途上ですけど、これからも頑張ってください。
111ですろり
体験版
一章第八話までの感想:ぐちゃぐちゃスプラッタ満載の分岐なし伝奇物ノベルです。「空の境界」の世界に、少女やら、メイドやら入り乱れてくる感じ。むげにん(無限の住人)みたいなのが出てるけど、あんなストイックな感じとはチョット違う、もっと媚びた絵の世界です。まだ途中までしか見てないけど、3話位までは苦痛で苦痛でしょうがなかったです。後半徐々に過去の因縁とか、伏線が絡み始めて、読者が物語の先を想像しながら読めるようになり、私のような者でも少し面白く感じられました。冗長な部分が目立ちますが、プロットとしては、その構成が十分理解できる、ちゃんとドラマを交えたお話です。ただ、絵と文章のちぐはぐさが度を越えてしまっている為、物語の魅力を半減させている様に思われます。体験版第二弾になって、登場人物の立ち絵が増えてる分、もうチョット文章上の登場人物の性格や雰囲気を立ち絵と統一してくれないと、何がなんだか分からなくなります。漫画もそうですが、主人公みたいな顔してる奴が、いっぱい居ると、幾らそいつらの内一人が主人公っぽい立ち回りをしていても、実は別の奴が主人公なんじゃないかと思ったり、読んでる人間は基本的視点をどこに据えるべきか混乱します。それと同じような事ですが、絵から想像される人間性が文章と違うんです(男性陣もですがむしろ女性陣についての指摘です)。文章的には、幅広い人間性の表現を要求しているのに、立ち絵の描き分けが甘くて、その人間性を表現できて無い感じですね。背景も見慣れた複数素材を多用している為、統一感が無いし、無意味に素材単独のカットを交えられても、演出としての必然性を感じられません(適切に加工してあればOKですが)。ま、40話まで続くそうなので、完成度はどんどん高くなって行くとは思いますが・・・。個人的には既に相当長いと感じているし、しんどくてそんなに長く付き合えないと思うので、10話完結で勘弁して欲しいです。今後に期待しています。
一章完結後の感想:なんだかんだ言って、最後まで読んでしまいました。正直、結構面白かった。途中、何度か居眠りしてしまいましたが、初期の頃に比べて相当集中して読めたと思います。その理由は、区切りが適切で文章が読みやすかったのと、物語がクライマックスに近づき展開への期待感が高まったからではないかと自己分析しています。眠いのは、つまんないカットが何度も出てくるのと、冗長な心理描写や会話、オタクネタが出てくるからだと思います。まず今回(9話、10話)の展開ですが、あらゆる場面でプレイヤーの予想を裏切ってくれました。穿ってみてても、このミスリーディングにはなかなか気付かないのではないでしょうか。確かに荒唐無稽だから先の推測なんて無意味と思われがちですが、その前にちゃんと伏線を張って、後でプレイヤーに気付かせる仕掛けが随所に見られます。その辺は巧妙でしたね(リンとかの伏線は回収されてない気も)。後になるほど激しくなるどんでん返しの連続は、結構楽しませてくれました。その一方で、うーん絵はなぁ・・・、これは若干の努力は認められる物の、完成度といい、使い方といい、低迷したまま完結したのが返す返す残念。立絵の追加されたキャラも居るんですが、これまたミスマッチ。これワザとやってるところも有るんでしょうが、殆どはいいかげんにやってる様にしか見えない。肝心な所の立絵やイベント絵が無かったりする事から考えて見ても、圧倒的に枚数が足りてないんじゃないでしょうか?(文章主導だからかな?)最後に、二章へのブリッヂが有りましたが、これはなかなか上手かったですね。しかし、全四章立てで、全40話。この大風呂敷、完結するのは奇跡的な「チカラ」が必要かも。最後に、先行軽量版にVoiceが無かったのは非常に良かった。それと、かなり色々な部分にembeddedされていたFlashは能動的でなかなかでした。でも、クリックの反応が悪いのが気になりましたが。
112紅刻の唄
第零話
 前世での因縁か、二人の少女達の出会いと引き裂かれる運命を描いた伝奇物ノベルです。演出的にはホラーな部分があるような気がします。第零話は分岐なしで、読み進めるだけですが結構ボリュームが有りました。この作品結構古いんですが、私がのろまなもんで、ようやく読み終えました。DLしてから多分一年半経ってます。
 主人公とヒロイン(?)達は、非情なまでに親子の縁が薄い気がするのですが、実際の所こういう子供を持った親の気持ちってどうなんでしょうね。正直、全く想像できません。作品の中では現実離れした表現で扱われていますが、罪を犯した子供の親とか近い物が有る様な気がします。そんな親子関係の中で、精神的なより所を似た境遇の他人に依存するようになるのは、至極納得いく所で・・・と言うように、心情描写や、舞台背景の描き方が細やかな分、作品世界へ入り込み易いのがこの作品の良いところかもしれません。
 紅葉と瑞貴が事に及んで眠った後の展開が凄く気に入ってます。急に雰囲気が変わり、物語の本筋にぐっと引き込むような緊迫感と、絵と音楽の演出が私敵に壺です。  社のシーンは、「魔界復活」を彷彿とさせ、ものすごくウキウキしました。この時の「怨」というBGMは、和太鼓と尺八の音源を使用した純和風なありがちな感じですが、物語の展開と、背景にぴったり合っていて、緊迫感が煽られて素晴らしかったです。
 絵はそれ程枚数が多いとは云えませんが、安定した作画力で描かれており、たまに全身が出てくると若干デッサンが崩れますが、全体的には綺麗で背景の統一感も非常に良いと思われます。
 現在、第二話の製作がペンディングのようですが、是非頑張って続けて戴きたいと思います。
 その前に私は第一話をやり終えねば。(いつまで掛かるか分かりませんが・・・)
113ゆうとっぷ非常に楽しくて、でもとても切ない幽霊物(幽体離脱物)の長編恋愛ノベルです(この分野では、Moon・・・とか、Call・・・なんかがあります)。主人公がクラスメイトを助けて事故に遭い、幽体離脱するお話です。そこで出会った幽霊の少女と現世を浮遊するお話です。一本道では有りませんが、一週目には到達できるEDは一個しかないようです。二週目以降、更に二つのEDを見る事が出来ます。また、EDを見る度に新たなおまけストーリが発生する仕組みです。まず、プラットフォームがLiveMakerな訳ですが、せっかくのアクティブな演出効果は、全く使用されていません(まあ、この作品が少し古いって事も有りますが・・・、これもDLしてから長い事寝かせてた私が悪いのか)。スタート画面も、トランジションもデフォルトのまま、背景も素材です。LiveMakerでありながら、Yuuki!でプレイしている錯覚を起こしそうです。当然、立ち絵も素材かと思いきや、ちゃんと作者様自ら書いてらっしゃるようです。一見すると手抜きと思われるような立ち絵ですが、読み進めるうちにぐんぐんお話に吸い込まれていって、気が付くと、立ち絵と性格がぴたっと一致する様になります。細かい表情のバリエーションが登場人物ごとに個性があり、その表情から性格が表される感じです。悪友は悪友らしく、委員長は委員長らしく、でもどこにでも居る型どおりの人間じゃない、生身の個性を感じさせる書き分けの上手さは、この作者の実力の高さを感じさせます。そして、何といってもこの作品の魅力は、読みやすさ、文章の上手さ。普通のノベルゲームと比べると、明らかに、文章があっさりしています。モノローグや説明的表現は極力抑えられ、逆にストーリの展開が人物の会話によって成り立っています。そして、その事を生かした、上手い伏線の散らし方、上手いお約束の落とし方。全く、油断なりません、どうしても思わず笑ってしまいます、その後泣いてしまいます。例えがよく有りませんが、高橋留美子の漫画を読んでいるような、狡賢いノリの上手さがあります。主人公やヒロイン、家族、クラスメイトたち、皆魅力的ですが、私は鈴木が壺ですね。身近に居そうで居ない。凄くいい味出してるけど、扱いがぞんざい、でもいい奴。特におまけシナリオで、「やるなコイツ!」って所を見せてくれます。ただ、母親の台詞には「え?!」と思う事が有りましたし、家族ばらばらで死ぬより、家族皆、交通事故で死んじゃう方が幸せそうに見えるのは、色々考えさせられる所ですが、これも読み手の受け取り方次第と思いますし、作品の深みかも知れません。この人の構成の上手さで推理物やったら凄いだろうな・・・。
114夢現の唄
(DL)
和風伝奇物ノベルです。鬼が居たり、術師がいたり、舞台は昔の日本ですね。ワケ有りの飢餓少年が行き倒れていたのを、大人の居ない家に住む少年たちに助けられて、その家で過ごす内に魔物に襲撃され、鬼がやってくるお話です。EDは各脇キャラ毎に三つです。唐突な感じで始まりいじめられ、訳の分からぬままに助けられ、迷惑かけまいと出て行こうとするそんな主人公にプレイヤーは阻害感です。読み終わってある程度事情が分かっても、「何がしたいねん」という感想しか沸かず、きっとこれには深いバックストーリーがと思って、HPを見に行くも、閉鎖or紹介無しと言う状況で、「そんな筈は」と思い公開日を確認した所、随分昔の作品である事に気が付きました。結局、自分が一番悪い。でも、選択肢も、EDもそれ自体にあまり意味が無く、分岐で何かが分かるような事も無く、不可解です。やはり、何をしたいのかよく分かりませんでした。できれば、「これを書きたい(見せたい)んだ」っていうのを持って作品作りをして欲しいものです。不可
115学校夜話
体験版
学校怪談ノベルの体験版です。二次創作という事で、お話の作りはちゃんとしており、体験版なのにちゃんと三話で落ちが付いています。コンパクトで、雰囲気もなかなか好みなのですが、何か物足りない印象を受けます。LiveMakerなのに動きに乏しい事が、少し残念です
116月のない路伝奇物の一種ですね。学校が舞台だったり、廃墟が舞台だったり、両刀恋愛物だったりしますが、基本的に一本道のノベルです、1回やればお腹いっぱい。主人公達四人が親の都合で能力者にされ、記憶まで消されてました。というのが序盤の話。なんで?どうして?っていうところから、「科学者ゾーンダイク」みたいなのがでてきて、ああ、四人の運命や如何に?というストーリです。この作品は、立ち絵が影絵な訳ですが、かまいたみたいなシルエットと言うよりは、アニメ絵のマスク画像なんですね。それが、独自性なんですが、必然性があまり感じられないですね。自信が無い訳では無さそうなのに残念です。キャラには感情移入できませんでした。特に、敵方の異能者二人は最悪ですね。あっさりキメラにされちゃった時も、「あっ、そう。」って感じです。妹キャラについても同じ、「かわいそうだよ」とか言われても、「あっ、そう。」って感じです。キャンプが理科室と言うのもなんだか。飯抜きで何日も廃墟の中をうろついていたのかと思うと、ぞっとします。あーRPGじゃないですよ、これノベルの話ですから。とは言え、普通に楽しみました。続編も一応手をつけて見ようかなと思ってます。
117homeless, the vagabond青春旅情宿無恋愛ノベルとでも申しましょうか、バーをはしごする流しの主人公が、行きずりの女性達と共に意気投合して、3人で演奏しながら全国行脚するお話です。選択肢が数個用意されており、私は未だコンプしてませんが、複数のエンディングが有る様です。私が読んだ時点では、公開されているのは体験版という事で、一章のみプレイできます。それでも、オープニングとしては完結しており、長さ的にも十分読み応えがあります。説明を見る限り、完成してもフリーという事だと思います。システムには特に言う事が無いのですが、なかなかセンスの良いFLASHを埋め込んである事が特徴的ですね。かなり話が進んだ所で出てくるんですが、オープニングと言う位置付けの様ですので、「此処までがプロローグ?」って言うくらい、先の長さに気が遠くなりそうでした。しかもその最後で記憶喪失になる所も、面白い展開です。これによって、脇のキャラに一挙に成長して貰う思惑があるのかも知れません。そのままだったら、主人公のキャラが強すぎて脇キャラが依存しまくりで、つまんなかったかもしれませんね。この話は、音楽や人生の楽しみ方をテーマにした、純粋な恋愛ノベルな訳で、ギャルゲの如きご都合主義的な展開は幾つもありますが、演奏旅行を具体的に表現するリアリティには素直に感心しました。そういえば昔、知り合いの路上演奏者が同じ様な事を言ってたなあと思ったりする事度々。また、文章は読みやすく、登場人物達もちゃんと息をしており、それなりに感情移入できる良質のノベルです。これ読んでると、電車のシーンや野宿のシーンがよく出てきますが、北海道を青春十八切符で旅していた頃の事を思い出します。丁度、同じ年頃だったし、人生にはこういう時間が必要だよね。束の間ですが、音楽マンセーなパラノイアに浸ってみたり、刹那的なセイシュンの純粋さに触れる事で、忘れちゃってる人達にも、世界が少しだけ輝いて見えるかも知れませんよ。
118彼岸と翳りし和風ホラーサウンドノベルと聞いてやってみました。ストーリは有って無い様な物ですが、夜中二時に同僚の女性に電話で起こされて、来いと言うので会いに行くと居ないと言うお話です。とても短いのでサラッと終わります。選択肢は三つ、分岐点は四つ、エンディングは八つです。二番のエンディングを見るには、幾つかの条件が必要です。分岐の或る選択条件、半か丁かの運、ノベルそのものと関係無いフラグ(怪談っぽいフラグだよね)の三つです(結構厳しいです)。八番のエンディング(一応ハッピーなTrueEnd)は二番のエンディングがフラグになって、或る選択肢が追加され、それを選択する事が一つの条件となっています。一回クリアすると、ランダムでオープニングの映像(ニ種類)が変わるようになります。写真が非常に綺麗なのですが、途中で出てきた廃墟は有名な心霊スポットで、激しく見覚えがあります。実際にその場所に行かれて撮影されたそうです。BGMにはエリックサティを使われており、オーソドックスではありますが良く合っています。演出や効果音の使い方、タイトルのデザインも素晴らしく、いい雰囲気に仕上がっています。しかしながら、吉里吉里の扱いに慣れていないのか、プレイヤへの配慮が欠けています。ラベルが少ない為、セーブポイントの間隔が広すぎる事や、早送りすると、二つ目の選択肢でハングアップする等、他人にテストプレイして貰えば直ぐに分かるような不具合が目に付きます。雰囲気はそのままで、もうチョットシステム面に気を配り、選択肢の内容がストーリ展開に矛盾しないような、もう少し長めのプロットを組むと、結構良い物が出来そうな気がします。
119欠伸を噛み殺して今日も仕事短編ノベルです。分岐なし、数分で読み終わります。内容は、サラリーマンの主人公が忙しい日常に疲れ、フリータな夢を見ると言うお話です。何の演出も無い、そっけないお話ではありますが、短くまとめてあって、言いたい事ははっきりしており、普通に抵抗無くサラッと読めてしまいます。ただこれって、共感を呼ぶようなお話に仕上げてあるつもりなんでしょうか?少なくとも私は、共感できませんでした。この主人公の部下への叱り方、役職者教育に出てくるやってはいけない事例そのままです。しかも、何故やってはいけないか、本人も理解できていない。営業関係の職場ではこういうの有るのかもしれませんが、比較的若い人間に見られる、この撒き散らしは読んでいて気分が悪くなりました。これを読んで、これがまあ普通かなと思った人は、かなり危険です。「これやっちゃまずいんだよな。」って感じたなら、まあ大丈夫。そして、最後の結論ぽい所とか、恐ろしい勘違いと思いました。これそのまま鵜呑みにする人は居ないと思うけど、逆説的に訴えたい事が有るなら主人公にあれほど自信たっぷりに喋らせる事は無かったと思います。最後の英文も意味不明だし。不可
120純、残留思念-雑念思考殆ど独白のみの、短編ノベルです。読んだ後の偽り無き感想は、「高校生の文芸部が書く小説に挿絵と音を付けて吉里吉里にしたらこんな感じ」でした。エンディングまで10分です。内容は、サラリーマンの主人公が、爆破事件で無くなった友人に思いを巡らすというものです。二人とも内向的で、厭世的に見えます。複雑な心情を表現しようとしている様ですが、短編なので表現が簡潔なためか、伝わりにくく、主人公だけが勝手に浸っているだけで、感情移入しにくい作品になっています。また設定そのものもよく分かりません。「テロリストを雇う」とはどういう意味でしょうか?この友達は、オサマビンラディンみたいな存在ですか、文章から伝わってきませんが・・・。挿絵のデザインそのものは好感が持てますが、演出に関しては改善の余地が多いように思います。ビルの爆破とか、夜明けとか、西からの風とか、文章と絵の表現がちぐはぐで違和感を感じる事しばしば。選択肢も一箇所有りますが、この存在も意図が不明です。でも音楽は、素材ではありますが、作品を壊さない選曲でした。この作品、難解でわからない事は沢山在るのですが、特に一番気になったのは、「名刺」です。『あ、もし不振な奴を見たらすぐにこの名紙へ連絡してくれ』と言う台詞、この名刺へ連絡してくれ・・・という台詞自体がよく考えると変ですが(もちろん、設定で名刺が通信機になっている可能性は否定し切れませんが)、「不審」の誤字は変換ミスとして十分理解できるものの、「名紙」です、普通ありあえません。何故、あえて名刺ではないかは、よく考えると深いです。メイシは紙で出来てるから名紙で良いのでは、と思う人も居るかもしれませんが、元々中国で始まった名刺の原型は紙ではなく竹札だったそうです。紙が一般的になる前から、名刺が存在するのは凄いですが、この作者様がワザとこれをやっているとは思えませんが、何か意図したものが有るならそれはなんだろう?等としょうも無い事を考えるのはやめましょう。不可
121願えばきっと……。これも短編のサウンドノベルです。病室で出会い、主人公が退院する事で離れ離れになってしまった二人(というか三人かな)の、10分かからない位の切ないお話。素材ですが、ピアノのBGMが凄く良いです。背景も縦PANがあったり、Nスクにしては結構頑張ってますし、立ち絵も数は少ない物のおしゃれだし、なかなか魅力的な絵柄だと思いました(骨盤の開き具合が何とも気にはなりますが)。欲を言えば、もう少し表情があっても良いかなと思います。特に主人公の顔はなんとなく内面が読めなくて怖い。画面のスプリットの仕方や、文字スクロールセクションの位置は独特で面白いし、なかなか画面をうまく使っているなと感じました。全体的な雰囲気は「感動系」と銘打つに値する切なさがよく出ていたと思いますが、細かい所では、タイトルとストーリがしっくり来ない事や、ヒロインと主人公が出会うシーンの都合の良さ(ストーカ?)、起動画面のメニューセレクトが見難い等、気になるところが幾つかありました。これはこれで、ノベルを作りたいって言う意識がはっきりしていて良いのですが、格好に拘るあまり、むしろシナリオの粗が目に付くので、短くても登場人物達の心情を丁寧に書いて頂きたいと思います。特に主人公は魂が抜けている様に思えます。※HP消滅
122黒の時 -葉月-仲間数人で山に入って道に迷い、たどり着いた廃村には人はおらず、黒い染みが・・・。病魔に冒されつつ、三日間を過ごすホラーノベルです、長さは中位(2時間程度?)、分岐もあり、GoodEnd1個、BadEnd5個有ります。病気の原因とか、先生の死因(これはなんとなく推測がたつ)とか、記憶の云々などわからない事は沢山有りました。まだ完全に終わってないので、読みきれていない部分が有るのかも知れません。序盤は、読みづらくて苦痛だったんですが、徐々に慣れていき、後半は結構面白いかも、と思うようになりました。しかし、もう少しドラマチックな展開とか、どんでん返しとかを期待していただけに、GoodEndを見て、落胆しました。システムについて、色々言い訳しているように聞こえるんですが、もう少し何とかならないかと素直に思います。正直、プレイヤーに親切な設計とは思えません。多分、コミックプレイヤ以下です。ただ、病魔に冒されていく絵的な表現はなかなか良かったです。服まで変色するのは何となく違和感が有りましたが。
123常世の星空中位の長さ(一時間位)の分岐無し、一本道ノベルです。幽霊や死神が出てきたりするのでホラーの要素も有るのかも知れませんが、全体的にはファンタジーと言えます。でも主人公は明らかに異能者なので、伝奇物かもしれません。姉と二人暮ししている主人公は家事が得意のクールな高校生、ある夕暮れ、公園でアルビノのツンデレ少女と出会い、その日から四日間不思議な交流が続きます。少女の秘密が明かされ、命の選択を迫られた主人公は・・・。
作者の方は一人で作られているそうですが、絵もお話もたいそう良く出来ており、はっきり言って、結構良質のノベルだと思います。確かに、オーソドックスな展開ですが、ぐじゃぐじゃモノローグや薀蓄を聞かされる普通のノベルと違い、会話のみでストーリが展開している点は非常に好感が持てるし、立ち絵の綺麗さや、顔絵の豊富さもあり、演出その物はかなりいい線行っているのではないでしょうか?主人公はチョット鼻につきますが、それはそれで理解できる性格ですし、ヒロインはツンデレのお約束で感情移入しやすい。姉は変わってるけど、そこはかとない弟への思いやりを感じます。そのあたりの演出には、メッセージに張り付いた顔の表情のバリエーションの多さが、一役買っていると言えます。面白いと思ったのは、登場人物の個性がある程度立っている為に、作者やヒロインが一生懸命、恋愛物っぽい展開にさせようと努力しているのに、主人公の性格がクールすぎてそれを拒否している様に感じられる所です。色々、謎が残っているような気もしますが、次回作への伏線と考えたいですね、とりあえずエピローグの続きは、HPで小説になっているようです。特に文句の付け様が無い完成度ですが、小説としての読後感が有るかといえば、それは薄い気がします。
124忘れものと落とし物長編サウンドノベルです。主人公が綴る日記と、断片的なシーンの積み重ねが、主人公とゲームセンターで出会った彼女との関係を結び付けていきます。そして、プレイヤー自身が、その展開を想像しながら、実はその物語の中に組み込まれている事に気付かないトリッキーなノベル、と言うか、これはもう推理小説そのものですね。ドグラマグラ。ストーリ展開については文句の付けようも、破綻した矛盾を指摘する事も適いません。それぐらいよく練ってあり、他に類を見ない熟成度です。惜しむらくは、何度も何度もしつこく繰り返されるトランジションです。間を取る意味で使ってるのは分かりますが、はっきり言って、「それはもう、いいよ!」て言うくらい、鬱陶しかった。性的に倒錯している様に感じられる所も有りましたが、「ノルウェイの森」程度の物です。独自のシステムという事で、妙なタイムラグや回想が見辛いという欠点は見られますが、概して悪くなかったと思います。ただ、エディタは何のために有るのかよく分かりませんでした。背景のチョイス、画面のデザインは奇抜な物もあり、なかなか工夫が見られるものの、演出と言う点においては、サウンドノベルが小説に挿絵と音が付いたもの、という規範を妙に意識した作りである事を強く感じました。日記等の小道具が何となく自由度を生み出しているようにも感じられますが、結局はただ選択させられているに過ぎないのです。同じようなシステムでも「cubic3」とは随分印象が違うなと感じました。ともあれ、小説を、特にサイコな推理小説を求める貴方には、満足の読後感が得られる一品です。
125聖夜ニ銃ヲ持ツ者割と短い、分岐無しのファンタジック感動サウンドノベル。美女サンタが毎年クリスマスとイブの二晩、民家に侵入し二丁拳銃で次々と住民を打ち抜く物語です。非常に馬鹿馬鹿しいテーマを、ここまでクールに、ドラマティックに、そして感動的に描ける脚本センスは秀逸です(褒めてるんですよ)。ノーマルのNスクで、特に凝った演出などは無く、背景、音楽も素材、全体的な完成度は低いと言わざるをえませんが、脚本のハードボイルドさ、涙をさそう切なさは飛びぬけていました。サンタが苦悩する理由をどうやって思い付いたのか、非凡な発想が素晴らしいです。
126女教師・美喜シリーズ三作品総集編をやってみました。短編影絵ノベルです。ノベルと言うか、パロディギャグ漫画みたいな物ですね。取り敢えず物凄い勢いで影絵が動きまくるのが本作の特徴で、吉里吉里ユーザがお手本とするところです。お話はあって無いようなものですが、女教師の主人公が、Mr.ベーターみたいな外人教師と共にエリート私立校に赴任して、規律第一主義教育に立ち向かう筋ですが、脚本と演出が凄い。腹が捩れるほど笑ったのはサウンドノベルでは初めてです。元の三部作では、一回ごとにジェンダーが生き返るのでそれ程笑えなかったかもしれませんが、総集編では次から次へと生き返ってくるので、壺でした。捨て台詞と共に、影絵が物凄い勢いで命を散らしていくので、ジェンダーの生き様にすっかり惚れました。しかも、遺言のイニシャル間違ってるし(G.フリーじゃないの?)。私の感想は、「愛など、いらぬ!」に集約されました。
127君の瞳はサンダーボルト殺人事件
〜太陽はまぶしい星〜

(DL)
女教師・美喜シリーズが面白かったのでやってみました。これも短編影絵ノベルです。こちらが元祖なのかもしれませんが、結構新鮮な感じがしました。ストーリはアホらしいのですが、みょーにシリアスなBGMとか、女教師シリーズほどでは有りませんが、影絵を使った演出が良い壺で、「僕は風だ!」のシーンは物凄いうけました。思い出し笑い出来る程です。こういうのは、やっぱりセンスが無いと出来ませんよね。普通に頑張ってもこういうのは作れない。普通じゃない人、が頑張らないでノリで作ると、きっとこういう良いのが出来るんではないかと。
128White Epilogue
1.20
1.40
結構ボリュームのある、分岐無し一本道サウンドノベルです。都市伝説を探る新聞部がそれに隠された連続殺人事件を暴くお話です。その筋と同時に、オカルトな話も進行しており、途中でひっくり返ります。そこでようやっと「はぁ?」っとなっていた、オープニングの意味がわかる様になりました。全部で4部構成になっており、一章が終わると、誰もが感じる感想は「●ッ△■・★☆▽かよ!」で、その種明かしの二章が始まります。でもプレイヤーの気持ちは、「おいおい、そんな事してる場合じゃないだろ」やっと三章で現実に戻り、はらはらどきどきの展開の中、ずっと気になっていた存在の種明しもあり、なんとかハッピー(?)エンド。その終わりかたに何故か、「ひ●○た」と「G●OS★」を連想する私(スミマセン、ネタバレになっちゃうんで)。四章は後日談ですが、本編より泣けました、羽入状態でした(「あぅwあぅww。ええ、話や」)この四章目にも意外な事実が在ったりして、最後までなかなか気の抜けない読後感の在るノベルでした。本編前半のぬるい展開で、何度も気絶した私ですが、二章以降は眠る事無く読みきりました。読み終わっても、わかんない事が幾つか。「ハバロア」って何?姉ちゃんはなんでどっか行っちゃうの?ほんで消えないの?等など、「White Prologue」って言うものに繋がってるんですかね、よく分かりません。それとは別に、犯人もハバロアの犠牲者でって説明が有りますが、これどういう事か分かりませんでした。特にこの犯人は心情を探る事が難しい性格をしているので、動機を考える上でこの定義不明の言葉が随分足枷になっているような気がします。作品中何度も犯人の心理を描写してくれているにも関わらず、イマイチ感情移入できない、リアルさが無い部分です。立ち絵については、表情が多くて良いと思いますが、胴体デッサンが狂っていたりもしますので、画力は低いと言えます。ですが二章以降、立ち絵が無い事に寂しさを感じましたから、作品の要素としては必要だったと思います。問題が多いのは背景ではないでしょうか?シーンと違いすぎる背景はチョット幾らなんでもという気はします。特に、工場。これはこのノベルに限った事では無いですが、家の中に館内の説明書きが有るのも何とかならないかなーと思ったりして。食堂もイメージと合わないです。最後に、これNスクなんですけど、メニューがLiveMakerそっくりなんですよ。最近こういう他のツールのギミックを入れるのがはやってるんでしょうか?※ver1.40より、背景に修正が入ったようですね。工場も下宿も写真が差し替えられています。工場のほうは、暗くなってよく分からなくなっただけの様な気もしますが、違和感は幾分改善されたかも。「これは一体なに?」って言う疑問は以前同様、消えないのですが・・・。下宿の方は、修正してアレという事は、あくまで旧居留地の洋館をイメージしなさいという事なんですね。それと全体的に背景を加工した様ですが、何故加工したのか?その加工が適切であったか?・・・どうかは別として、努力は感じるものの変わり映えしてない気がしました。やっぱり作品世界と素材の統一感って重要って事を再認識。
129Digital Things 主人公達が、PCにより生み出された生物やウイルスに犯された住民を倒しながら元凶に挑む、長編SFパニックAVGです。コマンド選択によってストーリが分岐します。一章進むごとにオートセーブなので攻略は大変。New Gameにして第一章に突入してしまうと、前の保存データは消滅してしまいます。従って、secretファイルのバックアップをお勧めします。特に重要な選択肢は、六章と八章に有り、TrueEndと思われるNo.5は十八章で終わります。この作品は1997年に公開ですから、ほぼ10年前な訳です。その頃、丁度この私のHPもスタート。当時、もちろんWin95ですし、PC-9821シリーズの200MHzのマシンを使用してレイトレーシングをやっていましたので、3Dモデリングの遅さ・大変さはよく分かっていますが、それでも本作のグラフィックデザインはチョット時代遅れな感じは拭えません。ノベル用ツールがまだ一般的になっていなかった当時ですので、システムがC++を使用して作られており、プログラマのウェイトが非常に高かった為か、現在と方向性が逆で、ゲームデザインが作り手に寄り過ぎており、プレイヤに不親切です。基本的にフルスクリーンでしか遊べない設計なのは、どのマシンでも同じパフォーマンスを実現する上で必要だった事は分かりますが、むしろ方向性は、当時のDOSベースAVGに向けて作られているように思えます。お話のプロットは大雑把ですがちゃんと纏まっており、主人公の心情は比較的丁寧に描写されています。しかし、読み物として十分な体裁を持っているにも関わらず、それ以外の要素が足をひっぱっていて・・・。この作品をプレイしてみて、自由にセーブできないとか、ログが読めないとか、色々ぶー垂れてしまいますけど、DOSソフトの時は文句言わずに十分楽しめてました。商業作品と比べてしまう事自体、ナンセンスでは有りますが、AVGにとって本当に重要な事って何だろうかと思ってしまいます。そういう目で見た時、この作品は何を伝えたかったんだろう?と思いました。とにもかくにも、荒削りなストーリ展開ではある物の、マルチエンディング、10年後の技術Forecastなど、非常に挑戦的な作品であった事は言うまでも無いでしょう。しかし、今日においてこの作品に魅力を感じる事は、少なくとも私には有りませんでした(一章読むごとに気絶、なかなか進まず・・・)。全ては時代遅れになってしまったのかもしれません。
130去人たち評価版の感想:分岐点一個の長編学園・刑事・オカルト・サイコ・ファンタジーノベルの評価版、二章分だけの公開ですがかなり読み応えたっぷりですし、各章は個別に完結しているように見えます。県内有数の進学校である膨雀高校には、内部の事件・不祥事を政治的に隠蔽する「舎密部」が秘密裏に存在する。そこの捜査課に属し、同校三年生として潜入している18歳(?)男子が主人公です。全体の雰囲気はクールでコミカルな刑事物なのですが、何故かその舞台は「閉じた学校」です。第一章「秋日狂想」は、ファンタジックでオカルトチックな展開、幻想的な少女と連続殺人の謎を主人公が追います。第二章「残秋挽歌」は、演劇部部長の女子にまつわるサイコなストーリです。第二章には分岐があり、この選択でその後のストーリはかなり大きく変わります。これ分割リリースだそうですが、この後の展開はフラグが引き継がれるのでしょうか?この点は全体の流れに関係しそうなので気になる所です。
 β版をやっていないので、少々知識不足ではありますが私なりに所感を述べさせて貰いますと、評価版の展開はワンクールで言うと、第5話と6話位の内容では無いでしょうか。割と唐突に始まっているので、プロローグと呼ぶには違和感が有ります。両方とも捜査課の日常業務の中の事件の一つと言う感じですが、それでも二章は新たなメンバーの加入(?)や、容疑者の草薙素子化(もしくは四方田千砂化)があり、この容疑者は今後も展開に影響を与える気がしているので、そういう意味ではブリッジ的な重要性を持ったお話かもしれませんネ。異能者が出てくる訳では無いので伝奇物と違いますが、シリーズ物の体裁を持っている所、全体的な謎や方向性が提示されていない所は「茜町」に似ている気もしますし、文章のノリもクールな感じです(「飛び降りるなら手伝うぞ」という台詞は割りと好き。叙情性と理系チックな小難しさでこのニ作はだいぶ文章が異なりますが・・・)方向性については、多分これから発表される続編で明らかにされてくるのだろうと思います。数少ない伏線としては、「アリス」がストーリ上浮いているので、その正体がこれから何らかの形でシリーズの展開に絡んでいくのでしょうか。
 設定については、かなりしっかりしたプロットを作られているようなので深みがあって読むのも非常に楽しく(最初チョット眠かったですが)、登場人物はちゃんと息をしている様に見えます。ただ、難解な表現や、理解できない展開も幾つか有ったように思います。他にも気になる事が幾つか、例えば主人公は高校三年生ですが奥さんが居るようですし、考え方も変に世間擦れしています。また主人公は部長と呼ばれていますが、実際は課長です、これって荒巻のパロ?それとも山岳部の部長って意味?どうでも良い事ですが、翠子はツンデレ?等など。
 デモやタイトル画面、セーブ画面などはフラッシュかと思うような美しい表現なのですが、システムはオリジナルで、D言語(D言語による汎用ゲームSDK)により作られているそうです。しかしながらオリジナルにありがちな、プレイヤーへの配慮の欠如は今の所欠点と言わざる終えません。まず、ログが読めず、ホイールを回すと画面が明るくなったり暗くなったりします。セーブも三個しか有りません、しかしこれは殆ど選択肢が無いので今の所大きな問題とはいえません。ボイスをオフにしてエンディングを迎えると、エンディングテーマが流れなくなり、ハングアップしたのかと思いました。早送りのキーが無い上、長押しが利かないので、リターンキーを連打しなくてはならず非常に不便。選択肢でセーブも出来ません。これらの点は、是非完全版で改善されればいいなぁと思っています。絵は結構好きな絵柄では有りますが、塗りがチョット雑な感じや表情に乏しいのが残念(元々は影絵だったようです)。音楽はかなり良かったと思います、特に演出への使われ方が良く、音量も演出効果ばっちりです。ボイスは正直目新しさを感じませんでした。シナリオは小難しい表現(まあ、これもオリジナリティですが)が鼻につくものの、テンポよく読めます。特に台詞が詩の様に美しく、私はつい音読してしまいました。
 いろんな意味で高い理想を掲げてそれに向かって作られているのを感じて、大変感銘を受けました。伏線が無いためGTY程続きが気になるという事は無いのですが、続編は気長に待って必ずやります。最後に、このゲームのフォントって、ひらがなをゴシックで漢字を明朝体で表示するんですけど、違和感無いのが不思議。
完全版Iの感想:なるほど、ありすはそういう事だったんですね。でもタツヲや翠子までそう来るとは思いませんでした。こうやって読み終わってみると、前半に違和感を感じていた数々の設定が全て都合よく創られた物で有るとすれば納得・・・いや、いや、騙されてはイカン。前半と打って変わっての激しいバイオレンスに、段々荒唐無稽な印象を受けつつも、ゴリゴリと読み続ける事数時間、ようやく全部のエンディングをクリアしました。何かチョット疲れた・・・。
 その原因の殆どは読みにくさに有る気がします。とにかく誤字の多い事には閉口。スタッフの人達は、書きっぱなしで読み返していないのでしょうか・・・。
 少し誤字がある位は愛嬌ですよ、私なんかとても人の事なんて言えませんし。でもこうまで多いと、すらすら読めないですよ。改行も少ないし(人の事は言えんか・・・)。
 漢字もね、読み辛いのを使うのは文章スタイルとしてカッコいいのはわかりますが、・・・読めますけど読み辛いんです。全体的に実験的作品という事で、こういう部分も実験の内なのかも知れませんが、読者が読む時の事を考えないで、勢いで書いちゃってるような気がするんですよね。そこだけでも改善されればかなりの人がたっぷり去人たちの思いに浸れて楽しめるのに、凄い残念です。
 改善されて良かったなと思うのはログが読みやすくなった事です。先ず最初にホイールを回して、画面が暗くならない事を確認しましたから。全ての機能はツールを使う事で容易に達成されるのにあえて自作に拘るのは、この作品がまず、システムありきで作られているからかもしれませんね。そうでなければ、ただのノベルにこれ程のマシンスペックを要求し、リソース食いまくりでおまけに不安定でちょくちょく強制終了するシステムを使い続ける意味がありません。
 実験的なのは特にシステムの勉強と言う意味で強い印象を受けます。逆に言えば、ストーリは二の次って事なのかもしれませんが、ストーリ自体はシステムよりはるかにハイスペックである点が何とも皮肉。ツールで展開してくれればもっと完成度が上がると思うのは私だけでしょうか。
 完全版Uではこの完結した話がどのように展開するのか楽しみです。日常のエピソードを断片的にぶら下げていくのでしょうか。それはそれで分割リリースとしては斬新かも。
完全版Uβの感想:βですが、最後までちゃんとプレイできました。良かった、いや去人たちそのものがね。結局、完全版Iに対するこれはメタフィクションだったのか、・・・いや、逆か。完全版Iがメタフィクションなんだ。今回の完全版Uでは、「精神病十種」「仮構のひと」「去人たち」の三つのシナリオをプレイできます。完全版Iで「始衷終と少女」「終末事端」を二つの大きな流れの結末と考えると、「去人たち」はそれらに並び立つ第三の流れの結末となっています。・・・Sequence Diagramを凝視してしまうよなぁ。結局作者達が、去人たちで何を描きたかったのか、はっきりと把握できなかったのですが、書かれている物自体が衝撃的であったことは間違いなかったと思えます。特に「去人たち」は凄かった。何となく自分までもが狂気に飲み込まれそうな勢いがありました。雰囲気だけで言えば「秋日狂想」「残秋挽歌」が良かったのですが、引き込まれたかどうかで言えば「去人たち」と他の二つの結末のシナリオは集中しすぎて目が痛くなりました。読みやすさやユーザビリティって事になると、問題多すぎですが、それでも以前に比べると格段に良くなったと思います、履歴閲覧が調子悪いままだったけど・・・。演出は凄かった、正直今まで、吉里吉里でやって欲しいと言う気持ちが強かったけど、エンディングやタイトル表示の演出は、さすがオリジナルと言う気がしました。表現方法と言う意味では無限の自由度があるんだ、という気概が感じられました。まあ吉里吉里でもマクロ組めば出来るんでしょうけどね。残念だったのは、セーブ画面に前みたいに動きが無かった事(完全版Iのあれは美しかった)。音楽は本当に良かった、惚れた。私は、あの忙しいエンディングに神経衰弱。読みたいのに打たないといけない、打ってたら読めない。このジレンマを狙ってる?でもスコア気にしなければ連打で一応全部読めるみたいですね。とりあえず二回目で8000点は超えた。今は20976点(軽度)、コツはドラムに合わせればいいんですね。ぱらっぱらっぱーみたい。(二重の意味で)今までで最も難しいノベルだ。★追記:終に54000超えた(中軽度)。なんか、ホワイトフェードの時に、にちのさんの絵が見える。見覚えの無いキャラだ。★更に追記:75000超えて重度到達。絵がはっきりと見える様になりました。こ、これは・・・続編なのか、アナザーストーリなのか。ムービーも有るそうですが見れないよう!★2007.12.25:この嬉しさをなんと伝えれば良いのだろう。ムービー見れた!かっちょ良い映像!極度も達成した!そん時何点だったか忘れてしまうくらい嬉しい。サンタさん有難う!
131TRUE REMEMBRANCE
-remake-
世の中には、酔っ払って記憶を失くしたり、ショックで記憶喪失になる人も居ますが、自らの意思で記憶を失った人達にとって、その「記憶」とはどんなに悲しい出来事でしょう?人生が記憶によって成るのなら、忘れられないその一部を引き換えにしなくては、生きて行けない程の悲しみでしょうか?主人公は封士として、人の記憶をほぼ消し去る事を生業としています。その主人公の許へやってきたお客様は、17歳の少女「ラ」。口下手な彼女ですが、治療の為の彼女との生活の中で、頑な主人公の心も少しずつ癒されるようでした。お話の中で、主人公と「ラ」が出会う人達は皆、心に悲しみと優しさを持ち、どこか不完全で不器用に見えます。封士の学校の鬼教官が、引退後にアルツハイマーになっているのはどこか皮肉っぽいですが、その姿が以前と正反対に穏やかで、平和な事は人にとって記憶とは何なのか考えさせられます。愛情深い両親を捨てて来たばかりに、その自責の念から逆に彼らを悪者にしてしまう女性。自分に自信が持てない故に、人生全てを否定してしまう少年。自分の耐え切れない悲しみを他人に転嫁しようとして、結果的に彼女への愛情で癒される老人。人生は色とりどりで、容易く正解など得られず、気まぐれだけど、本当はとても純粋なのかも知れないとこの作品を読んで思いました。作品完成度の観点から、これはもう文句なしに立ち上がって拍手ですね。コミックメーカだった時に敬遠した私が馬鹿でした。この吉里吉里でのリメイク版は、オープニングアニメーション、テーマソング付きです。もちろん、よくありがちな作品を壊すような物ではなく、しっとりした本編にもよく有っています。また豊富な立ち絵とイベント絵は、全身以外なら、高い作画力で描かれており、キャラの性格と表情がよく一致して、美しくも非常に人間臭く表現されています。特に「ラ」はオリジナリティのあるポーズが多いにも関わらず、非常に魅力的で可愛く描かれています。動きのある絵では有りませんが、表情からキャラの内面が窺えるほど演出も素晴らしい。日常生活の中のキャラ芝居をさせるのが本当に上手いなと感心するばかり。各章の最初と最後の演出手法も素敵です。この作品は一本道のサウンドノベルですが、ノベル以上の何かを絶えず感じさせつつ最後まで飽きずに読ませ、ラストには主人公の「記憶」に感情移入して感動で一杯になれる、フリーノベル最高傑作の一つです。
132鴉の断音符鴉の視点から、人間の社会を眺め、意外な殺人事件の真相を探る、マルチエンディングのサウンドノベルです(選択肢固定と言う意味では、かなりAVG的)。8個の選択肢が6日間続くので48個のシナリオが存在します。エンディングは8個、サブエンディングと呼ばれるTipsの様なものは8個、全部で16個、コンプリート致しました。決して難しいという事は無いのですが、数が多いのでそれなりに時間は掛かりました。それなのにコンプしても何も無いのが、少し残念。エンディングによっては、事の真相が変わってしまう物があり、あくまでTrueEndは「#1」のみで、あとはアナザーストーリと考えるべきなのかもしれません。攻略のヒントは、readmeや作者様HPに公開されていますので、ある程度までは直ぐにリストを埋められますが、問題は#6と#14です。#6は寄り道するのが何時でどこなのか分からないのですが、状況を考えると痩せの刑事の方に関係している事が推測できます。従って、寄り道発生はかなり後の方という事になります。もう一つ言うと寄り道するのは「商店街」では有りません。#14の方は、太った刑事の性癖と関係しています。その話が聞ける所は何時の何処だったでしょう?それを聴いた上で、6日目にあそこに行けばいい訳です。コンプリートしても分からない事が幾つか有ります。ヒロインの母親と伯父の確執の原因や、伯父が悪事に染まった理由などは、それらしい事がちらほら話に出てくるのに、真相は分からずじまいでした。それから、納得できないと言うわけでは有りませんが、犯人達の心理状態もイマイチつかみ所が無く、殺人を犯してしまう根拠が弱いようにも思えます。それも、選択肢によっては整合性が取れていない事に原因が有る気がしています。それぞれは比較的短い話で、文章も上手くて読ませますので、軽い気持ちで推理小説として十分に遊べます。特に油絵チックな配色の立ち絵は、美しい上、渋めで非常に雰囲気に合っており、とても気に入りました。病室の背景が明らかにホテルの素材なのは違和感が有りましたが、加工自体は作品によく合っており、音楽もあわせて、全体的な統一感のある、それなりに完成度の高いノベルです。
133黒の時 〜長月〜短編ホラーノベルです。前作とは全く違って、純粋な幽霊物になっています。筋は、「ぼくとかのじょ」と同じですが、ホラーとしての効果はなかなか良かったです。前作と比べると、そういった演出面や、セーブの操作性が上がった事はかなり評価できると思います。一方で、かたくなに自作のシステムに拘り続けている事には、一読者として不満を感じます。ログや読み飛ばし機能の無い事の理由として、臨場感を挙げてらっしゃいますが、余程文章に自信が有るようですけど、同じ文章を何度も読まされる苦痛はいかほどの物か。読者に想像力を求めるなら、読者に対しても想像力を持って頂きたいですね。実際はどうあれ、このシステムで既読スキップの機能を付けるのは無理だという事なら理解出来ますけど。とても双方にメリットが有るとは思えないです。せめてキーの長押し位は欲しい。
134Bisque Doll主人公達が買い物の帰りに洋館に迷い込む、ホラー恋愛サウンドノベルという事で、洋館人形物の老舗ノベルの一つ。無数のBadEndと、二つのGoodEndがあります。オカルト値の上げ方がポイントですね。足掛け、二年。どうしても涼香エンド(こっちがTrueEndだと思う)だけ攻略できなくて、ずうっと前に諦めて投げてました。結構、色々なフラグが有り、更にどうでも良い様な選択肢が変数に影響するので厳しかったです。結構苦労してやっつけて、「やった!」と思っても、後一歩の所で変数の値が足りてなくてBadEndだったり、かなり意地悪なルートでした。秋音ルートは全然素直だったんですが・・・。オカルト値の上げ方の一つは、霊障を受けるという事ですね。積極的にやばい物に手を出すという事です。でも、涼香の忠告には素直に従い、どの様な仕打ちも甘んじて受け入れねばなりません。もちろん気分を害するような事はイケマセン。はっきり言って、殆ど全ての選択肢に正解を出さないと満足いく結果にならない気がします(実際はそうでもないんだけど、かといって余裕もあまり無い)。影絵も背景もあっさりしていて、おまけにストーリも全然怖くないんだけど、なかなかGoodEndにならなくてハマった・・・。一々文字が消えたり出たり、オープニングが飛ばせない等、繰り返しプレイはイライラが募るばかり。何故か声が付いているのは驚いたけど、それが故にホラーっぽさが無くなっちゃってる気もします。全体的にコミカルな感じの、あまり抑揚の無いのっぺりとしたノベルでした。
135さよならのかわりに湖底に沈み行く山村で、さよならの替わりに何をするか(どこにするか)でエンディングが変わる1選択肢、2エンディングのさりげない短編恋愛サウンドノベルです。セーブは有りませんが、数十分で読み終わるので、文章に抵抗感が無ければ問題なく楽しめると思います。私はこの文章、結構合ってるみたいで、ストレス無く読めました。多分短かったから良かったんじゃないかと思います。最初に到達したエンディングはどちらかと言うとBadEndで、これはこれでよくある話ですが、なんとなく後ろめたくなるような文章なもんで・・・、「この女が整形してるんだな」とか深読みしてたら、全然時系列が合ってなくて全くの誤解でした。もう一つの方はハッピーエンドで良かった良かった。分岐の選択と、結果のつながりに何と無しに深みがあって良いですね。それと、素材ですが写真と音楽は文章に凄く良く合っていて、一体感が有りました。いい意味で「小さく纏まって」いますね。文章は流れる様でとても上手いと思いました。特に登場人物達の台詞が自然だったので、あえて情景描写や心理描写を減らして、もっと台詞で表現してもらえば、彼らの感情が表れて、もうチョットドラマティックになったかも知れませんね。
136Charade女の子二人がバーチャルリアリティの世界から現実へと脱出するアドベンチャーゲームです。ノベルではありません、自力でストーリを進め、唯一のエンディングへと突き進みます。途中、15パズルや、ソリティアのミニゲームがあり、それだけでもかなり堪えますが、なんといってもシビアなクリッカブルマップの判定。フラグ立ってないと全く反応しなかったり、目的も無く徘徊しないとフラグが立たなかったりとかなり昔のAVGファンを喜ばす渋いシステムです。絵は上手いです。この作者様の作品は、毎回結構上手い絵師さんが付くのが凄いですね。あとボイスも上手かった(周防さんって色んな所に出てるんですね)。OP・ED曲もGood。「Foster」といい、「殺意の旋律」といい、この作者様は難易度設定が高めのゲームバランスが本当にお好きと見えます。私にとっての本来のAVGと言えるものを作っているのは、この作者様だけなんですよ。ですから、理不尽だ、達成感が無いとは言え、最後まで付き合っちゃうし、難しいほど燃えます。どこが難しいと聞かれても全部難しいのですが、ミニゲームは取り敢えず体力勝負で頑張るしかありません。ちなみに私は15パズルは得意中の得意ですが、単純な置き換えほど結構難しかったりします。ですからどうしても上手くいかないと思ったらやり直すのも手ですよ。ランダムでスワップしてるだけの様なので、場合によっては凄く手数の掛かる事もありますし、解の無い事もあります。それでもダメ〜と言う方はこちらの先生のお知恵を授かるのも手です。ソリティアはランダムでは無い様なので、いつか何とかなるでしょう。暗証番号は、足したり、抜いたり、ずらしたりしてればきっと大丈夫です。素数は、こんなの作ったので試してみて。それ以外はネタバレになっちゃうのではっきりとは書けませんが、クリッカブルマップは結構狙わないとダメ、フラグが立ったと思ったら、何も起きなかった所でももう一度試してみて下さい。それから、この持ち物は此処では使えそうにないと言われても信じちゃダメですよ。あと、二週目はチョットだけエンディングが変わります。イヴの本名は覚えておきましょうね。こういうゲームって難しすぎると、糞ゲー判定されちゃうけど、何か手掛かりとか、希望が残されていると、結構皆はまって情報交換なんかも活発になるんだよね。この作品はホント微妙だね、でもそこがイインヨ!※もし、15パズルでエラーが出たら、パッチを外してみましょう。
137雛見沢怪奇ナビゲーター罪穢
体験版
デザインの美しさに惹かれてやってみました。「ひぐらし」の二次創作でしょうか?梨花以外の主要な登場人物が出てきます(立絵はどちらかと言うとアニメ版風)。原作のオカルトな部分のみを抽出して、舞台をダム建設の行われた雛見沢とする、平行世界的な設定が用いられています。主人公が「オヤシロ様」と称するこっくりさんをしている内に、現実世界と雛見沢を行ったり来たりするお話で、ホラー演出が満載されており、実写背景写真の加工が美しく懐古的だったり、こっくりさんのムービーなんかもフィルム調に加工されており雰囲気が凄く良かった。体験版なんで、これだけでは何がなんだかさっぱりでしたが、取り敢えず雰囲気はなかなか私の壺を刺激していました。システムが「ALICESOFT SYSTEM4.0」ですね。段々、吉里吉里やNスクと遜色ないレベルに近づいてるんだなと、この作品をプレイしてそう思いました。
138ゲシュタルト崩壊ホラーノベルという事で、期待してプレイしてみました。高校生の主人公が、見知らぬ女性にとことん付きまとわれ、パニックを起こすお話。最近のノベルの中では短編と言う程短くも無く、読み終わるのに二時間位は掛かりました。音楽・効果音・背景加工は非常に良かったと思います。聞く人の心を不安にさせるループサウンドはホラーの基本ですが、素材に頼らなかった事からも高いレベルを感じました。逆に追いかけられるシーンなどのテンポの速いBGMはイマイチ耳障りでした。演出は別として、背景そのものはいい構図の物を上手く加工してあり、音楽と背景が上手い統一感を持っていたのは、非常に良かった点だと思います。一方、演出そのものや、シナリオにはあまり魅力を感じられないのが残念です。テキストにどうでも良い事が多すぎて読むのが苦痛だったり、登場人物に個性が感じられず、また恐ろしさも感じられません。使用している影絵の素材が作品にそぐわない事にも大きな原因が有ると思われます。適当に貼り付けただけでは、上手く行かない事は、同じ素材を使用していてもちゃんと動きや魂の感じられる「女教師シリーズ」と比較すると良く理解できます。同じ素材でも生かすも殺すも演出次第という事ですね。雰囲気は最近やったホラーの中では良かった方だと思います。
139Myth
最終体験版
長編ノベル(SF、ファンタジー、ホラー、サイコ、推理の要素が有ります)の体験版です。平穏な毎日を繰り返す主人公が住む未来の世界には、影がありません。ある日、偶然出会った影のある少女に連れられて、ゲートをくぐった主人公は影が住む世界にやってきます。主人公達はここで20日間過ごす事になりますが、この生活には主人公が忘れてしまったある重要な目的が隠されていました。そしてその事と共に世界の秘密を思い出すのは、時既に遅く10日以上たった惨劇の日の事でした・・・、って言うのが中盤までの展開です。一回目の20日間分、多分一ルート分(一ループ分?)をプレイできます。ひぐらしの体験版の様に、一分岐シナリオとして完結しており、作品の世界観や目的が判る様になっていますが、持ち越す要素も多々あり、製品版では二回目への決意を新たに一日目からやり直すものと思われます。日常描写も多いのですが、謎が絶えず付きまとっている事や、文章が上手いせいもあり、不思議と中だるみが有りませんでした。特に上手いのは展開ですね、途中の急展開でもう目を離せなくなり、一気に読みきりました。いや、これ凄いなー、今一番気になる作品です。色んなモチーフを感じるんですよね、光と影は、村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」に出てくる影に似てるし、ループしてる所なんかはひとかたとかひぐらしに似てるんだけど、基本的な世界設定にはYU-NOとか、ヴァグランツを感じるんです。並行世界をモチーフにすると必ず、似た所が出てしまうのは仕方が無いのでしょうが、そこに一味違うエッセンスとして創作ファンタジーの世界が入っている(FFXのザナルカンドみたいな)のは面白い。藤原カムイの短編集「ドロップ」に出てくる脚本家のおばあちゃんの話とかも思い出しちゃいました。HPを見に行くと、作品中に出てくる各並行世界についての世界観・詳細設定が書かれていたり、世界相関図があったりして、ヴァグランツ設定資料を彷彿とさせました。まとめると展開がひぐらしで、設定がヴァグランツ、私の好きなエッセンスがくっついて一本になったような作品です。結構誤字や、途中で頻繁にハングアップしたようになったり、バグで強制終了したり(おまけ、パッチで修復。あと、セーブボタンがかくれんぼしたり・・・)しましたけど、絵もそれなりに上手かったし、音楽も良かったし、完成度は市販に近いレベル、これブレイクしそうな予感(チョット贔屓目かな)。期待するほどでは有りませんが、若干18禁描写があります。お子様はNGですよ。
RE:make+の感想:次は完成版と諦めておりましたが、追加のシナリオ、何れも二週目の三日目まで遊べる「MYTHU(A)、(B)」(→選択肢によって分かれる様です)と新規の「sign」、それから「MYTH?」の続編がリリースされましたね。今回のキーはもちろん、命人の書いた「ノート」です。この所為で早くも色々な綻びが現れてきました。もう一つ大きなキーパーソンとなったのは命人の彼女だった「友里」の出現です。彼女によって(B)のシナリオは一日目から覚醒する事になります(「彼女も命人や他の二人同様、死んでいる!」)。そしてその後の展開は、意外な方向へ。友里の世界である2016年の東京の話と影である「琴美」の昔話から、このMYTH真相の輪郭が見え始めて来ました。通常の私なら、この壮大な風呂敷がたたまれず終わる事を憂慮し始める所ですが、ストーリ運びとそのコントロールを見る限り「ちゃんと先は考えて有りますから、今は安心して読んでて良いよ」的な余裕が見え、奥深さを感じる事しきり。誤字というか、送り仮名「へ」が「え」になってる事が多く、私は読んでて詰まりましたが、普通は変換されないので、意図は不明ですがわざとやってるのかも知れません。それと、人物相関の梓門の所がヴァルキリーではなく、ヴァーサーカになってました。エラーも多く、強制終了や、メニューが見えなくなる事もしばしば。付加機能使用中は背景の所為で文字が見え難い場合が有り、此処は出来ればクリッカブルマップにして貰えるとありがたかったです。以下妄想、ストーリに関係しますので伏字「sign4とMYTH?16から、新藤琴美と響は、計算すると友里の世界よりも更に未来の2028年前後に亡くなる等して、MYTHに送られて来てる様ですが、その事に関連すると思われる宗教法人「訪印教」とPN4332242、ユキヒメの関連が気になりますね。このMYTH世界の実現にはかなり未来の科学技術が関係しているようですし、梓門は単純な並行世界の移動だけで無く、時系列も移動できるとなると物語の理解が難しくなります。ただ影の出現に関しては、(少なくとも)2002年に友里がそれらしい事を体験している様なので、将来に向けて何かじわじわと浸透して行ってる危機(「汎世界の危機」みたいな物?)というか、ラグナロクが近づいてるのかな?という程度の認識を得ました。ヴァルキリー(梓門)は、死者の中から何かの基準を持ってバルハラ(あの屋敷)に魂を集め、これを「戦士」エインヘリヤルとしてラグナロクに備えている。これは北欧神話の通りですが、ラグナロクで戦う相手とは影でしょうか?これって本当に、影と共存できる道を見つけないとあぼーんって事なんですかね?」急かす訳では無いのですが、やっぱり続きが読みたい!
140魔法少女サカナ
WEBV型
サウンドノベルの体験版です。地球外生命体の宇宙戦争に巻き込まれる、チョット洞察力の優れたPTSDな高校生が主人公で、ヒロインの魔法少女と共に殺人事件の犯人を捜す筋です。少しだけ選択肢があります。色んな所で、良く聞くタイトルだったんですけど、なかなかプレイする機会が無くて、ようやく手をつけてみましたが、ビックリしました。物凄く読みやすくて、集中して読めました。出だしの所だけの体験版なんで、人物紹介程度の内容かもしれませんが、上手い展開でどんどんはまって行く感覚を味わいました。GTYみたいな感じ。やる前の自分を分析すると、絵の色の使い方に抵抗感が有ったようです。立絵の配色に統一感が無く、チカチカしちゃって(線も荒いし)。でも毎度の事ながら不思議なもんです、展開や会話が上手いと直ぐ気にならなくなって慣れてしまうんですね。これで文章がダメだと、最初から最後まで絵が気になって集中で出来ないんですけどね。でも、小惑星の衝突シーンとかは、さすがにチョット・・・、文章表現としては凄いのですが・・・。奇抜なヒロインにトラウマ主人公と言う組み合わせは、それ程斬新さを感じなかったものの、主人公の他者への洞察の深さが、各キャラクターの内面を引き立たせるという表現手法は成功していましたし、脚本が良く走っていました。会話によるストーリ展開や、面白い掛け合いが、非常に上手かったです。動きのあるロゴやスタート画面のデザインもサウンドノベルとしては斬新な演出でしたし、それから物語中登場人物が教えてくれる「作品特有の設定」に関する解説は説得力があり、プレイヤーが作品世界に入り込みやすくなっているのも良いところです。
141コープス・パーティー
(DL)
1996年発表のツクール製ホラーAVGです。PC-98シリーズ用に作られた物なので、Windows上で遊ぶにはDante98Uが必要です。学園祭の準備で残っていた生徒達が、学校に憑いた女生徒の幽霊によって過去の校舎に閉じ込められて、そこから脱出するお話です。展開によっては、生き残れる仲間人数が減ってエンディングを迎えます。色々受賞したり、歴史的には評価の高いフリーソフトという事で、ツクール嫌いの私も重い腰を上げました。やってみた感想としては、「普通に楽しめました。」という所です。今になっては取り立てて斬新とは思えないシステムや展開であり、ホラー的な演出要素はあまり高いとは云えず(「orgel」とか「ゆめにっき」と比べちゃうとね・・・)、私としては、ドキッとしたり背筋が寒くなるような所は殆ど有りませんでした。考えてみれば10年も前に、フリーで此処まで作れていた訳ですから、作者の方々の意気込みは大した物です。今は当たり前になっているザッピングやマルチエンディングは、当時未だ普及していませんでしたし、今やっても、途中でめんどくさくなって投げ出してしまう事も無い位、ゲーム性が高いものである事は頷けます。しかし、今となっては取り立ててプレイする必要性を感じる事も無い位、平凡に感じる様になってしまった事は、逆に言うとこのソフトが時代を切り開いた一つの証でも有るのかもしれません。
142黒の時 〜神無月〜若干ホラー風味のデジタルノベルです。黒の時シリーズの三作目で、二つのお話と、それが読み終わると現れるもう一つのお話で構成されるオムニバスストーリであり、前作とは関係なく独立したお話です。一年前の尼崎を彷彿とする女性の話と、薬のせいでおかしな夢を見る男、先天的に寿命の決まった若者の話、どれも生死に関わる選択がテーマになっています(三番目の話の寿命の決め方はかなり変)。三番目の話の中には、一、二番目の話の内容が少し出てきます。前二作と比べて(前作は私のプレイ以降色々改善された様ですが、私がプレイした時点で)システムがかなり改善され、コミックプレーヤ並みに操作性が上がりました。履歴が追えない等、不満は未だ残りますが、一応一通り分岐を埋めてみて、全二作の様なストレスが全く無かったので、ゲームとしての体裁は整っていると思います。欲を言えば、履歴とセーブ数でしょうが、今回はオムニバスであり、一つの話が15分と短いので、必要性はそれ程感じませんでした。この「黒の時」はシリーズ化している様ですが、モチーフとして「黒の十三」とか、「世にも奇妙な〜」が有るのでしょうか?前作でもそうだったんですが、セーブとロードの選択が同じ画面中に有ると、操作を間違って消しそうになりませんか?
143The noose純粋な読み物としてのサイコなホラー・ノベル。プレイヤーである私が、弟に殺されそうになる話です(分岐は一個有り、GoodとNormal(Bad)の二つのEndが有ります)。「noose」とは絞首刑の事、主人公の私は過去の出来事に対し、忘れようとする事で心のバランスを取っているPTSDな人ですが、死んだはずの弟が帰ってきて、何故か私を殺そうとします。何故こんな事になってしまったのか・・・、「noose」には、「自由を束縛する縄」と言う意味もあります。何が主人公を縛り付けていたのか、親とこの兄弟達の関係を考えると、nooseの本当の意味がわかる様な気がします。全編に渡って、ホラーっぽい音楽と音で、緊張感を盛り上げてくれますが、話自体には怖さがあまり感じられないのは、同じ言葉の繰り返しが多すぎて、間延びしてしまっているからでしょう。演出にしても、あまりしつこく同じ効果を繰り返すと「またか・・・」みたいに醒めてしまうのですが、本作は殆どが演出としてチョットくどい様に思えました。特にドアのところは、その印象が強かったかな。まぁ、稲川淳二なんか、繰り返しや擬音が殆どで、それ無くしたらホントつまらない単純な話なんだろうけど、アレは語り自体が演出の塊であり、ほっといても勝手に喋るから聞いてて面白い訳で、キーを叩きながら感じる怖さとはまた別の物なんですね。文庫本の小説に同じ事が何度も書いてあったり、擬音ばっかりだったらどうか?想像して頂けると読者の気持ちがわかると思います。タイトル・ロゴのフォントは、病んでる感じで素敵でした。
144石の箱庭最近、ホラー系のタイトルが少ないですね。私が選り好みするのが悪いのでしょうが、なかなかプレイする気が起きなくて。そんな訳で、ツクール2003でそれっぽいのやってみました。残念ながらホラーでは有りませんでしたが短時間でさくっと遊べたので一応、此処にその記録を。
 簡単に言うと脱出ゲームです。"orgel"とか"205"と同じです。ただ、動き回れるのが家具の置かれた丸い部屋一画面のみですから、これはフラッシュに散見される密室脱出ゲームと全く同じです(つまりツクール製の密室脱出ゲームって事)。理由も良くわからず閉じ込められている主人公を動かして、アイテムを集め、仕掛けを働かせ、この丸い部屋からドアを開けて脱出します。周りにあるドアは無意味です。何か理不尽な事も多いのですが(「過去の自分がまるで・・・」とか、落書きとか意味あったんかな?札束もテレビの内容が変わるだけだったし、影響が良くわからなかった。あと、時計の音も・・・、単なるフラグかな?)、幾つか出てくる暗証番号の解読は非常に簡単です(この手の奴では一番易しかった)。「画面を良く見る」「カレンダーを良く見る、そして手を動かす」ですね。いま一つストーリ性が感じられず、エンディングもなきに等しく、あまり遣り甲斐は無かったのが残念でしたが、狭い舞台で色々仕掛けが有りまあまあ楽しみました。
145煉獄のユリカ実写モデルを使用したホラーサウンドノベルです。選択肢も有りますが殆ど一本道で、Yuuki!である所は少し痛いですが、下手にいやらしい分岐も無く、間違うと直ぐバッドエンドになるので、ストレスも無くすらすらと読めました。自前の写真素材が非常に美しく(モデルは特に美しく写っています)、ポートレートも風景写真もかなり手馴れていらっしゃいます。ストーリは、女子高生の主人公がある日交通事故に遭い、おかしな声が聞こえるようになり、その結果、自分に課された運命を知る事になるというものです。なぜそんな運命なのかわからない主人公はそれに抗いながらも、逃れられず、やがて悲惨な過去に直面してしまいます。そして事態は恐ろしい局面へ・・・。終盤の展開は結構、「ゲーっ」って感じで驚いてしまいます。フリー素材とは異なり、本格的な写真と加工でクオリティの高さが他のフリーノベルを凌駕しています。上手い文章とは云えませんが、展開が気になるので、お話も結構読ませます。一方、音楽は素材だし、演出面では特筆すべき点が無いのは、ビジュアル重視という事でしょうがないのですが、Yuuki!だとどうしてもベタな感じになるので、せっかくのビジュアルは吉里吉里やNスクならもっと映えたかもしれません。びみょーに、宗教色があり、びみょーに親に対するコンプレックスを感じるものの、全体的にお勧めできる一本です。マリアさんのモーフィングにはちょっとアレかな〜という気もしましたが。
146ねこねこ小夜曲非常に珍しい、朗読・文字なし・セーブなしのビジュアルノベルです(20分位です)。デフォルトでは文字無しですが、設定で出す事も出来ます。主人公の少女と、兄、母の片親三人家族(清貧)の淡々としたお話で、三篇の中の最初の一つ、小学校時代のお話のようです。なんて事は無い内容ですが、雰囲気に引き込まれて、朗読を聞き入っていました。この朗読、最初かなり抵抗があったんですけど、聞いてるうちに直ぐに慣れてしまい、違和感は無くなりました、むしろクリックしないで済む分、楽とさえ感じました。しかしこれはもうノベルと言うよりは(自分で読み進みをコントロール出来ないと言う意味で)、NHKの銀河テレビ小説を見てる気分ですね。単発ドラマのその出しの20分を見た感じ。素直に、「続きは?」って言う感想が出ました。ところで、絵や音楽はお話に非常に良く合っていました。作者の方々は漫画を書かれる様ですが、構図や演出なんかは、しっかりしていましたね。背景はトレースですが色使いは立絵に馴染んで良かったし、特にピントやパンの使い方なんかはアニメの撮影手法に近い物が有ります。そういう所は、要素の全てが一つのコンセプトに纏まっていて、表現したい内容が明確で素晴らしかった。ただ、デジタルサウンドノベルとして体裁が整っているかと言われると、それはまた別のような気がします。短すぎる事もその一つの要因ですが(しかし小一時間、朗読を聞き続けるのも耐えられない気がするので、しょうがないのかも知れませんが)、これは本来体験版と呼ぶべきものでしょう。
147Collage圧倒的にスタイリッシュな一本道サウンドノベル。平凡な日常を過ごしていた主人公のOLは、ある日その連鎖を断ち切る(上司の横領暴き退社)。その事がきっかけとなり、同じく日常を過ごしていたサラリーマンやOLの生活にも小石が投じられる。そして生じた波紋が広がり、幾つもの輪が生まれて物語が始まった。公開は2003年位のようですが、私の中では久々の大ヒットです。一言で言うと恋愛物語なんでしょうが、登場する人物達の人間性や人生にリアリティが有り、やたら共感して読者を物語に引き込んでくれます。似たもの同士で仲が良いなんて本当は、傍から見てそう見えるだけで実際は違います。人間は魅力的な部分と不完全な部分が共存していますね、そして、お互いが惹かれあいつつ、自分の不完全さを不甲斐なく思っています。しかし、それらが組み合わさった時、何かが動き出したり、友情が芽生えたり、恋愛が生まれたりします。それはさながら無関係な物を寄せ集め一つの物語(芸術)にする、まさにコラージュです。この物語は、最初無関係だった登場人物たちが様々な縁で結ばれいた事に気付いていく物語ですが、ただの街系ゲームとは違い、時々人生の重さや、日々の大切さを思い出させてくれる深みがある様に思います。「不安なのよ、だから色んな物に気付かない振りをする。私もそういう時があったわ」や「あるのが当たり前だからちゃんと掴もうとしない。でもそういうのって気が付くとなくなってたりするんですよね」、「でもパパは、心の中では世の中そんなに甘くないって思っているんでしょ」、「ママは言っていたわ、自分の人生を生きていない人は他人を縛ろうとするんだって」は色んな捉え方が出来て面白いです。読んでいて、まりあはあのビーズのブレスレットをどんな気持ちで作っていたんだろうと思いました。まりあは実はビーズ達を紡ぎ止める紐の役割をしているのではないか、そんな風にも思いました。そんな真面目さと裏腹に、物語や音楽は非常に軽快かつスムーズで、インターフェイスも非常に斬新でカッコいいのです。どうやっているかわからないのですが、このトランジションや、効果音はFLASH並に能動性を感じました(その割に6.2MBとコンパクトだし)。少なくとも、私にはこの文章、非常に良く合ってるみたい。どんどん読みたくなったし、なによりメッセージボックスの小ささをうまく使って、文章の区切りを短く簡潔にしています。つまりページを跨ぐ様な長文が全く無いのです。だらだらとした心理描写やモノローグが無い為テンポ良く読んでいく事が出来ます。それだけに上手く物語に嵌って、一喜一憂できる事が嬉しい。あっさりしているけど、展開が凄いっていう、「ゆうとっぷ」みたいなすっとぼけた感じが壺です。また、システムやループサウンドのチョイスは、「水槽と雨」(←こちらはFlash)に非常に良く似ています。どちらが先かなんて私には関係ないです、両方とも好きです。これも主観ですが、文章は茜町と同等かそれ以上と思いますです、多分プロの所業ではないかと。登場人物たちの成長と、ラストの佐々木のこれからの物語が心に残る、最高の作品でした。※どっか忘れたけど一つだけ誤字「教」→「今日」
148神様ノ子守唄-キミに捧げる鎮魂歌-伝奇ノベル、神様ノ子守唄三部作の二作目です。前作が殺人ミステリ風伝奇物であったのに対し、本作はホラー風異能バトル物、・・・ですよね?前作では主人公達のいちびった台詞でかなり退いてしまいましたが、それは今回も健在です。また、だらだら余計な心理描写、薀蓄染みた描写も直っておらず、ぼかして想像させる表現や、会話で何とかできんのかいな・・・と、思ってしまいます。ただラスト付近は、前作より主人公の性格が素直に感じられる様になり、不覚にも感情移入してしまいました。またお話の展開も前作より面白くなっていました。霊能者の女子大生と偶然知り合った光吉が、御札の飛び交う争いに巻き込まれていく筋です。前作の主なキャラクターが殆ど出演せず、新キャラばかりが出てくる所は続き物として異様ですが、逆に新鮮でした。因縁ある一名以外は、三作目の為の布石なんでしょうが、ちゃんと本作内でドラマが完結している点で上手かった。また、to be continued.なエピローグも三作目へとブリッジの役割をちゃんと果たしています。全体的に前作からの成長が見られ、次回作への期待が膨らむ続編でした。絵については、今回は動きのある描写も有る事だし、立絵ばかりでなく、イベント絵の様な物が有っても良かったのでは?と思います。
149楽園ただ読むだけの分岐なしほのぼのノベルです。PSPでも読めるノベルを作ってるサークルの方々の作品です。画面が横に長い事に驚きましたが、これワイド画面対応って事ですかね。コロンブスの卵っていうか、絵も文字も見やすく読みやすい、意外とノベルにあったサイズでした。強いて言えば雰囲気は恋愛ノベルに近いのでしょうが、兄妹ってことで、妹モノに分類されるのかな?なんかそういうカテゴリーが出来ちゃったらコワイ。設定は近未来で、ロボットやアンドロイドが人間に代わって農作業してくれている農村で、メンテ係をやってるお兄ちゃんの所へ、年の離れた妹が遊びに来るお話です。何の展開も有りませんし短いお話で絵も数えるほどしかありませんが、優しい画風で音楽も静かなものばかりなので、雰囲気が心を和ませてくれました。こういうお話で、SFチックな設定っていうのもシャレてますが、何故かこの田園風景が目に浮かぶ様で、何とも味わいのあるノベルでした。短すぎて、物足りなさは感じるものの、気分転換に良いかもしれません。
150真夏の扉Yuuki! Novel製、立絵、影絵なしのオカルト物BLサウンドノベルです(2002年公開)。全分岐(26個)制覇となると結構な時間が掛かりそうですが、真相EDだけなら二、三時間と手ごろな中篇ノベルです。いかんせんBLなもんで、私としては敬遠しがちなジャンルですが(今回も、途中で気が付いたんだけどね)、オカルト物として充分楽しめて、謎に引き込まれる良く出来た展開でした。主人公は人見知りする中学生の少年。母の故郷に一人で帰省してきて無人の祖父の家で数日過ごす事になります。目的は過去の自分の記憶を取り戻す事。彼には子供の頃、この田舎で行方不明になった時の記憶が無いのです。果たして、その記憶を呼び覚ます引き金は、確かにあの森と白い洋館、そして夢の中に有りました。真相がわかると、「外道狩り」がフラッシュバックして来たのですが、実は今回珍しく分岐コンプリートしていないので、この真相の真意を測りかねています。この○○が綺麗な顔立ちなのは、やっぱりあのヒトだからなんでしょうか?そうすると矛盾してますよね、成仏してないし。でも、あそこまで佐伯を慕う気持ちはそうじゃないと矛盾してますよね。それとも、すっかり刷り込みされた?((((;゜Д゜)))ガクブル・・・今回、私がコンプできてないのには理由があるんですよ、チョット足を踏み外すとヤオイな方へ突き進むんです。だから、地雷を踏まないようにTrueEndを歩むのに精一杯で、それ以外のヤオイ臭のする方向には足が向かなかった。そういう意味では、気を抜くと足を踏み外す緊張感があり、私にとって二重の意味でホラーノベルでした。
151屍鬼の村短編のNスク製、時代劇風ホラーノベルです(公開は2002年位)。妖怪に襲われ全滅する村の顛末を、浪人風の斬人と、官吏の息子の進之助、寺の小娘のお雪の三人を視点に綴る物語です。分岐は少なく、最初のエンディングは三個、その後選択肢が増えてエンディングも増えます。最初のエンディングでは、何でこうなるの?と思われるかもしれませんが、最後までエンディングを見ると、なるほどそういう事だったのかと納得できます。全体的にあっさりした背景画像と文章で、余計な心理描写や薀蓄、嫌味な台詞も無く、さくさく読めますが、逆にあっさりしすぎて登場人物たちには魂が宿っておらず、感情移入できないのが残念、この辺はバランスが難しい所です。とはいえ、読み物として短時間に楽しめた点や、設定に筋が通っている点で、フリーノベルとして読み甲斐のあった作品でした。
152Aguni-運命の先-Mythの外伝となるフリーノベルです。Mythでアグニの世界から来た二人の、アグニの世界でのプロローグって事ですね。統治者として反乱分子を狩る現在の悧里と、悧里の幼年時代から綺姫との出会い、成功までが同時進行し、そして迎える悲劇の運命までを描いています。絵が本編よりすっきりしていますね、多分完全版の為にリファインしている所なのでしょう、間に合わなかったのか一部のキャラには立絵がありません。背景も本編と異なり加工写真を使用しており、ギャップが激しいのですが、今回の話の雰囲気には良く有っていました。エンディングはTrue×1、Bad×3、オマケも結構ボリュームが有ります。選択肢は幾つか有りますが、全てがエンディングに影響している訳では無さそうです。TrueEndの場合のみMyth本編に繋がり、BadEndだと先に進めない”別の運命”になります。でも私はBadEndAの「未来」も結構好きです。人間は繁栄のストラテジーを効率良く回す為に無意識に「共存」を選択して進化してきました。客観的に見るとそれは、「神が悪魔を滅ぼさない理由」と受け止められます。ここで彼らの言う「共存」は真の意味で共存では無い(つまり全員「のび太」とか、全員「ジャイアン」の世界)ので、梓門はその未来を否定しているというようにも取れます。しかし、悧里はそれを感じているのかどうかは読み取れませんでした。また、明や無夢の言う共存が果たして、梓門が見せた様な物と同じになるのか?については、正直疑問を感じました(比喩的に命人が居た「光の世界」を表している・・・とは思えないしね。現在の所、意図も不明だし)。それから、BadEndBは、その終わり方が唐突に感じてしまうのですが、しかしながらそこまでに至る語りによって、過去のアグニの事や、本編を謎解く鍵が見え隠れしているように思えました。説明不足でもどかしい事も多かったのですが、結局、面白かったです。早く本編がやりたい。
153雪と手袋小説好きの方が書かれた日常的推理小説とでも言いましょうか、推理といっても選択肢は無く一本道ですが・・・。ひとことで言うと、主人公の女子大生が所属するサークル仲間同士のプチ恋愛物語(←微妙な表現)。最初、文章から来る人物の印象と、絵があってない感じがしたので、先入観で心を閉ざさないよう、出来るだけ絵は見ないで、BGMと文字だけを追いかける様にしました。そしたら登場人物の描写に少しだけ深みが出て、意外と面白かったです。部長とか言う人の表情が特に嫌味たっぷりな感じで、気に食わなかったんですが、顔見なければ台詞は割りとすっきり頭に入ってきました。それなら、「絵は無かった方が良かったんじゃ無い?」って思うかもしれませんが、正にその通りだと思います。推理小説好きの人はやっぱり、三大奇書とエラリー・クイーンがお好きなのでしょうね。様々なノベル中でよく名が出てくるのはオマージュなんでしょう。そういう感覚は私にはさっぱり無いので、「またか」って感じですけど。正直、主人公が推理を始めた時点で、ストーリ展開がみえみえなんですが、それもレトリックに誘導されてる気がして、結局、部長のもったいぶった推理で、ムカムカするのは私の性格がひねくれている所為でしょうか?ストーリ展開はさておき、この作品には冬の始めの清涼感や、物憂げな秋の名残が漂っている所が素敵です。ピアノのBGM選曲も凄く良いし、主人公がええとこのお嬢ちゃんって言うのも有りますが、俗っぽくなくて詩的な感じ。あとがきでPIAさんが少佐に昇格していましたね。おめでとう御座います。
154魚介類ラブラブFlash この作品(群)、実は此処で紹介する事自体、随分迷いました。本当に好きなものは、こっそり楽しみたいって言うのも有りましたが、なにより作者さんに迷惑が掛かるかなと思いまして。というのは、この作品がノベルと言うよりは、Webアニメとか、動く漫画に属する作品だからです。私が今まで見てきたどのFlashよりもキャラが立っており、高い作画レベルを全編で維持していて、しかも結構動いている。個人でこんな凄い事やっている人が居るのかと思うと強い尊敬の念を抱かずにはおれませんでした。それで色々考えて、フリーノベルから見た時に色々と学ぶべき事が多いなと思い、恐れながら愚直な感想を書いてみようと思いました。
 連載形式で製作されているこの作品は、現在の所第四章まで公開されています。学園コメディ漫画に近いノリで、少なくともFlashのシリーズに関しては、長十郎(板前を目指す女の子、対人恐怖症)、缶子(メカ好き、変なドリンク収集家)、かんな(新聞部、不幸、自然好き)の三人を中心にストーリが展開します。魚に絡むものが色々と出てきますが、全編に渡って共通してストーリに絡んでいるのは”ナマコ星人”です。コイツが裏で緩やかに地球の侵略を進めている所に乗っかって学園ストーリが展開し、四章のSFストーリから急にその事が表出してきています。あくまで”Possibility”なんで、ナマコ星人との共存に関する一つのケースという事なのかもしれませんが・・・。このストーリも、もちろん楽しみの一つですが、むしろ特筆すべきは、毎回の凄い作画量と、背景3DCGです。もちろんフルアニメーションとは違いますから、ヤシガニっぽい所は有りますが、キャラやカメラの動かし方、止め方は上手すぎます(レイアウトは言うに及ばず)。しかもswift3Dを使った背景はトゥーンレンダリングの様な柔らかさに満ちており、立絵と非常に良く統一されており、高い完成度を示しています。また、PoserやLightWave3D、swift3Dを使った3Dアニメーションにも果敢に挑戦されており、モブシーンや一部の戦闘シーンではキャラも3Dで滑らかに動きます。さりげないので簡単そうに見えますけど、私も多少モデリング(静物ですけど)や動画をやるのでわかりますが、違和感なく見せるのには、かなり熟練とモデルの調整が必要です。同じ物を並べるのは楽ですが、個々のモデリングはかなり時間が掛かります。そういう意味で、この作品の完成度とリリースの速度は驚異的です。作者様はプロのイラストレータという事ですが、その事を差し引いても賞賛に値する仕事振りかと思います、なによりプロの刺激は、フリーにとって大いに活力になりますし。Flash本編以外にも、番外編やTips、漫画等もHPで公開されています。こちらは本編よりキャラクターが多く、作品世界が広げてあり更に楽しめます。兎にも角にも、地味に応援してますので(もうかなり前から楽しませてもらってますが)、これからも素晴らしい作品を作り続けてください。
155BEYOND THE SUMMERこれは高校生・純情・青春・恋愛ノベルです。主人公は高校二年生、電車通学のある日いつもの駅を乗り過ごし、チョットだけ冒険しちゃいます。その先で出会うヒロインは四人。それぞれチョットずつ悩みを持ち合わせ、少し厭世的になってる主人公と心の交流を交わしつつ、自分の抱える問題を見つめ直し打開して行こうとします。そしてその姿に主人公も、元気付けられて行くような、そんなストーリです。この作品で、何が一番良かったかというと、「読みやすさ」ですね。主人公が割とあっさりした性格であるため、うじうじ色々な思考が描写されないって事も有りますが、どの登場人物たちも「共感できる心理と台詞」であるために感情移入してしまい易い文章だからでしょう。立絵は無く、自前で撮られた背景写真のみですが、ストーリの爽やかさに負けないくらいの爽やかな写真ばかりで、非常に和みました(一部の加工は若干違和感が有りましたが)。多分勘違いだと思うんですが、どこかで見覚えのある風景が幾つか出てきました(特にJRの駅の辺り、福知山線だったか、京都だったかはっきり覚えてないけどデジャヴ・・・、あと公園が万博記念公園みたい。全然違うかも・・・)。作者様は、登場人物の姿を読者に想像して欲しいので、敢えて立絵を無くしたような事をあとがきで書いてらっしゃいましたが、この作品に関して言えば、私は「有った方が良かった」と思います。というのは、話の出来は凄く良いのに、全体の仕上がりは今一安っぽくなっている(演出も殆ど無いし、エンディングもシンプル、音楽も耳タコ)ので、これに良い絵師さんがついていれば、全体的に完成度が2ランク位上がっていただろうなぁと。シナリオだけ読むのであれば非常に良く出来た作品なだけに残念。「読んで恥ずかしい恋愛物」なんて自嘲されていますが、私はそんな事無いと思いますよ。少なくても読んでて、読むのが苦しくなるような所はありませんでしたもの。デモさすがに、渚とくっ付けちゃうのはやりすぎな気もしましたが、ここだけギャルゲーみたい。
156こころのアリカ少しファンタジックな学園(恋愛)Flashノベルです。セーブは出来ません。その替わり一章5話立てになってます(正確には6分割)。主人公は高校生、光の玉を手のひらに出現させる、変わった「チカラ」を持っています。熱くもないし、氷も溶かせない、何の役にも立たない力。主人公は、暴走してしまった結果父親の意識を奪う事にもなった、このチカラを迷惑に感じています。偶然、チカラの事を知ってしまった女子高生「ありか」と学校の屋上で再会し、夏を過ごして行く内に、主人公はチカラの意味を真剣に考え始めるようになります。そして、現実に向き合う事を決心し、数年ぶりに再会した父は・・・。
 まず、Flashという事で、スクリプト系ノベルと比べると明らかに演出力が優れています。ただFlashだから・・・と言うのではなく、PANや露出の使い方も良いし(第三話)、あらゆる場面で「おっ」ていう適切な演出が盛り込まれており、それだけでも心を引き込まれてしまいます。私はこの演出も然る事ながら、丁寧に書き起こされた背景に感心しました。これはもうアニメの「美術」と行っても良いレベルです。ロケに行かれているようですので、恐らく自ら写真に収め、トレスして色を抜いたりもしているのでしょうが、最終的に統一された配色とタッチでセンス良く纏めてあるので、見ていて非常に落ち着くし、奥行きも感じます。特に第五話後編の夕方のシーンで、立絵の「ありか」と背景が非常に近い濃淡で、溶け込む様に佇んでいるのも良かったし、その後立絵に、ありかのチカラの灯りが反射するシーンは、その背景と相まって美しかった。立絵っていうより、一枚絵の様な、キャラが背景に溶け込むレイアウトが多くて、その意味で作画への気合の入れようは、スクリプト系のノベルではチョットお目にかかれないなと思いました。お話やキャラもまあまあ良く出来ているとは思いますが、この演出・背景の良さが目に付いて霞んでしまいました。登場人物の中では病院の看護婦さんが好きです、何となくキャラが立ってた。テーマ的には、今一ぴんとこない所も有りますが、後半の盛り上げ方も上手かったし、読後感もなかなか!
157THE EARTHSF系Flashノベルです。日記形式になっており、アダムとイヴが交互に日記を書き込むのをただ二ヶ月程度読むだけです。セーブは出来ませんが、替わりに好きな日から続ける事が出来ます。同じ様な画面の中、二人の日記を交互に読んでいくのですが、これがなかなか面白い。だんだんやめれなくなっていきます。アダムとイブはどうやら、研究室のような所で働いている様ですが、アダムの方が上司っぽい。地球をシミュレーションするモデルをアダムが考え、イヴがプログラムを作り走らせます。イブは自分の作った地球に愛情を感じている様ですが、アダムは実験対象としてしか見ておらず、様々な災厄を起こそうとするアダムとそれを阻止しようとするイヴの間に段々溝が出来てします。進化は進んで、様々な文明が現れて、地球を飛び出す事件まで発生してしまうとアダムはついに地球を破壊する事を決意し、イヴに内緒で実行しようとしますが・・・。
 ムーやアトランティスが、何故急激に興りそして滅んだのか。ノストラダムスが何を感じて、予言を行ったのか、さりげなくその理由が示されています。しかし、この作品の最大の謎は他にあります。(ネタバレの為伏字)「結局、この二人はコンピュータだった訳ですが、」設定として素晴らしく、星新一の小説や、星野之宣の漫画みたいで面白かった。絵とか演出とかほんとに最小限だけど、その事が逆に意外性を生み出しているし、イマジネーションが広がる良い日記ノベルであり、SF好きにお勧めの作品です。
158時流長編の伝奇ノベルです。選択肢無しの一本道ですが、読み終わるまでには8時間以上掛かりました。異能の一族達によって繰り広げられる勢力争いや、主人公達の恋愛と因縁、ループする世界、失われる記憶、ヴィジュアル化される生死、といった物を作品中で表現しています。これらを列挙するだけでも分かります通り、プレイ中、あらか様に「月姫」、「ひぐらし」等の過去の作品のミームを強く感じさせる事の多かった事が印象に残りました。アニメのパロディと思われるものも多く、意図的にそういったオマージュを台詞として盛り込む事で、ある種の(あくまで製作者側の)カタルシスを生み出している様に思います。単にパクリという事ではなくて、様々な作品の良い部分を上手く集めて一つのオリジナルなストーリとして組み合わせる事には、食い入って読んでしまうくらい大成功しているし、正直フリーで楽しめる物としては十分過ぎるほど面白かった。見慣れた背景素材は別として、立絵も豊富だったし、イベント絵もそこそこ、チョット表情が分かりにくい所も有りましたが、かなり気合が入ってました。もっと気合が入っていたのは音楽、全て自前で、Vocal入りの曲も入っていましたね。代表の方が音楽担当という事で、使い方も適切で作品完成度を高めていました。・・・そう、この手の伝奇物にまっさらな人には「是非ご一読を」とお勧めできる程、全体として完成度は高かったのです、しかしながら惜しむらくは、はっとするような「新しさ」を感じなかった事です。斬新さとかそういうのとは全く無縁の作品。あと誤字でチョット惑わされました。聖譲院だったり聖護院だったり・・・、伏線かと思いました。視点がコロコロ変わる事や、冗長と思われる部分も多く、戸惑う事や早送りしてしまう事も結構あったかも。
159ボアダムキラーズ
ディレイレイン
第1話
体験版
同人ノベルの体験版です。選択肢なしで、プロローグと第一話「DEAD SOULS AND RAINMAN」がプレイできます。シナリオは、んー、なんつうかもう、めちゃくちゃシュールな感じ。主人公がちんちくりんの14歳なんだけど、ブルースに浸っちゃってそうなクールな感じで、諦観しちゃってる。そんな彼が住んでいる所は、彷徨ぐせのある父親が管理する木造ボロアパート。住人も変わった人ばかり、そんな変な家庭環境に反発しながらも依存したboredomな生活を過ごしていたのだが、ある日ひょんな事から巨大なテディベアのぬいぐるみが動き出す。そして、主人公を取り巻く日常もクラスメイトも超現実的な素顔を見せ始める。後半の怒涛の「3D動画」には声を出して笑うと同時に、「このサイズで良くやるなー」と感心しました。そりゃデカなるわ。展開が少し「サカナ」に似ている気がしましたが、まあとにかく、凄い気に入っちゃったので、続きが気になるんだけど、残念ながら本編は未だ完成していなくて、二話までしか出てないんですね。主人公の心理描写やクールな会話も良いんだけど、私が特に気に入ってるのは、中学生の学校生活のシーンです。あっさり描かれている様で、ちゃんと壺を押さえた中学生らしさが表現されています(私はこういうのにめっぽう弱い)。美術も素晴らしいです。夏の青空や、街の霞んだ感じ、高架線のハイコントラスト、雨のシーンでは臭いが感じられる気さえしました。もっと素晴らしかったのは立絵です。日本人らしい六頭身と足の短さ、腰から下の骨ばった感じなんかが、妙に艶のある絵で、女性らしい柔らかさと同時に、かっしりとしたデッサンが目を惹きます。音楽も作品のテンポに合っていて、ノリが良くて気持ち良かった。ここは何か組織力みたいな物を感じるな。続きが気になるものの、私としては、現状では流石にチョット手が出ません。こう言う物は余程の事が無い限り、完結してないとダメって言うのがポリシーなんで。途中で放棄されたりもするしね。でもこれは結構気になるな。我慢我慢。
2007/8/12:サークル活動を一時停止、開発再開未定
160Classical.ツクールXP製の短編アイテム探しAVGです。プレイ時間は全エンディングコンプリートまで1時間程度。住み込みメイドの恵さんがご主人様の為に食材を探しています。お屋敷の中を探索して、ご主人様が帰ってくるまでに夕食を作りましょう。イベントを起こす度に時間が減っていくので、あまりガチャガチャやっていてもTrueEndにはたどり着けません。また、ほぼ全てのアイテムを揃えていないと、後々困る事もあります。結構色々な仕掛けがあり、すっとぼけた恵さんの言動やキャラ絵の変化も面白いのですが、驚いたのは最後の展開でした。「そんな事になっとったんかい」っていうのが正直な感想でした。ゲーム性やデザインが良く纏まっており、これはこれで面白かったんですが、今一深みが無さ過ぎてもったいない。後半もう少し精神的なホラー展開で来てくれたら、嬉しかったんだけどな、惜しい。
161ガイストレッターツクールXP製の短編心霊探索AVGです。プレイ時間は、全体で5〜10分程度でしょうか。主人公は霊を救済し消去する「ガイストレッター」、依頼によりアパートに複数発生する心霊現象を懐中電灯一つで鎮めます。なお、セーブは有りません。システムが独特で、まずスタートメニューの「聞き込み」を選択して、住人の話を聞いて周り、住人達に行動を指示します。終了して、次に「本編」を選択し、実際の除霊を行います。適切な時間に適切な場所に行き、懐中電灯をカチカチ、シュボッって音がすれば除霊完了。次の除霊に当たります。6個除霊すると完了です、一つでもミスすると終わりです(特に難しかったのは、階段の除霊。踊り場の左寄りで、手前向いてないとダメです)。除霊が完全に完了すると、スタートメニューに「アフター」が出てくるので、選択するとここからがノベル本編となり、このアパートの怪奇現象や住人達の関係や正体が見えてきます。プレイ時間の短いゲームですが、心霊ホラーとしての、基本要素は十分で、グラフィックデザインや、ライティング、効果音が非常に素晴らしく、無駄を省いたロバストな完成度です。あ〜、何か終に見つけたって感じかな。この感覚は恐らく本物っぽい。この作品は、私に、私が何を求めていたのか、思っていたのと別の形で見せ付けてくれました。私の中の蟠っていた想いの一部はこの作品で晴れたように思います。どうもありがとう、そして私は誘蛾灯のような「鳥籠の少女」へ・・・。
1628月の雨本当に短い四つのエンディングを持つ心霊ノベルです、ワンプレイ二分くらい。歩道橋の下で雨宿りをしていた主人公が、二人の少年と二人の少女と出会って別れるだけのお話。一期一会。加工した写真と黒の背景、雨の効果、くらいしかグラフィックが有りませんが、BGM共々作品の雰囲気によくマッチしています。これプレイして直ぐに感じたのは、「ぼくとかのじょ」です。一部のエンディングで、あのすれ違いを彷彿とさせられて、さりげない「読後感」だけを残してスマートに終わるのが良かった。やはり蛇足に思える一部分岐やおまけも「ぼくとかのじょ」と良く似てる。ノベルには「肉付け」も必要だと思いますが、「そぎ落とし」はもっと重要です。見てわかる事は一々書かなくてもいいと思いますし、読者に十分想像力を与えるだけの言葉があれば、論述は不要です。せっかくの読後感を、くどい後書きやおまけで蹂躙される事はしばしばあり、残念な気持ちになります。本作はそういう意味で少し残念でしたが、全体的にはすっきりしていてとても良かったです。
163鳥籠の少女ツクールXP製の探索ホラーAVGです。プレイ時間は一時間くらいでした。彼女の見舞いに訪れた病院で、主人公と友達の三人が閉じ込められて不思議な体験をします。話が進むにつれて、自分達を閉じ込めているモノが一体何なのかわかるようになり、そしてその正体に気付いた主人公が彼女にどんな言葉を告げるのか・・・。前作「ガイストレッター」と異なり、今回は蝋燭を立てる事でセーブできるようになりました。狭い病院を行ったり来たりして暗号を解読する等、前作に比べてシステム自体に独創性が感じられなくなったものの、お話自体は結構読ませます。特に後半の展開は感動的でした。グラフィックのデザインといい、効果音といい、視野の狭さといい、粗い仕上がりながらもセンスが素晴らしいですね。効果的なホラー効果はストーリを良く盛り上げていましたし、読み終えてみてノベルとしての読後感がちゃんとあったのがまた良かった
164空木物語ほぼ一本道のオムニバス五篇より成るNスク製怪談ノベルです。大正か明治辺りの近代の横浜に在ると言う設定の「空木町(うつぎまち)」此処に住む作家「加布里」が主人公となり、空木町に住む妖と人間の不思議な縁を描いた文学的作品です。加布里が主人公なのは、最初の一篇だけで、クリアすると現れる残りの四篇は、サブキャラ達が主人公となり、それぞれの過去や妖との縁を描いています。全体的な雰囲気は、「茜街」や「唄ウ人形三話」と同系列にカテゴライズされるし、文章の上手さはそれらに次ぐ出来に見えます。この作品を読んで感じるのは、単に妖の恐怖を描くと言うよりは、人間のエゴや内面の醜さ、悲しみが生み出す映し鏡として「妖」を登場させている様に思えることです。このあたりは、「京極百物語」とテーマ的に近い気はします、こちらの方が舞台が現代的ですけど。また、前出の二作品より良いところは立絵を自作で作られている所です。また、その立絵がお話に良く合うタッチで描かれており、書き分けも性格が良く反映されていて上手い。画面デザインも素晴らしかったです。基本的に媚びるような所が全く無く、書くべき事、書きたい事がまっすぐに表現されており、作品完成度は高かった。細かい所を言えば、この640×480の画面サイズで、コミックメーカのような小さな文字は、文字がつぶれて読みにくかった、これは縦書きにしてもう少し大きいサイズでやって欲しかったです。次回作は学校怪談物の様で、これも期待が膨らんでしまいます。
165EndlessRain体験版同人ノベルの体験版です。体験版の頒布がかなり昔で、製品版も完成しているのに、今更かもしれませんが、和風という事で少し興味があったのでプレイしてみました。人里はなれた山奥で結界に守られた屋敷に住む、”主”と呼ばれる雨の妖怪と”ニエ”である少女の物語です。本編では退魔師と主の因縁についても描かれているのでしょうが、体験版では少女と退魔師の見習い少年の交流を描いています。また体験版では、分岐が幾つか有りますが結末はどれを選んでも一つで、二、三時間程度で読み終わる量です(私は細切れに読んでいたので時間が掛かっただけかもしれませんが)。他のノベルでは味わえない、全編に渡って雨がしっとり降り続ける、静かな雰囲気が特徴的で、殆ど自我の無い少女が主人公ですから、感情移入など有りません。前半はとにかく物語を読み進めるだけで若干苦痛を感じましたが、最後あたりでようやく少女に自我が芽生え始めると、急にストーリに吸い込まれました。しかし、いよいよと言うところで終わります。オリジナルのシステムで作られていますが、操作性に関して特に問題は感じませんでした。フォントがつぶれて醜いのはどこかで見た覚えがあるなぁと思っていたら、これはHSPで作られているのですね。驚きました、HSPでもちゃんとした物が作れるとは。トランジションも、音楽の再生も、普通のノベルシステムに比べて遜色なく遊べました。プログラマの方の苦労が覗えます。しかし敢えてHSPを選んだ所に、どんな将来性を見越しているのかは気になりました。ここのサークルはこれ以外もHSPで作品を発表されているので、独自の開発システムが出来上がっているなら、非常に面白いと思います。ただ、この作品に関して言えば、体験版をやり終えてみて、私はあまり興味を感じなかったです。性的描写が有りますのでお子様はNGです。
166おばけ屋敷探検隊RPGツクール2000製の洋館探索AVGです。若干ながら体力や戦闘、アクションゲームなどの要素があります。エンディングは14個(だったかな?)で、選択できる主人公は4人の小学生。テング様のお屋敷に無断侵入して、夏休みの自由研究に心霊レポートを作成するべく屋敷を探検します。人魂や人形、女子高生のオバケに追いかけられたりしますが、選択した主人公によっては攻撃も可能、最後は屋敷を脱出してクリアとなります。キャラの動きや絵柄が可愛い半面、屋敷中の部屋のデザインがまるでFCの「MOTHER」の様にシンプルで味気ない。しかしそれが逆にオバケ屋敷らしさを醸し出していて良いです。オバケの動きや効果音も鬼気迫る感じがして上手かった。特に、霊感少女「きつね」を選択した場合には、かなり忙しくオバケと戦うハメになり、何度Game overになった事か・・・。アクション要素が全くダメな人は止めた方が良いと思います。実は、四人の内一人はる程度クリアを繰り返さないと選択できなくなっています。というのはこの主人公を選ぶと、このオバケ屋敷の本当の正体が明かされるからです、但しハッピーエンドにたどり着かなくては、その真相はわかりませんが・・・。クリアして出てくるクレジットで気が付いたんですが、abc男さんがアドバイザーやミニゲームで参加してらっしゃるんですね(夫?)。どうりで良く纏まってると思いました。
167蛍ノ唄ファンタジックな分岐無しの恋愛ノベルです。CD頒布されたもののWEB版という事で、画像や音楽ファイルが小さくなっているようですが、内容が変わっているわけではなさそうです(ちなみに製作されたのは2003年)。夏休みに里帰りした主人公と幼馴染のヒロインの再会から、謎塗れのクライマックスまでを約一時間半程度で描いています。読み終わると物足りなさがずっ尾を引くので、消化不良気味になる事間違い無しですが、バージョン情報を確認すると、これは「真奈美編」という事ですので、実に一面的にしかストーリを見せて居ないかのように思わせます。しかしながら、クリアしても特におまけシナリオが用意されている訳では無いのでこれで終わりなのでしょう。補完的なシナリオや小説版が用意されていたようですが、実際の所このサークルは活動を停止しているようです。確かに、この本篇だけからお話全体を理解するのは非常に難しい様に思えます。しかし、展開はこれで良かったと私は思っています。ですが、敢えてザッピングシナリオや、HPでの補完に甘えて頼らず、書くべき事と書かないと決めた事をしっかり守って製作すべきだと思います。映画では決められた尺のフィルムしか配給できません。その枠内で、きっちり描きたい事を配置し、書かなくて良い事、観客の想像に任せる事はそうなるように上手く表現します。本作は基本的プロットは間違っていないし、完結しているのに、書くべき事を書かず、書かなくても良いものを書き過ぎた。本編の完成度を下げて、補完に甘えた為、全体的に不完全な作品を印象付ける事になったのではないかと思っています。OP、EDにボーカル付きの曲を使用するなど、音楽は結構気合が入っていますが、立絵はかなり画力が低く、表情の貧しさが感情移入を阻害しています。作品に光る部分が見えるのに、力不足からか纏め上げる事が出来なかったのか・・・、その事が残念でなりません。
168Reason of Detective約3〜5分という短いプレイ時間ながらもちゃんと5つのエンディングを持つ、吉里吉里製短編推理AVGです(セーブは出来ません)。気軽に遊べてかつ面白いと思えるものはなかなか無いものです。短編と言えども「推理物はしんどいからヤダ」っていう人も多いと思います。でもそんな人にもきっと、「コレ面白い」って思わせる程アイデアが冴えてる素晴らしい作品です。正直、3分だろうが面白くなければ直ぐ飽きるものです。本作の素晴らしい所は、3分で引き込ませ、満足させる事にしっかり答えを出している事、主人公が事件の推理を完成した所から始まり、いきなり記憶喪失。そして、無理やり犯人指摘のシーンへ・・・という、新入社員がいきなり株主総会の壇上に立たされるような展開で、プレイヤーを釘付けにしてくれます。そしてどんでん返しの結末できちんとプレイヤに満足感を与えてくれます。殆ど素材に頼って作られていますが、演出力や履歴の小細工など細かい所まで気を使って作られている所に、完成度の高さが感じられました。実力の高さを感じずには居られない作品です。この作者様の作品なら、3分以上の長編でも是非やって見たくなりました。
169夏、セミ、少女前作「Reason of Detective」が気に入ったので、やってみました。今回は入力ポイント一箇所、エンディング二個の推理要素の入った吉里吉里製短編ノベル的なAVGです(セーブは出来ません)。夏の公園で出会う少女と少年と蝉の物語です(←コレもミスリーディングですね)。前作同様、限られた枠内できちっと答えを出している所が流石です。また、3分ゲーに対する主張にもブレが有りません。ちなみに私は二回目で正解を出しました(一回目は「図書館」←何にも考えて無い事が露呈!)が、もう少し粘っとけば良かったかなと思いました。解き終わると後書きが現れて作者様のコメントが読めます。ヒントも出て来るんですがこの出し方にも一工夫あります。お話は前回に比べるとほんのチョット(んっとに、ちょっとだけ)感動的ですが、それ以外のコメディタッチな読みやすい文章は前回そのままです。3分の間にコレだけキャラを立たせられるって言うのがこの人の凄いとこだよなー、素材の絵と登場人物の性格が凄く一致してるもんなー。そろそろ、中長編でお会いしたいですね。上記二作品は、「何かさくっと遊べて面白いゲーム無いかな」って言う人に一番にお勧めしたい作品達です。蛇足ですが、私はどちらも同じくらい好きです。
170io「要」繰り返しプレイの世界系学園バトルノベルです。コンプリートしておまけの出てくる三週目までやり終えるには結構な時間掛かりますね。私の場合、10時間位は掛かったでしょうか、いやもっとかな・・・。高校生の主人公「樹」は格闘家の息子、三年間のドイツの留学から妹「夕日」が帰って来る所からお話は始まります。それと令嬢で悪友の「もみじ」、この三人の登場人物と、それぞれの過去を主軸にストーリは展開します。その他にも重要な登場人物が数人出てくるんですが、主人公と父親以外は女の子っていうのがギャルゲーっぽい所ですし、三週それぞれは、夕日編、もみじ編、和亜編となっておりますのでこれはやっぱりギャルゲーなのかも知れません。しかし、主人公の豪快さ、快活さは昔のエロゲーの主人公みたいです。で、大体の女性キャラは格闘家だったりします。この作品をプレイする上で非常に注意して欲しいのは一週目です。ここで挫折してはいけません。その高いポテンシャル障壁を乗り越えた者だけが、本当の面白さを味わう事が出来ます。二週目を普通に始めると、あるところでもみじ編への分岐が現れます。無事、もみじ編への選択肢を選べると、ウィンドウの左上のタイトルが[ii]が表示されて、もみじ編に突入した事が判る仕掛けになっています(この"i"は"iteration"の意?)。三週目も同じような感じです。その他は特に分岐も無く読み進めるだけでエンディングを迎える事が出来ます。但し、文章の区切りが悪く、画面が文字だらけで物凄く読み辛い上に、結構無意味な展開も多いのでかなり読み飛ばしたくなりますが、既読スキップが無く苦戦しました。あまりスキップばかりしていると重要な伏線を読み飛ばし、わけわからなくなる事請け合い。あと、特に物語の重要な伏線は二週目のもみじ編で回収され、三週目は取りこぼした伏線と、樹の幼年期の話がメインになって、最終的に大団円となっています。製作期間の長さもあってか一週目、二週目、三週目で所々絵柄の変化が見られる所も有りますが、あっさりした絵柄なのでデッサンの狂いも特に抵抗感なく見れました。演出に関しては微妙な細工もあったりしますが、概して控え気味。フォントを使って現在の視点を識別できるようにしているようですが、それでもやっぱり後半は戸惑う事しばしば。戦闘シーンの描写や薀蓄など、人によっては、このケレン味たっぷりの文章に抵抗があるかも知れませんが、一週目を除けば、結構楽しめるギャルゲーだと思います。私としては、作者様のヒロイン達への思い入れが強すぎて、過剰に表現されている所があり、そこがチョット逆に醒めて苦笑する事に繋がったので、もう少し冷静に描写して欲しかったですね。誤字で特に記憶に残ったのは、コールタールがタールコールになってたこと、それと、これは私には誤字か判らなかったのですが、イオNMの"Ming"とは何でしょうか?meaningでしょうか?キャピタライズされているので固有名詞っぽいのですが「明」?専門用語かも・・・、気になります(タイトル「io」にどんな意味があるのかも気になります)。謎といえば、もみじが配ってた宝石、夕日に渡したのは、まあ、何となく判らなくも無いのですが・・・、和亜にあげてたのはどういう意味なんでしょうか?なんかコレつけると余計具合悪くなってたような気もするんですが・・・。ストーリと関係有りませんが、最近ひぐらしなんかでも、仲間、仲間って仲間意識を強調した表現をよく見掛けるんですが、これってどうかなと常々(例:仲間を信じろ⇔仲間しか信じない)。確かに、強い信頼や協調性は仲間意識あっての事ですが、過剰なセクショナリズムは排他性、独善性、いじめにも繋がっていそうな気がします。そういう意見を「個人の対人スタンスによる基本的な考え方の違い」として竜に託して喋らせている所に世相批判的な皮肉が込められている様に私は感じ、共感しました。もし意図したものなら、作者様はなかなか広い見識をお持ちかもしれません。それ以前に、時間は掛かったにしろ、シナリオも立絵も一部音楽も、ここまで一人で作れたことに拍手。
171BAD短編恋愛ノベル。密かに思いを寄せるクラスメートに彼女が出来たことを知り、ヤケになって遅くまで遊び歩いた主人公の女の子が帰り道で酔っ払いを蹴飛ばし、「なんだよこれ!ざっけんなー!」とか叫ぶお話。多分、女性向け(だと思う・・・)ははは、面白いなコレ。この主人公の女の子の慌て者ぶりは、読んでいて結構壺にはまりました。展開も上手いし、裏山に行っちゃう所とかよく笑わせてくれました。毎度思うんですけどね、男性向けのノベルで出てくる女性って時々、女性が読むと共感出来ないと思うんですけど、女性向けのノベルに出てくる男性は、私なんかが見ますと、魂抜け切ってる様に見えるんですよ。この作品の「スコップで頭パーンてされ掛けた男の子」は、何て言うか作者の傀儡って感じで糸が見えるんですが、対してこの主人公の女の子は明らかにスタンドアローンに勝手な事をしてる感じがするんです。異性なんですが共感するし、なんか等身大の生命感がある。悪魔な人は微妙ですね。共感できるって言う訳ではないですが、十分存在感と人間性が有る。悪魔なのにね。そういうのがそこはかとなく表現できてるのは、作者様の文章がとても上手だからではないかと感心してみたり。絵もね、あっさりしてて、表情も豊かで良かったな。全然名作じゃないけど、センスや雰囲気が気に入りました。あと、筋子・酢二雄って名前がやばいよ・・・
172蜜柑の夢RPGツクール2003製の探索型オカルト系AVGです。主人公の山田君が教室を出ようとして、誰かとぶつかった瞬間、突然見知らぬ校舎に飛ばされます。私服になっており、ポケットにはPDAが・・・。そこで出会った見知らぬ女性徒に頼まれ、指輪を探すハメに。様々なパズルや暗号を解きながら、教室のID番号入手し、山田君は無事「屋上の幽霊の噂」の真相にたどり着けるでしょうか。エンディングは四つ、内一つがBestエンドで、残りはBadです。Badエンドもなかなか味わいのあるエンディングですけど(Badエンド見てないとBestエンドの意味のわからないところが有ったり)、やっぱりBestエンドは衝撃的です。この作者様のエンディングにはちゃんとご褒美が有るのは素敵ですね。「あちゃー、そんな事になってたんかいな・・・」みたいな感想が自然とこぼれます。ゲームバランスはかなり高めに設定されており、暗号やパズルはかなり難しいです。また、Bestエンドを迎えるには、やっちゃいけない事が沢山有るんですけど、これが結構大変ですね。知らないと、普通にやってしまいそうな事ばかり。不道徳な事したらダメって事なのかもしれませんが、しかし理不尽にも思えます。探索型ゲームにありがちなウロウロする手間とめんどくささは、マップモードで直接移動が可能になっており、解消されています。これは凄く良かったです、ゲームをさくさく進められましたし。でも、パズルゲームで、キー操作を一つでも間違えるとダメって時に、操作性が悪くて、勝手に二個移動したりして物凄くストレスが溜まり、途中で何度も投げ出しそうになりました。せめてもう少し難易度を落として、パズル一枚ずつ正解の音でも鳴らしてもらわないと、気が狂いそうでした。
173夜の声テンポよく読める短編恋愛ADV。厭世的になってる女子高生「歩美」と統合失調症ぎみの同級生「高東」の恋愛物語なのですが、会話が激しいボケと、激しいツッコミばかりで構成されており、揺れ動く乙女心や青臭い少年心理がモノローグされていない所に好印象を受けます。さりとて、間接的にその事をボケとツッコミの会話だけで表現しているように見えるのは巧妙なレトリックかもしれません。高校生が禅問答するのはやはり青春だと思います。私もそうだったし、高校の時の友達はそれで胃に穴が開きました。この作品はシュールですが、意外に身近に感じられるのは、実は等身大の高校生が描かれて居るからでしょう。
174FINDERD EYESSF空中戦ノベル、って書くと少しわかりにくいですが、第三次世界大戦後50年経った世界での、戦闘機を使った勢力争いを戦い抜いた人達のお話です。ノベルでありながら、戦闘機の交戦シーンを上手いカットや効果音を使って熱く描いています。戦闘機乗り同志の会話が、読んでいて結構笑えて面白かった。こういうところに作者様のセンスがよく出ていますね。この作品の最も特徴的なところは、世界設定がよく練りこまれている所ではないでしょうか。こういう荒廃した地球の姿って、色んな作品で描かれていますが、私はエピソード2や3を見た時、「これはナウシカだ」と思ってしまいました。そりゃ、他にも「ゼノギアス」とか「すてプリ」とか「マトリックス」とか、もっと近い設定の物は有ると思うのですが、我々の世代にとっては、ナウシカは比類なき近未来物の原風景になって居りまして、その後は何見てもナウシカが透けて見える病気もちでありますので、致し方無いのですが・・・。それでも、この作品では節々に色々な作品へのリスペクトが見られ、中でもナウシカは、「酸の湖」とか、アーヴァンがクロトワみたいな事言ってるのを見ると、特に色濃くその事が感じられるような気がしました。本作はシステムとしても特徴的です。エンディングは三つで、これは選択肢によって生じた二大勢力の優劣によって決まる部分と(戦力分析の画面を見るとプレステのソフトを思い出す・・・)、とあるメッセージを何個受け取っていたか、で判定される様です。しかし、その過程は選択肢によって若干変わったり、おまけのような隠し要素が見られたりします。沢山有るようなので、私は全部を見れてはいないのですが、そういったやりこみに応える要素が盛り込まれている所は、ゲームらしさがあって良いと思います。音楽は私が言うまでも無く、地味では有りますが作品にぴったりの素晴らしい出来だし、絵もアニメ塗りですが劇画調の渋い造形で、媚びた感じが全く無いのに、表情があるところが私は非常に気に入りました。また、この作品はこれ以降の作者様の作品、「Hundred wires」「スパルトイ」「BSR」と世界観を同じくするようです。また、以前の作品「双鏡」にも繋がっていて、最後の方で出て来た時には「おお、そこで繋がってたか」と、びっくり。意外と重要な事でしたね。気になった所は、竜騎があっさり海底基地の入り口を見つけちゃう所とか、地上でマスドライバーを使っててビックリした事とかがありました。あと、タイトルが気になります。"finder"は、「発見者」とか、そういう意味なんだろうなと思いましたが、"finderd"がどういう意味を持つのか?結構深そうだから、今度聞いてみよう・・・。クリアすると人物紹介とか設定解説が見れますが、Yuuki!だとどうしても安っぽくなってしまうのが残念。cubic3のエンディングリストみたいに、クリッカブルでエピソードの設定解説や人物紹介が読めたりしたらもっと快適なのになとか、いっそのことADMSシステムになってればと思いました。・・・無理言うなって?
175緋−aka−殺戮系乙女向け恋愛ノベルなのだそうです。ただ、殺戮といってもグロイ絵が出てくる訳ではありません。乙女向けなのは絵だけで、内容はそれ程乙女と言う感じはしませんね。唐突に殺意むき出しのシーンから始まり、主人公の女子高生が如何に凶器のバトルロワイヤルに至ったかが述べられます。最後の方で出てくる三つの選択肢がそれぞれ、Happy、Bad、Trueエンドへと繋がります。どれを選んでも本質的には不幸な話でした。敵の組織の名前「ほうら」って化粧メーカにあったっけとか気になったり、一部のエンディングで漫然とどこかに旅立っていくヒーロ&ヒロインの姿を頭で思い浮かべて、なんのこっちゃ???となってました。この作品は話の筋がちゃんと起承転結しっかりしてはいるんですが、最後まで話に興味がもてませんでした。文章も悪くないし、絵だって見れないって程じゃない。・・・登場人物の誰にも共感できないからでしょうか?いや、それだけじゃ無い。何故このお話を作ったのか、その動機を私が作品から何も感じる事が出来なかっただけ、なのかも知れません。
176蜃気楼の教室 七章立て、選択肢なしの一本道ノベル。三時間くらい。ミステリとはチョット違うんですが、推理的な要素があります。ただ、内容はファンタジックな学校怪談物と思いました。私の最も食指が動くジャンルです。
 主人公佐野君は内向的な高校生。最初、ヒッキーな感じのオタク少年かとも思ったんですが、ストーリ中女まみれになっている(もっとも、殆どが幽霊な訳ですが)ところから考えると、そういう訳でもなく、実はクールな感じなのかもしれません。・・・ですが、思考回路及び行動は完全にヒキオタ。とにかく、人と関わりたくないって考えは徹底して描写されています。でも、その原因って言うのがなんかしっくり来ないんですよね。5章辺りから明らかになるんですが、普通、そんな立場でそこまで思いつめるだろうか。相当自戒的に思い込みが激しい性格ををしています(良い奴なんです)。その佐野君が憧れる(チョット意味が違うのだが)存在は、前の席に座っている名も知らぬ女生徒、その幽霊の様な存在感に「自分もああ成りたい」と、心から願うヒキオタ少年。しかし、そんな穏やかな生活を邪魔する者が現れる、「あなた、柚木の事が好きなんでしょ」麻生晴香という女生徒によって、佐野君の日常は崩れていく・・・。一方、5年前として、並行したストーリはセピア調で描かれる。そこには、一人の薄幸の少女がいじめに遭っている姿と、傍らには彼女に手を差し伸べたい二人のクラスメイトが。・・・やがて、友情が芽生え始めたかと思うや否や、何故か避けられ始める本当の主人公である薄幸の女生徒・・・。二つのストーリは、全く接点を持たないままに進んでいき、そして迎える最終章では思いもよらない結末が・・・。
 読者は二人の主人公を頭の中で試行錯誤して結び付けようとしますが(もちろん、メモ採りました)、どうにもパズルが組み合わない、最後には成るほどそういう事か、とあらゆるミスディレクションに翻弄されていた事に気付いて、この作者様の展開の上手さに驚かされます。この作品では「視点」と言うのが一つのポイントになっています。特にガジェットは、「病気」ではないでしょうか?さすがはミステリファンで、しかも出版社のコンテストに最終選考まで残った作品のサウンドノベル化という事で、ストーリの上手さのみならず読みやすさ、台詞回しも素晴らしかった。何より、読後感が清々しく、感動的です。背景に使われている写真が被ってる事もあってか「White Epilogue」との共通点が顕著では有りましたが、私は個人的にこちらのストーリの方が面白かったですね。登場人物では、割と藤森千佳に共感しました。それ以外も心情的に共感できるんですけど、どこか少しだけ歪んでる様に思えるんですよね、その辺もリアルなのかもしれないけど。それと、両親「泣いていた姿」って所にぐっと来た。本当の親子じゃないと感じていたのは、主人公の方だったって事に少しセンチメンタルになってしまいました。結局、この(真)主人公は不幸のせいで少し心が捻くれていただけで環境が悪かった訳ではなかったような気がします、そんな内向的な所が余計に不幸を呼び寄せた。それは確かに可哀想だが、乗り越えて生きていく強さが人には必要なんだと改めて思ったり、思わなかったり。
 話以外の部分で行くと、システムは吉里吉里、しかしデフォ設定。それでも、全然ストレスは無かったですね、文字の出し方や効果音でチョット気を配っている所も有りましたが、基本的に演出は有りませんでした。背景や音楽は素材でどれも見覚えのあるものばかり、しかも似ている作品と素材が被っている為に、どうもストーリに水を差される様で嫌だった。立絵も有りません。ストーリ以外の要素は、及第点と言う所でしたが、立ち上げた時のオープニングカットの連続は私の心を鷲づかみにしました。
 総合的に見て、読み物としてお勧めの作品です。こういうさりげない幽霊の話が、私は結構好きみたい。最後に、読み終わってもオマケが無いのは、やっぱりチョット寂しいモノですね・・・。
177公衆電話の4つの話四つの公衆電話がそれぞれ別々のストーリへと導くマルチエンドの短編ノベル。一分岐2〜5分程度。四つのエンディングを全部見ると、五番目のお話(True End)が現れます。この作品、細かいアイテムや、背景の加工が非常に美しくて、画面のデザインはなかなか良かったですが、でも自分は「踏切」のようなオムニバス構成を期待していただけに、ストーリへの落胆は大きかったかな。最初の四つのエンディング、内二つはプレイする意味が殆どなく、多分これはNormal or Bad End。残り二つにしてもやっぱりあっさりし過ぎていて、どうにも感想の書きようが無い。一体これらのエンディングでは何を伝えたかったのでしょう?時は金なりでしょうか? 最後に出てくる第5話、これは一応、この作品の描きたかった事ってこれなのかな、ぐらいの印象で、ノベルっぽい雰囲気は感じ取る事が出来ました。・・・作品と関係ない話ですが、個人的には、公衆電話がこんなにも邪険にされている事に、反感すら覚えます。先ず、私は携帯電話を持っていないから、公衆電話がどれだけありがたいか良く知っています。駅の公衆電話は私のような人間にはホント重宝しています。会社で個人的な電話が出来ないのも不便ですし。もう一つ、外国の人が来た時、公衆電話が無かったらどうでしょう、外国人が皆グローバル携帯を持っていると思うのは、行き過ぎだと思いませんか?私はドイツに長期滞在した時、駅から電話で先方の研究室に連絡を取りましたが、もし公衆電話が無い国だったら思うと本当に不安です。別に出会いを期待して公衆電話を使って貰わなくっても、必要とする人は居るし、存在する意味だってちゃんと有ると思ってます。そもそも、携帯電話の持つ利便性とコストパフォーマンスを良く勘案した時、これ程、携帯が氾濫する事は有り得ないと思うんですがどうなんでしょうか?一家族当たり(家族の人数にも拠るが)通信費(ネットも含めて)で一万円以上掛かるって、商売人にうまく騙されてるとしか思えないんですが・・・。かといって、どっかの社長みたいな事言うのも何かやだけどね。あの人はもっともらしい事言ってるようで、商売は一番汚らしいし。ぶつぶつ・・・
178あやかしよりまし分岐なし一本道ノベルです。あやかしと言うのは妖怪の事らしく、幽霊とは少し違う存在の様で、主人公はこのあやかしが見える特殊な目を持っています。(よりましって言うのは憑依されている人、ツキビトの事:憑人)同じ能力を持ったすっとぼけた姉と、無害なあやしたちと一緒に古びた一軒家で平和に暮らしていましたが、ある日少女のあやしと出会い暮らし始めると、姉の仕事(絵本)の依頼は増え、友達の少ない主人公にガールフレンドが出来たりします。しかしそんな幸運も束の間、死神がやってきて言いました「ここにいる霊を迎えに来た」・・・・・・作者の方は漫画を描かれるとの事で、登場人物もあやしも少し古い感じの漂う漫画チックなデザインで、萌え絵の多い昨今のノベルの中、表情も豊かで、しっかりと心の宿ったキャラクターの書き分けは印象的です。ストーリの展開や会話も少年漫画チックで、滑らかにストーリに惹きこまれ、何度も目頭が熱くなるなど、キャラクターの心情に感情移入してしまいます。何故か、読者の惹き込ませ方の上手さには、この作者様の年季の様な物を感じてしまいます。修一郎の純粋な感情(独善的とも言えるが)と八咫烏のドライで威圧的だけれども聡明(優しささえ感じる)な言動はどちらも善悪という枠で捉える物ではなく、自分の気持ちはあるけれども、お互い納得したならそのどちらも受け入れると言う姉の立場は、読んでいて非常に共感したし、読者に近い視点を感じました。個人的には八咫烏がお気に入りです。ちゃんと手(ほんとは足)が三本あるのも良かったし、黒い外套の白い筋が幻想的で引き込まれそう。音楽は素材ですが、場面に合わせた選曲が良く、やはりストーリに引き込んでくれます。単純な感想として、凄く面白かった。読み進めるだけですが、ノベルとしてちゃんとストーリが完結しており、しかも登場人物たちのこれからを想像させるような素晴らしい読後感には深く感心します。修一郎と生八橋、紗都梨の三角関係、八咫烏と姉、人間になった紅葉など、幾らでもストーリは膨らみそう。シリーズ化してくれるなら、是非またプレイしてみたいと思いました。オマケシナリオも有ります。
179ABYSS
−殺人クラブ−
体験版
吉里吉里製の学園サスペンスノベル。「噂」と聞いて体験版をやってみました。想像していたものとは少し違いましたが、誰をも疑いたくなるような謎と、緊迫感の有る演出に思わずのめりこんで読み進めました。一日目までという事で確かに短い内容ですが、ABYSSに関する噂や、本編の展開を窺わせる様々な伏線を張って終わっていますので、続きが非常に気になる所です。日常的な学校でのシーンや妹との会話は、あまり重要とも思えず、結構早送りしてしまいましたが、囚われている女の子と、主人公らしい晶が終盤近くで接触するシーンでは、お互いの思いのすれ違いに歯がゆい思いをさせられると同時に「こーいう展開って珍しいかも」と、感心しました。この最後の意味する所ですけど、直前の鬼塚の言動からすると「少女(鬼塚も?)はアーチェリーの人にやられちゃいました」って事でしょうか?色々登場人物が出てくるので、メモを取りつつ読み進めていましたが、ABYSSが五人と聞いて、「これはイニシャルに違いない」等と思いましたが、全然関係無さそうです。誤字と言うか気になったのは、学校の登校シーンで「下駄箱に入る」と言う表現。揚げ足を取ってるわけでは無いのですが、本当に「うそ、靴視点だったのかよ!」って一瞬思いましたよ。あと、戦闘シーンの描写は何故か伝奇物みたいでした。
ver1.81の感想:おおー、凄い盛り上がってきました。前回よりも良くなってますね。背景による雰囲気作りやBGMも良いです。取り敢えずメモ取りながらやってみましたが、どうもABYSSのメンバーは5人以上になっちゃうんですよ。今回のストーリで明らかにABYSSメンバーと確定したのが「鬼塚(タカツキリョウコを助けようとしたカメラ持ちの奴)、片山(変態の副長)」で、確定なんだけど、はっきりどのABYSSか分からないのが「黒塚(多分、タカツキリョウコにルール説明した女部長、と思ったんですが性格がチョット違いますね・・・)」で、限りなくクロに近いグレーが「今川」これに正体不明のアーチェリー女子中学生が入るので五人。ラピスは数に入らないのかもしれないし、武器が同じ事を考えると「黒塚と関係有る?」、あと「聖先輩」はミスリーディング?の様な気もしますが現時点ではグレーに表現されてる。あと、「片山」には「丸沢(これがアーチェリー中学生かも知れませんが)」っていう手下とか、そのほか雑用係が数人居るみたいだし、ABYSSの事も知ってる様だから全部あわせると凄い数になっちゃう。でもゲームに参加できるのは限られた人間だけで、その人数が5人って事なら理解できますが・・・。犯人探しとは別に、主人公の記憶の謎とかもストーリに絡んで来て、物凄く食いつきが良くなってます。・・・で、結局あの人はああなっちゃってましたか。温子さんと那美がピンチ!次回は、ストーリに絡んでない妹が巻き込まれていきそうで怖い・・・。ネタバレ掲示板では推理が盛り上がっているようです。なるほどね、そういう風にも見れるのか・・・。続きはもう直ぐ出るそうですね。楽しみにしています。
ver2.00の感想:天晴れ!奥深いストーリ展開で、読者の探究心を掻き立てる見事なレトリックに感服致しました。改めて最初から読み直すと、日常的と思われた会話の中に膨大なヒントが隠されていましたね。様々な謎を残しつつも、本リリースで物語は一つの区切りを迎えたように思います。今回の目玉は部長の正体が明らかになり、それぞれのターン(晶、タカツキリョウコ)でのアビスメンバーがほぼ確定した事です。正式なアビス部員のお面は白黒、赤、緑、黄、青の様ですが、ABYSSの上部組織の関係者というのは色々居るようですね。後で書き足すかもしれませんが、取り敢えずネタバレと私の考察を以下伏字で。「前述したように、晶ターンでのメンバー五人は、@部長→聖先輩、A副長→片山、B鬼塚、C丸沢、Dアーチェリーでした。鬼塚は最後の方で今川に替わっていた様ですが、鬼塚本人は何者かに金属バットで殺害されてしまいました。片山は部長にチェンソーで殺害され、丸沢も部長に足を折られた上、転校させられています。タカツキ・ターンでは、@部長→聖先輩、A副長→シザーマン(名前不明)、B鬼塚、C山ちゃん、Dアーチェリーで、副長と山ちゃんはダイアログを服用したタカツキリョウコにより殺害、このタカツキリョウコは恐らく黒塚です。すると必然的に、タカツキ・ターンは過去、晶ターンは現在という時間軸に位置づけされそうです。ラピスは晶・タカツキ両ターンに出現しており、極めて微妙な立場にあります。「策士」「計算ずく」の符号から正体は恐らく天ヶ瀬でしょうが、アーチェリーの発言から彼はABYSSの上位組織関係者で有る事が分かります。また、黒塚にナイフの手解きをした可能性もありますね。組織の関係者でありながらABYSSメンバーに敵対する事に利益が有る、この事と薬の開発に何らかの関係が有る様な気がします。更に言うなら、その組織と晶の暗殺組織は無関係では無さそうですね(「私の故郷」と言うのがも一つピンと来ないのですが、晶の家族が壊滅した時に襲ってきた暗殺者と天ヶ瀬は何か関係有るのではないでしょうか?)どうでも良いことですが那美ちゃんは看護学校を目指してる様ですね」今回で共通ルートは終了との事ですが、完成版では最終ルートと、更に立場の異なる個別の5ルートが追加される様子です。ハッピーエンドか?悲劇か?いずれにしても楽しみですね。完成版は18禁になるようです、お子様はNGですよ。
C72αの感想:温子ルートという事で、温子視点なのかと思ったら、主人公視点なんですね。しかも、後輩を助ける場面の後から分岐して、暫くその子との展開が続きます。今回はABYSSそのものよりも、この「噂」の方に重きを置いたストーリ展開は私には嬉しい所です。そうですか、これがタカツキリョウコですか。あれ、黒い男の腰ベルトがぁあああ!ラピスはやっぱりそっちの人だったんですね。
180生麦高校新聞局高校が舞台の短編乙女アドベンチャーゲーム(ノベル)です。エンディングは四つ、普通ED、男性パートナー各ED、変なEDです。転校してきた若干電波気味な女子高生の主人公が、叔父が顧問をする新聞局(部)に入部して活躍するお話。コメディですね。登場する攻略対象の先輩二人の顔が(ほぼ)同じで、「これは見かけだけで、どちらを選ぶか決めるのは難問だ」と画面で見比べながら思っていましたが、もちろん性格まで同じって事は無いので、最初は誠実そうな方を、その後にちゃらちゃらしてる方をクリアしました。別に展開は純情だしコミカルでサラッとしているから、男性がプレイしても違和感は無いですよ。また、登場する男性キャラたちも変に透明感も無く適当に抜けてるし面白かった。展開的には、ぶっ飛んでいるのですが、村上春樹の小説の事を思い出すと「なるほど羊か・・・」とか、「シュールだ」などと勝手に納得したり・・・。ゲームデザインとか、効果音や音楽のチョイスがクリアなイメージで非常に印象的でした。ただ作品その物は結局平凡な乙女ゲーに留まっている点が残念。その分、クリアすると見られるおまけの次回作予告に引き込まれました。いつかプレイしてみたい。
181魔歌使い現代と古代ギリシャを舞台にした、選択肢有りのミステリ風中編ノベル(二時間くらい)です。ジャンルが「枠物語幻想ノベル」という事ですが、「枠物語」っていうのは、物語の中に別の物語を埋め込んだ構造を持つものですね。Mythなんかもそうなんじゃないでしょうか?出版社を経営する双子の兄妹が、海外小説の訳本を出版する為に、原作の作者に会いに行き、そこで古代ギリシャの王と唖である奴隷娘の物語を聞かされる筋です。その物語の中でプレイヤーは適切に選択肢を選んで物語を悲劇に導かなくてはなりません。その選択肢によってエンディングは六つに分岐します。文章自体、凄く読みやすいんだけど、プロットの組み方が非常に上手いですね。ほんとに推理小説を読んでいるような想像力をかき立てられます。ネストされている古代の物語が史実等を組み込んで上手く描かれているのも驚きましたが、枠の外と中の二つのストーリを上手く関連付けてあったのが良かった。その二つに同時に存在する怖ろしくて神秘的な「存在」と言うのを非常に上手く表現してありました。絵が一昔前の絵柄の印象を受けましたが、私は見慣れているせいか凄く気に入りました。瞬きしてるんで、ツールは何だろうと思いましたがNスクなんですね、こんな事も出来るとは知りませんでした。不意打ちで結構きつい表現が出てくるのはチョット驚きましたが、古代ギリシャって事で何となく納得してしまいました。年齢制限は無いようですがレーティングはR-15位の表現かな。お子様は気をつけたほうが良いかも。全体的な完成度は高く結構お勧め。
182愛と勇気とかしわもちホラーと聞いてやってみました。この作品は3分ゲーコンテスト優勝作品という事で、評価の高いゲームですが、何分パズルゲームです。どうやってホラー展開するのだろうと期待を胸に起動して見ると、可愛いちびキャラが明らかにほのぼのとした雰囲気を醸し出しております。メニューセレクトに「ストーリ」が有りますので、覘いて見ますと何やらファンタジックなアニメーションです。これだけでは何の事やら・・・と思いながら、スタートを選択。基本的にはぷよぷよなんかと同じ落ちゲーにカテゴライズされるもので、同じ種類のお菓子を四個、縦・横・斜め何れかに並べると消す事が出来ます。出来るだけ短いインターバルで消し続けないと、LIFEが無くなってしまうルールーです。実際、やって見るとかなりハマります。連鎖を如何に続けるかが重要で、これはこれでパズルゲームとして十分面白いのですが、プレイヤーがもたもたしてゲームオーバを繰り返していると、段々ゲームの雰囲気が怪しくなっていきます。具体的には、ゲームオーバの後にエピローグの様なテキストが現れ、そして「お菓子のアイコン」が「注射器や薬品」に・・・、「可愛いキャラクター達」にもチョットずつ変化が現れてきます。気が付くと、おかしな者がタイトル画面に現れ、ストーリの内容まで変わっています。そして最後には・・・「誰も居ない」。エンディングは幾つか有るようですが、普通にBADな感じのENDと、HAPPYのEND(50,000点以上)を確認しました。200,000点以上ではとんでもない事が起こるようですが、私自身は確認できていません(多分無理です)。この作品をやって見て、3分ゲーの奥の深さを感じると共に、パズルゲーの枠の外側にノベルティックな展開を置いて、そこに思いもよらない形でサプライズ要素を組み込む、というそのアイデアの素晴らしさに素直に感心しました。しかもストーリはあくまで本題であるパズルゲームへのやりこみ要素と言う形で還元されている点がニクい。ただホラーとしては、確かに精神的に危機感を感じる演出は良いのですが、この限られたテキストだけでは内容が未消化になってしまうので、そういう意味では私は楽しめませんでした。それよりも、少しずつ壊れていくシステムの凄さに「うわー、やるなー」と言う気持ちでいっぱいでした。
183天使屋全九章の短編ノベルで、ファンタジックでいて血なまぐさい半熟卵とでも表現したら良いのか、「天使屋」という宗教の教祖様(正確には教祖ではないですが)と土地の仲買人(主人公)のお話です。メインの筋としては、天使屋と喪服という二つの宗教の勢力抗争が描かれている訳ですが、そこには「戦争の元凶としての宗教」をテーマの一つに数えているように私には感じられました。幾つかの分岐と隠し要素がありまして、Endingは五つ、内一つは他の四つのEndingを見る事がフラグになっていて、選択肢が一つ増える事で到達できます。他にも全シナリオクリアで、オマケとオマケシナリオ、そして隠し画面から没シナリオを見る事も出来ます。線が薄くて柔らかい印象のある可愛い絵柄で、画面からは非常にほのぼのとした雰囲気を感じるのですが(イベント絵も結構有ります)、シナリオ的には暗い部分が各キャラクターに影を落としており、どのEndingも微妙にその影を引きずっているので、手放しで喜べるようなハッピーエンドはなかったような気がします。強いて言えばNo.4が本人達だけ救われているのですが・・・。ご都合主義的な部分で粗はある気がしますが、文章は読みやすかったし直ぐに投げ出さず最後まで一気に読めたので、私には相性が良いようです。私の場合、どんなジャンルにしろ始めて三分くらいで(読み続けるか、細切れに読むか)勝負が決まるので、この作品の様にはっきりと作品世界を最初に説明しないで「え、どういう事?」って感じで、話の流れに読者を引き込んで行くやり方は好きです。細かい所で私の気になった部分を幾つか挙げますと・・・、施設から逃げ出してつかまった者の末路を真那が語るシーンで「知らないままのほうが、良いと思います」←此処だけホラー?((((;゜Д゜)))ガクブル・・・等と言っているのを聞いて、「孤児院じゃなかったんだ!」と空恐ろしくなりましたよ。真那が「覚醒」するシーンでは、「布が切り裂かれる音がした」という表現を見て思わず「デッビール」と呟いてみたのですが、次の画面で着衣に乱れが無いのを見て「アレ?」あらかじめこうなる事を想定された服だったのかとがっかりしました。物語としての深みや、小説のような良い読後感は無く、感動してしまうような話ではありませんでしたが、綺麗に纏まっていると言う意味で、結構楽しめた作品でした。
184鏡の中のNスク製、短編冒険ノベルです。主人公は中学生、清貧にて暮らすこの家族の父親を除いて母と兄弟とで、先日亡くなった祖父の売り家を片付けにやって来ました。・・・この兄弟は無茶やってるけど微笑ましい位仲が良く、読んでいる人の心をホッとさせます。特に弟は「ゆうとっぷ」の再来かと思ってしまうくらいの傍若無人振りで、台詞なんかも「ゆうとっぷ」を彷彿とさせます。・・・で、二人して家の中を探検していると、大きな鏡を見つけます。この鏡が何とも古びた骨董品みたいで、興味を持った兄弟は協力してこの鏡を綺麗に磨き上げました。すると驚く事に、その鏡にはおかしな物が浮かび上がってきました、・・・やがて二人は物置に居ながらにして英雄になるべく、冒険へと旅立っていきます、おじいちゃんの熱い霊魂を背に・・・・・・。短編と言っても、結構ボリュームがあり4時間位は掛かりました、でも読み終えてみて時間が経っていた事に気付くって感じで、読んでいる間はたっぷり作品世界に浸っていました。選択肢は幾つか有りましたが、基本的には一本道で、最後の質問の答えで、「鏡の内」と「鏡の外」の二つのエンディングになるようです。鏡の外がTrueEndっぽいですが、どちらもハッピーエンドです。この作品は、推理が唸らせるとか、感動して涙を拭いたとか、そういうのとはチョット違うんですが、娯楽と言う点に於いて、久しぶりに「上手いなー!」と思わせる出来栄えでした。正直、最初は単なるコメディ影絵ノベルだと、期待していなかったんですが、プレイしていくにつれて、何となく感じるわくわく感というか、楽しんでこの文章を読んでいる自分が居ました。それは、「一日だけの大冒険の物語」という作者様の紹介がぴったりと来る、幼い兄弟の屋根裏部屋の冒険です。影絵ながら絵の出来も良かったし、画面のデザインや、途中の演出も独特で面白かった(でも音がやたら大きくなるのは勘弁して欲しかった)。最後の「併せ鏡」の所は、チョット良く分からない部分も有りましたが、この愛すべき「死神」に敬愛の念を抱くと共に、弟を思いやるお兄ちゃんのモノローグに、成長のような物を感じて少し胸が熱くなりました。この子達が、おじいちゃんを好きだと思った気持ちを何時までも忘れない、優しい大人になりますように。
185MySweetHuney
(DL)
短編ホラーと聞いてやってみました。2000年と結構古い作品なんですね。起動してみてその古さをひしひしと感じました。フルスクリーンが立ち上がり、暗い画面に荒い線画が描かれています。反応はクリックのみでスペースやリターンは受け付けないようです、チョット不便。でもまあ、右クリックでどこでもセーブは可能、さすがに履歴は読めません。これは二人のカップルの話なんですね、と思っていると、ありゃ?違う・・・、しかもまた違うの、えェ!って感じで10分位で読み終わるんですが、ミスリーディングが上手くてなかなか読み応えの有るサイコなお話でした。「the noose」みたいな感じです。絵の雰囲気もおどろおどろしくてお話にぴったりですが、やはりどんでん返しがこの作品の肝でしょう。これはこれとして良いですが、素材が良いので、吉里吉里でリメイクして演出を凝れば、最近のノベルに退けを取らない結構怖いのが出来そうな感じです。その時はタイトルのスペルミスも直した方が良いと思います。
186アリス以外いらない。短編という事と、一枚の街の背景写真に惹かれてやってみました。オムニバスの三つのお話はそれぞれ「海の中のアリス」「街の中のアリス」「アリスがいない」というサブタイトルになっており、直接的には関連していない(間接的には関係している)現代的なテーマの、ポエムの様な(多感な)お話でした。暗い感じの設定と展開で、どの選択肢を選んでもハッピーエンドでは無く、重めの読後感に軽く欝になりそうですが、短いながらちゃんとオチが有り、読み物として体裁が出来ていて、書き慣れている感じはしました。不満を感じたのは、画面が小さくセーブ画面の文字が読みにくい事です。別に、普通のサイズで問題ないと思うのですが。また、単調すぎるので、システム関係や演出にももう少し手が入れば良いのになと思います。
187カムパネルラ短編の女性向けアドベンチャーです。吉里吉里への焼き直しの様ですが、今回初めてプレイしてみました。これは、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の二次創作的後日談・・・というか、「さようなら銀河鉄道999」みたいな物ですね。カンパネルラと別れて一年後、ジョバンニは再びあの列車に乗り、カンパネルラと共に銀河を旅して色々な乗客達と一期一会を繰り返すお話。絵になっているジョバンニとカンパネルラは結構イメージ通りですね。原作読んでる時は、そんな風に微塵も思いませんでしたが、成るほど、こういう風にみれば、そういう風(801)に見れない事も無いな、と。昔、大学の授業で文学を教えてくれた先生は、銀河鉄道の夜は「記号」的にみると、壮大なポルノだ!と言っておりましたが、成るほど、ボーイズラブでもあったのか。手を繋いだり、抱き合ったりする程度なので、男性プレイヤもそれ程抵抗無く読めると思いますね。何より、原作の雰囲気を壊す事無く追加された、悲しく切ない銀河鉄道の旅人たちのエピソードを、溶けるようなピアノのBGMと共に味わって欲しいですね。写真と絵と登場人物たちの国籍がばらばらの所が微妙では有りますが、女性向けにして置くのはもったいない、なかなか味のあるノベルでした。エンドロールのクレジットに「吉里吉里/KAG2」と有りましたが本当ですか?「吉里吉里2/KAG3」の間違いでは?「終了」を押しても終わらないのはワロタ。
188マヨヒガツクール2000製の屋敷脱出AVGです。いきなり親に捨てられる所から始まるんですが、この主人公である小さな女の子はその事を知らず、連れてこられた変わった屋敷から家に帰ろうとします。なぜ親に捨てられたのかは最初のうちはプレイヤーにも分かりません。そのうちに自分を助けてくれる影小僧(カワイイ)や、自分を食べようとする妖怪に出会い、脱出に必要な三つのアイテムを探して屋敷中を探索して回る事になります。何となく「千と千鶴」に似てるかも。オーソドックスなデザインですが、屋敷の中の雰囲気が良く、出てくる妖怪も愛嬌があり気に入りました。エンディングは5個、壱がベストで、弐がグッド、参がノーマル、四が微妙、伍がバッドという感じでしょうか。どれもなかなか味のあるエピローグで読後感は良かったです。私の場合、全部解き終わるのには3時間くらい掛かりましたが、結構難しいですね。ゲーム中にヒントが出てくるのである程度は自力で頑張ろうと思いましたが、さすがに挫折して攻略を見ました。特にエンディング壱はかなり厳しかったです。物語の要素として、日本神話とか、昔話、柳田國男等の民俗学的なネタが出てくるのは感心しました。その事が作品に奥行きを与えていましたね。「マヨヒガ」が何なのか、最後まで気になっていましたが、作者様HPのおまけページを見てようやく分かりました。民間伝承(フォークロア)や都市伝説(アーバンレジェンド)の類はその噂そのもの信憑性よりも、その裏に潜む社会現象(風俗)や時事問題が透けて見える所が面白いですね。そんな題材を扱った作品を私は大好きです。
189ピザキスギャルゲ風オタクAVGと呼べば良いのか・・・。オタクな主人公が2ch語のモノローグを垂れ流しつつ、統合失調症になったり、ストーカになったりして悲惨な最後を遂げるお話です。攻略対象(?)は四人で、ステレオタイプなラインナップです。途中で三人のヒロインのうち一人を選択させられますが、その後の選択肢によっては道半ばで息絶えたり、妙なメタフィクションに突入したりします。妹だけは意外なところから入りますね。大抵は馬鹿馬鹿しいお話ですが、中には展開の読めない話も有ります。これは某芸大(DAICONアニメを作った奴らを輩出したとこ、高校時代の友達もここ中退)の委託寮内で製作した様ですね。確かに寮だと色々な人材の確保に有利だし、いきなりスタジオ気分で創作出来ちゃうって意味でこれからのゲーム製作の一つのスタイルとして面白いかもと思いました。肝心の内容はイマイチでしたが、これは方向性がバラバラで、B型が集まって取り敢えず作ってみたけど、まとまりが無かったです、と言う感じで、強いリーダシップや、組織力さえあれば結構底力が有りそうな気はしました。それから、内容の割に226MBとファイルが重い!
190hundred何故かは分からないですが主人公の所為で世界が崩壊して、その荒廃した世界で色をまとった異能者達が超能力でバトルするという、100話からなる伝奇ノベルです。主人公達の都合だけで世界がどうにかなっちゃうと言う意味で世界系ノベルでもあります。立絵は有りません。一応、どこからでも読めますが、やっぱり意味がわからないと思います。最後の方を除けば、各話は短いのですが、100個+オマケ三つを全部読むと二時間半位は掛かると思います。はっきり言って飽きるんですが、10話位ずつ何日にも分けて読み終わりました。最後の二話は、ホントに途中で気絶してしまい、何度か読み直しました。特に最後の一話は一ページごと表示の設定では、何故か凄い勢いで勝手に読み飛ばし、何がなんだか分からぬままに読み終わってしまいました。その時に、後書きやオマケが出てきましたが、読み飛ばしをデフォルトに戻して最終話を読み直したら、追加された所は二度と読めなくなっているバグに陥ってしまいました、ん〜む!「色」云々は、伝奇物にありがちな異能の設定を表現している訳ですが、私の中では絶えずゴレンジャーに変換されている訳で、そうすると最後に出てきた黄色が結構重要な役割をしている所で凄い違和感が・・・「黄レンジャーだろ、なんでエー」黄色からカレーを結びつける発想が今思うと神です。文章は特に読みにくくは無かったですが、世界が・・・、矛盾が・・・なんていう表現はもうお腹いっぱいです。無理に設定をこじつける為にクローンを持ってきてるのも説得力が無いし。お話は特に目新しい部分が無く、単に100話立てで有ると言う意味でオリジナリティがあったと思います。飛ばして読めるとは云え、やはりセーブの様な既読が分かるようなシステムを考えて欲しかったです。
191Steel Rain全部で三時間程で読み終わる、女子中学生の短編銃撃戦闘ノベル。Cowboy Bebopのスパイクみたいに組織から逃げ出した暗殺者の女子中学生が、平穏な学生生活を渇望して、得られるも奪われていく・・・みたいなストーリ。なんか設定がガンスリの将来を見ているような、そうでないような。一本道ですが、タイムリミットのある選択肢によってはGame overにもなります。暗殺者の姉妹は非常に歪な親の愛情の元に育ってしまいましたが、二人とも比較的まともに見えるし、少なくともこの主人公(妹)の方は、特殊な環境に育った割には愛嬌があって(残弾数え忘れるなど)、顔も垢抜けてないし、身近で共感できるキャラでした。その事はストーリに入り込むのに都合が良かったと思います。脇で出てくる、信司も初登場から含みの有るキャラで、本編中であえてその正体を追求されずに終わっているのも良かったです。骨盤の開いた立絵もなかなか親しみやすく、イベント絵の幾つか(戦闘シーンとかはしょぼいのも多かったですが・・・)には特に良い表情をしているものが有り読者の気持ちを良く盛り上げてくれました。楽曲が良かったどうかは別として、ボーカル入りのエンディング曲があったのも、エンディングのスチルも、なかなか良い読後感をもたらしてました。最初、あまり期待していなかった分、読み終わった後の作品への印象は凄く良かったです。読み進めていくと、ひぐらしのtipsの様な感じで、Another Viewが追加され、その中で主人公以外の視点での昔話や閑話が明らかにされます。触れられていない裏の部分や、意外な人が意外な人と繋がっていたりしてなかなか楽しめます。一つ不満だったのは、執拗に日付が挿入される事です。これって何か意味が有るんでしょうか?イマイチ必要性を感じない上に、鬱陶しい事著しかったです。
192送電塔のミメイ廃墟離島という小さな島へ、鬼退治にやってきた北国の娘「ミメイ」が、島で出会った人々と交流しながら自分の運命に気付き立ち向かっていくお話。「True Remenbrance」の作者様の第二作目です。分岐なし、一本道の怪談風伝奇長編物語で、5話(鵺、節の穴、山姥、夜刀、凝り夢)+閑話二個(ささぶね這子、混じり水)+プロローグ、エピローグからなり全部で9章立てとボリュームたっぷり(サブタイトルがPS逢魔が時みたいで私的に壺)、プレイ時間は5時間超でした。前作に劣らず、非常に丁寧に作られており、絵、音、話の全てが調和して、素晴らしいハーモニーを奏でています。特に、一枚絵の中には、目を見張るような印象的なものも多く(オプション画面の背景も圧巻です)、立絵の表情の複雑さや芝居の細やかさが、観ているものをお話に惹き込んで離しません。ただ単に絵が綺麗とかそういう事ではなくて、キャラ全般に作者様の愛情の様なものが深く感じられ、しかもその事が執拗に表出せず慎み深い。それだけに、せっかくの絵や表情が文字で見辛いのは本当に残念。読者の方にはDELキーの多用をお勧めします。今回のお話と前作を比べると、様々な点で類似点を感じました。その主な理由は展開ではなかったかと思います。また物語の要素には、他の優秀な作品の良さの本質となるものが、ふんだんに盛り込まれていた様に感じます。色々書きたい感想が沢山有るのですが、どうやってもネタバレになりそうだし、私がごちゃごちゃ言うのもおこがましい程面白いに決まっているのですが、あの結末は色々思いましたね。確かに切ないお話でしたが、エピローグで夜刀の観た未来が二年九ヵ月後にはきっと叶っているんだと強く確信して読み終わる事ができ、幸せでした。作者様は前回の作品の完成度に怯まず、それを乗り越えるほどの二作目を成し遂げた訳ですが、どんどん前作の壁が高くなって、次回作を完成させるモチベーションを維持できるか心配になります。最早、フリーでは難しいレベルのような気がしてなりません。しかし、敢えてシェアに挑む事で作風が変わってしまうのも、ファンとしては悲しい。作り続けて欲しいのに、作って欲しくない、気持ちは揺れ動く乙女心のよう。
193学校七不思議4学校怪談シリーズ物の第四弾(番外編入れると五番目)です。七不思議の所為で学校に憑く事になった御馴染みの二人と、本好きの眼鏡っ子との友情の物語です。エンディングは七つ、全クリでエピローグが付き、オマケも見れる様になります。比較的短い内容でコンプリートするには二時間もあれば大丈夫でしょう。ちなみにあまり怖くはありません。私の嗜好のため、学校怪談物は取り敢えず食べてみて、結局失敗するケースが多いのですが、このシリーズは何となく好きで、一通りプレイしています。今回は四年ぶりの続編という事で、正直3で終わりだろうと思っていたので、少し驚きました。期待してプレイしましたが、内容はチョット薄過ぎたかなと・・・。この四年で随分フリーAVGも進歩したようで、使いまわしの絵やマンネリのストーリ展開に、古臭さを感じずにおれませんでした。また背景に統一感の無い所も、目に付いてしまいます。・・・とは言うものの、やはりこの雰囲気だけは、無くなって欲しくないですね。今回はダメでも次回(第五弾)はと、また期待している自分が居る。そしてきっとやるだろう。
194わたしのせかいやってみた感想としては、恋愛鬱ノベルでしょうか。バレンタインデーに主人公「あこ」が、憧れの文芸部先輩にチョコを渡す、マルチエンディングなストーリで、根気良くエンディングを埋めた後に、最初からやり直すと新たな世界が開けます。物語の進行と共にタイトル画面が崩壊していく所は、愛と勇気とかしわもちを彷彿とさせましたね。主人公の女の子の性格が乱暴でウンザリさせられるのですが、先輩も結構複雑な精神構造をしていてチョット退いてしまいます。魅力的と思える登場人物は一人も存在せず、殺伐とした雰囲気が後半のストーリ展開への良い伏線の様に感じました。結構ぎりぎりで完成した割には、殆ど誤字脱字が無かったのは凄いと思います。(若しくは、あったけど気にならなかっただけかも)2007.2.14限定で公開されたようですが、なかなか面白かったので、再配布されれば良いなと思います。
195頽廃ノスタルジア
(DL)
邦画風現代ホラーノベルです。主人公「神一郎」が、友達と三人で故郷に帰って、彼女である繭子が帰省している旅館を訪ね、狂気の体験をすると共に、知られざる過去の秘密に向き合うというもの。前作「彼岸と翳りし」に比べるとストーリ性が強化され、また前作との関連やプロローグとしての役割を持った作品になっています。前作同様、選択肢の有り無しをあらかじめ選ぶ仕様になっており、エンディングは全部で10個。TrueEndが一つと、前作に繋がるNormalEndが一つ、あとはBadEnd相当です。これまた前作同様、TrueEndは確率的でかつ、ゲーム外の要素を含んでいますが、前作よりはかなり条件が緩和されているように思えます(ただ、あの文字入力はチョット難しすぎる気もします。単語三つだけでも難しいのに、内一つは前置詞付き文章とは・・・、もう少し易しくても良いのでは?)。クリアしたエンディングによって、閲覧できる短編の栞が増える仕組みになっているのですが、全部クリアしても何故か金の栞だけは読めないんですよね。これは何故でしょうか?(→COMPLETEの証だそうです)写真の美しさ、退廃的で懐古的な印象は非常に共感する所で、詩的な文体の美しさも相まって、非常にセンスの良いスタイルに仕上がっているのは賞賛すべき所でしょう。だからこそ、美しいクラッシックのピアノソロがユニゾンすると言うものです。しかし、一方でテーマ性やストーリにおける曖昧さ、不条理さは評価の分かれるところでしょう。前作と一貫しているようで、荒唐無稽にも思える展開には短編での補足を得ても尚、拭えない消化不良感があるのは私の読み込みが甘いからでしょうか?妹と姉にどのような慣わしがあったのかや、血を統べる事の意味と呪い、これらの要素の殆どを読者の薄っすらとした想像に任せられるのは、いささか荷が重く感じました。演出という事においては、斬新と思える物が多く、OPENINGのカットの数々は私にとって、とても印象的であり、トランジションや画像効果のマクロの多さは圧巻でした。スタイルとしてはかなり洗練されていますので、次は是非「深いテーマ」に挑んで頂きたいと期待するところであります。
196project lavenderやってみた感想は、多分女性向け?SF風AVGでした。高卒でいきなり大企業に就職しちゃった若きOLの主人公が、仕事で電脳世界にダイブしてそこに居る少女と仲良くなるお話です。エンディングは、bad×3、normal×3、good×1、best×1(+extra)の計8個、私は4hr位掛かりました。「去人たち」と同じく、設定が「lain」を連想させますが、内容はマニア受けしないような、もっと軽めの作品です(何で電脳世界には、いつも女の子が居る訳?)。主人公の女の子は今時珍しく(もないか)比較的真面目そうな普通の女の子で、顔絵の表情も素直そうで好感が持てます。イベント絵の印象が顔絵と違うのが気になりましたが、特にエクストラの主人公は成長を感じるような大人の表情をしているのが印象的でした。手が大きかったり、ラベンダーの絵が崩れる事も有りますが、この絵師さんの画風は優しい感じがしてお気に入りです。ゲームデザイン的にはAVG要素がはっきりしており、探索や聞き込みがエンディングへの大きなフラグとなっています。重要な事は、まず忍から「体の事」「二人目の事」「ひ・み・つ♪」「社長の事」を聞くこと(聞き過ぎも良くない)。それから探索で「9階の資料室」「応接室」「社長室」に行くこと、またその為にはラベンダーの協力を取り付けておかなくては行けません、順番も重要。ベストエンドに行くには、ラベンダーの好感度の様なものが必要らしいのですが、良く分からない事でも上がるし、普通に当たり障り無くやって、上述したフラグをキチンと立ててれば行けると思います。ヤラシイフラグとかは全然無いので安心です。青山君とのエンドは、とにかく探索でひたすら警備員に見つかる事です。その内ドキドキが別のドキドキへと変わります。ベストエンドまで一通り見ると「ああ、あれはそういう事だったのか」と、何となくしみじみとした感じになれます。まあ派手な演出も無く、大作では無いかも知れませんが、良く纏まってると思うし、なにより楽しめました。あと面白かったのは神経衰弱。情報処理の概念をうんと抽象化していくとそうなるのか?ん?本当か?!
197コトノハデカダンス序章・第一章までの感想:「ジュヴナイル」と「ライトノベル」がどう違うのか私は良く知らないのですが、プレイした感想は、学園→サスペンス→青春→伝奇と言うような、ジャンルの変遷を伴う展開でした。私のプレイ時間はおよそ二時間半位、選択肢は無く一本道です。主人公の家族に起こる不思議な事件と、高校からの仲間二人との穏やかな日常生活が対照的に描かれます。現時点では、作品の全体像が読み取れないのですが、多分主として「伝奇」モノであり、主人公の脳内麻薬がそこにどういう風な色づけをしてくるのかが今後の見物です。「言の葉」+「頽廃、悪魔主義的芸術」というタイトルからも色々な想像が掻き立てられます。セーブ数が少ない事や、シスカマ無な点、演出面等、最近のノベルとしては「地味」な印象を受けますが、文章自体が読みやすく、寒くなりやすい登場人物同士の掛け合いも、結構拒絶感無く読めました。それでも冗長な所は結構有るので、飛ばしちゃいましたけどね。最後の方で出てきた「妹と先輩」は、主人公をずっとストーキングしてたのでしょうか?あそこで切られると、読者はその辺の理由が気になって、次が読みたくなります。ミステリアスな展開で読者を惹きつける事に成功していますが、ちゃんと完結するか心配になってくるので、あまり引っ張らずに、ちゃんとオチをつけて頂きたいと願うばかりです。
第ニ章・第三章までの感想:帰ってきた「妹」と共に、「先輩」のところに転がり込んだ主人公。その先輩の妹も巻き込んで、いよいよ本格的異能バトルステージがやってきました。「ガイダンス」が異能の設定解説的内容、「カースメイカー」(←これってステータス異常攻撃者って事で言うと、守屋の事でしょうか?)が異能バトル一回戦です、面白くなってきました。結構ボリューム有りましたね、二時間くらいは読んでましたか?演出や音楽、システム面も前章より、力入ってます。ストーリ展開や薀蓄、異能バトルには、あまり新鮮さを感じませんが、寧ろ特筆すべきはホラーチックな雰囲気ですね。神社の感じや武器が「魔界復活」をデジャブさせ、私の壺を刺激しました。また随所に見られる同人的サービスシチュエーションにも、それ程嫌悪感を抱く事無く、逆にストーリに傾倒していきました。この作者さんは、読者の心の操り方が本当に上手いですね。かなり集中して読み続けられたので、それなりに内容を吟味できたと思っていますが、・・・こんな事言ってもしょうがないのですが、キノコ臭とGTYっぽさが印象的でした。あくまで設定についてであり、展開は異なるものなのでしょうが、名前についても色々インスパイアさせられる。そういう感情を無視して読めば次回作を早く!と期待にワクワクさせられてますが、このワクワク感もいつぞやの、そうそう、GTYと同じ・・・、もうやめよう。まだまだ先は長くなりそうですけど、5月には続きが見られる様です。このペースを続けて行くのは大変だろうな、継続は力(要る)ナリ。
第四章の感想:予定よりも遅れたそうですが、それにしたって良く頑張っていますよ。このままこのペースを維持する事がこのサークルの一つのステータスの様に感じられます。話の方はと言うと、異能バトルと稚拙な会話でチョット、ダレてきた感じも有りますが・・・、それでも(何となくしっくりこないものの)主人公の異能も明らかになりましたし、本命の陰陽師も現れました、っと思ったらあっさり消えるし・・・。色んな伏線が張ってあるだろう物語の「承」の終わりの部分に差し掛かっているのでしょうね。この後、色々な事が「転」じて別境が開けていきそうな気配です。子供をあっさり葬った雫の汚れた潔さ、天晴れ。二時間くらい読んでましたが、今回も最後まで上手く引っ張られました。徐々にクオリティが下がり気味なのがチョットだけ心配ですが、続きはゆっくり待ちましょう。
第五〜六章の感想:ガンパレの「君去りし後」の様な思わせぶりの演出の後、「やっぱり、ご存命でしたか」とは、プレイ10分後の私の感想。その後語られるのは葉の過去、そして波乱を予感させる新たな人物の登場。二章同時リリースで、これまでに比べてかなり読み応えが有りました。自分が万能ではない、もろい一個の人間である事を、葉が自らの過去を通して語る「メメント・モリ」幼い日の悲劇が姉妹の現在と過去を縛り付けて居るようでした(月姫みたいでしたが)。「バベル」は前編という事で、全体像がまだ見えてこないのですが、このタイトルが「コトノハ」と同様の意味なのか、コミニュケーション不足を示すのか、はたまた神にも至る高みを目指す事なのか、今後の展開が楽しみですね。前回の異能バトルはなりを潜め、サスペンスやドラマティックな展開が多くて大変楽しめました。難を言うと、誤字が結構多かったのと、クリア後のシナリオ選択で、7章、8章を選択できると言うバグですね。当然、エラーが出ましたが・・・
第七章の感想:前回のリリースから間が空きましたが、また凄いボリュームでした。冗長と思われる部分も有りかなり飛ばしましたが、それでもおそらく5時間位読んでいたと思います。相変わらずテンポの良い、読みやすい文章で、文章量の割には時間をあまり意識させない所が上手いですね。最後の公園のシーンが最初の公園のシーンの描写に帰結しているとろなんかも美しかった。おかげで長編を一本読み終えたような清清しい読後感が得られました。・・・実際はまだ、完結はしていませんが。でも、あの「真琴」の素性が出た時にはすぐ「Cielかぁ〜、やっぱりきのこだ」と思いましたよ。
 背景は何かぞんざいな気もしましたが、BGMは素晴らしかった。絵はかわいいんですが、ひぐらしほどではないものの、なんか手の大きさがアンバランスで気になりましたね。あと主人公の立絵がどうもしっくりこない。葉達を襲った奴と混同して、わけ分からなくなったりしてたのは私だけか。
 今回の展開では、結構沢山人が死ぬんですが、個々の殺人の描写が無い所が凄く惹き込まれました。どうやってやったんだろうとか、どんな順番で、どんなシチュエーションでとか、色々想像させられます。犯人が犯人なだけに余計にそこが気になった次第です。ところで「隆一」は、また出てきそうな感じですね。
 色々とミスリーディングに翻弄されてハラハラしながら楽しませて頂きました。葉の事もあるし(彼女の事は個人的には嫌いだけど)続きが楽しみ!最近の面白い作品は視点がころころ変わる作風が多くて結構疲れますね。
第八章の感想:今回も、前回リリースから、またかなり時間が空きましたが、その分よく出来ていて、今までで一番良かったかも。これまで同様、冗長(特に前半の海里と悠那のパート)と思われる言葉遊びの部分は多く、極力飛ばした為かボリューム的には少し短めの印象で、4hrくらい。ラスト近くで、無数の選択肢が現れたのには正直驚きましたが、正解と思しき選択肢を選んだとしても、結局は同じのような展開で「?」となってしまう事も。今回特に気に入ったのはBGMのチョイス。雰囲気によく合ってたし、演出としてとても効果的だったと思う。ストーリ展開的には本当に終盤が近いっていう感慨と、来るべき時がきたなぁと・・・。犯人が自白する訳ですけど、なんというかもう悲しいなぁ。こう言う展開って結構よくある気がするけど、それでもやっぱりこれまでの経緯があるからこそ悲哀を感じるね。今回でかなり色々な事が分かった気がするんですが、肝心なところがまだみえないなぁって思いが読み終わった後に残りました。毎回、毎回「面白かったです」っていう感想だけじゃ芸が無いけど、でもまあ「早く家に帰って続きが読みたい」って思うくらいに、本当に面白かった。
第零章の感想:話は一家誘拐事件に戻って、主に悠那視点であの事件の顛末が明かされます。この話で、大体、この物語全体の仕組がわかった気がします。今まで何となく不思議に思っていたことも、今回の内容から概ね推測して理解できた。やっぱり、そこそこボリュームがあって時間は掛かったけど(日常会話は飛ばしましたが…)ラストが近いって事もあって、最後まで集中して読めました。xxxxと伏せてあったタイトル名ですが「うん、なるほどその通り。」って感じで、思わず笑ってしまいました。んで、読み終わったあと、三章から読み返してみたんだけど、ミスリードの部分がちゃんとしっくり行きますね。理由があってそうなってるって事がよくわかりました。悠那は「おじいちゃんの研究室関係者に両親を殺された復讐をしているようだけど、フォースの暗黒面に囚われてしまったかのように、悠那自体、相当黒くなってしまっている事と、先輩姉妹を敵視している理由がよく分からない。……自分よりも強いと思っていた六合当主を倒した先輩達を脅威と感じているからなんでしょうか?それとも、異能者ギルドの頭領になろうとしている?あと、読者も悠那も分かってないんだけど、おじいちゃんの研究室の真の目的が何で、物語にどう絡むのか?」最終章でこれらの謎がどのように結実するのか楽しみです。
198僕の心は雨のち晴れ前作「楽園」が短かったので、舐めて掛かったら結構長かった。選択肢無しの中編ノベルです。主人公「空」が学校の屋上で、自殺したガールフレンド「美湖」そっくりの少女「夢乃」に出会い、彼女との関わりの中で自分の心のわだかまりを解きほぐしていくような、青春ラブストーリ。彼女が一体何者なのか?美湖は何故自殺したのか?ミステリアスな展開に、読者はストーリへと惹き付けられていきます。商業ソフトに負けてない耳に残るBGM、どこかのアニメキャラに似てる馴染みやすい抵抗感が無い絵柄、これらは作品に良くあっていました。文章についても、大抵はすらすら読める事が多いのですが、「AはB、でもBはA」とか「AはB、寧ろBはA」みたいな事を山場で何度も、しつこく繰り返してくるので、ウンザリする事しばしば。そんな冗長と思われる部分では早送りしましたので、エンディングで心から感動する事が出来ず残念でした。ストーリ展開は良く出来ており、最初から与えている疑問に対して、きっちり後半に答えを与えています、それがすんなり受け入れられるかどうかは別として・・・。最初と最後のシーンがその核心な訳ですが、これはまあ、ファンタジーと言うよりは間接的オカルトとして私は受け入れました。オリジナルのシステムは「楽園」同様、アンチエイリアスもバックログも非の打ち所ない出来栄え、決して激しい演出が有る訳では無いのですが、不満が全く無いのは凄い。もちろん、PSPでも読める様になっています。ちゃんと読み応えがあり、全体的な完成度は高め。
199あなたにさよならを神社で出会った高校生の少年と小学生の少女のさりげなくもしんみりとした、選択なし、10分位で読めるNスク製の短編読み物です。立絵どころか、バックログも有りませんが、文章には別段不満を感じる事が無く、読了致しました。効果音そのものも良いものを使っているのですが、写真加工のフォギーが相まって、神社の午後の物憂げな感じを良く表していたのは印象的でした。私も、こんな雰囲気のお寺で良く遊んでいましたので、その時の事が思い出され懐かしく感じました。この少年は、引越しでこの地を離れたのは分かりましたが、この少女は一体何でしょうか?「引っ越した後、事故かなんかで亡くなったのでしょうか?それとも妖怪の一種でしょうか?」読み終わっても、その部分で引っ掛かって、せっかくのエンディングがイマイチ感情移入できませんでした。あの光った所から、この話はファンタジーに突入している訳だから、愛は時間を越えたのかも知れませんが、少女の口調から考えても、これは多分オカルトですね、オカルトですよね?それなら私的には納得です。目立った演出は有りませんが、文章や雰囲気に良いものを感じました。誤字も無く丁寧に作られていると思うので、次は更に二つくらい新鮮なアイデアを盛り込んで、システム全体の完成度を高めれば、素敵な作品が出来るかも知れませんね。
200君の息吹をオーソドックスな幽霊恋愛物(幽霊が成仏する、悲しい別れ&感動物)です。久しぶりに「Moonlight Blue」を思い出しました。自分も幽体化して彷徨っている点では「ゆうとっぷ」とも、展開的に似ているかも。この系列では他にも「White Epilogue」等が有ります。主人公は当初、理由も思い出せず幽霊に成ってしまった為、やはり同じ幽霊である「響」(←実はツンデレ)から、自分が幽霊で有ることを教えられ困惑します。欠けた記憶もそのままに、自分の住んでいた家に戻ると、無人のはずのそこには、見覚えの無い「零」が住んでいました。彼女は幽霊である主人公を認識できるようです。そうして、幽霊と少女の同居生活がスタートします。・・・登場する二人の女性は一周目、二周目でそれぞれヒロインとなりそれぞれ異なる結末(分岐により更に複数のEDあり:[零ルート・・・Good×1、Normal×1、Bad×1][響ルート・・・Good×1、Normal×1、Bad×2、Another×1])へと向かいます。一周目の最後は、ハッピーエンドでよかったと思う反面、「何故?」と、ご都合主義的な展開に少し苛立ちを感じました。しかし、二周目では、零ルートでは明らかにされなかった様々な疑問も徐々に明らかにされ、ようやく納得しました。この二周目の響ルート内容は結構シュールで「なつみSTEP」を思い出しました、怖わ。でも、一周目だけで止めなくてホント良かった。全てのEDを観るとオマケが読めますが、これが以外と長かった。こちらのサークルさんは、イベントで集まった有志で製作し、現在は活動中止中との事で、次回作を期待できないのが少し残念ですね。絵はまあ、あまり上手い方では無いと思いますが、音楽の使い方やプロットは良かったです。
201あの夏祭りで誰が死ぬ?短編20分、一本道選択肢なし、ショートショートを読んでいるような、軽快で清々しい読後感のある良いノベルでした。姉弟が祭りの夜に離れ離れになって、大きく生死の運命が別れ、数年たった今、またその選択を目の前で迫られるお話です。最初、恒川光太郎の「夜市」かと思いましたが、まあ有る意味似てるんだけど、やっぱり似て非なる物語ですね。地の文が微妙に違和感を感じるものの、短い台詞やモノローグの中に、痛いようなリアリティを感じられる所が凄かった。正直、読み終わった後、じ〜んときてしまいました。もうね、300円とか、2,000円とか・・・、読んでるだけでぐっと来るんですよ。私の家も裕福な家庭では有りませんでしたが、困窮きわまって「」が此処まで行ってしまうなら、それは本当に悲しい事だなと・・・。ノベルゲームとしてではなく、純粋に挿絵のある小説として楽しめる作品ですね。これに出てくる「死神」は「鏡の中の」の「死神」に性根が似てると思う。
202さよなら、かみさま。短いボーイズ・ラブ系のノベルですが、少なくても「やまなし、おちなし、いみなし」と言う意味での「やおい」ではなく、独特の雰囲気が良い感じの、しっとりしたお話でした。世界が崩壊して、人々が箱舟で去った後、地上に残された3人と1体の切ないおとぎ話。以前紹介した「カンパネルラ」の作者様の作品です。選択肢は幾つかありまして、それによって通常エンド三つへと分岐します。コンプリートはそれ程難しくありません、割と素直。そのあともう一回最後まで行くと、エンドロールが流れ、切ない切ないTrueEndのエピローグにたどり着きます。一言、「話に救いが無い」と言われれば、そうかも知れません。しかし、他人を拒んでいた主人公が、最後には神様に感謝していたので、生きる事は尊い事なのかもしれません。そんな穏やかなLASTが読む者に、静かな悲しみに溢れた読後感を与えてくれます。特にこの最後のしめ方は、シナリオが上手すぎです。あっさりした絵は手抜きに見えますが、キャラの細かいアニメーションがあったり、影の無いのっぺりとした感じが、逆にキャラの心象を上手く描写している気がしました。良く聞く素材のBGMが、いつもより心に染みる、そんな素敵な作品でした。今回、Nスク(2003年発表)から吉里吉里への移植にちなんで、最後の部分が追加されています。
203月屋形事件甲賀三郎の推理小説を元にした、中学生が主人公のパスティーシュ・ノベルです。「Reason of Detective」や「夏、セミ、少女」の作者の方の、これまでより少し長めの作品で、ワンプレイは一時間以内で終わりますが、コンプリートするには推理と試行錯誤が必要です。システム的には「鴉の断音符」に近い物を感じました。パスティーシュと言うのは、原作の設定や登場人物、文体を真似て、第三者により作られた物語の事で、二次創作やパロディの事です。主人公風岡君がワトソン役となり、ホームズ役の森君が、級友の家で起こった窃盗事件を解決し級友の危機を救います(実は、実際に真相を暴くのはワトソン君なのですが・・・)。トリックや推理そのものはありふれた物なのに、見せ方や誘導が非常に上手く、自分で考えないと答えが見つからないと言う点で、このゲームは実に論理的に、且つ達成感の感じられる様に作られています。文字入力が多い割に、あまり理不尽さを感じる事無く、しかも一筋縄ではなかなかクリアできないゲームバランスが絶妙でした(かなり難しい部類に入ります)。この後に、同じ作者の原作をそのままサウンドノベルにしたものを二本読みましたが、この作品の森君は原作の森君よりも大人びた感じがしますね、単純に原作そのものを模倣しただけでなく、このゲームの作者さんによって原作に、より深みが加えられているように感じました。気になる点としては、やはり、「おばあさんの耳は声を聞き分けられなかったのか」という疑問が強く残る事です。普通に読んでればおかしいと思う所なので、何かの意図が有るのかと思ったのですが、私は読み取れませんでした。作品世界の時代設定が昭和初期という事で、色々その事を感じる描写も多かったですが、主人公の母親の言動がいろんな意味で感慨深かったです。本質的には教育や知識に因る所なのでしょうが、今も昔も変わらない何かが有る気もしました。作品全体が素材により作られているので、一見すると地味ですが、システムは手が込んでいたり、カスタマイズされていて、実は高度ですね。私は風岡君は男だと思ってましたが違うんでしょうか?
204お初桜事件甲賀三郎の推理小説をサウンドノベル化したものです。「月屋形事件」が面白かったのでやってみました。森君が級友のお父さんの無実を暴き、危機を救うお話です。選択肢は無し、20分くらいで読めます。お母さん二人が良い味を出していますね。テキストは著作権切れの青空文庫の物を使用しているらしく、別段手は入っていませんし、影絵や背景写真は使用しているものの、特に演出が凝っていたという事はありませんでした。普通に吉里吉里で短編推理小説を読んだ気分でした。子供向け小説という感じ。
205贋紙幣事件甲賀三郎の推理小説をサウンドノベル化したものです。これも「月屋形事件」が面白かったのでやってみました。時期的にはお初桜と月屋形の間の話となっています。森君が、偽札を使って警察に連れて行かれた級友のお父さんの危機を救い、意外な手掛かりから偽札の犯人を暴くお話です。選択肢は無し、20分くらいで読めます。今回もお母さんが良い味を出していますね。効果音でおおっと思わせるところも有りましたが、演出は地味だし内容自体もあっさりしているので、物足りない気がしました。ただ、雰囲気は良い。この三作とも、子供向けのお話の割には、全てでお金が絡んでるんですが、少年探偵団のお話は大抵殺人事件が起こったりするので、その辺がなんか新鮮な感じ。
206死に至る病本格的なサウンドノベルです。TrueEndのストーリは、第一回チュンソフト小説賞ミステリー・ホラー部門で奨励賞を受賞したという事もあり、長さも適度で且つ登場人物の描写もリアルで、読後感も清々しく同時に重い。主人子の少年ナオは、仲間と共に食糧難で社会秩序の崩れた街で、スーパーを襲撃しながら食料を得て暮らしていたが、有る日暴動に巻き込まれて負傷する。そして病院、刑務所、再び病院と、暮らす先々で恐ろしい経験とトラウマを抱えながら、次々と死んでいく仲間の屍を越え、自分の生死を決める一つの鍵を手にする事になる。ナオはその鍵を握って仲間の人生を背負って生きていくのか、それとも・・・。幾つかの章に分けられており、切替が鮮やかで、何かに似てるなと思ったら作品の雰囲気がDigital Thingsに似てました。サバイバルな描写は鬼気迫る感じで、読者を作中の現場に引き込んできます。特に暴動のシーンの群集心理的描写はリアリティが感じられ、圧倒されました。また入院患者の一人、孝介の最後の件は透明感があり印象的で、俗っぽい台詞が逆に清らかさを引き立てていました。この作者さんのレトリックは格の違いを感じさせます。システム全体はそつの無い作りで、激しい演出が有るわけでもなく、操作性に不満の有る訳でもなく、ごく普通の吉里吉里作品です。立絵も無し、背景も素材、BGMもイマイチ作品の雰囲気に合ってないというか、スタンダードな良く聞くBGMを取って付けた感じです。全体的に演出レベルは低く、一昔前のサウンドノベルのままといわざる終えないのは、シナリオや分岐、マルチエンドが良く出来ていただけに本当に残念。演出力が備わっていれば、今年前半では五本の指に入る優秀作だっただけに惜しまれます。エンディングをコンプリートした後にキーワードを入れて読む事が出来るサイドストーリは、後日談と呼ぶべきもので、これまた良い味出してます。SFというよりは、生と死に振り回されるサスペンスの中で主人公から何かを感じ取れるような、テーマ性のしっかりとした比較的真面目な小説的作品。
207雨やどり5分で終わる吉里吉里製ショートホラー。バス停で母を待つ主人公(少女)が、雨宿りしている少女とお話する筋。分岐一個、エンディング二個、コンプリートでオマケありです。シチュエーションに惹かれてやってみましたが、期待していたような雨の物憂げな雰囲気等は感じられませんでした。前作「ふすま」よりは幾分演出は良くなり、長く楽しめるようになっていますし、作品として一応の体裁が整っていましたが、基本的には前作同様のナンセンスな展開。女の子の表情が変化する所は、印象的な演出でしたが、良く喋るのは、私にはチョット・・・。
208OCCULT PUNK!タイトルのイメージと違いあまりオカルトっぽくはありません、選択肢の無い近未来SF物ノベルです。唐突に会社社長が「天使」を食しに料亭へ向かう所から始まり、それを追う探偵、警察が物語に絡んでいきます。けれん味の強い内容で、裏に色んな設定があるつもりかも知れませんが、何の事やらさっぱり訳が分かりません。読んでいて「それのどこがピグマリオン症候群な訳よ?」とか「言葉勝手に作ってね?」とか、ぼそぼそ感想が漏れるんですが、勢いで最後まで読めてしまうし、とにかく雰囲気や終わり方はえらいカッコ良かった。作品世界を描写するセンスは凄く良いんだと思います。ツールは吉里吉里で、殆どカスタマイズされていませんが、細かい演出やそれに付随する効果音が良かったし、素材ではありますがBGMの選曲は非常に良かった、素晴らしい!文章その物は読みやすかったけど、だらだらと画面が文章で埋まっていくのはやめて欲しかった。これは、これでパイロット版として、ブレードランナーみたいな感じで、二時間ぐらいで読める一本の作品として仕上がれば、もう一度読んでみたいと思います。これだけでは、何がどう決着したのか実感できず、不親切すぎて作品とは呼びにくい。
209最上邸DANGER ZONEやROOM NO.404の作者さんの和風ホラー作品(Yuuki!)です。主人公達二人(心霊ホラー研究部とその友人)が廃墟の日本家屋にやってきて、中を探索するうちに出られなくなって、後は人形がカタカタ動いてきたり、長い髪の女に追いかけられたりして、怖い思いをしながら、真相を解くか、脱出するお話です。前作はホラーとしては大きく裏切られた気がしましたが、この作品は「Lost in Morgue」や「トワイライトシンドローム」に近い、女子高生心霊スポット探検物で、私にとってはとてもありがたい分野です。取り敢えずたどり着けたエンディングは、TRUE ENDとBEST END、これらは屋敷侵入直後の選択で、いきなり奥に行くか、手前の部屋から探索するかで分岐が決まるようです。後は普通にやっちゃいけない事やるとBAD END。今回は変な製薬会社とか、拳銃女とか出てきません(オマケで出てくるけど・・・)、安心してプレイできます。ホラー演出はかなりふんだんに盛り込まれており、それなりに怖さが感じられるようになっていましたが、安っぽいグラフィック(霧散するとことか)や、頭の切れた貞子っポイ画像はさすがに醒めてしまいました。こういう大雑把な所は、いつも残念に思っています。人影や声、お経のBGMの演出は良かった。声は、十分良くやったと思えるのですが、逆に「夕闇」のクオリティが如何に高いかを思い知らされます。笑える所も有りました、オマケで出てきた免許証、いくらなんでもあの写真は無いんではないですか?(笑)話の筋はいつもの「並」ですが、これまでのホラーシリーズの中では最も良かったと思います。
210夢から覚めて5分で読める、選択肢無しの短いノベルです(Yuuki!製)。自分に当てはめて考えると、小・中学生くらいの感性でしょうか?友達との人間関係に少し不安を持つ主人公の夢の話です。アマチュアコンテスト用に作製した作品という事で、凝った所は有りませんが、初心者の創作意欲だけで作り上げられています。それでも、何を見せたいのか?そのテーマの様なものはちゃんと感じられますし、起承転結があって良かった。文芸部が作った機関誌を読んだ気分。
211夢の終わり 何か似たような作品名が続きますが、全く無関係です。二時間程度の選択肢のないノベルで、若干オカルト風味のファンタジーです。
 厭世的になっている高2の主人公が、今は廃村となった故郷の村に現実逃避する為にやってきます。主人公はここで夢と現実が幾重にも混ざり合った不思議な体験を通して、小学生の頃の懐かしい家族のぬくもりに浸りつつも、忌わしい過去の事件に少しずつ近づいていきます。やがて、もう一人の自分と対峙した時、全ての記憶が戻り、姉と母は・・・・・・。
 夢の中でのループというか、夢の中での夢、その夢が終わらず何度も繰り返す、良くあるありふれたテーマでは有りますが、その中で描写されているのは、姉や母のさりげない優しさ、小学生の生活と病気、その中に潜むノスタルジーであり、綺麗で構図の良い背景写真と見事なライティングが、物語とよくマッチして一体感が感じられます。
 一般的な読者は、立絵にかなりの拒絶感を感じるかもしれません。寧ろ無い方が良いと思う方が大多数でしょう。しかし、絵そのものにはかなりの趣がありますし、この作者さんの背景も含めた一枚絵(HPにある)は、絵本の様でなかなか味があります。写真などを見る限り、構図や表現力には審美眼が備わっているし、絵の才能も感じられますが、決定的に技術力が足りないので、うつろな表情になり、人体デッサンが崩壊して、読者に違和感と拒絶感を与えているのでしょう。そもそも、この絵は写実的な背景には合わない。この辺が上手かったのは後にも先にも「それじゃあ、またね。」だけだった。もう少し画力が上がり、背景も立絵も自作して、絵本の様な短編が出来れば、なかなか完成度の高い作品になりそうな気がしますので今後が楽しみ。
 話の構成として読み辛いところも多々有りますが、誤字も少なく、なかなか哀愁をそそる良いお話でした。
212小さなホラーvol.3ホームタウン」の作者さんによる、オムニバス形式の選択肢の無いミニホラー作品です。小さなと銘打っていますが、一本一本のテキストはそこそこボリュームが有り、十分過ぎるほど読み応えが有ります。三つのオムニバスは都市伝説・サイコ風味で、それぞれ、「フォルダーの底のJPG」・・・チョット替わった不幸の手紙か?着信アリや、リングを連想します。最後は鮮やかなオチ、天晴れ。「素敵なエステ」・・・OLの内面描写がえぐい、ラストもえぐい。この作者さんは女性のこういう感情の描写が結構お好きのようですね。音の使い方、画像の使い方は、ホラーのお手本のよう。「ハコニワ」・・・同人作家の顔を持つ妻が嫉妬に狂い、旦那を殺害?でも、なんか変ですね・・・・、え!マジ?!どの結末も想像の斜め上を行っており、最後に綺麗に落として私を満足させてくれました。正直、三つの話全部良かったし、面白かったけど、なにより最後のオマケが一番怖かったんですが、これはなんていうかオマケじゃなくて、これで普通に一本のお話ですね。それらしい加工された画像がまた、ぞっとするオチなんですが、最近こういう「世にも奇妙な」的なオムニバスに飢えていたので本当に楽しめました。画面が小さい事だけが「小さい」のであって、内容は堂々たる出来栄え。
213ナツメ体験版の感想: この体験版に関して言えば、ミステリ風AVGです。ひきこもりの主人公と、元クラス委員の神坂東子の二人が、猟奇殺人的な状況下に放り出されて右往左往します。本編では四、五人の登場人物が居るようですが、体験版では死体として登場する主人公の従妹「埋」は名前が既に相当異常。陰影の強い絵が作品にぴったりのおどろおどろしさです。初回起動のみ、妙に明るい日記調のクイズが始まり驚きましたが、そのクイズの正解も異様です。この左右分割型のクイズ形式のノベルはスタイルとしては斬新な気がしましたが、この雰囲気のまま本編が始まるのかと思いきや、一変しておどろおどろしいノベルの世界に突入していきます。スタートすると、いきなりの長いモノローグ。その後も凄い展開で、掴みはOKです(何となく「ドグラマグラ」を思い出しました)。タイトル画面のBGMのピアノ曲も良かったけど、体験版中のBGMは全て非常にクオリティが高かった。
 全部で20分位の内容でしたが、体験版といえども、ボーとしてては先に進めない部分も有り、AVG要素のあるノベルと言う印象。とんでもない誤字があり驚きましたが、総じて絵と文章と音楽がミステリ作品のイメージやスタイルを良く意識して統一されており、読んでいて何が起こるんだろうとワクワクさせられました。勝手な憶測ですが、主人公は疑心暗鬼気味で多重人格っぽいので、犯人を匂わせているけど、レトリックとしてあからさまなので、犯人は「ブルマ女」ではないかと・・・。私が体験版を読み終えてみて素直に感じた感想です。
フリー版の感想: 物凄いストーリに、強烈に惹き込まれながら、最後までやってみました。途中、効果音を再生できないバグとか(これ、そこだけ早送りすると回避できるんだよね)、強烈な誤字で悩まされましたが、何とも表現できない異様さに終始圧倒されっぱなしでした。
 結論から言ってしまうと、クリアして間もない私の中ではこの物語をキチンと消化できていません。キリヱの言うとおりの真相なら「オメガ」みたいな陳腐なファンタジーだし、キリヱが嘘つきで殆どが主人公の妄想・幻覚なら、非常にサイコで複雑なストーリです。で、私にはどうも誰が誰を殺したのか、キチンと整理できなくて、あのマリファナが出てきた所から、全体的に支離滅裂としているような気がするんですよね。一つ言える事は、この作品が演出的にも、展開にしても、音楽にしても、美術にしても非常に良く洗練されていたという事。あの結末をどう受け入れるかは、人によって評価を大きく左右すると思いますが、主人公の思考の描写やその異常性は、そこはかとないリアリティを感じさせ、その表現の上手さと言う意味で、近年出色のサイコノベルだったのではないかと思えます。
 脱出の部分でBadEndが有りますが、それ以外は一本道でエンディングも一つだけでした。あとがきもおまけも無しです。読了には二時間半程掛かりました。
214妖怪倶楽部1話&番外編 吉里吉里製・学園ホラーAVGです。主人公が所属する心霊研究会が噂の真相を調査します。
 あ〜これキました、当たりです。元は2001年頃公開していたコマンド選択式のAVGだったそうですが、この度吉里吉里に移植されました。最初プレイし始めは、絵も無く古い感じの掛け合いが懐かしい「妖界学怨」を髣髴とさせる地味な学園モノでしたが、少し続けてみて気付きましたよ、この作品には学園ホラーに対するフィロソフィがある。本当に描かれているのは、無邪気さ・恐ろしさも含めた「人間」なんです。
 取り合えず一話を読み終わった後(選択肢で何を選んでも、タイムアウト以外はEndingは一個の様です)、タイトル画面に戻って惚けていると、再びボーカル付きEnding曲が流れ、初めてOpeningムービーが有る事に気付き驚きました。これまた良い感じで心を震わせる、素晴らしいカットの連続。よくもこれ程までに物語に合わせた素材が有ったものだと感心。
 そして「ハジメカラ」を選択して、今度は番外編のシナリオをプレイ。こちらは更に感動。その都市伝説的・噂的なシナリオと展開、そしてオーソドックスでありながら美しいまでのオチ。此処に描かれる心霊現象と登場人物達の心象は全てにおいて、非現実的であり、同時にリアルさを感じます。番外編をクリアするとオマケが見られ、番外編のシナリオ達成率が確認できます(私の最初の達成率は84%でした)。
 考えさせられたのは、この作品にグラフィックが無い事。妄想力は確かに重要なんですが、Openingに使われているような加工背景写真が時々にでもあれば気持ちも凄く盛り上がったろうし、物語が更に心に刻まれた様に思います(少なくとも私にとっては「神」です)。しかし、絵が無いからこその味が有るのは確かですし、作者様はそれを選んだという事なのだと思います。効果音でも「もっとリアルで音質の良い、雨のザーっていう効果音が欲しいな」とか、随所に惜しいと思えるところが有りました。細かい所ですが、タイトルの選択画面でマウスをあわせた時に現れる「赤線」も、私みたいな人間にはたまらないギミックなんです。また、これはオマージュとも考えられるのですが、メニューの「音量」がOpeningを繰り返すたびに無限に増えていくのが霊障みたいで怖かった(多分バグ、他にも中央の探索でタイムアウトするとバグります)。
 女性向け同人ゲームを作っているサークルさんの作品ですが、決して女性のみを意識している作品では無いと思います。登場人物が魅力的に描かれ、寧ろ繊細さが有るのがなお良い!幾らでも続きが読みたいです。
215アンチ・ノーマリティ10分で終わる選択肢が有るけど無い様な短編ノベル。サラリーマンが電車に乗って、降りるだけの、何のドラマも事件も無い短いお話。割と直ぐにBad endになるので、片っ端から袋小路の臭いのする選択肢を選んでプレイしました(最初の選択肢以外、二番目の選択肢を選べばみんなBad end)。拳銃で撃たれるendは意味不明。やたら拳銃が出てくるのが気になります。変なラップは、あまりの酷さに閉口。一体なんのお仕事?誤字の類では、「ヘッドバンキング」よくある間違いの一つですが、決して頭を銀行に預けてはいけません。今回は影絵とかは無く、なかなか趣のある背景写真が使われている部分も有りますが、せっかくの写真が上手く生きてないのが残念。音楽は問題あるかも。「ジョージ・ウィンストンなんか使って大丈夫かよ」と思ったら、微妙に変えて有るんですね。でも、これはちょっとやばいかも。
216SOMEBODY15分で終わるdefaultで自動読み進み設定になっている短編ノベル。もちろん、解除したり、セーブも出来ますが、そのまま自動で読み進めても結構読みやすかったし、止めてログも読めるので悪くなかったです。背景写真から言っても設定は外国のようですね、路上生活者の男が、ジャンキーに襲われ撃退する所から始まり、ついでに助けた見知らぬ浮浪者に「お前一杯憑いてるから、取ってやる」と言われ付いて行くお話。選択肢なし、立絵なし、外国の裏通りの背景写真が続く暗い雰囲気で、「無垢」を思い出したりして、ホラー好きの私は結構ドキドキしていたのですが、最終的にはそっちに行かないでファンタジックな宗教っぽい結末に進むのでした。お話としては短い物の、キチンと纏まっている上、(先は読めるが)オチもしっかりしていて十分楽しめました。その一方で、登場人物達の張りぼて感は何となく違和感を感じさせますし、それが何で「私」の罪になるのかも納得できませんでした。どちらかと言うと私は、これのエピローグで女が他の男と結婚していたらイヤだけど、寧ろそれの方がリアルだな、とか色々思ってしまう世間擦れした人間の様です(←夢も希望も無い)。だから続編を作って「DIE HARD3」みたいにすれば面白いかもと想像したり。「再び落ちぶれた男が、また希望を見つけて立ち上がる」みたいな・・・。
217フリーソフト怪談余話プレイ時間10分くらい。タイトル通り、余談。友達の作ったつまらないホラーノベルのテストプレイをさせられるという、その設定が一番怖いネタゲー。全編に渡ってソフトにボケてくるので、読み飛ばしてしまいそうになりますが、改めて読み返す程の内容でもないので、バックログは要らないかもしれません。あっという間に最後の選択肢、どれを選んでも期待通りのつまらないオチで、かなりがっかりしました。どれか一つ、最後くらいはホントに怖い話で落としてれば、少しは楽しめたかも。
218四色さん5分程度の、学校の怪談風ホラーです。小さな窓で気軽に四つの結末が楽しめ(赤、青、黄、黒)、オマケで更に二つの話が追加されます。オーソドックスな演出そのものは意外と良かった。文字の消える感じや、BGMも雰囲気を盛り上げてましたし、でもこれだけだと物足りないですよね。もう少し、色々組み合わせて、長く楽しみたかったです。この怪談の元ネタは恐らく「赤い紙・青い紙」「赤いはんてん」に代表されるトイレの怪談の一つだろうと思われます。常光徹氏の著書には、赤、青、黄の三色のトイレの怪談についての例が示され、他にも数種類のバリエーションについてや、色についての考察が述べられており、その心理的な要因から、これらの怪談が女子によって広められる事について示唆されています。興味深いですね。オマケのギャグストーリもなかなか良かったですよ。
219ru-pu主人公と「昼休みの屋上で出会う少女」との邂逅を描いた作品。月曜日がループする不思議なお話でした。一回遭う度にタイトル画面に戻って、再STARTして、すっかり忘れて、また同じ一日を繰り返すうちに、少しずつ話が進んでいきます。選択肢で失敗すると、同じ日を繰り返します。そのうちに、少女の事や、主人公が何故毎日を繰り返しているのか、気付いていく事になります。この手の話は「ループ系」なんて言われているようですが、「ひぐらし」「MYTH」「時流」等の作品が該当するような、基本的な構成が「一周する」→「忘れる」→「二周目」→「あれ?」→「忘れる」→「三週目」→「あれ?あれ?」→「忘れる」→「四週目」→「ちょっと待てよ!」→・・・って言う構成で、ループって言うよりスパイラルと呼ぶべき、ゆっくりとした速度で物語が進行するのが特徴的なスタイルですが、この「ru-pu」では、一周が一日に該当し、その日が終わるとタイトル画面に戻ってしまうところが驚きます。「えっ、これで一周終わり?」・・・「少年少女」では、もう少し色々あって一日は長いんだけど、ナンか短すぎる気がしません?でも、そういう所もつかみの上手さって事で、リピータビリティが高いです(まあ、ここで終わる人はよっぽどつまらないと思った人だろうけど・・・)。書いてて気付いたけど、あれだ、「わたしのせかい」に似てる。二周目位でオチは見えてるんですが、そうするとヒロインの気持ちに共感して段々切なくなってきます。最後まで読み終えると、結構じ〜んと来ました。立絵のボディバランスは悪いのですが、味のある絵と配色、クラッシック選曲センスの良さで、演出がシナリオを上手く引き立てたと思います。立絵が有る割に男友達の影が、御香典の墨汁並に薄いのですが、この人も何かいわくが有るんじゃないでしょうか?誤字は二箇所程有りました(出だしとエンドロール)。
220古本屋 こほにゃ5章立て、選択肢なし、一時間程度で読める古本屋さんが舞台の軽めのノベルです。最初「Read or die」みたいな物を期待していましたが、思っていたのとだいぶ違いました。主人公の少女が店長代理で、本と会話が出来るっていう設定です。店を訪れる・・・っていうか店長代理が客引きしてる様なもんですが、本人にピッタリの書籍を勝手に押し付けて行くストーリ。その各ストーリに店や少女、店長の謎が絡ませてあって、最終章ではその事についての過去がメインのお話になります。感動する程の内容では有りませんが、しっとりしたお話が多くて結構楽しめました。無難に纏めてあって、プロットはしっかりしてると思う。でも、これに出てくる前半の客達はチョット単純ベタ過ぎる人間性で、軽すぎた気はします。また、現代日本っぽい設定に見えていたのに、後半で急に魔法の世界になっていたのが、チョットついて行けませんでしたが、これは「ハウル」みたいな世界設定でしょうか?画面のデザインやロゴなど、かなりプロを意識した出来で、立絵の塗りも丁寧だった気がしますが、背景と合わさってしまうとアンバランスだったので、アマチュア臭さを感じてしまいました。最後のVocal入りの曲も、蚊の鳴くような声で、何を唄っているのかよく聞き取れませんでした。BGMその物は悪くなかったと思います。
221アパシー 学校であった怖い話体験版云わずと知れた、あのプレミア付き名作ゲームの小説版の同人ビジュアルノベル体験版です。しかも、原作者の個人サークルによる製作という事で、落ち着いて考えると何がなんだか良く分からなくなりますが、要するに飯島氏が「過激過ぎて止められた結末」を、小説版で小出しにして、更に完全な形で同人と言うレーベルにて思いを遂げるという事でしょうか。そこから予想される結末はやはり「坂上君の発狂と惨殺」なんでしょうね?簡単に説明すると、新聞部の企画で先輩にライターを命じられた坂上君が、6人の生徒達から学校に纏わる怖い話を聞くと言うもの。体験版では新堂誠の「高木ババア」の話の途中までプレイできます(んー短い)。出だしや、登場人物、シチュエーションは原作に忠実ですが、話自体は原作に無いオリジナルの怪談になっていました。インストーラ有りで、吉里吉里製です。プロのシナリオももちろんですが、絵も凄い上手かったな〜。C72出展だそうです、全国のファンが殺到する事でしょう。
222あやじょ!! 〜綾椎女子高不思議研究会〜サンダーボルト」の作者様のホラー作品という事で、張り切ってプレイさせて頂きました。私は二時間くらいゆっくり楽しんでやりましたが、一時間ぐらいで、最後までプレイできる長さです。女子高生三人組みが、同好会を結成し、呪術師の住む村にインタビューに行くお話。そこでトラブルに巻き込まれていくのですが、普通の台詞が何故かコメディっぽく聞こえてくるので、怖いお話とは云えませんが、笑いながら楽しくプレイできました。吉里吉里製で、所々昔懐かしいクリッカブルマップを使用した探索パートあり、アドベンチャーゲーム仕立てで、私的には好みのスタイルのゲームでした。導入部で、かなり私のハートをしっかりと掴んでくれたんですが、先に進むに従って徐々にその手が緩んでいくのを感じました。でも最後までプレイしてみて楽しかった。色々突っ込み所は大いに有ったと思いますが、それもギャグみたいなもんで話はちゃんと完結しており、今後シリーズ化のための土台も出来ていたように思います。随所にパロディの様なもの感じましたが、この作者に限ってこれは気のせいではないでしょう。エンディングは普通に選択肢を選んでいくとGood endに辿り着けました。Bad endは4個で、大抵は選択肢直後の即死ブランチです。Tipsで表に出てない設定や、作者のコメントが読めるのも良く、立絵も変に媚びた所の無く、また性格とも良く有っていて良い絵でした。最後の方で唐突に「水晶」が必要になるんですが、そんなモン取った覚えも無いのに、いつの間にか持ってるんですよね、改めて何回かやり直しましたが、「水晶」取りに行かなくてもエンディングに辿り着けるみたいです。もちろん取りに行っても良いんですが、あんま関係なかったような・・・。終盤辺りの「まぁ、いっかあ!」みたいな展開は、一番笑えました。真面目なシーンなんでしょうけど・・・。作者blogにて外伝的関連小説「放課後探検隊」も連載中のようですね。作者さんの目指しているものには、期待できそうな気がしますので、続きを楽しみにしています。readmeのコメントも結構笑える→blogの「反省」を見て爆笑!ストーリが変わってしまった理由を知って唖然→あまりの評判の悪さに最後の方のシナリオを一部変更(笑)ガンバレ!!!→クリア後のおまけとして『怪奇探偵アキラ』を追加。
223一籠の眼伝奇風味の短編ノベルです。山で遭難したワンゲルの主人公(山岳部じゃないところが、微妙なニュアンスを感じるけど・・・)が、隠れ里に迷い込んだ上、出られなくなり、そこに住む一人の少女と神様「ワクラバ」の戦いに巻き込まれる話です。写真は結構良いものが使われていますが、ぱっと見、絵はチョット微妙な感じです。ですが、読み進めてみると良い感じにシナリオとマッチしていたし、なにより読みやすさ、台詞の自然さは結構感心しました。よって、主人公や少女に感情移入して読めました。この神さんはちょっと特殊な設定になっており、村人との約束の取り交わしにより、村の守り神になった訳ですが、それに飽きて暴走しています。如何にも俗人ぽい感じです。しかも、何でも出来ると言うのとはチョット違って、言葉の縛りの様なものあり、自分で発生した力でも、一度自分を離れてしまうとコントロール出来ないって言うところが面白い設定だと感じました。中盤以降、ちょっとした異能バトルになって行く訳ですが、ねちねちとした戦闘描写が延々続くと言う訳でもなし、これくらいなら私は許容範囲でした。ちょっとしたBadEndはありますが、基本的に最後の選択肢までは一本道で、最後に二つのエンディングへと分岐します。どちらもそれなりに良いエンディングですが、一つはHappyEndでした。最後まで飽きずに一気に読みきれたし、面白かったな。
224雷雨サウンドノベルという言葉は、チュンソフトの登録商標なのですが、その言葉にふさわしい、効果音による雰囲気作りに重きを置いた作品でした。終始、夢の中の様に、非現実的な雰囲気の中、主人公(ユウ)の行動が綴られていきます。夢の内容を手紙に書き付けたり、その手紙を持って逃げるニセ母親を追いかけて雷雨の中全力疾走したり、はさみで刺したり、パンダ顔の人間に襲われたり・・・、と言ったように、特に目的も無く、夢を見せられているかの様に、支離滅裂で淡々とシナリオは進んでいきます。ストーリは全く違うけど、BGMや画像が押井の「迷宮物件」を彷彿とさせました。私は、あの作品に随分あてられましたので、雰囲気自体はもろ好みの部類に入ります。しかしながら、システム面について言えば、ウェイトの長い部分が多かったり、吉里吉里デフォ設定のままで、特筆すべき良い点は有りませんでした。20分程度で読み終わりましたが、最後もあまりにあっけない(おわり)でした。雰囲気を楽しむ作品だと思います。ホラーチックな演出はかなり楽しめました。
225Lazy Endless One Week分岐有り、一時間半位、アンニュイな女性の一週間を描いた、現代大阪が舞台の一人称ドラマ風ノベル。文芸サークルさんと同人ゲームサークルさんの合作という事で、シナリオは結構読み応えがあったっというか、面白かった。エンディングは二種類でHappyとBad、フラグではなく変数の値で決りますので、攻略方法はありません、まあそういう事してればそうなるわなあというBadEndです。水曜日、木曜日、金曜日あたりで結構盛り上がってしまったので、土曜日、日曜日がどうなるか凄く嫌〜な予感がしたのですが、意外にも綺麗にオチがあり、ハッピーエンドで締めくくられていたのは、驚きました。読み始めの時に感じていた鬱ノベルっぽい不安感は無くなり、最後は良い読後感だけが残ったように思います。主人公の女性は、非常勤の高校教師らしいのですが、「下らない」「つまらない」を連発してくる、スカした感じの女で「浸ってんなー」って言う印象なんですが、これが最後一歩手前までぶれない所が良かった。「お前はそんな事言わないだろう」とか、「それは違うだろう」みたいなところが全然なかった。だから、主人公が加奈に会いに行くところも、その範囲内で心境が描写されており、別段違和感を感じなかったし、自然な流れに思えました。違和感を感じたのは、台詞から来るキャラクターのイメージよりも、立ち振る舞いが全体的に若い印象を受けた事ですかね、軽い感じ。背景写真については、寂れた大阪ミナミの風景を写しているのも良かったし(自宅の写真に男性用スーツがぶら下がっていたのは?!)、音楽もオリジナルで良かった。絵は、加奈は可愛くてよかったけど、馬宮は微妙。主人公はチョット違う!って印象。システムも、カスタマイズされた吉里吉里で、オリジナルのトランジションや、曜日のパーティションを出すマクロもカッコよかった。最後に、この主人公は自分の気持ちに素直になる訳ですが(最初のシーンが伏線)、これが本当の自分と言うなら、その事件とはどういうモノだったのか、読み終わっても気になっちゃいますね。普通の人間があそこまで厭世的になるって事は相当な事の様に思えますから。ま、もともとツンデレっぽい人ではありそうですが・・・。
226千夏ちゃんとあそぼうサイコスリラーと呼ぶべきかどうか迷いますが、短編のノベル(20分くらい)です。母親が出て行き、父親と二人暮しの女子高生「理子」が、冴えない中肉中背少年を巡って、サイコで地味な同級生「千夏」と、どろどろの愛憎劇を繰り広げます。どれ位ドロドロかと言うと、寝取って、寝取られて、普通にソープオペラの世界。お前ら高校生かよ!これって、今時の高校生だと普通なの?!・・・とか、叫びたくなるんですが、まあ、創作の世界ですから、話半分で笑って読まないと、ハァ。結末は仲良く一緒に暮らすでハッピーエンド(?)ですが、結構変化球でオチ、来ましたね。でもまあ、十分納得できる結末です(この世界なら)。そうですね、演出とか、音楽とか、ホラー的な怖さは皆無なんですが、話の陰湿さや、登場人物たち(ほぼ全員)の心理的な異常さが、そこはかとない息苦しさを読むものに与えていたように思えます。そういう意味でなかなかの良作でした。正直、千夏は上手く座敷わらし風に描写してあったので、最後辺りで怪談ぽくなるに違いないと思っていたのですが、別の方向に行っちゃいましたね。敢えて言うと、「ルームメイト」のブリジット・フォンダじゃ無い方の女の子。素材に頼って作られているので、全体的に印象が薄くなっていますが、シナリオには結構引き込まれました。
227月照〜ツキノテラス〜踏切」のサークルさんの新作恋愛ノベルです。プレイ時間は1.5hr位、選択肢はありません。非常に丁寧な作りで、容量もでかいんですが、それに見合ったクオリティに感動です。恋愛といっても、良く良く考えると同性愛な訳ですが、そんな事をすっかり忘れさせる程、アマーな感じの展開ですね。その設定が効いてたのは最後の方で、マイの内心を窺う部分だけだった様に思います。ストーリは、25歳の主人公が、広告代理店を辞め、半年の引き篭もりの後、ニューハーフパブで裏方として働き始めると言うもの。そこで出会った店の"女の子"であるマイと心を通わせていく事になります。断っておきますが、ボーイズラブとは言え、801なものでは決してありませんでした。寧ろ、ビジュアル的には、萌え系に属すると言わざるおえません。まあ、あり得ない容姿なのは良いとして、内面的にも完全に少女(と、言うか有る意味主人公を翻弄する女)、声が少しだけボーイッシュ(注:ボイス有りです)な位で、他は何ら恋愛ゲームのヒロインに引けを取る部分は無かったと断言できます。まあ、私的には、恋愛ものが苦手で、しかも801にもめっぽう耐性が低いものですから、時々正気に戻って、突っ込みまくってなかなか先に進めなかった、なんて事は些細な事です。そりゃあね、本当にこんなに綺麗だったら抵抗も無いかもしれません、想像したくはないが・・・。この作品の上手かった所は、古臭ささえ感じる、オーソドックスな恋愛もののプロットに、斬新な設定を盛り込んで、その事を結末の上手いexcuseにした所ですね。その一方で、途中の展開には若干の手抜き、というか端折りの様なものも感じられるのですが、その辺まで突っ込んで書いてたら、完成も遅くなるし、プレイヤーもダレたかも知れませんね。演出について言えば、非常に丁寧。オマケでイベントCGを観ましたが、これだけのCGだったっけ?って思わせる位、立絵のラインナップも、使い方も上手かった。逆に言うと、リソースが少なくても、十分なボリュームを私に感じさせる位、演出が上手かったって事になります。絵も綺麗でしたね。塗りも丁寧。正直、非の打ち所の無い位、可愛い少女です(笑)。しかし主人公の絵は、あんなもんかという気はしましたが(出だしの実写と違って、恋愛ゲームの主人公って感じ)。背景素材のセレクションも加工も立絵に馴染んでいたし、なにより背景の雰囲気作りが演出に良く効いていたように思います。最後の、みなまで言わない演出は◎!
228かつひこの大冒険多分Javascriptで作られている、ブラウザで遊べる異様なアドベンチャーゲームです。プレイ時間は15分位、途中からスタートも出来ます。ジャンルとしては何でしょう?不条理なシュールレアリズムでしょうか。記憶を無くしたかつひこが、福島をウロウロしながら、天使達(キモイ)と戦います。早く帰って来いと煩い母親、人魚(人魚か?)、巻きウンコを頭に乗せた村長、リーゼント等、色々出てきますが、最終的には、さらわれてしまった人形持った女を助けに行くのが目的だった様です。私のブラウザだとしょっちゅうバグるんですが、なんとか最後までクリアできました。独特の雰囲気が、楳図かずおを髣髴とさせ、プレイヤーを狂気の世界に誘っている様で怖い。どうでもいい設定や色んなデザインが、見る者を吹き出させます。
229立入禁止10分程度の短編FLASHノベルです。オカルトチックなホラーという事で、都市伝説風味になっています。普段よく目にする「立入禁止」の書かれたボロイ建物の中に、主人公は気まぐれに入り込み、怖い思いをします。フラッシュ系の怖い作品は数多有りますが、この作品は動的な演出が有るわけでもなく、凄く良いBGMは掛かるんですが、たいして怖い物でもありませんでした。あとがきにも有りましたが、ツールでもよかったかなと言う気はします。逆に、鏡に映りこむシーンをFLASHで動的にやっていたら、非常に怖かったろうなと思います。話のオチとしてはオーソドックス、でもありふれているからこそ、身近な「立入禁止」を思い浮かべて、気になったりする人も居るかも知れませんね。
230ほんとにあったかもしれない怖い話「猿夢」5分程で読める怪談ノベル。「彼岸と・・・」や「頽廃」の作者さんの新作です。前二作と異なり、キャッチーなネーミングで、しかも時期的にも「アパシー」と、かぶっているのが気になります。内容は夢の中で電車に乗った語り部が、乗客共々順番に変な方法で殺されていくというもの。二年位前の2chのオカ板のスレにあった書き込みを原作にしている様です。話の内容自体は、全く怖く無かったのですが、寧ろ、夢の描写が独特の雰囲気を持っており、面白かったです。本作品では、ホラーチックな演出よりも、その原作の独特の雰囲気を映像と効果音で非常に上手く表現して有りました。そういう目で見れば、これも前二作と同じような雰囲気ゲーの印象と同じです。これまでと異なる点は、選択肢や入力が全く無く、一本道ノベルとなっている所です。このためVectorでのジャンルは、オンラインマガジンに分類されていました。これまで同様、背景は自作の物を使用しており、加工も含めて美しい出来でした。また、ギミックやデザインは非常に洗練されており、蝋燭の動画も目を見張る程の出来です。シナリオに関しては弱点部分を原作で補ったと捉える事も出来ますが、むしろ題材としてこの話をノベルにしてみたかったのは、どういう動機かを考えると、作者さんが作り易かったと言うのが、その理由では無いだろうかという気がします。これも、習作の一つなのかも知れません。
231didymos[Collette:コレット]ツクール製の脱出系AVGです。この作者さんの作品は物凄く人気が有りますね。作品によってゲームバランスにバラツキが有るのですが、今回の新作はかなり易しい部類に入り、初心者でもきっと楽しめると思います。まずタイトルの意味が気になるところです。"didymous"は双子を意味する形容詞ですが、"didymos"ですのでミススペルか他に何か意味が有るのかもしれません。双子のマルセルとコレットのお話のようですが、前編に当たる「コレット」をプレイし終えてみても、物語の全体像はぼんやりとしか見えてきません。これまでの作品と同様に屋敷の中を探索してアイテムやメモを集めつつ、仕掛けを作動して最後の開かずのドアまで到達するのが目的です。エンディングは、「ドアのキー解除に失敗したらEND(A)、解除して自分を撃つとEND(B)、一捻りして間接的に自分を撃つとEND(C)です」 仕掛けを作動させると過去の断片的な記憶が蘇り、この双子に何が起こったのかが明かされていくのかもしれませんが、現状では何となく、多重人格か浦沢直樹の「モンスター」みたいなお話になるのかなぁ、といった印象です。後編のリリースも気になりますが、前編のボリュームが丁度良く、それなりに満足してしまいました。謎解き部分の攻略ヒントを以下に伏字で「基本はまず、仕掛けを作動させる為の手掛かりを見つけてフラグを立てる事が重要です。宝箱の部屋のパズル:開けると動かせます、押して下さい。一階の白いドア:廊下の柱が一本他と違います。二階の白い部屋(左):宝箱の部屋のパズルで開きます。三階の左の番号ロック:電話の時報(変動)、PMに注意。三階の一番左の部屋の中:クランクは一階のを使いまわし、上手く動かせばマッチも手に入ります。番号は、鏡の部屋の柱がヒント、でも栞が無いとダメですよ(番号固定)起動ディスクをGET。三階の白い部屋:工具が無いとボルトは外れません、でも何かを入れてからボルトを締めないと箱は外れません、そしてメモAをGET。二階の右端の白いドア:まずケースを置いてついでにレバーも下げときましょう、そして・・・壊すんです。PCのパスワード:これは感性が物を言いますが、決して難しくは無いと思います、良くみて感じた数字を入力(変動)。三階の右端の番号ロック:間違えばEND(A)です。でもこれはメモA見て、試行錯誤しか無いでしょう(固定)、ヒントは同じ数字は二度使わない、5以下の数字ばかりです。最後の部屋:ここで撃てばEND(B)、他のある部屋で撃てばEND(C)」簡単だったでしょう?
2008.1.8追記:暫くサイトを放置されるそうです。2008.5.3追記:復活、続編「Marcel」公開です。
232片翅の蝶マルチエンディングのサスペンス風ノベルです。双子の姉妹の姉が集団暴行され、自殺未遂の後、放心状態になり、その妹が復讐の鬼になります。主人公は二人の元担任教師で、父親のDVから姉を守ろうとして失職していましたが、偶然妹の復讐劇に巻き込まれていく事に・・・。エンディングは4つ、二つは即死ブランチ、一つは後一歩及ばずEND、最後はまあまあHappy Endでした、攻略は簡単です。このお話で、姉が暴行され、妹が復讐の鬼になるシチュエーションは外国映画で観た事が有る気がするのですが、どうしても思い出せない。同様に、本人が復讐する映画も有った様に思います。そんな既視感を感じつつも、プレイする事一時間ほどでコンプリート達成。最初、異常な胸の大きさに、立ち絵への拒絶感を感じていましたが、胸の部分はこの世界の人は皆こういう胸なんだ、普通の事なんだ、と割り切れるようになり、気にならなくなりました、寧ろ胸の事さえ気にならなければ、表情にシナリオ展開にあわせた多くのバリエーションが用意されているなど、演出効果のある、なかなか味のある良い絵だと思いました。まあ、こういうのは作者さんの趣味なんでしょうが、プレイしてる立場としては普通が一番だよなとしみじみ。と言うのも、この作者さんの書くシナリオはなかなか面白くて結構引き込まれるし、台詞も不自然さが無かったので、もっと普通の立絵だったら、こういうのに抵抗の有る人でも読めてもっと間口が広がったのにと少し残念に思います、逆にそういうのが好きな人にとっては、堪まらんのでしょうが。オマケのシナリオはハッピーエンドの続きに模したギャグ仕立てになっています。こういうのって結構辟易する事が多いのですが、これはそうでもなかった、掛け合いが上手かった。
233止マナイ雨ニ病ミナガラ体験版2ch有志で製作した「ヤンデレ」ノベルの体験版です。一通りのヒロインの顔を拝んだ所で終わりとなります。真面目にやるものでも無いだろうと思い、さくっとやり終えてハイライトシーンも一通り読んでみましたが、お話は別段興味を惹くような内容ではなかったです。どうも最初からヒロイン皆が病んでますって言われて始めるからか、何が起ころうがあまり驚かないっていうのが、問題有る様な気がします。結果的にヤンデレだった事に気付いていく物語だからこそ、引き立つ種類の作品なのではないかと思うのですが・・・。ツンツン→デレデレが「ツンデレ」ですが、「ヤンデレ」は、デレデレ→発狂と逆に進むのがセオリーの様ですね、ここは一つ、精神的病み→デレデレって言う健全で明るい展開はどうでしょうか?私としては「ヤンデレ」は、語呂が良いだけで、サスペンス物の一つの要素に過ぎない気がして、今の所ピンと来ないです。序盤なので良く分かりませんが、シナリオのセンスはイマイチでした。絵や音楽に関しては、文句の付けようが無いくらい良く出来ています。有志とは思えないクオリティですね。あと、若干ですが18禁な描写が有った様に思います。
234Baroque.電波ノベルという事ですが、全く理解不能と言う訳では無く、普通に「こういう事かなぁ」と、ストーリを追いながら読んでいく事が出来ました。「8月の雨」の作者さんの作品で、この人の作品は雰囲気が良いですね。結婚式を血の海に変える少女と少年の話です。8月の雨と違い、「何故」に答えの無い、分かりにくい話ですが、ドッキリする演出といい、モノクロームな画面といい、シャープな切れ味を感じました。バロックというタイトルから、音楽的な事を想像してしまいましたが、BGMは殆どなく、どちらかと言うと「風変わりな」とか、「歪な」等の形容詞的な意味の様でした。確かにこの少女はただの殺人鬼としか思えませんでしたが、設定的にはオカルトか伝奇なのだろうなぁ・・・。立絵、選択肢は無く、15分位で読み終えられる手軽さは良いのですが、残酷シーンで若干ひく人も居るかも。
235包丁さんのうわさ四色さん」等のショートなホラー作品を製作した作者さんの、中篇の学校物ホラーAVG。マルチエンディングで、プレイ時間二時間半です。中学生の主人公達が、任意の対象を殺してくれると言う「包丁さん」を呼び出してしまったが為に、呼び出した全員が包丁さんに惨殺されそうになる筋です。最終的に「ある質問」に答えなければクリア出来ないのですが、あれ程不自然に、半ばご都合主義的に何度もヒントが出てきているのに、余程の事が無い限り二回目でクリアできない筈はありません(敬称にこだわるところがワロタ。可愛いけど)。本編をTrueEndで終了すると、オマケでプレイ中GETしたアイテムの説明やエンディングリストが観られたり、五年前の事件を描いた「包丁さんのうわさ0」が読めます。このプロローグは、ちょっとアイキャッチがしつこいですが、性格の異なる包丁さんが出て来る所は面白かった。バッドエンドの幾つかは、この学校の七不思議に絡めた分岐になっていて、それも一つの怪談話として楽しめました。結局、包丁さんは可愛そうな「スケープゴート」だった訳ですが、なかなか説得力のあるオチでよかった。この辺は「トワイライト・・・」の雛代の話に通ずる民俗学的な側面を持たせた所に深みを感じました。中学校内で起こる惨殺パニックホラーとしては、トラディショナルな描写が多く、私みたいなその手のファンには堪らないのだけれど、普通の人には新鮮さを感じられないかも知れませんが、あの絵に関しては、私もかなりショッキングでした。わざとああいう姿になっているそうですが、でも、あれはあれで表情を感じられる所が演出的に面白いと思いました。総合的にみて、本作はホラーとしてかなり良い出来だったと思います。ただ、この作品に限った事ではありませんが、Nスクには必ずBGM音量の設定を付けて欲しいと思いました。どうしても進めなくなった時は、しつこく色々足掻いてみるのが良いかもしれません。
236脱出ゲーム学園お馴染みのFlashの脱出ゲームです。学校の各部屋からの脱出が目的ですが、どの教室を選ぶかは自由に選択でき、それぞれにちょこっとしたストーリも付いています。簡単ですぐクリアできるし、アイテムの発動にも一々ややこしいパズルをしなくても良いので、ちょっとした暇つぶしで遊ぶには丁度良いゲームです。部屋数も11(まだ増えそうですが)と多く、かなり長く楽しむことも出来ます。素材の背景画とクリッカブルマップを使用しているだけで、BGMもありませんが、これだけでも十分面白いし、何故か雰囲気が良いですね、さりげなく風鈴が鳴っているのがGood。以下はヒントの様なもの。「教室編」・・・壊しまくって最後は窓から脱出。「放送室編」・・・はさみ、ヘアピンがポイント、何度もみる。「美術室編」・・・「これは行くしかない」と、「連鎖爆発」にワロタ。天井から脱出して眠りに落ちクリア。「音楽室編」・・・オカルト、運歓田英。「図書室編」・・・最難関、直ぐに脱出しないで粘り、神社に行って宝探し。「食堂編」・・・何か理不尽な感じもしますが、モーニングセットがいいようです。ミニ経営ゲームは面白かった。「部室編」・・・難しくは無いが、めんどくさい。バットは投げて。夢オチ?「学生寮編」・・・簡単。取ったり、置いたり。二重人格?「体育館編」・・・結構難しい。一通り汗をかいとかないとプールにはいけないようですね。「保健室編」・・・簡単、でも続く。「校長室編」・・・鍵の組み合わせでエンディングが変わります。失敗すると、ループ、病院送り。ゴム手袋がポイント。HappyEndはかならず有ります。「理科室編」・・・天文部の肝試し。暗号解読がポイント、何度も読み返す。骸骨にぶつを持たせた後、頭のチェックを忘れない。バッチ入手でクリア。
2377月31日の狂気v2 短編のツクールXP製ホラーAVG。ストーリは、IELという会社のツアーで二泊三日の船旅に参加した主人公達が、船のトラブルで、不気味な噂のある「葉月島」に避難する事になるというもの。お約束どおり、その島の館で殺人事件が起こります。
 14回三分ゲーコンテスト参加作品という事で内容は比較的短いんですが、例のごとく三分では終わりません、大体10分位。
 エンディングは四個、@小船で脱出(真相不明)、A紅茶で毒殺、B一人で対決、C二人で対決です。どれもハッピーエンドとは云えず、何となくCが真相Endの気がしました。セーブは無いのですが、ESCキーで選択したシーンの途中から始めることは出来ますので攻略はそれほどしんどくは無いかと・・・。
 結局全てのエンディングをみても説明不足で何やら良くわからず、色々な謎が残されるのですが、四つ全て見るとシーン6が追加されて、IEL関係者の資料の様な物が読める様になります。しかし、それを読んだとしても、まぁ何となく分かったようなわからんような、微妙な印象ですね。
 ゲームデザインとしての完成度は高かったと思うのですが、イマイチ抜けきらない何か、お話そのものの未完成な部分を感じてしまいました。どうしてもクリアできない人の為にヒント→「壁の抜け穴
238さよなら雨女 万華鏡奇談をプレイしようとHPに行ったら、この作品があったので先にやってみました。プレイ時間5分の吉里吉里製ショートノベルです。雨女の女性が幸せを手にするお話。
 立絵なし、背景写真のみの、なんて事無いささやかなお話ですが、私も子供の頃、雨男だったんで何かチョット気持ちが伝わって来る気がしました。嫁と付き合い始めた頃から、晴れ女の所為か雨に悩まされる事が減った様に思います。最近では、仲間内で私が晴れ男の様に言われるまでに性質が変わってしまいました。主人公にとっても彼がそう言う存在であれば良いなと思います。やっぱり、縦書きのノベルは良い!
239万華鏡奇談 分岐も含めて二時間掛からない位の比較的短編の和風ホラーノベルです。一箇所だけの分岐で三つの話「鏡子編」「祖母編」「桜子編」に分岐します。祖母の葬式の日に田舎に帰ってきた無職の主人公が、蔵で万華鏡を発見した事で蔵の秘密を知っていく怪談です。
 久々に良作のホラーでした。素材かもしれませんが、ほんとに良い効果音使ってたし、背景写真もグッチョイ。驚かせる演出もバッチリはまってたし、雰囲気で怖がらせるしっとりした演出も素晴らしかった。文章の方は縦書きで読みやすく、謎の様なものも散りばめており、選択肢によって分岐する三つの話の中で、部分的に明かされていました。全部納得と言うものでもなかったので、後はご想像にお任せという事なのだろうと思います。序盤は抑揚の無いのっぺりとした感じで、なかなか入り込めなかったのですが、読み進むうちに速度も速くなり、ホラー演出の数々で、きも〜ち良くなってしまいました。
 クリックを受け付けない長いwaitや、ハングアップしたかのような妙な間はイマイチで、あまりシステム関係は手が入って無いと言うか、デフォルトのままのため多少のストレスを感じました。この点は残念でしたが、和風のホラーを楽しみたい方々にはお薦めです。演出だけで言えば「頽廃ノスタルジア」の様な派手さは無いものの、怪談話としてはかなり楽しめる作品です。
240怪光写真 待った甲斐が有りました。終に今年のホラー傑作来ました。元々はツクールモバイルの三部作品を背景写真を一新しての吉里吉里リメイクなんですが、コンパクで銀賞って事で凄い期待してDL。
 元々この作者さんの作品は「ガイストレッター」「鳥籠の少女」と非常に素晴らしいクオリティで、私がホラーAVGに求める要素と作者さんが描こうとしてる物が良く一致しており、今回も一方ならぬ期待が高まっていたのです。早速起動してみると、背景写真加工のクオリティやBGMの完璧さに感動。導入部も非常にスムーズで、良くある出だしのとっつきにくさが全くありません。謎解きホラーという事で、システムはノベルと言うよりはAVG仕立てで、割りと頻繁に「見る」とか「話す」等の選択肢が出てきますが、分岐は無く、多分一本道ですね。
 話の筋は『駅前に貼られてたバイトの募集を見た高校生の主人公が面接に行くと、そこはマニア供に心霊写真を売りつける事を仕事としている「心霊写真研究室」で、そこの「美月」と言う女性に、デジカメと懐中電灯を渡されとある心霊写真の「霊」の正体を突き止めて欲しいと頼まれる。何故か高額の報酬もあり、訳の分からぬまま主人公はその写真が取られた泉ノ恩丘へと赴く』と言うもの。最初に渡された懐中電灯を見て「これは、あの懐中電灯じゃないか!」と思ったんですが違う様です。
 以下はプレイ記録にて反転「バスの廃車の前で最初の怪奇イベントと思ったら、ギャグイベント、笑わせます。しかし、この人が本編で重要な人物になるとは意外でした。なかなか読めない展開です。いやーそれにしてもBGM良いな、ボリューム上げまくり。そして本格的に探索開始、チョコチョコっと仕掛けをクリアして探索終了。フォトコラージュってちょっと・・・、心霊写真研究所ってそういうことかよ。色々あってPCのパスワード入力成功、そして美月の跡を追う。消しゴムはこんな事に使うのかって事で一日目終了。二日目は、探索の途中で出会ったひ弱な大学生、朝倉君視点です。例の壁文字、読み方変わってる。かなり正確にトレースしないと読めないね。おお、ロッククライミングですか、岩場は得意ですよ、ああ迂回ですか、そうですか。また消しゴムの出番ですね、それにしても不思議な消しゴムだな。カタカナ入力かよ!崖がたくさん有ってとても人の行ける場所じゃない?!得意だっちゅーの、そこへ行こう。なんだかんだでもう四時前か倉庫へ。この虹の謎解き、私には簡単だけどチョット分かりにくい色がある。ああ、行くなって、まあ本人知らないから仕方ないか・・・、死亡フラグ。三日目、美月視点。パスワードでか過ぎやろ、アリんこめんどくさ過ぎ。何この鰊と鰯と鰊と鰯と藁人形。映写機は全部くっつけて入力すれば良いわけですね。ああ、なんという真相。コマンドと音楽がシンクロしていく感覚が素晴らしい。
 プレイ時間二時間程度、最後に文章が流れる不具合がありましたが、それ以外は特にシステムで気になるところはありませんでした。でもクリアしてもタイトルに戻らないのは寂しい気もします。それ以外で難があるとすれば、それは謎解きのパズル。とっても簡単なんですけど、ちょっと非現実的で突っ込みたくなる部分もあります。でもまあ、これもゲーム性と達成感を高めるサービス演出みたいな物だと思います。
 ああ、これ名作じゃないか?ミメイ程じゃ無いけど。ホラーとしての演出も雰囲気作りもクオリティ高いよ。謎解きとは言え「ガイスト」程難しさも無く、さくっと楽しめるし、毎回の含みのある結末といい、とってもお気に入りです、続編希望。
241匣の中の楽園〜ハコノナカノトモダチ〜 スレた主人公の女子高生が、学校のPCで見知らぬ誰かと、メールのやり取りをするお話です。気が付くと怪談ぽい展開に突入しています。
 30分位で読める一本道の物を探していて、たまたま見つかったので読み始めました。チョット女性向けっぽいので、出だしでは、その後の展開に全く期待できなかったのですが、中盤位からは結構のめりこんで読んでました。
 最後まで読み終わって「結構、上手い人だな〜」と思い、Readmeを見てみると、プロの方という事で納得でした。絵は余り期待しない方がいいかもしれません、でももちこはキテルヨ。
 所謂じょしこうせー的な思考の描写は、自分が全くわかんないだけに興味深く拝読させて頂き、今まで読んだどの女子高生描写よりも虚構のリアリティを感じました。正真正銘の今時の女子高生とは、少し違うのかもしれませんが、張りぼて感が無い、魂の入った主人公(と、もちこ)に惹き込まれました。でもなんか、PCに対するおっかなびっくり感は、いやに年寄り臭かった気もしましたが・・・。男子は張りぼて。とにかく、もちこはキテタヨ。
 オチも良かったし、謎も残ってますし、舞台も学校ですし、連作のようですから、次回作も期待してます。小説では完結してるそうな。最大の欠点は、しつこいアイキャッチ!
242RE 乙女ゲー、主人公「蛍」の学園恋愛ストーリです。・・・と言うフリをした、鬱男の物語です(製作は2004年)。
 エンディングは五個。実質、フルコンプまでニ時間位ですが、結構時間掛かりました。と言うのも、最初の段階で読むのを挫折してしまう位、つまらないからです。・・・なので、突然あのオープニングが始まった時には、唖然となり「やられた」と思いました。あの「妖怪倶楽部」を書いた人が随分つまらないもの作ったな、と思ったのですが・・・、悔しいですが私の負けです。さすがですね。
 ストーリ的には、少々強引な・・・かなりぶっ飛んでる所も有りましたが、乙女ゲーとしても普通のAVGとしても、プレイヤーを選ばず遊べるように出来ていますし、絵も上手くて、性別問わず好感の持てる絵柄で良かった。あの人が最終的にベストヒーロー(ヒロイン?)になっている所が、ニクイですね。まあ、チョット動機が弱いんで、感情移入しにくいのと、こんな事しちゃって、この後二人は幸せになれそうも無いのが何気に後味悪いのが難ですね。
 「RE」ってタイトルが何となく、そういう意味かな〜と分かるようになるまでは、作者さんを信じて、頑張って続けて頂きたいです。エンディング達成率にあわせてEXTRAも付きます。
243MAGDALELA 中世ファンタジー風ノベル。背景写真のみで構成されており、殆ど絵は無く、基本的には選択肢なしの一本道ノベルですが、一ルートクリアするごとに、一つ分岐が増える仕組みです。最初の選択肢で3ルートに分岐、クリア後にオマケ多数、コンプリートまで約3時間。聖女、王、賢者、騎士の四人が織り成す愛憎劇といった感じで、聖女が世界を再生するユグドラシルの樹に取り込まれるまでの7日間をルートごとに視点を変えて描いています(賢者ルートのみ長い昔話になっている)。
 北欧神話(ユグドラシル)や聖書(マグダラのマリア)、日本神話(ヨモツヒラサカ)なんかがチョコチョコっと組み込まれており、読みながら設定を妄想しやすく、作品に深みを与えていました。私の場合、横文字風(カタカナ)の固有名詞が複数出てくると拒絶反応が起こり、一ルート目の最初の方などは早送りで殆ど読んでいませんでしたが、話が佳境に入ってくる中盤以降、自然と文章が目に留まり、急激に引き込まれていきました。
 特に一ルート目の結末は、モチーフとしてありふれた題材を皮肉たっぷりに、かつ真っ黒に締めくくっており、なかなか読み応えがあります。二ルート目の王様ルートも、三ルート目の賢者ルートも、視点を切り替えただけでなく独自の結末へと進み、救いが有る無しは別として、皮肉の精神を貫き通すストイックな内容でした。
 結論として、非常に良く出来たフリーノベルだと思いました。作者さんの主張は不明確なんだけど、批判の精神でもってドラマティックに世界の不条理描き、それを作品としてコンパクトに完成させている点でレベルの高いアマチュア作品であり、フリーで作られる事に意義を感じる良作でした。
 ・・・それにしても、この人の作品には誤字が少ない、今回もオマケに一箇所だけでした。
244繭の檻から見える空
体験版
 学園ミステリーAVG。「プロジェクトラベンダー」を作ったサークルさんの新作です。
 微妙に現代日本と違う世界で、主人公のアヤ先生が私立高校に赴任する所から話は始まります。他校からの編入が多く、生徒・教師とも全寮制の変わった学校ですが、三年生の生徒達は皆健やかで素直に見えます。先生達も個性的ですが人のよさそうな人ばかりです。その中で一人だけクラスに登校して来ない留年生シイナの事が気になるアヤ先生。しかし授業に出席するよう説得を続けるうち、逆に自分の欠落した記憶に気付き始める事になります。
 ・・・体験版で公開されたのはシェア版では三つあるルートのうちの一つで、ルート内の分岐でEDは7つに分かれます。全クリで三時間位は掛かりました。私は結構シイナの心を開こうと頑張ったのですが、ヒグチ先生のフラグが無かったりして、ベストEDにはなかなかたどり着けませんでした。やっぱり、相談は大切ですね。あと全クリを目指すには、HRの後の選択が何気に重要だったりしました。
 作品の一面的な部分しか見えていないので、トクマ先生の素性や「生徒会長」やら「教頭」やら、残された謎がてんこ盛りでしたが、私の感想としては「どうしてもシェア版が見たいっ!」と言う程、強くのめり込む事はありませんでした。優しい絵の感じや、飾り気の無いすっきりした文章が非常に好感を持てるのですが、他の有名シェア作品等と比べるとインパクトが少なく、印象が薄い感じがします。ただ前作同様、これはこれで良く纏まっていましたし、一本のフリー作品として十分面白かったのですが、シェアの体験版としては「?」という感想です。もっと、期待の膨らむような何かを体験版で見せて欲しかったのに残念。
245M LIVENスク製の短編ホラーノベル、プレイ時間5分、分岐なしです。主人公が仕事帰りの深夜に見た、海賊放送にまつわるお話。汚い一人暮らしの部屋とか、真夜中の帰宅風景とか、テレビに映る動画とか、生活感ありまくりのリアルな描写が、妙に心地良いのが気に入りました。ホラーとしての雰囲気は結構あるんだけど、ストーリ的にはあまり期待しない方が良いかもしれません。最後まで読むとタイトルの「M」の意味がわかります。都市伝説っぽいお話。
246gajua
〜ガジュア〜
 短編の吉里吉里製ノベルです(全クリで二時間半位?)。調薬師である主人公が持つ特殊な能力が、三人の青年達との出会いを引き起こし、やがて自分の過去の事や能力の起源を見つけていくラブストーリ。乙女ゲーと言う訳ではありませんが、主人公が女の子なんで攻略対象別EDが四個とTrueEndが一個あります(攻略はED用分岐が一箇所だけなので簡単。それ以外の分岐は多面的にお話を補足している。TrueEndのみオマケから入る)。舞台は異国風の田舎で、魔法やテレポートなんかが有るファンタジーな世界です。恋愛ゲームの範疇に入るのかもしれませんが、主人公の女の子(赤髪である事が分かるだけで、顔は見えません)は、さっぱりしている所が気持ち良く、是非友達になりたい理想的な性格でした。
 基本的に地の文と言うのは殆ど無く、会話によって物語が進行していくのですが、掛け合いもスピーディで面白く、登場人物それぞれに魂が宿っているのを感じました。特に「お兄」の少しまったり系で、且つすっとぼけた性格はとても良い感じでほほえましかったですね。本当の兄妹じゃないし幼馴染って事になるけど、所謂ありがちなそういう関係じゃなくて、あたりまえの健全な感じがして気持ちよかったよ、憧れるなうん。
 作者さんによると、この作品は背景重視って事になってますが、なかなかどうして、ストーリもシナリオも素敵でした(TrueEndで謎もすっきり)。もちろん、グラフィックは素晴らしかった。フリーで自作背景にここまで徹底した3DCGを活用した例は恐らく無いんじゃないかと。ぐったりにゃんこさんの「元気!まっしぐら!」は背景自体は凄いけど、作品は未完成と言うか・・・素材は見慣れる程、フリー活用されているんですが。シェアでは、お茶電さんの「朱鷺のことば」が凄かったですね。
 本作の3DCGはVue製だそうで、清涼感の有るレンダリングが作品に良くマッチしていました。私はレンダリングにPOVRAYを使っていますが、硬い感じになりやすいので、なかなか思い通りのモノが作れず苦労します。Vueに似た景観生成ソフトには、Terragenがフリーで有りますが、あくまで遠景主体になりますので、植物のアップなんかはTerragen2(有償)じゃないと無理です。モデリングはShadeを使われている様ですね。MorayもPOVRAYのモデラーとしては優秀ですが、他のパッチプリミティブなモデラーに比べるとユーザビリティがイマイチなんで、Shade+Vueの組み合わせも良いなぁと思ったりしました。・・・それ以前に、レベルが違い過ぎますね、とほほ。・・・Blenderの勉強再開しよっと。
 脱線しましたが、3DCGだけでなく、立絵も自作されており、これもなかなか上手です。塗りはべたっとしていますが、美形キャラの表情も豊かで愛嬌がありGoodです。なにより、3DCGに上手く溶け込んでいるところが完成度高い。特に主人公が見せる後姿の表情は見ていて本当に楽しかった。主人公にツッ込まれた時の男供のすっとぼけた表情も何気に見逃せません。
 総じて、非常に楽しめ、且つ創作活動への刺激になる作品でした。なんか、新たな可能性を秘めた作品を見た気がします。次回作も頑張って下さい。
247歪ミ回廊 選択肢無しの、Nスク製ヤンデレ風ホラー短編ノベルです。短編シナリオを最初から選択でき、「切断回廊・前」「眼帯回廊」「地下回廊」「包帯回廊」を好きなところから読んでいき、読み終わると更に「切断回廊・後」」「哀弱回廊」がシナリオ選択に追加されます。そして最後に「歪ミ回廊」がオマケに現れます。それぞれの話は短い物で5分位、長い物で30分程度、全部で6人の女性が現れ、その殆どが狂っています。
 ヤンデレがどうとかは別として、純粋にホラー・サスペンスとして非常に面白かった。素材の音楽を上手くチョイスして場面に上手く合わせてあり、演出効果として成功していましたし、背景の写真もフリー素材に自前を交えながら、必要な時に必要な画像が用意されているところが良かった。素材だけに頼ったノベルだと、肝心ところで画像が無かったりするので白ける事が有るんですよね。別にグロイ絵を出せって言ってるんじゃなくて(寧ろ逆)、演出として必要な物を見せると言う事は、言葉で説明するよりも印象的でホラーティックだとこの作品で思いました。まあ、限界も有るんで多少ちゃちに見えるところはあるかもしれませんが、雰囲気として十分説得力は有りました。
 絵に関しては、好き嫌いが分かれるかもしれません。よく有る造形を多少個性的にした感じはあります。ただ表情なんかも含めて、この作品に必要な要素だったと私は思います。
 最後まで読み終わった時、「ああ、このオムニバスは全部繋がっているんだ」って言う事がわかってもういっぺん最初から読み直してみると、浮いたシナリオに思えた「哀弱回廊」もアレの事かと思える様になりました。プロットの構成はとても素晴らしかったし、ちゃんと考えてあって感心しました。
 最も謎の深いシナリオ「地下回廊」のおまけ外伝「地下回廊・裏」は拉致に関与した使用人達のお話。これもなかなか良かったです、本編のキャラがちらほら現れたりして。※本編の方は18禁要素を含みますが、外伝の方は制限はありません。18禁といってもそれがメインの要素ではありませんが、一部のシナリオの最後の方で出てくるのは明らかにアウト。
248賢者の娘 20分位で読み終わる、短編のデジタルノベルです。作品世界は童話の様な中世ヨーロッパ風、名家の末娘「アーメンガルド」は医者を目指すも、親に反対されこのままでは13歳にして婚約しなくてはなりません。祖父はそんな彼女に、医者になる為の変わった試験を受けさせる事にします。・・・彼女が、合格の証として、或ものを持ち帰る事が出来るかどうかで、二つの異なるエンディングを迎える事になります。どちらのエンディングもなんだかとっても仕合せそうでした。
 途中の選択肢として、算数のクイズが有ります。三つとも中学生程度の知識で十分解ける簡単なものですが、最後のクイズは少しだけ捻ってあって面白かった。有る意味、国語の文章読解力が試されてると思いました。三つとも一発で解けましたけどね。・・・この、課題が論理性や数学の知識を試す事になるから、おじいちゃんは試験として適当と考えたのかもしれませんが、本当は昔の若かった頃の気持ちを思い出したかったからかも知れませんね。結果として、彼女の成長を間接的に知る事になり、おじいちゃんは語り始める訳ですが・・・。
 殆どが素材を使用していますが、タイトルしか出てこないオリジナルのイラストは、作品にマッチしていて秀逸でした。本編でも出てくれば良かったのに残念。
 正直、なんでこういう設定なんだろうと不思議に思うことも有りましたし、Yuuki!である事が少しネックでは有りますが、気軽に読めて、かつ読み直したくなるそんな作品です。これこのままLive Makerに移植しちゃえば読む人増えると思うな。
249地球の館-殺人考察- プレイする度に犯人、凶器、犯行現場が変わるFlashの推理ゲーム。聞き込みを繰り返しながら「捜査メモ」に○△×を付けてアリバイを記録し、情報が集まった所で「告発」し犯人等を指摘します。AVG風のマインスイーパという印象で、推理と言うよりこれは単純作業パズル呼ぶべき物です。一応、最初の背景説明で「辺境の館で行われたパーティの翌日、主人公の父が殺害されたので、警察が来るまでの間にパーティに参加した人物の中から犯人を捜す」という事になっており、捜査時間は朝9:30から夜11:00までです。
 捜査は館内の各場所にランダムに移動している容疑者達に会いに行き、「人物」「凶器」「場所」の最大三つの質問をしてアリバイ(本人を含む全員、物、場所)を確認していきます。場所の質問だけは聞き込みを行っている場所しか聞けません(なんで?)。二つ以上質問を同時にした場合には、「質問の内、一つに心当たりが有るようだ」と言うような、一体どんな回答をしたのだろうかと首をかしげる曖昧な結果が得られたりするので、「△」を書き込んで情報を整理していきます。これだけでは流石に大変なので、メイド長さんや執事さんが独自に捜査をしてその結果も報告してくれます(そいつらは怪しくないのかよ!というのは置いといて)。これを繰り返しながら、「人物」「凶器」「場所」の三つの事柄について絞り込んでいくのですが、別に完全に捜査メモが埋まらなくても何時でも「告発」は出来ます。つまり限られた時間内で如何に効率よく早く証拠を固めるかというパズルですね。
 これはこれでパズルとしてのシステムが非常に面白いのですが、推理ゲームとしては、非現実的なシチュエーションが多くなってしまっているのと、作業が多すぎて結構めんどくさい印象が強くなってしまっています。何度も遊べるようにと「答え」が毎回変わる様になっているわけですが、面倒くさいので一度解いてしまえば二度と遊ばない仕様になっているのが矛盾しています。ゲームとしては面白そうな要素を沢山持っていると思うので、容疑者を減らすなどしてバランスを整えた方が良いのと、メモの使い方を詳しく説明するか、いっその事オートマッピングにして簡単にした分、逆に「犯人は必ず嘘を言う」と言うような複雑化した推理要素を加えた方が、推理ゲームとしての面白さがUPするのではないかと思いました。
 こういうゲームをして思うのは、ストーリ性をゲームに求めてしまうと、やり込み難くなるし、パズル要素を強くすると、ストーリ性が薄まって感情移入出来なくなるし、バランスが難しいですね。個人的にはパズル的な推理物は好きなんですが、やはり殺人のストーリは一本道であって欲しいですね、感動も欲しいし。欲張りなのかな。
250EndlessEnd本格幽霊(?)AVG。マルチエンド、プレイ時間3時間位。推理要素あり、文章は上手い、展開も魅せる。ひぐらしに似た演出があったが、これは面白い!遠崎は中年教師にしか見えない。真エンドは幽霊ものらしくオーソドックスなハッピーエンド。バッドエンドは結構怖い。ヒントコーナあり、快適に遊べる、お薦め。
251本当の願い事 学園青春サウンドノベル、プレイ時間3時間位。遅刻は多いが、わりと普通の高校生「浅井」君が、影の薄い図書委員の「渡辺」さんの手伝いをさせられるうちに色々あって、願いが叶う本を手にする事になるというお話。もちろん、選択肢によってその本を誰が手にしてどんな事を願うのかは変わってしまいます。
 エンディングは五つ。浅井サイドでのEDは二つ、一回EDを迎えると渡辺サイドのシナリオが選択できるようになり、渡辺サイドでのEDは三つ。その内一つはHappy end(ED5)になっています。ED5以外のエンディングは基本的に黒いままのエンディングで、渡辺さんの腹の中にはヘドロが溜まったままなのですが、ED5では毒が抜け(大抵の)読者の期待に応える爽やかな感動が得られます。
 物語の構成といい、長さといい、気軽に読めて、しっかり読後感の得られる完成度の高い作品でしたので、こちらのサークルさんの他の作品も読んでみたくなりました。
 印象的なシーンでは、真っ青な空に雲が生える背景画像とピアノのBGMが掛かるシーン。その写真といい、メロディといい、どうしても某アニメの一シーンを彷彿とさせます。(アニメの)そのシーンはライフルで金星人を撃つシーンなのですが、全編を通して最も美しい場面なので私にとっては非常に印象的で、私の中ではそのシーンとこの作品の一部が強く重なってうっとりしました。ひょっとしたら、作者の方もそのシーンを知っていて、好きなのではないかとさえ思いました。
 閑話休題。複数の背景画像素材を上手い具合に違和感少なく組み合わせて、加工も美しくかなり手馴れて居る感じがしました。立絵は存在しないのですが、イベントCGのキャラ絵は上手かったし、構図が良かった。何より使い方が上手でした。コンプリートした後に見れる最後のCGもGood、イメージよりも美男美女で驚きました。
 後半の件で、私はちゃんと読んだ事が無いのですが、なんとなく「鏡の国のアリス」のオマージュだろうなぁという事に気付きました。良く考えるとこの作品はどこか繋がっている部分が有るのかもしれませんね。黒いって言うところとか、展開とかは「MAGDALELA」に近い気がしました。
252Monster 読むだけの一本道ノベル(Nスク)、1hr位で読めます。伝奇っぽくないけど、伝奇物かなあ、結構シュールで怖いんだけど・・・。
 主人公の陽子は高校生、妹と母親の三人で清貧に暮らしてる、つまり母子家庭。クリスマスが近づいたある日、突然理由も無く夜中だけ化け物に変身する様になる。そんな少女が辿る悲しい運命のお話。
 「あの夏祭りで誰が死ぬ?」の作者さんの新作です。いろんなとらえかたが出来ると思いますが、私にはこのお話は凄くシュールに思えました。全編に渡ってエンドレスに繰り返されるクリスマスを思わせるアップテンポのBGM。クリスマスっぽいフレーム、「ベル」や「サンタ」のクリックアイコン。文章の方も、そんなクリスマスに似つかわしいような、子供っぽい思考の主人公視点で綴られていく。
 ところが、物語は意外な方向に進み始める・・・・・・にも関わらすBGMはやっぱりクリスマスソング。この作者さん得意の「畳み掛けるような貧乏攻撃」で、読んでる私の息がどんどん苦しくなる。→このむかつく妹をどうにかしてやりたい→更なる貧乏いじめ攻撃で、うわぁぁぁ!・・・と、すっかり主人公に感情移入してしまいました。「パトラッシュ、なんだか眠くなってきたみたいだ・・・」ルーベンスの絵の様なものも見えた気がします。そんで、終った瞬間にタイトル画面に飛ばされるとこなんか、ものすっごいシュールな気がするんですよね。もう一回読み始めると、あのBGMが余韻なんかふっ飛ばしてくれると同時に、何か心の奥に重いものがつっかえて、もう・・・。
 この物語には非日常的な「何故」の疑問に対する「答え」が用意されていないんですが、ドラマや人間性に対する「何故」にはキチンと「答え」を用意しているところが面白かった。「Monster」をドラマの道具に使って、「人間」を描こうとしたのではないかと言う気がします。いやー、ブラックですねぇ。
253料理 画面の小さなNスク製ホラーノベル。プレイ時間30分、離婚係争中の主人公が妻に監禁される話。
 三種類の料理のどれかを食べさせられる訳ですが、どれもグロイです。別段怖いという事は無いし、現実離れしているので親近感も感じられませんが、浮気したらこうなるんじゃあ〜、っていう戒めになるかな?
 三つのエンディングを見ると、女性側の視点も読める様になります。デザートのアレは「羊達の沈黙」の続編を思い出した。
254ショットガンチューリップ AliceSoft/SYSTEM3.9v5.46で作られたマルチエンディングAVGです。プレイ時間はコンプリート+オマケ含めて1.5hr程。ジャンルはギャグでしょうか?主人公の外見からハードボイルドかと思いきや実は職業は駄菓子メーカのサラリーマンだし離婚係争中だし、死神やら消える死体・拳銃やら出てくるし、部分的にはファンタジーな感じです。・・・でも、実は35歳オヤジと18歳女子高生の恋愛物語だったんですね。
 まずゲームエンジンでプレイを躊躇してしまいそうなんですが、実際やってみると全然不備が無い。SYSTEM3.9と言えども、そこそこの機能は揃っていました。ただ贅沢を言うとスキップは未読で停止して欲しかったし、SAVE後に出るエラーっぽいメッセージは無くして欲しかった。それからシステムというのとは少し違いますが、エンディングリストは有った方が良かった気がします。
 ストーリは「なんのこっちゃ?」という内容なのですが、主人公「牧男」の妙な渋み(絵も含めて)が味わい深かったし、ジャズっぽいBGM(クオリティ高い!)も作品の雰囲気に良くマッチしていて、昔のAVGの雰囲気を思わせるゲームデザインも何故か作品世界に惹き込ませ、読ませます。また背景の加工画像も雰囲気が良かった。
 全部で5個あるエンディングは選択肢で上下する好感度によって決るようです。主人公はハードボイルドですから、毅然とした態度であたらないとTrueEnd(Ending-1)にはたどり着けません。TrueEndと言っても何が分かる訳でもないし、正直幸せなのか分かりませんが、・・・何となく楽しそうです。(ここの描写は若干、年齢制限が・・・必要ないか)全てのエンディングを観るとタイトル画面にオマケが出てきます(タイトル名は語呂の良さで決ったんですね)。テンポよく読めて、意外にも読後感が爽やかな作品で、私は楽しめました。
255無能令嬢 ツンデレヒロインのマルチエンディング恋愛AVGです。AliceSoft/SYSTEM3.9v5.46で作られており、プレイ時間はコンプリート+エピローグ含めて1.5hr程。
 社長令嬢の美由紀がクラスメイトの貧乏高校生佐渡島に家庭教師として勉強を教わるお話。序盤では美由紀の貧乏差別発言が乱発しイメージ悪いですが、読んでみると「あれ、俺ってツンデレ・スキー?」って思えちゃうくらい、後半では引き込まれちゃいました。特に「エンディング1愛情論」を観ると、ほのぼの純愛っぷりにちょとじ〜んときちゃうかも。佐渡島と母ちゃんの貧乏っぷりも、榊原の読者の代弁者としての役割も、静霞のリアリストとしての冷静さも、それぞれに味があって面白かった。
 リソース(絵、BGM)も無駄なく軽量で、しかも読み心地の良い感情移入しやすいシナリオがまた逸品でした。エンディングは五個有り、前作「ショットガンチューリップ」同様、好感度でエンディングが決ります。ここのサークルのシナリオは短くても読ませるのが上手いですね。野武士風親馬鹿ギャグ社長にワロタ。
 アリスシステムですが操作性は問題なし!
256奥様は惨殺少女 女子中学生の幼な妻と七日間を生き抜くNスク製AVGです(コンプリートまで約3.5hr)。「料理」というグロいホラーの続編という事になっていますが、この作品自体はグロイ部分は殆ど無く、浮気相手の名前を口走るたびに包丁でぐさりとされるだけです。
 ストーリは、わりと甘い新婚生活を主人公と妻さゆりの二人で過ごすだけで、別段変わった事も有りませんが、選択肢の随所でみゆきに関する選択肢が含まれており、その選択肢の数だけ(21個)BadEndが用意されています。一週間生き延びても、選択肢によって変化する変数によってエンディングがworst、bad、normal、true、happyと5種類に分岐します。特に重要な選択肢は三箇所あり非常にわかりにくいのですが、基本的にさゆりと料理に固執していけば何とかなった様な気がします。何回かエンディングを見ないと観れないエンディングも有るので、結構攻略には骨が折れるかも。
 有る程度エンディングを観ないと、この話が「料理」とどう繋がっているのか分かりませんが、分かったところで不条理な世界であることには変わりなく、ハッピーエンドであってもさゆりの心の開放と言うものが一体何なのか?チョット分かりづらい気がしました。それから、最後に出てくるキャラ設定まで読んで、ようやくみゆきがさゆりに冷たくした理由がわかります。まあ悲しい話ですが、結局、父ちゃんが一番悪いな。
 音楽の使い方はうまかったけど、絵がちょっと良くなかったかも。前作と違う絵を使ったのはなかなか良い演出だとは思ったけど。
257TURKEY Nスク製、選択肢なし、20分位の短編ノベル。悪魔の少女が過去の過ちを悔いて、人間の為になる事をしようとするが、正体がばれて捕まってしまい、領主様に助けられて添い遂げるお話。もちろんそれだけで終る訳はなくて、元々悪魔ですから紆余曲折があってなかなか面白いどんでん返しが楽しめたりします。
 読んでいて気になるのは、タイトルが何時までたってもストーリに絡んでこない事。これ自体がどういう意味で使われるのかと思って最後まで読んでようやく納得しました。この作品が「クリスマス企画」という事をすっかり忘れていました。名も無き補佐官、GJ!
 派手な演出が有るわけでは有りませんが、題字や背景も綺麗でお話も綺麗に纏まっており、短期間でよく仕上げられたなと思います。心温まるお話です。
258風雲相討学園ポテト 選択肢有りのコミカル恋愛ノベルです。前作「フラット」の番長シナリオ後の続編?というか番外編になります。結局、彼女の出来なかった主人公境君は、プールのペア招待券を持っていた事が転じてキンバリーの妹の中学生ポテトと二人でデートに出かける事になるというストーリです。
 Nスク製で基本的なシステムは「フラット」を継承しており、さくさくと読みやすいシナリオとセーブ不可の「たたみ掛けモード」が健在です。エンディングは三種類、同じエンディングでも経由が若干異なる場合も有りますが、好感度とお兄ちゃんフラグで分岐するあっさりのノーマルエンドとラブラブのグッドエンド、もっとラブラブで四日目に突入するベストエンドです。相変わらず物凄い画力でキャラクターの魅力が溢れる作品に仕上がっています。全キャラクターの表情の一つ一つに個性が感じられて、且つ限られた立絵にも拘らずキャラ芝居が漫画やアニメを見るように生き生きしています。こういった所が、この作者さんが作る作品の大きな魅力になっていると思いますね。
 中学生と高校生の恋愛という事もあって、初々しさを楽しむ軽い恋愛ゲームとして遊べるのも良いんですが、濃いクラスメイト達の反応もかなり楽しめます(四日目が笑える)。特に笹原さんの常軌を逸した壊れっぷりは、腐女子魂天晴れと言うべきものです。田ノ中、にげてー!システム面でも前作よりパワーアップしていて、完成度高い。
259deep-sea fishes in gloom 洋館で起こった些細な盗難事件を題材にした推理物小説的AVG。エンディングは四つ(解決2個、未解決2個)で、コンプリートには二時間位掛かりました。主人公が上司と二人で取引先の所有する別荘に呼ばれて、そこで起きる盗難事件の犯人の推理を行う筋です。
 3分ゲーコンテストで優勝した「Reason of Detective」の作者さんの作品という事で、今回も純粋に「推理」を楽しめる非常にレベルの高い仕上がりでした。この方の作品の特徴として、@人が死なないA割とオーソドックスなトリックなのになかなか気付かない上手いミスリードBゲームシステムそのものに推理を楽しめる工夫がある、と言う三つがある気がしています。特に今回はシステムで推理もののAVGとしては、完成されてると言うより、発展途上にある秀逸な一つのシステムとして、プレイヤーの満足感を高めていたと思います。
 最初の一回目はセーブ無しでプレイする事になり、その結果に合わせてゲームを進める上で役に立つ機能が解放されていきます(解放作業は自分で行う)。例えば「セーブ機能」「(元の選択肢に)戻る機能」「制限時間設定(解除)機能」等です、特に重要なのは「黄色いモノ機能」でこれを解放すると、今まで気付かなかった事に気付かされるようになります。それでも、やっぱりちゃんと考えないと推理を完成させる事は出来ないし、物証そのものに日常的な知識が無いとチョット気付きにくいかもしれません。作者さんが「人によっては、あっさり解けてしまう」とおっしゃっているのは多分そういう意味で、私はそうでは無いのですが、該当する人は本当に扱いづらくて困ると言ってました。
 推理が解けても、それだけではベストEDである01には到達出来ないのも上手い所です。奥ゆかしく、そして皆が幸せにならないとダメなんですね。実は、最初私は「色盲」ではないかと疑って、色々妄想していたんですが全く違いました。でもその妄想に近いような告白が出てきた時はチョット驚きました、そう言われて見れば、確かにそんな神経質さが感じられる部分もありましたし、さりげなく上手いなと感心しました。
 攻略について書いておくと、最後の推理シーンで物証を絡める選択肢が有りますが、どうも答えは一つでは無いようです。つまり、幾つかの物証の内どれを選んでも正解の様です。また、エンディングへの到達方法も一つでは無いようです。概略を書くと、推理ダメ→04、推理ダメ+告白あり→03、推理OK+告白なし→02、推理OK+告白あり→01、多分こんな感じだと思います、間違ってたらごめんなさい。この作品は、小説を読むような読後感は有りませんでしたが、登場人物全員が良い人そうで、とても和むのと、推理を楽しめるという意味で、とても良いAVGでした。
260悪の教科書 人気の同人サークルさん製作の社会批判ノベルです。プレイ時間は4時間位でしょうか?分岐無しで話にぐいぐい惹き込まれるので、集中のあまり時間が経ったの感じさせませんでした。
 5章立てになっており、第1講で苛められる中学生が自ら現状を打開する姿を、第2講で先天的要因で差別を受ける少女が友達を大切にする姿を、第3講で社会に立ち向かう熱血教師が運命に翻弄される姿を、第4講で門地に縛られる「悲劇のヒロイン」娘の成長を、第5講で父から逃れようとする少年が社会に立ち向かって世の中を変えていくまでを、現実の社会問題を絶妙に織り交ぜながら「一冊の教科書」として紡いであります。
 全てのストーリは喪黒福造のような「先生」によって転がされていきます。先生が居なければ各章の主人公達はただの石っころとして終っていくところですが、摘み上げて崖下に放り投げて、大規模な落石を引き起こしていく、良くも悪くもそういう事をする先生です。
 私はこのストーリの根底に流れるものに、喜多川泰氏の「手紙屋」と同じ物を感じました。その感想を書いた時にも同じ事を書きましたが、これはあくまで物語です。こうしたから、こうなるんだと言うのは所詮、一ケースに過ぎない、作られた筋書きなのです。ところが、随所にある薀蓄には、普段忘れがちな真実があります。この作品では、テーマ上、事実の部分でかなりの推測と過剰な主観を持ち込んでいる気がしますし、ドラマティックに見せる為にご都合主義的になっている部分は否めませんが、こういうデリケートな社会問題を敢えて採り上げ、しかもノベルゲーム作品として十分な品質と読みやすさを持たせたと言う点で大きな意義が有った様に思います。
 特に第1講は、恐らくは、かなりの批判を受ける覚悟で書いたものでしょうが、単に掴みの為にインパクトを設けたというのではなくて、現実にさいなまれる少年がその現実から抜け出そうとした一つのケースを、偽らざる個人の考えとして描ききり、共感を得たと言う点で高く評価できると思います。
 ただ、しつこい様ですが、これはあくまで物語です。手段と結果を結び付けて考えてはいけません。現実的にはもっと複雑な要因が絡んできますし、世の中そんなに甘くない。太陽電池には、太陽電池が持つ複雑な問題が有ります。
 私自身はテーマよりも世の中の社会問題を本当に上手い具合にプロットに落とし込んだ所に感動しました。「おお、そんな所でそれが出てくるのか!」と言う感じで、TBSの「報道特集」が何度も頭を過ぎりましたね。
 システム面では、セーブの時にちょっと使い方が分からず難儀した事や、妙に間の悪いwaitが多発して少々困りました。Nスクはシスカマ次第でこういう事が時々起こる気がする。絵は「ころな」と同じですね、シナリオの方が絵まで描かれているのをエンドロールで見て、随分才能の有る人だなと感心。それ以外の、音楽、背景の多くは素材でした。
 最後にこれがフリーで公開される事には、明らかな意図が感じられると思いながら読んでいましたが、オマケではっきり書かれているのを見て納得しました。この作品が、良い意味で「他山の石」となればと思います。
261Nymph Nスク製、選択肢の無い短編ノベル。病院に入院している主人公が庭(と、いうか森?)で出会った少女と過ごした日々を振り返るお話です。30分程で読みきれる手軽さの割に物足り無さを感じない、すっきりしたストーリでした。
 タイトルの示す通りの、ファンタジックな内容でありながら、看護婦を含めた三角関係的要素を隠し持っているのが面白かった、・・・というか意外でした。結構、純愛っぽい話なのに、読み終わる瞬間、修羅場を予想させるような結末。「それじゃあ、全然すっきりしていないじゃないか!」というお叱りもあるかもしれませんが、まあ精一杯穿って観ただけなので、普通に読めばロマンティックなお話だと思います。
 立絵が無く、背景・音楽とも素材で少し寂しく、中でも背景はイメージに合わないものも有るため、違和感を感じるなど、丁寧に作られているとはいえませんが、全体的には誤字が少なくて読みやすく、ファンタジーと小さな感動が味わえる作品でした。あんまり関係有りませんが、看護婦・看護士って、2001年に法改正して「看護師」に呼称統一したんですね、知りませんでした。
262The Box Of Lore Nスク製、都市伝説系ホラーAVG。SLG要素が強いです。ワンプレイ、50日分(つまり50回)のターンが有り、時間は割と短い(多分、一時間半位?)ですが、結構しんどいゲームです。
 或る日友達の兄貴が何者かに惨殺され、主人公はその形見分けで貰った「箱」を手にした事により、都市伝説を作り広めていく事になります。その「影響」が、十分に行き渡るとどんな望みも叶えられる仕組みなのですが、死者を蘇らせる事は出来ません。主人公は、事件の調査を兼ねて都市伝説の作成に必要な「欠片」集めてまわりますが、実は主人公にはある疑問があり、その事を明らかにする為に都市伝説の王を復活させようとしているのでした。いざその望みが叶えられる時、事態は思いがけない展開を見せる事になります。
 最初にオープニングを見て、後はひたすら都市伝説を作って広めていくだけなのですが、デッドエンド16個、通常エンドが4個と、特殊エンドが1個あり、コンプリートはかなり手間暇掛かります。最初に何やって良いのか分からなくて困りますが、基本的な流れは、街を闊歩して「欠片」を集め、それを使って「都市伝説」を生成・拡散、適当に広まった所(ゲージ赤)で、生命力「トランプ」を使ってワザとデッドイベント場に突入→ゲージリセット、を繰り返しながら「影響」を大きくしていきます(「ワタシハロア」の文字の数が目安)。それと並行して、事件の犯人探しも進めていきます。これはイベントに必要な場所に出向く事で進行します。事件がほぼ解決して、「ポマード」を手にした状態で、50日目に「ロア」を復活させる事が出来ると、真ENDへと進む事が出来ます。それは「花子と太郎にまつわる悲しいお話」なのですが、コンプリートするとエピローグで四人の幸せそうな未来を垣間見る事も出来ます。「今井さん」がハガレンのホムンクルスみたいで驚いた、実は影の主人公だったなんて・・・。特殊エンドでは「先生」の裏の顔にも驚かされました。
 独特のシステムがユニークですし、素材の立絵が作品に良く合っていました。音楽の使い方も上手かったと思います。ストーリには粗が多いものの、キャラは皆立って居ましたし、台詞も自然で読みやすかったです。でも、ゲーム性と言う意味では、パズルゲーでもない、ノベルでもない物足りなさと同時に、惜しい、本当に惜しい、という気持ちが強く印象として残りました。実は、この作品を知ってプレイする直前、もう私のフリゲの旅路が終るかも知れないと予感しました。ゲームシステムを見た時に、これはまんま「夕闇」だと確信しましたから。幸か不幸か、期待通りのものではありませんでしたが、私の心に別の興味を投げかけました。題材やシステム、プロットが似ていてもダメなんだ、もちろん細かい作りこみや、完成度が違うのは分かっていますが、もっと深い部分が作品に魂を吹き込んでいるのだと気付かされたように思います。では夕闇の何が私の心を打ったのか?これからも人のもつ想像力が生み出す、素晴らしい作品達を読みながら、ずっと考えて行こうと思います。
263DEAD ROOM ツクール製のホラーAVGです。見知らぬ部屋で目覚めた主人公は、自分に記憶が無いことに気が付きます。部屋を脱出したいが、鍵が開かない。やがてコードの繋がっていない筈の電話が鳴り、主人公は何者かにゴーストが襲ってくる事を告げられるのでした・・・。
 プレイ時間は20分掛からない位、失敗しなければもっと早く終るかもしれませんが、結構死にますのでクリアまでに一時間以上掛かるかもしれません。難易度はかなり低いのですが、追いかけゲーム的なアクション要素があり、落ち着いてプレイ出来ないのが嫌な人には少しだけしんどいかも知れません。
 一番嵌りやすいところは、最後のドア開けたところだと思いますが「前の部屋で幽霊が消えてから」直ぐにドアを開ければ、恐らく簡単にエンディングにたどり着けます。
 で、オチはとあるホラー映画のラストシーンを思い出してしまいました。予想しやすいオチでは有りますが、なかなか良く出来てるし、ホラーとしての怖さも感じる事が出来、短いながらもかなり楽しめました。ヘッドホーンの着用をお薦めされているのですが、そこはチョット微妙だった気がします。効果音が素材なのはしょうがないとしても、もう少し工夫して使って欲しかったですね。特に死ぬ時の音は凄い違和感がありました。
264ジンクスホリック・シンドローム 吉里吉里製一本道のサウンドノベル(一応選択肢も有りますが、即死ブランチ)。女子中学生の三人組が噂の調査をする話です。
 短編の都市伝説系のホラーノベルですが、これはキャラもテーマもタイトルも、もろにトワイライトシンドローム・オマージュって感じでかなり楽しめました。キャラ絵が「キャバGO」と同じ素材で驚きましたが、フォントも凄く良いし物語が会話のみで進行する所なんかもテンポ良くて好み。ルーズリーフの切れ端を使ったウィンドウは凄く良かったけど、画面が大きい割りに、キャラ絵が小さい事や、メッセージウインドウの配置が微妙に偏っているのはチョットアンバランスに感じました。履歴の読みやすさは異常。効果音やムービの使い方も、ホラーしていて素晴らしい。
 ストーリもキャラ同士の掛け合いも微妙にトワイライトを匂わせつつ、オリジナルの展開で、一気にお話に惹き込まれました。前作の印象とはずいぶん違う感じですね。かなり満足の作品です。
 選択肢でセーブできないので注意が必要!
第二話の感想:パッチという形で分割リリースされた続編です。第一話はサンマンさまというこっくりさん的な都市伝説の噂を検証して行く過程で、確かに不思議な現象に遭遇した三人が、第二話の今回もやはり不思議なジンクスに出会うのですが、ちょっと意外な結末に驚きを隠せませんでした。
 一話ではオカルト的な側面が強く感じられたのですが、今回は人間ドラマとサイコな要素をうまく組み込んで一話をはるかに凌ぐ出来栄えでした。ハッキリ言ってこういう展開になるとは読めませんでしたし、こんな風にじわっとこられた方が私は背筋が寒くなります。
 そんな訳でトワイライトシンドロームにまた一歩近づいたのを強く感じつつ、感動したままエンディングにも期待したのですが、選曲は素晴らしいのにただ文字が消えていく間延びしたエンディングに少しがっかり。普通にエンドロールか、クレジットタイトルでも十分余韻があった筈なのに残念でした。
 第一話で気になっていたウィンドウのアンバランスな配置は改善されており、会話にあわせた配置のアレンジも素晴らしかった。まだまだ、追加されていく続編に期待は膨らむばかりです。今回は特にユーヒの「霊なんかいない」の台詞に惚れ惚れした私。!
第三話の感想:三話目もパッチリリースされました。今回は「紹介編」の締めくくりのお話と言う事のようですね。校則に書かれていた「ラブ&ヘイト」という謎のゲームに関する都市伝説がテーマです。
 これは元になる都市伝説が本当にあるのか分かりませんが、如何にもありそうなよく出来た噂で、妙にリアリティを感じました。一話→「マオ」、二話→「ユーヒ」ときて、今回はこの三話構成による「紹介編」を締めくくるヒロインとして「サヤカ」が大活躍します。また、噂が一段落したと思ったら、最後に意外な人物との対決が待っていて本当に驚きました。これがこの紹介編を通じた伏線となっていた事にはもちろん気づきませんでした。ただ、この人はいまいち何をしたいのかよく分からない人ですね、単なるストーカってわけでも無さそうだし、そういうところが余計怖いです。
 それに、あの「カナウ」さんの存在についても謎が残されましたよね、噂との矛盾とか・・・・・・これは次章への伏線となるのでしょうか?とにかくラストは、中学生らしい清清しい終わり方でほっとしました。
 クレジットも一工夫があり、音楽とあいまって美しかった。場面にあわせてアイキャッチの効果を変えるなど、演出面でもかなり工夫が感じられました。何よりピアノのBGMの選曲が気に入ってしまいました。三つの話の中では個人的には二話が一番良かったのですが、三話もプロットの上手さが光っていたと思います。まだ、彼女たちの冒険は続くようですので、引き続き続編を楽しみにしています。
近いジャンルの作品:あやじょ!!」「Lost in Morgue」「最上邸
265あの子 吉里吉里製短編のホラーノベルです。いつも一人ぼっちのりなの所に、どこかで見た事があるような「あの子」がやってきました。冷蔵庫の側でりなの嫌いなピーマンを食べています・・・。りなは言いました「ねえ、あなたはだあれ?」
 5分位で読み終わる作品として同じ作者さんから「ふすま」「雨宿り」が有りますが、今回の作品が一番印象深かったです。他の二作は、ありきたり過ぎて、記憶に残りにくいのですが、今回はストーリに含みを持たせてあるため、しっかり活字を追いながら読めました。どちらかと言えばこれは「サイコ」ですね。
 最初のプレイでは、ボイスや絵が無い所は、逆にホラーらしさがあって良かった。いつも声や絵がホラーっぽく無いので、ハマリにくいのですが、今回の演出は何となくホラーの雰囲気に合致してました。背景素材もそんなホラーな雰囲気を盛り立てる黄昏感がありましたし。
 おまけで改めてボイス付き、絵付きでやってみると、確かに印象が違うんです。やっぱり、合ってないんですけど、部分部分で見れば、所々良いものがありました(一枚絵とかね)。題字のデザインも綺麗だったし、スキルアップが感じられて次回作にも期待です。
266点滴ファイター プレイ時間20分くらいのツクールXP製のホラーAVGです。病院に入院中の少女が、点滴を引きずりながら不気味な雰囲気の病院を徘徊して、失った記憶を見つけていくお話。
 若干の戦闘シーンがありますが、単に物語りの進行を邪魔するだけのもので、別段難しくはありません。しかし、二つ有るエンディングの内Goodの方はあまり余裕が無いので寄り道や戦闘で時間を潰していてはたどり着けません(メニュー選択中も時間は流れています)。点滴が切れると強制的に一日が終了してしまうので、きびきび目的を達成していかなくてはなりません。目安は3日目で、或る部屋の鍵が開かなければBad確定です。
 簡単な攻略を一部伏字で・・・
 一日目の目的は「鳥の死骸」を見つける事、二日目の目的は「ナースコール」を見つける事。ついでに「紫の扉」も発見しておきましょう。三日目は「紫の扉」に入って解剖台をチェックします。四日目も解剖台をチェックして、そこに載っている物を確認します。五日目は解剖台の間に落ちているガラスの破片を発見、六日目(?)は自室に戻ります。
 セーブ数は限られていますのでイベント達成ごとにセーブしていてはスロットが足りなくなりますが、ひとつでも失敗すればbadに向かいます。どちらの結果でも鬱なんですが、どちらもそこに至るまでの暗い雰囲気をホラーとして楽しめました。途中の展開上「脳死」と勘違いしましたが、よく考えればそんな訳ないんですよね。お話そのものは少しわかり難い気がしましたが、キャラの絵が可愛く、BGMとマッチした静かで暗い雰囲気がホラーっぽくてよかった。ただ、戦闘はほとんど無意味だったので、何かしらゲーム的要素を絡めて欲しかった。バランスに一工夫あればもっと面白くなりそうな気はします。
267うたかたの月 プレイ時間30分のツクール2000製の鬱ノベル。17歳の高校生が飛び降り自殺しようとしたところ、空から降ってきた片羽の少女に潰されて死ぬお話。
 ・・・こう書くと少し変ですね。ありのままを書いたつもりですが、勘違いしないように断っておくと、内容は至って真面目なお話です。
 BestEndでは不思議な因果が主人公救済し、温かな読後感を与えてくれるハッピーエンド。BadEnd5個を勝手に名づけると、「窓から飛び降り自殺」「草原に出来た道」「電車に轢かれて」「母に抱かれ」「姉と」電車の中での分岐で二つ、駅についてからで三つのBadに分岐します。駅の周りは進む方向で分岐が決まるので色々動き回ってみましょう。私なんか駅の反対側に回りこんでよく分からない事になってしまいました。
 使われている素材の出所がまちまちなので、若干統一性に難がありますが、デザイン的には大きな違和感を感じなかったし、ツクール独特のホラー演出も面白かった。特に学校の屋上でのやり取りは見ていてほほえましかったです。内向的な話でやや面白みに欠ける出だしでしたが、不思議と投げ出すことなくBestEndに向って静かに盛り上げって行きました。しかしツクール製ということもあって操作性には不満が残りました。バックログが無いことや、自由にセーブできないのに読み飛ばしが出来ない事は結構苦痛でした。6個のエンディングをコンプリートするにはやはり、自由なセーブポイントか読み飛ばしのどちらかが欲しかったですね。
268難波青春横丁 吉里吉里製、一本道ノベル(一時間くらい)。立ち上げるといきなり枠を超えて飛び出す難波の風物詩達が度肝を抜き、文庫本風縦書き縦長画面、POPなメニュー画面など、デザインにおいては非常にスタイリッシュなインターフェイスを持つユニークな作品でした。
 ストーリは大学生の主人公が女子中学生と難波のラブホで事に及ぶのを小説風に描いた?作品(これが小説なのか物語なのかよく分からない)。作者自身のために書いたという意味合いで純文学的であり、通俗・官能的という意味では大衆文学でもある、デジタルノベルという枠でその両方の融合を目指した様にも感じられました。レベルは違いますが夏目漱石の「草枕」を読み終わった後のような微妙な読後感が有りますね。あらかじめ断っておきますが、性描写を目的に描かれた作品では無いと思いますが、客観的に見てこれは18禁ですね。未成年の方にはお勧めしません。大阪の固有名詞と街並みがストレートに出てくるので非常に身近に感じられるのですが、何十年経ってもあんまり変わり栄えのしない街だなとしみじみ思いました。退廃しない頽廃というか・・・。スタイリッシュという意味では「Collage」に次ぐインパクトでしたが、BGMが流れず幾分寂しく思われたのが残念な所です。
269ノルカソルカ 吉里吉里製、複数の妖怪が出てくるオカルト系伝奇ノベル(コンプリートまで5時間)。
 不幸少女「幸」が夜の神社で天狗と会い、一つだけ願い事を叶える代わりに、鬼を探してくれと頼まれます。妖怪たちは人の影を借りて存在しているらしく、憑かれた人は影が無いそうです。幸せになりたいとの一心で影の無い人探す幸、しかし影の無い人は次から次へと現れ、やがて迎える冬至の夜、彼らによって幸の運命は翻弄されていくのでした……。
 「伸るか反るか」彼らと彼女自身の選択と縁が、一人の少女の幸せな運命を左右します。ストーリの軸としての「幸」ルートを初回プレイ後、関連する4人のルートを任意に選択して読み終わることで最終ルートを選択できるようになります。選択肢での選択の組み合わせによりいくつかのエンディングに辿り着きますが一発目で真相に辿り着くのはかなり難しいと思います。真エンド以外はヒントが表示されますので参考にプレイを繰り返せば比較的短時間に真エンドに辿り着けるでしょう。(「強力なお金持ちの助っ人」って言うヒントに踊らされた。だってみんなお金持ちじゃんか!→ちょっとだけヒント:「ほとんどの人はどうすべきか自明ですが、がきんちょだけがトリッキー」)
 プレイ直後の素直な感想として、非常に面白かった!主人公が女性だし、男性キャラのステロタイプな性格から考えるとこの作品は乙女ゲーになるのかも知れませんが、そういう嗜好と無関係に、話の展開もキャラの描き方も、非常に上手くて、物語ににぐいぐい惹き込まれました。まず幸ルートの最後であんな事になって、あんな事言うもんだから「エー?!」って事になります。「どういうことよ?」その他のキャラのルートを読んで行くと、色々分かってくるのですが、微妙に謎が散してあり、それがまた下手に先が読めるもんだから余計に「いつ繋がんよ?」「早く出会ってー!」と、感情移入しまくりです。最終ルートで試行錯誤の末、真エンドにたどり着いたときは感動もひとしおでした。あんまり読んだこと無いのですが、ラノベみたいなエンディングでしょうか?大団円でちょっとだけ寂しい感じ…。
 グラフィックも、シナリオも非常に丁寧に作られており十分クオリティの高い作品と言えますが、残念なのはしつこいアイキャッチの出現と音楽。折角の完成度なのに、聞きなれた素材ばかりかけられると何故か気持ちが乗れません、曲と他作品のイメージがこびりついているためかも知れませんが、選曲に微妙に合わないと思うようなシーンがちらほら見られました。あと、内容で気になったのは、天狗とお父さんの言動に矛盾が感じられる所でしょうか。私がちゃんと読み込めていないだけかも知れませんが、とりあえず勢いで読みきった後「あれっ???」って事がありました。
 それはさておき、今年これまでプレイした中では、誰にでもお勧め出来る一番の良作でした。ご馳走様。
270こんな物語 Nスク製、選択肢無しの感動系恋愛ノベルです。田村裕の様に公園で野宿しながら旅を続ける主人公「宏和」がヒロイン「理奈」の営む喫茶店の前で行き倒れた結果、住み込みで働き始めるというお話です。結構ボリュームのあるシナリオで、4時間位は目を充血させながら没頭して読んでました。
 恋愛物が苦手な私ですが、突然訪れるドラマティックな展開にすっかり作品に惹き込まれ、散りばめられた謎と伏線に翻弄されつつ、最後には上手く回収されて、私を見事に感動へと導いてくれました。
 万人が期待する様な単純な恋愛物とは一味違った結末にきっと読者の誰もが驚かされるのではないでしょうか?そして、移り変わっていく主人公達の心情に、すっかり感情移入してしまう事請け合い。
 特にヒロインの理奈さんの性格は非常に上手く表現されており、この微妙にそっけない口調やら、お姉さま系の容貌やら、お客さんに見せる営業スマイルやらがとても印象深く、確かに魂が入っているのを感じました。よく考えると彼女はツンデレみたいなものかもしれないのですが、最後の一歩手前までは本当に冷静で、よく出来た人だなと感心させられる程です。
 この作品で特筆すべきは演出ではなかったかと思います。派手な何かが有る訳では有りませんが、昔のAVGにみられた記号的な演出セオリを保っていると言えば良いのか・・・、ここはこういう一枚絵を使って、この時の背景はここだけを変えてとか、音楽はここでフェイドインしてここでアウトとか、エンドロールの最後にはこのCGをとか、自然とプレイヤの気持ちを盛り上げる心憎い演出に感涙しました。読み終わった後も気持ちの良い読後感が尾を引く素晴らしい「物語」だったと思います。
 全体的に音楽が良かったのですが、ボーカル曲の内、エンディングの方はちょっと微妙な気分でした。
271探偵のすすめ
〜先生は犯人?!編
 吉里吉里製、少年少女探偵団的推理ノベルです。
 中学校にあがったばかりの主人公(名称任意)とクラスメート達5人が、クラスで起こった事件の犯人を探して奮闘します。
 プレイ時間は1時間くらい、のっぺりとした文章ですが、その雰囲気にだまされて、ストーリ展開は想像の斜め上を行きます。微妙な恋愛要素が含まれているのですが、これが非常にあっさりとしたもので、中学生らしさが醸し出されて良かった。結論から言ってしまうと、実はこの恋愛要素はストーリに何の影響も及ぼさないばかりか、ヒロインの心情にさえ変化をもたらさないところが笑えます。一方通行的に、お互いの気持ちを吐露しあう、若さが清清しい(ま、ちょっとはリアクションが変わりますが、あっそう?みたいな感じでスルーされる)。
 あと一匹ストーリをミスリードする変なのが含まれて居ますが、こいつがまさか「小五郎」に成るとは思いませんでした「こいつやるな!」と、思わせるのですが、その後すぐに元のヘタレにもどるので、あれはきっと朝島さんが麻酔針とか、蝶ネクタイとかで、あのヘタレをコントロールしているに違いないです。
 ストーリ的には分岐はありませんが、選択肢によりBadEndかTrueEndの二つに分かれます。それと、付加的に恋愛要素の結果が(非常に)僅かに反映されます。
 この作品で特に目を引いたのは絵の上手さでした。もともとは影絵でやるつもりだったそうですが、立ち絵を入れて大正解だったと思います。絵師の人のデザインも上手いのですが(どうでもいい奴は結構手を抜いてある様ですが・・・)、絵と性格の微妙なずれ具合が強い個性を放っていました。女性陣は特にこの傾向が強く、男性は結構見た目どおりの素直な感じがしました。このあたりは何と無く中学生って感じがして上手かったと思います、もちろん福田先生が一番ですが。
 事件の真相は、ちょっと切ないような・・・、よく分からんような・・・。おかあちゃんが、教室間違えたのと、犯人が隣の教室で吊るしたのとが上手く繋がらないんですよね。そこまで読んでもまだ気づかなかったんですが、オープニングのシーンは、お姉ちゃんの自殺シーンだったんですね。てっきり、大林さんが隆史の死を悼んでいたのかと、だって彼女随分取り乱してたから、つい・・・。でも、いきなり隆史が教室に吊るされているシーンは驚きましたね。
 このシステムで一番気に入ったのは、「登場人物の紹介」を立ち絵付でいつでもメニューバーから見れるところですね。これ、あんまり登場人物多いと大変だけど、推理物の作品には是非付けて頂きたい機能です。右クリックでオプション画面からチェックするよりも遥かに操作性が良かった。そのほかの機能は吉里吉里デフォのままでしたが「次の選択肢まで進む」や、効果音・ウェイトのスキップは是非付けて頂きたかったです。
 何故か非常に気に入ったので、次回作『犯人は幽霊?!』編は絶対プレイします。
272スター・チャイルド 選択肢なし、約一時間ほどの、Nスク製SFノベルです。
 火星在住の主人公ユラと冥王星出身の彼女ミハル、そしてスクールメイト(森口博子じゃないよ)とスペースマンのお話。恐らくは「長編」の第一話という感じの内容で、「主人公の地区が異星人に襲撃され、伝説のスペースマンが復活」するところで「続く」となります。
 SFという事もあり、独特の単語が幾つか出てきて、文章が説明的になり、なかなか馴染めないんですが、最初は違和感のあるの登場人物の造詣も、喧嘩の後位からは結構身近に感じられるようになり、かなりストーリに入り込めるようになりました。淡々としている様ですが、文章そのものは、非常に上手かったと思います。文章自体が演出の一部のようでした。
 テキストウィンドウの使い方もなかなかユニークで、絵の良さを生かすように配置を上手く調整しているように見えました。その絵ですが、全部素材とはいえ、その使い方、組み合わせ方の上手さが際立っていました。素材自体、良い物を使っていますが、いい素材を複数組み合わせようとするとたいてい喧嘩しますよね?作品の世界と立ち絵、背景がよく調和している所が素晴らしかった。背景の中には目を見張る美しさのものも有り、画面サイズの大きさを余すところ無く活用していたと思います。
 ラストが微妙な終わり方だったんで、続きが気になるといえば気になるのですが、ユラとタケルの鞘当はあまり見たくないし、そうでなければユラの扱いがあまりにぞんざい過ぎる気も・・・、それでもユラの成長の物語であって欲しい気がします。ビザール結構いい奴だったのに、かわいそう・・・
273おやゆびひめ なんだかなぁ、もう・・・・・・ワロタ。
 おやゆびひめ(笑)
 ・・・意外とよく動いてる。
 うお、しかもやりこみ要素が!
 蛍ってこんな顔だったっけ?Reコンプした時の横顔と微妙に印象が違いますよね、へぇ〜・・・。
274折り返し 吉里吉里製短編、選択肢なし、20分位。
 登校中の乗り過ごした電車の中で出会った高校生の主人公と少女が、見知らぬ駅から引き返してくるお話。
 音楽など、雰囲気はなかなか良いのですが、文章が少し読みづらかったです。文章そのものは結構良くて、小説っぽい感じとか、エンディングもミステリアスな感じで良い読後感が有りましたが、もう少し、行間や改行を使ってもらえれば、ぐっと格調高くなったと思うんですよね、惜しい。まあ、私が言えた義理はないんですが・・・。
 全体的に文章力の割りに演出力が伴っていない印象を強く受けました。短い分、やりこみ要素的な部分があれば良かったと思います。
275髪の毛が伸びる人形 Yuuki!製、シュートホラーです。
 髪が伸びる人形を持った男の話。怖いというよりは何故か滑稽な結末。
 実は結構、怖いんじゃないかと思って期待して読んでみたのですが、う〜ん、怖くは無いな。、あっさりしすぎ。
 何か、深〜い意味があるのではないかと読み返してみましたが、昭和47年とか、杉並区とか、なんとなく引っかかる単語はあるのですがいまいち深みを感じることは出来ませんでした。
 似たような話が無かっただろうか?と思い返してみますが、やはり聞いたことが無い、つまりオリジナリティが有るって事ですね、でも印象が希薄過ぎの気がしました。
 開発データが同梱されているのは珍しいですね。でも、Yuuki!であるところが正直、微妙な気持ちです。
276雨と猿 吉里吉里製、4時間位で読める選択肢無しの一本道ノベルです。
 主人公の男が、友達に薦められて向かった旅館「おのや」への道中、道に迷い崖で足を滑らせ、雨の中辿り着いた小屋には、・・・猿が居た。
 モノクロームな画面といい、雰囲気的には怪談話や昔話を期待させますが、実際には独特なテンポとスタイルを持つ、感動的な人間ドラマだったりします。特にラストのラストは心にじ〜んと来ました。あっさりした文章が余計に切ないんですよね。
 ものすごく地味な画面なんですが、絵は結構カタカタと影絵のように動きます。これがまた絶妙!この作者さんの前作、「鏡の中の」もそうだったんですが、影絵なのに実にしっかりとしたデッサン力と、渋みの有る漫画ティックな演出が非常にクールです。話の進め方も実に上手いし、下手にアイキャッチを連発して場面転換を図ろうとする安易な演出手法に頼らず、きっちりと流れの中でカットを切っているのが好感を持てました。とは言うものの読み手の気持ちを置き去りにするような受け答えもあり「なんのこっちゃ?」と思うシーンも所々有ったりします。
 読んでいて気になったのは、随所に散りばめられたガジェットが推理小説を思わせるところです。でも推理小説でもサスペンスでもないんですよね。どちらかと言うとコメディ。でも何故か心にジーンと来るんです。前作でも、傍若無人な兄弟や●神の心の優しさがじ〜んときましたが、本作でも登場人物達の描かれ方がユニークでいて魂を感じました。そしてその事が余計に物悲しさを感じる・・・
 驚くほどの大作ではありませんが、雨の演出の独特さ、立ち絵の動かし方の上手さ、先の読めないストーリ展開、小気味良い効果音、どれも丁寧に作られており、勉強になる秀作でした。この人は作品のレベルが安定していて安心してプレイできる。
277皆殺しのワルツ Nスク製、2時間半位で読める選択肢無しの一本道伝奇ノベルです。
 一人暮らしの高校生、主人公「甘露」がクラスメイトの「永久」と事の成り行きで凶悪な人喰い殺人事件の犯人を追う。だが、その永久も世間を騒がす辻斬り殺人犯で、甘露も「ニセモノ」、そして人喰いの犯人も実は・・・。
 私としては本当に久しぶりの異能バトル伝奇で、やる前はかなり抵抗感もあった訳ですが、立ち上げてみると意外に清涼感のあるBGMとタイトル画面で好印象。始めてみると、いきなりの戦闘シーンで驚かされ、かなり惹き込まれましたね、良い掴みでした。
 序盤の展開から、これは最近流行の「ミッドナイトバージン」と似たような話だろうかと思いましたが、これが結構捻ってあり、要素要素に真新しさは無いかもしれませんが、上手く組み合わせてあって斬新な印象を受けました。
 全体で何話になるのか分かりませんが、今回は第一話。サブタイトルは「ニセモノ」これ見た瞬間に「ガサラキ」とか「ひとかた」を連想するんですが、十分に匂わせておいて、一話では全ての謎が明かされるわけではありませんでした。そうなると余計に気になって二話が読みたくなります。最後に出てきたご主人様的人物も含めて、今後の展開を色々と想像させてくれる、様々なギミックが盛り込まれて有りました。
 読んでいて印象的だったのは、文章が簡潔でいて、セリフに嫌味の無い事。学校生活の描写シーンにはありがちな掛け合いが出てくる訳ですが、永久の性格のおかげで随分救われている気がしました。特にこの永久のキャラの立たせ方は秀逸でしたね。全く共感できな青い所と、世間擦れして共感できる人間的な部分が共存してて面白い。またこの永久というキャラは、序盤少し過ぎたところから殺人鬼というキャラが染みてきて、読んでる間ずっと緊張感を与えるんですよね。何と無く甘露に感情移入してしまっているのか、いくら永久が柔らかな物腰を見せていても、絶えず一発触発的に何かが起こりそうで目が離せなかったです。
 後半、幾度もサプライズが襲ってきますが、それ以上に、何時「指花」を問い詰めるんだ?どうなっちゃうんだ?っていう緊張感が続き、「永久が居なくなった後」でも最後まで緊張感が途切れないところが、上手かった。BGMも良い素材を使っていたし、絵の方も立ち絵の種類が豊富でスチルもあり、なかなか印象的でした。
 これは期待感の膨らむ、純然たる異能バトル作品でしたが、こういう作品こそプロットの上手さが引き立ちますね。異能バトルもので連作なのは絶望的なまでに完結しにくいので、是非頑張って完結させて頂きたいと思っています。一話をやり終えた直後の気持ちは「このタイトルの通り、この後もコレが続くのでしょうか?」という強い不安感でした。
278桜の樹の許で 結構ボリュームのある吉里吉里製の推理小説的デジタルノベル。選択肢によって20個のエンディングに分岐し、5時間位で読めるTrueEndでのみ、全ての真相が分かり、それ以外では部分的に明かされるか、メインのストーリを補うか、異なる結末になります。選択肢そのもには推理要素はありません。
 高校の合唱部の合宿で、二ヶ月前事故死した部員の北原柚月に死因に関する、疑いを綴ったメッセージカードが部員達に届けられる。そのことで部員達の思いや疑いが交錯し、やがて三年前にも同じ桜の木の側から転落死した事件へと結びついていく。事件は本当に事故死だったのだろうか、それとも幽霊の・・・。
 「風の殺意」にシチュエーションが似ていると言えば身も蓋も無いのですが、構内に在る合宿所で起こる事件の探偵小説と言った趣です。私としては「少年少女の相死相愛」と方向性としては同じと感じました。
 主人公はハッキリ決まっておらず、視点が頻繁に変わるのでちょっと読みにくい上、登場人物が多すぎて覚えるのが大変でした。自然な表現を目指したつもりなのでしょうが、人物によって呼びかけが苗字だったり、名前だったりするので、余計に誰が誰か覚えられず、しょっちゅうHPを確認して面倒くさかったです。この辺は是非「探偵のすすめ」を見習って、メニューバーから登場人物を確認できるシステムを採用して頂ければと思いました。
 そんな感じですので、最初はかなりとっつき辛くて、読み進むのに相当の日数を要してしまいましたが、とにかく冗長に思える部分は読み飛ばしてでも進めていくと、途中からかなり惹き込まれて行きます。何度かエンディングを経験して、TrueEndまで到達すると、かなりの感動を味わうことが出来ました。上手い文章で綴られている事もあるのでしょうが、登場人物の人となりがよく描かれている事もあり、最後まで読み終えてみると、各登場人物の心情に共感して、えらい胸が熱くなりました。特におまけのこずえの台詞には目頭が熱くなりました。おまけの最後の伊勢君のモノローグも、演出がニクい!
 立ち絵も無く、BGMも素材で、地味な印象を受けてしまう作品ですが、読み込んでみると、実は素晴らしい作品である事が分かりました。真相を推理しながら読むのが面白いので、TrueEndだけでも読んでみる事をお勧めします。多分もう一度最初から読み直す事になるだろうと思いますが・・・。
 作者さんのHPにある攻略は参考にはなりますが、この通りやれば必ず到達できるというものでも有りませんので、選択肢ではこまめにセーブする事をお勧めします。
279嫉妬深い彼女 短編のホラーノベル(どちらかと言うとヤンデレ風サイコノベル)、エンディング四つで、コンプリートまで45分程度でした。
 会社員の主人公が嫉妬深い彼女に酷い目に会わされるよくあるお話で、元ネタは例の「洒落コワ」、猿夢と同じですね。
 大まかなストーリは元ネタと同じですが、友達が出てくるところや、分岐の殆どはオリジナルで、元ネタを知っていてもそれなりに楽しめました。
 選択肢によって三個のエンディングに分岐し、三つのエンディングを見ると最後にもう一個のエンディングへの選択肢が増えます。
 絵は習作と言う事で、のっぺりとした感じに見えますが初めてにしては頑張ってると思いました。音楽の選曲は概ね良かったです。
 バグの類は多かったですね。最初のプレイでは何故かホイールで履歴が開きませんでした。一回エンディング見た後は普通に見れてましたけど・・・。タイトルの「続きから」をクリックするとどうしても「おまけ」に飛ぶ。ウィンドウフレームのタイトルが「嫉妬する彼女」になっている。誤字では「・・・ウェイトレスが来たら、必ず彼女が注文を受ける」等、テストプレイが作者さん本人だけだと色々気付かない事も多いと思います。ですがフリーソフトですし、さっさとリリースしてから、バグ報告を受けてバージョンアップして行くというのが、最近の主流のようですね。
 ヤンデレに特に思い入れがあるわけでは有りませんが、昔大学のサークル仲間で飲み屋で楽しく談笑していた時に、それまで笑いながら話してたその内の一人の女の子が突然「私だって色々つらい事が有るんだ!」と、声を張り上げた時は戦慄したな〜。
280山荘で 集まった話し手によって、語られる幾つかの怪談を聞く度に、現れる選択肢によってエンディングが六つに分岐するホラーノベル(コンプリートまで一時間ちょっと)です。
 怪談の内容は、集まった人たちの体験談に基づくという設定で「雪山での遭遇」「山道での運転」「生霊」「温泉」「写真」に関するもの。似た話は聞いた事が有りますが、概ねオリジナルな話ばかりでした。
 怪談そのものはそれ程怖くは無いのですが、その後で出てくる絵でゾワッと来ました。コレ結構怖いですよ、注意!ホラー表現としては独特に思えるのですが、煽られる感じが全く無いのについつい画像に見入ってしまって、その異様な雰囲気に圧倒されました。こういう作品は、真夜中に真っ暗なところでプレイしたいですね。
 一通り、分岐を埋めるとある選択肢に三つ目の選択が現れます。コレを選択すると、今までばらばらみ見えていたオムニバスの怪談が一つの線で繋がって行きます。エンドロールの後も最後まで読んでみて「ああ、なるほどそういう事だったのか」と驚かされました。プロット上手すぎです。
 匂いの話しも良かったのですが、私は娘の話が一番怖かったですね、あれは結構キました。
281図書室のネヴァジスタ THE FOOL 「図書室のネヴァジスタ」というシェア公開予定の作品の登場人物を使った、全く異なる推理ノベル。
 チャット仲間が開くOFF会のドラックパーティで、2億円相当の覚醒剤を賞品に8人のチャット仲間達がお互いのハンドルネームを探りあうゲームを行います。主催者はネヴァジスタ。全員が素性を明かさないまま、洋館の一つ屋根の下で過ごす事になりますが、この中には「復讐者」「マフィア」「警察」等が紛れ込んでおり純粋にゲームを楽しんでいるのはネヴァジスタくらいのようです。そんな中、一人の仲間が殺害され、お互いの猜疑心は研ぎ澄まされていくのでした・・・。
 基本的には一本道ですが、ザッピングしながらストーリを追う事になるので、気持ちの切り替えが忙しく、ちょっと疲れます。最後に推理した登場人物達のハンドルネームを入力して、個人の情報を閲覧する事が出来、これでようやく全貌を理解できました。全てのハンドルネームを確定すると、エピローグを読んで読了となります。ここまでで、凡そ二時間半くらいでしょうか。正直、私はネヴァジスタ以外はほとんど当たりませんでした(笑)。
 作品の出来としては、さすがはシェア作品を製作する同人サークルだけあって、絵も音楽もストーリ展開も非常に高いレベルで作りこまれています。確かに、元作品の素材を利用してはいますが決して手抜きではなく、別個の一作品として完成度の高い推理ノベルに仕上がっていたと思いました。
 ただちょっと気合入れて読むには散文的で、集中力が削がれた気がします。それのせいで本気で推理する気になれなかったのが個人的には残念でした。また登場人物たちの心理的な描写がややドライに思えて、いまひとつ感情移入できなかった気がしました。
282トリッシュの事件簿 ツクールXP製短編ノベル(45分位かな?)。元は携帯用アドツク(ツクールモバイル@ADV)で製作されていたシリーズだそうで、それの続編(第三話)の位置づけのようですね。
 主人公である探偵トリッシュの出番は少ないんですが、その助手(認めて貰ってないらしいが・・・)のラズが、依頼人の「失踪した女中」を捜索するお話でした。
 選択肢は無くただ読み進むだけのノベルで、ツクールらしいキャラクターの会話によってストーリが進行していき、軽快な進行でさくさく読み進めちゃいました。
 最初からほとんど終わりの方まで、ずうーっとラズの茶番でしたが可愛いから許す。最後に、真打が強引にまとめちゃうのには驚きましたが、それぞれの役割がよく分かって面白かった。
 システムについては自由にSAVEが出来ないのが不満ですが、吹き出しの配置と立ち絵の配置等、体裁としては商業物のような美しさでしたし、個性的な女の子ばかりの登場人物が「LADY PEARL」を髣髴とさせ、かわいい立ち絵に負けないくらいキャラクターがイキイキ描かれいるのも良かったです。
 ストーリそのものは「幕間」的扱いというワトソン君の言葉通り、あっけない物でしたが、それ以外の設定やキャラ等のリソースの完成度が高いので、以後の続編には、もっと長くて深い話を是非期待したいと思います。

 作品とは関係ないシステムの話になりますが、このシリーズの元のプラットフォームだったツクールモバイルのオフィシャルサイトは2007年に実質上閉鎖になっています。
 フリーノベル作者の少なくない人達がこの携帯iアプリ向けのツクール作品をリリースしていましたが、その多くはシリーズ物で、完結を待たずに打ち切られたものもあります。その後、一部のタイトルはファミ通等で再配信されましたが、幾つかタイトルは放置されたままです。
 何故この様な事が起こったのでしょうか?そもそもこのシステム自体に問題があったと思わざるを得ないのですが、ツクールモバイルの開発ツール(PC上で動く。エミュ付き)そのものはフリーなのですが、それを使って出来たものは自由に配布する事が出来ない事に、一つの要因があったように思います。
 つまり、それを自分の携帯で遊ぼうと思ったら、エンターブレインに送って、審査を受けてからでないと携帯にダウンロードできず、しかもDL出来るようになってもそれに課金されると言う仕組みらしいのです。上手く商売に出来ると思ったんでしょうが、思惑通りにはならず実際は駄目だったんでしょうね、一年程で閉鎖。
 他にも色々と問題は有ったのでしょうが、エンターブレインさんもなかなか舵取りが難しいところだと思います。
 team-yuraをはじめ、多くのポテンシャルあるベンダーが有りながらも、携帯アプリ自体がなかなかメジャーにならないのは、機種互換性以外にも色々と柵が有る所為では無いかと勘ぐってしまいます。
 とりあえず一回、しがらみを取り払って、裾野を広げてみるのも手ではないでしょうか?NTTだけが儲かるシステムではなくて、それがベンダーにもきちんと還元されるシステムになれば、iアプリは結構大きな市場になる気がします。
 現に、ドラクエダンジョンは移動時の良い暇つぶしだし、携帯電話はDSよりもパイがでかいし・・・。もっと沢山のアプリを気軽に楽しんでみたいっていう人は、私だけじゃないと思うんだけどな・・・。
283didymos[Marcel:マルセル] ツクール製の脱出系AVG、didymosの後編です。今回は双子の弟「マルセル」が主人公となり、屋敷の探索を通して姉弟の心の開放を目指します。
 前編同様、さまざまなパズルが幾つも用意してあり、この手のRPG風探索ゲームのファンには十分に満足できる作品に仕上がっています。今回の謎解きのレベルは、コレットよりは高めになっているように感じました。上の下と言ったレベルでしょうか?何しろ、展開によっては解けなくなる袋小路が発生してしまい、やり直す羽目になりましたので・・・、一応私の経験では「便器が動かなくなる状況」が発生してしまい、あるアイテムが入手出来なくなりました。回避するには、出来るだけ早めに処理しておく事をお勧めします。
 今回で一応完結という事ですが、前にコレットをやったのが随分前で記憶が曖昧になっており、設定やストーリが違う気がして調べてみると、最近コレットのストーリが大幅に変更になってる様で、もう一度やり直してみました。・・・その結果、う〜む、なるほど、END[C]の続きなわけですね。マルセルの台詞の伏線とか、助けてとか、呪いの意味が分かりました。しかし、この親はやっぱりちょっとヤバいんとチゃいますか?エンディングには分岐は無かったと思うのですが・・・。二人とも痣があった訳だし、一方を選ぶ理由は無かったような気がしますが、ぬいぐるみのエピソードに何か意味が有るのか?最後はリドルストーリって事でしょうね多分・・・。まあストーリ的にはちょっと消化不良感は有りましたが、二部作としてはボリュームも完成度も十分なクオリティでしたね、面白かったです。
 ヒントを以下に伏字にて「トイレ:早い段階で動かしときましょう。風呂場:濡らしましょう。三階右一:アイテム二個GET。三階左一:鍵GET&メモ2使ってもう一個鍵GET。二階右三:バールGET(要フラグ)。PCルーム:鍵GET。スロットルーム:鍵GET。食堂:左1箱(メモ1回す)左2箱(ショットゲームの法則、要給電)右2箱(スロットの模様)右1箱(椅子を寄せた時の模様)台所:給電。あれを冷やす。PCルーム:0にすればいいんです。風呂:湯を抜く。鏡の部屋:×模様を(逆さまに)踏まないで鏡の左端まで行く。鏡の奥:風呂の暗号と数字の順番。重要アイテムGET。三階左一:再びメモ2使用。三階左二:鍵GET。一階廊下:額の並べ方は本棚の通り。三階右二:バールで外して時計をチェック。台所:鍵の番号、時計を使って開錠。→三階右二でEND
284清未ちゃん Nスク製の短編サイコノベルと見せかけて、短編恋愛ノベルでした(20分)。
 主人公は中学生の新三郎、八百屋の息子でちょっと生真面目だけど良い奴。彼は、小指の無い転校生「清未」が路に落とした筆箱を届けに行った事で彼女に気に入られ、気に入られている内にだんだんと彼女に興味を持つようになっていくお話。
 ここのサークルさんの作品って、シナリオが独特で面白いですよ、今回は「無能令嬢」に展開が似ており、やはりちょっと変わった恋愛の形を表現してありました。
 主人公の新三郎君も佐渡島君と印象が近くて、清貧な生真面目さが良く伝わってきました。こういう学生ってきっと未だ世の中には沢山居るんだろうな、身近には滅多に見ないけど・・・。
 ヒロインの清未さんは岸川さんと比べると、最終的にはあそこまで可愛くはならないけど、カップルとしては同じ位、幸せそうに見えました。私の中では「ちびまる子ちゃん」の野口さんとかぶります。異常性を上手く表現し、それがもうこっちに帰ってこない程度のものである事を認識させるのに、彼女の部屋のベッドの描写が良く効いていました。
 絵はモノクロ、BGMもなし、荒唐無稽な部分も有りますが、でもコンパクトにまとまっていて、ちゃんと読み応えはありました。
 清未さんのハイコントラストな絵がとってもコワくて印象的・・・。「葱」を新三郎の尻に突っ込まないか、はらはらしたよ。
285ミノカワリ Nスク製、一本道短編ノベル(30分位)。タイトルは「身代わり」って事でしょうか?中学生二人が、死体を山に捨てに行く青春ストーリです。
 立ち絵は無く、小さなぼやけた背景画像と、赤い便箋のような画面に横書きで文章が綴られ、右下には「ひとがた」が川に流されていく挿絵があります。履歴を見ると、ページ送りのボタンが「葱」になっています。前作「Monster」でも同じようなガジェットが有りましたが、実はこれらは物語りに関係しています。
 終わり方も独特で「THE END OF EVANGERION」みたいな、タイトル画面と同じ模様が出たあと、唐突にウィンドウが閉じるなんていうのも、以前の作品と統一されている作風を感じました。
 この作者さんの特徴はなんと言っても「貧乏描写の執拗さ」に有ると思うのですが、この作品では主人公こそ珍しく「お金持ち」と言う設定ではありましたが、その親友がとにかくもう、いつもの悲惨さに輪を掛けて借金塗れだったりする訳で、しかも一見お金持ちの設定の主人公も「虐めを受けるキモデブ」という設定で、金持ちである事を貧乏な視点から眺める、卑屈な視点を持って居たりします。
 一連の作品の根底に流れる、この「貧乏」という名のテーマを何故敢えてこの作者さんが取り上げ続けるのかを考えてみると、私はどうしても高橋留美子の「ザ・超女」に出てきた「みんな貧乏が悪いんや!」という台詞と同じものを思い浮かべてしまいます。
 特に子供の頃に感じた、貧乏の記憶の断片って、人格形成の上で良くも悪くも重要な影響を与えますよね。そんな貧乏の境遇の中でも「友情と家族の絆」があれば乗り越えて行けるっていうのが本作のメッセージだったんじゃないかなと思います。
 展開的に乗り切れない部分も有るし、貧乏描写がいちいち鬱陶しく感じたりする人もあるかとは思いますが、後半のストーリ展開はなかなか読ませましたよ。
 この人の作品はスタイルが出来上がっていて、その他の作家さんと違った個性が有りますね。
286いちろ少年忌憚 RPGツクール2000製、学園探索型ホラー(一時間位)です。
 八十上(やそかみ)学園に通う主人公「いちろ」が、教室でこっくりさんをしてしまった為に、学園に伝わる七不思議に襲われ、幼馴染の「とおこ」、オカルト研究会部長の遠藤先輩と共に閉じ込められてしましますが、協力して七不思議に立ち向かい脱出する話です。
 作者さんは、ツクール・ホラーの名作と誉れ高い「おばけ屋敷探検隊」の人です(didymos作者のABC男さんの奥さん)。今回は難易度は比較的低いですが、オーソドックスなホラー演出は健在でかなり楽しめました。
 謎解き自体は確かに簡単なのですが、この手のゲームに不慣れな人にとっては、何をどうしたら良いのか?戸惑う部分もあったかもしれません。顔は似ているもののRPGとは違い、次は何をやって、次はどこへ行って、という誘導が無いので、打算的に課題をクリアしていく事に不安感を感じたり、達成感が削がれてしまって、謎解きがめんどくさく感じる可能性は有ると思うんですよね(特に前半)。でもそういう人はこれは違う物だと割りきるべきだと思います。
 音楽は聴きなれた素材が多かったのは残念ですが、その分ドット絵のデザインが可愛く、イベントでの芝居もなかなかほほえましかったですね。七不思議達もどこかしら可愛い。
 私にとってはテーマ的にはストライクだったのですが、そのせいで過剰に期待してしまったような気がします。ストーリ自体は素直すぎて捻りが無い、でも、心臓発作で死亡と言う強引さには、意外すぎてかなり笑えました。
 即死END以外のエンディングは二個、一つは「とおこ墜落死」のBadEnd、もう一つはみんな幸せのHappyEnd。分岐フラグの出現にはイベントの発動が必須です。図書館で影に追いかけ回され、保健室であの人に介抱されてください。後は、最後の選択肢で正しい選択をして下さいね。今回は簡単なので、詰まりそうなとこだけを以下に伏字でヒント。
 犬は「香水」でカウンターした後どこかに逃げてください。一度に二つの七不思議に襲われないというルールを思い出して。焦らなくても全然大丈夫です。で、次に使うのは「」です。
 「」のいたところは忘れずに調べましょう。
 「花瓶」と「ゴミ箱」はまめに調べましょう。
 いじめっ子の「名前」のヒントは、どっかに書かれてある「イニシャル」です。
287奇形児 吉里吉里製、短編ノベル。鬱でブラックな話だけど、作者さんの恐るべき狡猾さによって、一気に読めてしまう凄い作品。プレイ時間は30分くらい。
 主人公は小学五年生の被DV少女と、19歳のキモメン専門学校生(絵からはあまり素性が伝わってきませんが・・・)。DVに耐えかね家出した少女と、キモくてふられたばかりの専門学校生が公園で出会い、お互いの不幸自慢の末に意気投合するお話。そして、結末は・・・真っ暗です。
 読んでいて強く思ったのは、かなり真面目に描かれているなぁと言う事。一見して不道徳でブラックなテーマに見えるんですが、描こうとしているものの本質は、かなり冷静にしかも客観性を持って描き出してあるような気がします。
 要は、主人公達に対して感情移入せず、かなり冷徹に描写している、と言う事なんですが、この作品で作者さんが描きたかった事は「人間性」ではないだろうかと思われます。表でも裏でもない、メビウスの輪のような二面性こそが「人間性」だと言わんばかりの内容だったように思います。その上で、こうなってしまったのは周囲でも自分の所為でもない、先天的なもの(神様の所為)だ、と主人公に言わせている恐るべきアイロニー。
 暴力的な描写、よりもどちらかと言うと性的描写の為にレーティングは15推となっております。かなり煽情的な描写もありますが、反って作品のストイックさを高めているところに技巧の上手さを感じました。音楽の使い方も良かったし、短いけどなかなか印象的な作品でした。
 妙なウェイトが掛かるところは読み進むテンポを崩しがちで少し残念でしたが、これも作者さんが意図した演出かもしれませんね。なんか続編も出そうな感じです。
288カノウセイ ツクール2000製、ホラーAVG。プレイ時間はGoodEndのルートで約2時間位でした。
 高校生四人が乗り込んだ電車が人身事故を起こし、停車している間に電車内は異様な雰囲気に包まれ、四人と、途中で出会った大学生一人が、さまざまな怪奇現象に巻き込まれていくというお話。
 主に電車内のみでイベントが発生し、RPGのような戦闘を繰り返して物語が進行していきます。もちろんAVGですのでキャラの育成とかは有りませんが、武器の組み合わせや攻撃のタクティクスなんかはゲームの大きな要素の一つになっています。
 また、ホラーイベントは基本的に怪物系とスプラッタ系だけで心理的な要素は皆無なんですが、イベントには、各キャラクターの過去のトラウマなんかを絡ませる事で、虐めや社会問題についても扱っており各キャラクターの成長と共に、作者さんの主張が込められた作品になっています。
 そのメッセージについては置いておくとして、ゲームとしての娯楽性はそれなりに高いと感じました(コンパク銀賞作品)。ヘタにマップの広いAVGよりも、こういった電車内という狭いセットの中で色々な仕掛けを考える事が出来た事は賞賛すべき点でしょう。PS2ソフトに「最終電車」というホラーノベルゲームがあるんですが、それをツクールにした感じの雰囲気です。車内ドット絵なんかは素晴らしいの一言です。
 最終的な結末については、なかなか良い読後感のある(長い)エンディングでしたが印象としては色んな要素を詰め込み過ぎてちょっとちぐはぐに(荒唐無稽に)なってしまった様にも感じます。
 このエンディングには七つあり、死亡エンドは三つ、仲間が何人生き残るかでBadEndが三つ、そしてGoodEndが一つになっており、何度か繰り返し遊べますが、かなりフラグが難しかったり、ちょっと自力で解くには難しい難易度なので、攻略は大変でした。正直、一回GoodEndを見てしまえば後はもうプレイが億劫になるほどです。「夕闇通り・・・」の様に、難しさの向こうに待ってる何かがないと、コンプはしんどい・・・。私がこの作品で最も印象的だったのは音楽の使い方の上手さと、そしてタイトルのトリックでした。これはちょっと分からなかった!
 攻略について、少しヒントを・・・。作者さんのHPにほとんどの攻略は書かれていますが、それでも私が結構詰まったのは「影」との戦闘。ちょっと特殊な戦い方をしますが、負けるが勝ちという言葉がピッタリ来ます。でも、自分がやられては元も子もありませんよ。他は攻略の通りで倒せますが、倒せない時は武器を変えてみるのが良いかもしれません。最後に、イベントを飛ばせるskip機能は非常に有り難い筈だったのに、何故かあまり飛ばせてない事が不満でした。
289Eat Runner
アンパンと地上最速の生き物
 吉里吉里製、あのサンダーボルト三部作の続編ギャグ影絵ノベル。プレイ時間は約30分でした。
 文部省の指導方針に疑問を持ち教育への情熱を失いかけていた三田先生が、一人の生徒からパン食い競争での勝負を挑まれた事によって、地下競技場のスタジアムで様々なパン食い競争アスリート達と対決しながら、教育への情熱を取り戻していくお話。分岐はありますがほとんどが即死End用です。
 製作は2006年ですが、最近新しくリニューアルされたサイトを訪問したときに紹介ページがあり早速プレイしました。いやー、さすがでした。ねっぷり楽しませて頂きました。
 そもそも、この類のノベルはギャグ漫画と同じように人を選ぶとは思いますが、私にとってはこのセンスは非常に合うようで、一ページ読むごとに「なんでやねん」とほくそ笑みながら突っ込みまくっていました。「迷いこまへんやろ!」「やっぱり、グリコかい!」「200mパン食い競争が9.8秒って、100m走より速なっとるやないか!」っと息つく暇も有りません。(このタイトルの省略名も突っ込むべきなのか・・・)
 えー、ちなみに「餅すすり」というのは、佐賀有明の風習で、餅を引き伸ばして長くして、噛まずにちょっとづつ飲み込んでいくじいちゃんばあちゃん達の危っ険な特技のようなものです。・・・やっぱりセオリー通り、掃除機で餅を取り除くんですね。この後のビスコ・ムービーは、クライマックスに相応しい盛り上がりを見せました。ああ、腹いてぇ。
 また今回、女教師シリーズの美喜先生がゲスト出演していましたが、直接出てはいないものの裏でこちょこちょと動いているジェンダー・フリー先生の影がチラついているのが笑えました。正直、からみを見たかった。
 私はどちらかと言うと、サンダーボルトシリーズの突き抜けるようなギャグの爽快感や、周りを省みない独自性が好きなのですが、インスピレーションを受けて作られた女教師・美喜シリーズの「あの動き」については、あちらに軍配があるなぁと思っていました。ですが、今回の作品ではフラッシュの効果を用いた「動き」が取り入れて有るようで、その事が、更に作者さんの表現力を広げたなぁと思いました。
 そして無理やり清々しい、いつもの青空のラストが好き。
290ゴミ箱の下の空 Nスク製、オムニバス形式の短編集。選択肢ありで、コンプリート二時間くらいでした。
 三編から成り、
@「カーストの鐘」・・・プロ野球12球団のマスコットをモチーフにした物語、カースト制度の中でマスコットとして生きていく事を運命付けられた身寄りの無い一人のマスコットが様々なマスコット達との交流を通して自分の存在について考える。
A「終わらない夏」・・・勤務先の魔導師である先輩に思いを寄せる、ある研究員の精神世界と絶望。
B「故障式」・・・離婚と虐めと職種差別とPTA。イノセンスに綴られる社会のよどみと、「壊れ行く」方程式。
 @では、新井の描かれ方が面白かった酷かったのでちょっと気の毒になってしまいましたが、めちゃ笑いました。作者さんは広島ファンなのでしょうか?彼は今広島ファンにめちゃめちゃ恨まれてるからな〜。梵が異常に腹黒くなっているのもナンデー!?って感じです。色んな球団のいろんなマスコットが出てきたり、色んなエピソードが出てきましたが、結局未完成な体験版って事のようでした。でも、予告編や伏線の様なものにはかなり興味を惹かれました。サブタイトルから考えても、ただのマスコット二次創作ではなく、色々と深い設定がありそうです。
 Aは、三つの場面が入れ替わりながら進むストーリ。基底欠損というのはどうやら「無意識の信頼感」の欠如というようなものらしいです。やや説明不足の感じは否めませんが、最後までぐいぐい読ませる運びの上手さを感じました。この話だけは分岐なしでした。
 Bは、色々考えさせられる話でした。最近、モンスターペアレントなんて言葉で親側を揶揄する風潮の有る中、この物語ではそれに反対するかのように教師側の問題点が前面に押し出た内容でした。正直、この選択肢は「重い」ですね。逃げ続ける人生と、友達が自分の代わりに壊れていくのを見る人生。全員が全員正しくない、それが現実でそれを受け止めていく主人公がどのように成長していくのか・・・、その事に重い不安感を感じさせるラストでした。三つのストーリの中では最もメッセージ性の強い短編に感じました。
 全編に渡って、加工背景写真と音楽が良いマッチングを見せており、雰囲気も良いのですが、@にだけ出てくる立ち絵はデザインは良いものの微妙にデッサンが狂っているところがあり、やや気になりました。若干性的に倒錯しているような感じはありますが、別段女性向けという事も無く、どなたでも楽しめる作品かと思います。コンプリート後に「おまけ」はありません。セーブ後にタイトルに戻ってしまう不具合が何度かありました。
291CD-Lime 読みやすい、Nスク製短編ノベルゲーム。少ないけど「選択肢あり」で、二週目&エンディングコンプリートに二時間半くらい掛かりました。
 12歳の小学生が主人公で、不幸が重なった後に引き取られた叔父の家で、14歳のいとこ「ライム」と出会うところから物語が始まり、紆余曲折の末、魔法少女たちの闘争に巻き込まれていく話。
 どうやら長編の第一章の様で、幾つかの回収されない伏線(「右目への拘り」「少年の欠けた記憶」)等が有りますが、これはコレで一つの作品として十分に楽しめるお話でした。ライムの性格がぶっ飛んでて面白いのですが、半分くらいはちゃんと考えて行動してるところがあって、意外にズル賢い感じがするのが良かったです。少年の年齢に似つかわしくない突っ込みも笑えたし、こういう妙に客観的な子供が主人公のノベルが最近増えてるような気がします。たとえば「ボアダム」とかね。現実の「非日常」と、「日常を装う内面」との葛藤から、思春期の精神と現実世界との接点を模索するような、自分探しの物語というのが今の世相を反映していて(レベルは違うけど・・・)受け入れられやすいのかも知れません。
 一周目が終わり、一枚目のCDをGETすると、二周目で分岐が増えます。エンディングは一周目、二周目含めて三個。二周目の選択を正しく行っていれば、TrueEndにたどり着き続編に続く様です。最後までやってみると、ライムの意外な内面部分が垣間見えたりして、ちょっと感傷的になってしまいました。まあ、現時点で決して良い子とは言えませんが。
 作中にちょっとだけメタフィクションなモノローグが入ったりするのですが、物語のテンポと上手く融合していていっそう読みやすい。popな展開とよくマッチしたBGMの選定も素晴らしかった。立ち絵のキャッチーな感じもGOODで、そんなところにもしっかりメタフィクションがギミックとして機能しているところが面白かった。
 なかなか期待感の持てる伝奇物を読んだ気がしましたが、最近そう思った伝奇物が軒並み頓挫している状況を見るに、二話位ですっきり完結して欲しいなぁと思う今日この頃。
 どうでもいいけど「ジン(甚)・ライム」ってシェイクするとギムレットになるんですね。振っただけなのにきつくなるイメージ。
292あやし
-境界揺動-
 Nスク製短編和風オカルトノベル。
 妖(あやかし)の少女とその補佐役の好青年、そして女子高生の主人公の物語、のパイロット版といったところ。「境界揺動」では、郊外の町で次々と起こる神隠しの事件の顛末を綴っているようです。
 選択肢は無く、15分位で読めます。セーブ機能は、有るようですが何故か機能していません(多分バグ)。
 主人公と妖達とは、既に邂逅を果たしており、顔見知りの状態で始まっていますので、プロットの組み方としては、この後の話で詳しい出会いのエピソードが回想されそうな感じです。
 「お嬢」「にいちゃん」ときて、他にも「じじい」「ネエチャン」が出番待ちである事から、誰がどう見ても設定は「地獄少女」なのですが、主人公を少女に固定して綴っていくのであれば「巷説百物語」をMIXしたような構造と捕らえる事も出来そうです(百介ね)。
 「都市伝説」「街談巷説」という心惹かれるキーワードを用いながら、本編では終始、主人公が空回りしているだけで、正直、ストーリ自体は物語としての魅力に欠けていましたが、雰囲気や設定そのものには今後の期待感が持てます。ただオマージュ的な作品だけに、キャラの魅力だけで引っ張っていくにはかなりキツイ感じはします。やはり、ストーリに惹き込んで行く工夫が有ってこそ、こういうステロタイプなキャラが光ってくるのではないでしょうか? 絵や音楽は普通に魅力的ですし。
 作品中の重要なガジェットとして「曼朱沙華:マンジュシャゲ」と云う花が出てきますが、これは「彼岸花」の事ですね。よくオカルトの作品に使われる毒のある花で、地獄花、幽霊花とか呼ばれるのでそういう所に使われやすいのでしょうか。
 秋の田んぼのあぜ道に咲いてるのをよく見かけますが、実はあれはわざと植えてるらしく、毒の茎がある事を利用した害獣・害虫の忌避の目的があるそうです。
 並んで咲くので非常にフォトジェニックなんですが、確かに整然と咲きすぎて不自然な気がしてました。墓を獣に荒らされないように墓地にも植えるそうで、そんな所から幽霊花なんて呼ばれるようになったのかもしれませんね。
293あやかしよりまし逢魔 吉里吉里製、短編和風オカルトノベル「あやかしよりまし」の続編です。
 選択肢無しで、プレイ時間は・・・10時間位掛かりました。気軽に読むにはかなりの長さがありますが、中断するがもったいないくらい面白かったです。夜中の三時に「これ以上はヤバイ」と思って寝ましたが、おかげで夢に出てきました。
 前作の一件以来、少し明るくなり、陸上部にも通うようになった主人公「修一郎」が、背中に羽の生えた同級生「木場勇」と、「魔」に興味を持つサングラスを掛けた青年「鏡」と出会い、自分自身の存在について見つめ直しつつ、獏の夢によって呼び起こされる欠けた記憶の断片を追う中で、少年時代の唯一の友達「イサミ」との絆に気付いていくお話。これは修一郎の誕生を含めた過去と、心の成長を描いた物語です。
 前作の物語を引き継いではいますが、基本的に独立したお話として出来上がっています。残念ながら紅葉は出てきませんが、前作と比べて明らかに活発になってきた主人公を見ていると、紅葉の存在がいかに大きかったかを窺わせます。
 そして、何でも自分で解決しようとする修一郎が「仲間」に助けを求めるシーンでは、彼の成長ぶりに心を熱くさせられました。
 そう、活発と言えば、彼の小学生時代は、今と正反対にとても活動的で驚きました。その変化の原因となった事件の重大さが、今一つぴんと来なかったのは、恐らくギャップが余りにも大き過ぎたからかもしれません。
 今回のヒロインは紗都梨ではあるんですが、生八橋にもかなりのスポットライトが当てられており、前作に比べるとかなり扱いが良くなっていました。しかし、その事が余計に切なかったような気もします、う〜ん複雑だ。生八橋や猫柳は結構良い奴で、長い物語の中で彼らの存在が青春の豊かな色合いを添えてくれました。
 それから、個人的に思い入れのある楓の新しい立ち絵も良かった。この姉弟のキャラデザインは絶妙ですね、上手すぎます。ただ似せてるってだけじゃなくて、それぞれキャラが立ってるのに、ちゃんと絵に収まってるのが何気に凄い。(弟と姉と、猫の掛け合いがかなりツボった)
 他に意外だった事では、紗都梨が「僕女」だった事。かなり強いショックを受けてしまいました。
 また、修一郎が意外と儚い存在である事が「親父」の口から語られた事には正直驚きましたが、それについては、今後の続編に期待を持たせる上手いブリッジにも思えました。
 外伝の「祓」との統一完結編が作られるかどうかは別として、わくわくな感じが収まらない素晴らしい幕引きでした。
 本編のお話は十二分に素晴らしかったのですが、私としては別のところにも強く心惹かれました。心の成長の表現として用いられた「ピーターパン」のくだりは感心。歳取ってからガンダム見た時と同じ感慨。特に実際にお芝居を見たあとの修一郎が、本との違いについて冷静に感想を述べるシーンは、いたく共感致しました。原作読んで映画見た時の心の中と同じ物が、リアルに描かれていて嬉しかったです。
 戦闘シーンの多さが読者にストレスを与え気味ではありましたが、総じて、絵と文章の統一感が目覚ましい、さながらプロの漫画家が製作したような完成度の非常に高い作品でした。凄く読みやすいし、時間かけても読む価値はあると思いますよ!
294湖岸の盲点問題編: 吉里吉里製、犯人視点のコロンボ風短編推理ノベルです。
 視点であり、主人公であり、犯人でもある「芦国」(加々美湖で綾淵亭というペンションを営む)が、加々美湖のリゾート開発を目論む「犬塚」老人を殺害に及ぶまでを一章、二章で描き、捜査一課のニコニコ青年刑事「小此木」と対決を三章、四章で描きます。
 プレイ時間は一時間半くらい。選択肢は無く、全四章を読みきった後に「犯人が犯した四つのミス」を推理するルールが説明されます。プレイヤーは問題編の情報から推理して、2008.8.11午前1:00までに解答をメールすると、正解者の中から抽選で賞品(結構豪華!)が貰えるという、フリーの推理ノベルとしては斬新な企画で驚きました。
 シナリオメインの作品のようですけど、音楽をはじめ、効果音、緻密な立ち絵、絵と合成された背景写真など、作品の作りが丁寧で大変好感が持てました。市販品とまでは行きませんが、よく出来ていたと思います。
 私の場合、自動読み進めで、とりあえず一回通して読んでみて、二箇所程、犯人のミスに気付いた気がします。もう一回読めば、もう一個くらいは見つけられそうです。でも四つ見つけられるかはまだ分かりませんね。でもそんな時は、任意のチャプターを選んで読める機能(一回読み終わってると、再度プレイ時に選択可能)が有難いですね。
 プレイしてみて気になった事は、結構頻繁に経ち絵が演技をするんですが、それが推理に影響を与えてそうな気がして、上から被るこの文字列が邪魔で仕方がなかった。出来ればきっちりウィンドウを分けて貰えると有難かったかなと思います。
 推理とは直接関係ないのですが、この事故偽装に一役買っている「ガソリン」の取り扱われ方が気に掛かりました。
 余り詳しくは無いのですが、エンジンオイルとか混ざってる刈払機や2ストの混合ガソリンならまだ分かりますが、通常のレギュラーガソリンって直ぐ揮発しちゃうんで、何時までも溜まったりしないんじゃないですかね?
 ・・・ってかオイル漏れならまだ分かりますが、ガソリン漏れっ放しなんてとんでもなく危険な気がします。だから、この漏れた物は実はオイルだったんなら普通に納得。
 2008.8.13に解答編公開だそうです。楽しみですね。
解答編: プレイし終わってみて、素直な感想として「うん、これはフェアだ。」と言うくらい、難易度的には理不尽ではなく、誰もが正解する可能性を持っていたと思います。
 じゃあ、お前全問正解したのかよ、っと言われると、・・・すみません、二つしか分かりませんでした。一番最初に間違いないと思ったのは「桟橋に案内」するミス。これは解答編で、一番最後に指摘するロジックですが、これは誘いまくってるのが、あからさまだったんですぐ確信できました。「懐中電灯が無い」のミスは、考えなくても殆ど指摘されているようなモンですから、まあ間違いないだろうなと。・・・他のは何と無く自信が持てなかった。「ガソリン漏れ」のミスは、「ガソリン流れ込んでも平気かよ、勝手なやっちゃ」と思い、登場人物の性格が破綻している本質的ミスだぁとは思ったんですが、完全犯罪を思う余りの盲目のミスという風には受け取ってませんでした。「ごみ拾いの足跡」のミスは、せんでもええ事をしてる時点で、ミスだなぁとは気付きますが、解答編の順序のミスで指摘している通り、「カヌー使っただけだよなぁ」と思い、それ以上考えませんでした。確かに手順を追うと矛盾に気付いたかもしれません。
 解答編も問題編同様、クオリティ的には丁寧に作られており「答え合わせ」パートでは、ピアノのBGMもしっとりとして、J.B.ハロルドシリーズのようでした。
 ただ、本編での芦国の長いモノローグというか、心理描写が大げさな上、冗長で早送りしましたが、もう少しテンポ良く読み進められればと思いました。
 また、こういう作品ではリアリティが作品の魅力になると思えるのですが、推理小説に拘る余り、ロジック上都合のいい縛りが出てきたりして、読者を作品に惹き込む事が疎かになっていたように思えます。
 つまり、芦国や小此木のドラマとして見ることが出来ず、間違い探しクイズとして読者に気負わせた事で何か覚めた目で話を追ってしまったようで、少し寂しい気がしました。
 両立させるのは難しいのかもしれませんが、割り切ってしまうとそれはそれで物足りないものだと気付かされました。
 背景写真を見ているとこの加々美湖は、函館の大沼公園を思い出してしまいます。どこなんだろう?
295カイダン実ハ。 Nスク製、ホラーADV。コンプリートまで約40分。閉鎖的な村にやってきたある人が、ある村人から村で起こった事件について聞く話。
 拙い語り口が独特で、余計に話へと惹き込まれる不思議な作品。立ち絵は無く、昔のコミックメーカ作品に多かった「※画像はイメージです」的な背景写真の使い方が懐かしさを感じました。
 殆ど最後まで選択肢が無いんですが、一箇所だけあまり必然性の無い「壱」から「睦」までの六つの選択肢が出てきて、その選択によって話の意味も結論も(話し手、聞き手の素性までもが)変わってくる異なるエンディングが決定します。
 大抵は猟奇的だったり、サスペンス風のエンディングで後味悪目ですが、六番目のエンディングは怪談風ですっきり楽しめました。
 全てのエンディングを見るとタイトルメニューに付録が現れて、特に解説とかは無いんですが、外伝のようなストーリが楽しめます。
 語り部が拙く、その他の登場人物が一切喋らないのでので、何しに来たのかとか、会社の事とか、学校での平等とか、このコミュニティの意味とか、殆どよく分からなかったのですが、それはそれとしてホラーっぽい雰囲気はそれなりに味わえた気がします。
 荒唐無稽さによってホラーっぽい味付けはされていますが、全体的な興味はカニバリズム向けられており、そこがテーマになっているような気がしました。
296CD-Manatsu 魔法少女的短編ノベルゲーム「CD-Lime」の続編です。今回は選択肢なしで、約二時間。前作に引き続き、非常に読み易い文章で一気に最後まで読んでしまいました。
 ライムが家を去り、主人公キリは養子となって残された家族と暮らしていたが、前作で倒された「白女」が家にやってきて、キリに「あるもの」を探してくれとお願いする。性格に違和感を感じながらも、キリは「白女」と行動を共にする事になる・・・・・・。仲間が増えるイベントのお話です。
 それにしても、タイトル通り「真夏」に相応しい熱いお話でした。結構ドライだったキリが、あれ程強い思いを募らせて行く過程が、非常に読ませました。何気に、夏にもキリにも感情移入しまくりです。
 今回、新しい魔法陣が使えるようになったり、去り際にキリに自分の魔法の使い方を教えたり、色々と気になる伏線が散りばめられていましたが、特に気になったのは、「ニセモノ」「バンダナ」「心と体の不一致」というキーワード。明らかに読者を誘導してるって分かるんですが、違和感だけ残して無視しちゃうって手法が上手いですね。続編が非常に気になります。
 ちょこっとですが、ライムや手下の男も出てきます。前作以上のテンポの良い掛け合いに、思わずほくそ笑んでしまい、前作以上に楽しめました。お勧めです!
297ゆとり教育 Nスク製短編ホラー。5分ほどの短い話で、怪談というよりはどちらかと言うと「笑い話」の類ではないかと思われます。
 心霊スポットであるマンションの屋上に二人組みが探索に行く話しです。元ネタは2chオカ板の「死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?」で、以前「猿夢」もデジタルノベル化されていますが、作者が違っていても雰囲気的には似ており、シリーズものを感じさせます。
 ストーリはアレですが、ホラー演出としては良質で、オーソドックスなループサウンドや効果音は、去り行く夏を惜しむかの様に心に響きました。オチもしっかりしており、短いながらもいい感じで纏まっています。加筆・修正は殆ど無く、原作に忠実でありながらも、適切な演出と絵を用意して無難に一本の作品に仕上げた原作ノベル化の成功例の一つですね。短い事がもの足りない気もしますが、原作モノだししょうがない。
 Nスクの場合、私は大抵、フォントを「HG丸ゴシックM-PRO」に変えてやるんですが、雰囲気を出すためにHG羽衣Mでやったら結構いい感じでした。作品中、友達が「へたれ!」と罵るシーンがあるけど、599さんは関西の人なんだろうか? 時々「ヘタレ」の使い方が間違っているのをネットで見かけるけど、これは違和感の無い使い方ではあるけど、無理矢理標準語にねじ込んであるので痛烈に違和感を感じた。
298暑い日にはお話を 吉里吉里製短編オムニバスホラー。彼氏の部屋に遊びに来た彼女にせがまれて、彼氏が即興の怪談を披露する話です。
 各話5分程度の短い話が「石を積む子」「視線を感じて」「人形」の三編あり、幕間に彼女の感想が入ります。
 怪談そのものは、夏の本屋に平積みされている創作怪談っと言った感じで、体験談とはまた違った風情があり、怖さを感じるよりも「この話はどういう内容なんだろう?」と考えながら読み進める楽しさがありました。悲しかったり、愛情があったり、近親相姦だったり色々です。
 立ち絵は無いんですが、背景写真のレイアウトがなかなか工夫してあって、更に雰囲気があってよかった。BGMが全く無い事も、画面のデザインに良くあっていたように思います。
 くそ暑いのにそば打ってたら、もっと暑い気もしますし、蕎麦なんかで精力も付かないだろう思って読んでいましたが、ホントかどうか知りませんが蕎麦は精力減退の防止に効くそうで「なるほど、だからわざわざ話に蕎麦をもって来ているのか深いな!」と思いました。
299妖隠録 公開期間限定、吉里吉里製縦書き怪談ノベル。妖怪の見える友人「志摩禰」に連れられて、森を抜け見覚えのある一軒の家にたどり着き、そこで主人公が自分自身の事を思い出すというお話。
 志摩禰に連れられて森を彷徨ってる全七章の内、二章〜六章の各章で「蜘蛛」「餓鬼」「蓋」「百々目鬼」「憑喪神」の五つの怪談が入ります。最後に「或る数」を答えますが、これが多いか、少ないか、ぴったりかで、エンディングが三つに分岐します。大体、40分位で読み切れました。
 怪談といっても、人の業が妖怪を生み出すまでを描いた物が多く、京極?のような「人間」の悲哀の物語をオムニバス形式で描いた作品と捉えることもできます。
 普通の怪談を期待すると肩透かしを食うかもしれませんし、怖くもありませんが、それぞれのお話は中々味のある物語で、私は六章目の話が面白かったですね、コレが憑喪神とどう絡んでいるのか最初は全く分かりませんでした。
 エンディングの「終着・参」では、もう一個の怪談「生霊」を読む事が出来ますが、その後の語りで、作者さんの「怪談論」のような物が書かれています。無理矢理、頭蓋骨に話を結び付けようとしている様にも思えますが、なるほどなぁと思いました。でもまあ、私はそういった想像力とそれを導き出す演出にこそ無限の可能性を感じるところなのですが・・・。
 ウェイトが飛ばせないのは、結構なストレスでした。縦書きの文章と、写真の加工・合成が生み出す作品の雰囲気は素晴らしかった!
300ネバーランド Livemaker製、一時間位の短編の鬱ノベルです。
 田舎の少年の「仲間」「永遠」「死」をテーマに、同じような結末の話を何度も読みつつ、その根幹へと少しずつ展開していくストーリ。・・・実は、パラレルなのは別の部分だった気がします。
 近頃、Livemaker製の作品に全く手を着けていませんでしたが、久しぶりに最後まで読ませる魅力的な作品でした。
 propan_modeのBGMも最高でしたが、それを含めたシナリオ、演出、美術が非常に美しいハーモニーを奏でていましたね。特にラストの締め方は完璧でした、美しかったです。
 なかなか複雑な話で、二回読まないと、どういう事なのかよく分からないのですが、物語の構造自体はそれ程目新しくも無いのに、その根底に流れる荒唐無稽なテーマと演出の力強さが私の心を惹き付けました。あと、細かいガジェットが印象的でしたね、「白い花」ってツリガネソウなんだけど、物語では出てきませんでしたが花言葉は「親交・友情」で、コレが口に咥えられているイミフな所が余計に「病んでる」感じで、そこはかとない怖さを感じました。あと、唐突に「」が「」を殺すけど、主人公はあの機械でそこのところの事情も知ってるんでしょうかね?あの辺はイマイチよく分からんかったけど、やっぱり怖い気がした。
 統一感のある作品で、文体も絵もスタイルがしっかりあって好感が持てました。その一方でシステム的には未完成な印象を受ける事も多く、ウェイト等ではイライラする場面もありました。
301隣人 毎週アップデートされる、連載形式のホラーサウンドノベルです。
 郊外のアパートに引っ越して来た一人暮らしの「悠木佳枝」が、無人の筈の隣の部屋の扉の隙間に見た白い腕と住民達の不自然な態度に疑問を持ち、同じアパートに住む大学院生の久松と共に隣人の謎を追います。
 ユニークなところは、所謂アドウェアで、企業又は個人のスポンサードを受ける代わりに、クレジットにスポンサー名が表示される仕組みです。システムも最近では珍しいオリジナルですが、今のところ特に不具合や不便は無かったです・・・というか、それを感じる間もないくらい、一本あたりのプレイ時間が非常に短いのがちょっと不満。
 いやー、でもこれはかなり期待させますね。見た目は地味ですが、もの凄い怖そうなんだもん。写真を加工した背景や合成も良いんですが、登場人物の絵も、プレスコも上手い!効果音もエンディング曲も怖い!取り敢えず二節までやりましたが、まだまだ先は読めないものの、演出や雰囲気にはホラーの飢えを癒してくれそうな予感がしています。
 実は小説版が公開されており、そちらで先が読めてしまうようですが、意地でも読まない!
302死の霊園 Yuuki!製ホラーノベル。プレイ時間は30分くらいでした。
 男女四人の大学生が墓地に肝試しに行って呪われてしまう、お決まりのストーリ。選択肢によって幾つかのエンディングに分岐しますが、TrueEnd以外はBadっぽい終わり方でした。TrueEndでは呪いの真相と次回作の宣伝が見れます。選択肢には特に謎解きの要素は無く、最後の選択も総当りで比較的簡単にTrueEndにたどり着けました。
 背景や立ち絵(顔はぼかしてある)は全てオリジナルで、しかも手馴れた感じで描かれており、特に背景やイベント絵は、最近のありあわせの素材で作られたノベルとは一線を隔した温かみと懐かしさを感じる手作り感が良かったです。
 音楽や効果音にはホラーっぽい素材が多く使われており、十分肝試しの雰囲気を楽しめることが出来ましたが、全体的なクオリティの割りに、プロットがありきたりすぎて少し残念。手堅く作られている印象は受けるものの、同人・フリーノベルならではの冒険的コンセプトが余り感じられないという印象を受けました。確かに、ラストの真相には驚かされましたが、どちらかと言うと強引過ぎて唖然としてしまったり。
 また、Yuuki!が使われているところも気になりました。この作品の品質なら是非、Nスクか吉里吉里を使って戴きたかったと思います。Yuuki!も作りやすくて良いツールなんでしょうが、それだけにそれなりのものになりがちです。今時、フルスクリーンで立ち上がるのもびっくりしますし。(最近のバージョンでは、これは防げた気がしましたが・・・、FSはブラウザが小さくなるので困る。)
 あと、印象に残ったのは「立ち絵に名前が付いてくる」事で、これって初めてな気がするけど、デザイン的には凄く気に入りました。
 続編も有るそうなので、是非プレイしてみたいと思います。
303千変挽歌百不思議
邂逅編
 Nスク製、学園ホラー伝奇ノベル。プレイ時間は12時間くらい掛かりました、久々の長編です。選択肢はありません。
 怪談や噂の多い学校に入学したばかりの普通の女子高生が主人公。趣味の都市伝説研究のためにこの学園に入学したが、入学式の日に偶然体験した出来事の所為で先生から「噂屋」という役割を与えられる。噂屋の仕事を進める中で、この学園を支配する謎に肉迫し、やがて自身の生死を掛けた大きな運命へと立ち向かって行くお話。
 プレイを始めた頃は、学園ホラー物の印象で、学校生活・家・ホラーイベントを巡って行くんですが、これがちょっと曲者で、結構ダルい。ホラーイベントとかは目を見張る良い演出もあるんですが、学園生活部分が妙に冗長。親友の加奈が(実は最後まで)要らない子で、未だ中学出たてのガキンチョの癖に妙に癪に障る立ち振る舞いやら口調やらが、私が読み進むのを阻害しました。中盤に入るとこの子の出番が少なくなり、徐々に伝奇色が強くなってきます。謎の単語、謎の組織と組織間の敵対関係、儀式。その一方で、ノスタルジックな都市伝説的ホラー演出もどんどん出てきます。しっかりと壷を押さえた上手い描写で、謎が謎を呼びどんどん気持ちは高揚していきました。特に「祝井センセ」の残留思念にはゾクッと来ました!葉菜子さんの「半頭ぶっとび」も絵で怖がらせるんじゃなくて、文章でじわじわと精神的に怖さが染みて来る感じで「ああ、私が求めていたのはこの感覚だ・・・」と久しく忘れていた気持ちに気付いてしまいました。そして怒涛の終盤は伝奇物バトル。激しい展開に時の経つのを忘れて食い入るように読み込んでしまいました。全部読み終わったら、目が痛いやら、眠れないやらで大変でした。
 様々な謎の幾つかは本編で明かされずに終わります。布津のお父さんはあの人なんでしょうね、きっと。・・・命を宿らせた訳だし。それにしても、あの駅のシーンは美しかった。銀河鉄道やトワイライトシンドロームの駅の噂を思い出した。
 イベントには、実写映像とイラスト絵が多数使用されており、立ち絵もかなりの数が用意されていました。女性向けの絵柄の様ではあるものの、男性が見ても馴染みやすく、イベント絵は朝日ソノラマの挿絵の様なレイアウトでかなり好印象でした。その一方で、キャラのデザインは統一感に乏しく、立ち絵とイベント絵では別人になる事もしばしば。特に葉菜子さんや天宮先輩は出てくるたびに顔が変わっていて驚きました。気が散るので出来れば、出演の多いキャラは、キャラデザの段階でポーズを多く用意してあった方が良かった様に思います。
 文章の方は、後半は凄い盛り上げが上手かったです。ただ序盤の方は展開が遅く、加奈との会話も冗長で、何日も寝かせたり、読み飛ばしたりしてしまいました。ただ、灰汁の強い文章ではなく、全体的に読み易いので、徐々に惹き込まれて行き、本当に長い物語でしたが、最後は瞬きするのも忘れて読みまくりました。
 読了すると、おまけで都市伝説のチップスの様な物を28個読めます。凄い。
 この作品は三部作になっているそうで、残った謎は続編にて明かされる事でしょう。この時点で、2008年に初リリースされた伝奇物では、最も面白かった作品でした。前半は軽く流してでも読み進めれば、きっと満足出来る素晴らしき逸品。
 読み終わった今でも、まだ分からないところも有るのでまた後で感想を書き直すかも。
304書いてある 「死の霊園」の続編に当たる、Yuuki!製ホラーノベル。プレイ時間は分岐も含めると一時間でした。
 中学生の女の子が、何者かに呪われて、四日後に殺されそうになるお話。選択肢で適切な選択を行い、真相を明らかにすればTrueEndです。次回作や作者さんのデザインスタジオの宣伝が見れます。一方、選択を誤ればDeadEndです。
 謎解きは非常に容易で、前作と異なり理不尽な選択肢は無く、最後の選択も普通に読んでいればまず間違わないと思われます。一箇所、母ではなく友達を優先するシーンが有りますが、間違えたのはそこ一回だけでした。
 前作同様、背景や立ち絵(顔はぼかしてある)は全てオリジナルで、田舎の風景が温かみと懐かしさを感じる美しい絵です。音楽や効果音もやはり前作と同じような印象で、お話も含め全体的に手堅い印象なのですが、違いは何処かといわれると「推理要素」ではなかったかと思います。前作は受動的に展開しながら謎が出ては消えていくのですが、本作は割と始めの頃にどーんと謎を与えて、それを解いていく様な進め方で、前作よりは話に集中できたように思えます。
 また、前作との繋がりですが、後半に例の二人がやってきます。半年以上は経ってるみたいですね。でも二人の関係が進展しているようには見えませんでしたが・・・。イレギュラーな「外人」はいいとしても、「友達」はトリッキーでした。ミスリード要員なのでしょうが、これが本命だったら、人間不信になるわ。
 更に続編も有るそうですが、そろそろNスクか、吉里吉里で。少なくともいきなりフルスクリーンは無しの方向でお願いします。
305コモンセンス 駅の階段から跳ぶ事で、自分達の心の開放を試みる登場人物三人の少年少女たちの不安定な内面を表現した、ワンプレイ五分程度の短いノベル(Nスク製)。セーブは無く、一回読み終わるとスタート画面に戻るので、計四回「はじめから」を選択して毎回(視点・時間)の違うストーリを読む事が出来ます。最後はクレジットが出て読了となります。
 全編に渡って、静かなBGMが多く使われており、特にピアノソロは聞いていて心の休まる、気持ちの良い選曲でした。またそのBGMに良くマッチした、モノトーンの立ち絵(小畑健ぽいかも)と背景、イラストが非常に良い感じで調和していました。
 読んでみて思ったのは「コモンセンス」というタイトルには二つの意味があるのでないだろうか?という事。一つは「良識・常識」という言葉で示される一般的な意味合い(実際には英語と日本語ではかなりニュアンスが違うようだが・・・)。少年達にとって存在意義の曖昧な言葉であり、自我がそれを冒そうとする。
 もう一つは「共通した感性」。この三人は動機は異なるものの、同じ行為を行ってしまいます。そこに、何らかの共通する性を見つけているように見受けられます。
 いずれのエピソードも「自我同一性の不一致」を表現したものだと捉える事が出来ますが、そこに主体と客体の関係を意識させる「噂」を添える事で読者を作品の構造に取り込もうとしているのかもしれません。
 すっきりと短くまとめて有り、また激しい感情の起伏を起こさせないので、環境音楽のようにプレイでき、終わった後も(確かによく分からない事も残りますが)すっきりした気持ちになれました。それは多分作者さんが「短いけれども、書くべきことは全て書いてある」からだと思います。
 ノベルはスタイルだぁ!
306探偵のすすめ
〜犯人は幽霊?!編
 吉里吉里製、「探偵のすすめ〜先生は犯人?!編」の続編です。
 キャンプ場で起きた事件を中学生達が解き明かします。前作のメインキャラ達5人はそのままに、プレイヤー視点として、新たにクラスメイトの早紀が加わりました。
 選択肢があり、全プレイ時間はだいたい1時間ちょっと。前作同様、起伏の少ない文章なのにいきなり凄惨な事件が勃発して、想像の斜め上を行くストーリが展開します。
 薄弱な恋愛要素(しかも今回も結末は同じ)といい、前作とほとんど同じようなお話でしたが、私は前作の方が面白かったように思います。
 トリックについは納得出来るものの、事件の真相や犯人の動機、犯人ではないある登場人物の心情については大雑把過ぎてイマイチよく分からんかった・・・。動機が弱い上に、大人のキャラクター全員の心情に共感できない、何か強いポテンシャル障壁を感じました。あの刑事達の扱いもあまりにぞんざいです。
 その一方で、中学生達の言動は微笑ましく、笑いながら読めました。義太の出番が少ないのはちょっと不満でしたが。
 システム面では、画面デザインがいっそう洗練されており、格好良かったんですが、前作でメニューバーから直接人物紹介を表示できるところが、今回は右クリックでメニュー画面を開いてから人物紹介を選択するように変わっていました。個人的には前回のシステムが非常に気に入っていただけに残念です。とはいえ、今回は人物紹介を開く必要を殆ど感じなかったので、あまり気になりませんでしたが。また、推理の画面もあまり必要性を感じませんでした。
 前作を気に入っており、期待してプレイしただけに少し、あれっとなってしましましたが、霧のシーンで画面に動きがあるのは雰囲気があって良かったです。
307東京アリス ファンタジーで鬱な吉里吉里製ノベル。
 都内の中学校に通う欧太が、幼馴染のありすが夢の中に作った不思議の国を冒険するお話。プレイ時間は、フルコンプリートで約4時間です。
 分岐は多いものの、間違うとBadend後に木の上にチェシャ猫が現れて(ちゃんと首から出てくる)、Badendの原因を教えてくれるので、どつぼにはまる様な事は無く一応のコンプリート(TrueEnd)までは快適にプレイできました。しかし、フルコンプリートとなるとかなりの茨の路です。伏字にてコンプリートのヒントを「まず全ての分岐を試し、44個のフラグを立てます。これには2ルート存在する5章も含まれますので、3章で遭遇する人物を選択肢により替えることで、5章で証人として呼び出される人物を替えます。全フラグが立ったら、神経衰弱ゲームが50枚に変わっているのでこれをクリア→おまけシナリオ発生となります。私は全フラグを立てたのに、神経衰弱ゲームが発生しない不具合に見舞われましたが、証人を替えて5章を繰り返したり、再起動しているうちに、何時の間にか神経衰弱が50枚に変わっていました。
 前半は淡々と進み、何章(全5章)か進むと、何故自分がこの世界にやって来たのかに気付かされて、ドラマが急展開します。居た堪れないエンディングですが、最後にちゃんと救いも用意してあり、(おまけシナリオを見る限り微妙な気もしますが・・・)一応はハッピーエンドではないでしょうか?
 ありすの家庭環境や、空を覆う摩天楼、消え行く団地、凶悪な交通事故など、「東京」という冠が示しているように、現代の都市生活における殺伐とした毎日と、子供の精神的な居場所みたいなものをテーマとして扱っており、その中で子供達自身の歪みを認め、それでもやっぱり現実を受け止めて生きて行こう、というようなメッセージが読み取れました。
 非常に可愛く描かれたありすや欧太以外のキャラ達も、皆丁寧に、且つオリジナリティあふれるデザインで感心させられました。ゲーム画面のデザインも良く洗練されていますが、明るい画面に明るい文字が入る場合があり、時々読みにくかった。特に履歴を見る時には、ホイールを使うと、背景が暗くならず、殆ど字が読めない不具合が発生します。右上のボタンから履歴を開いた時はこういう事は無いんですが・・・。多分バグでしょうね。
 ありすのお母さん、育児放棄って訳では無いんでしょうが、余りに料理出来なさ過ぎでワロタ。良く育ったな、ありす。でも、悪い人では無さそうだよね、多分、共働きしないといけない深い事情があったに違いない。そんなに貧乏そうには見えなかったが。
 ピエロなんですけど、存在が浮いてて、気になりました。あれは何だったんでしょうね?不思議の国のキャラじゃないし、実体化して薬とオルゴールまで渡してる。・・・獏か夢邪鬼だな、あれはきっと。
 不思議の国の通貨がペリカなのは驚きました。一枚一枚に兵藤和尊が描かれている紙幣をハンプティダンプティが使っているのかと思うと笑えます。・・・つまり、ありすは賭博黙示録カイジのファンという事か!?ざわ・・・ざわ・・・
308妖怪倶楽部第2話 私の中の名作、「妖怪倶楽部」の第2話追加バージョンがリリースです。クリスマスに、とっても嬉しいプレゼントでした。(吉里吉里製)
 久し振りにプレイしてみて、この絵の無い暗い画面に綴られる白い文字に気持ちが落ち着くし、何かしっくりとくるの感じました。私の趣向に良くあってるんだと再確認。目覚ましの音が、ちょっとしつこかったけど、エンディングの主題歌がかかると、しんみりとした気分になり良い読後感が得られます。
 第二話は、中央と主人公(プレイヤ)がメインキャストとなり、AM7:30〜8:45をループします。初出は奇しくも、ひぐらしと同じ2002年(本作はいわばリメイクです)。猟奇殺人ではありませんが、殺人事件と事故を止められるかが鍵となってストーリが展開します。
 選択肢は幾つもありますが、どれを選んでも殆ど一本道のようなものでした。初っ端でパートナーを選ばされますが、これが関係するのはエンディングのほんの少しの部分だけで、実際のパートナは中央(幽霊)です。どのパートナを選んでも、それぞれにちょっとしたエンディングの味わいが有るのが凄い、そして共通するラストシーンへの繋ぎが上手い。
 操作性に関しても、ENTERキーで高速読み飛ばしが出来、下手なウェイトも無く、ループ物とは言え快適でした。総プレイ時間は20分くらいです。解凍後にexeファイルを置き換えれば、ver.1のデータを引き継げるので、あとがきが読みやすいです。このとき注意が必要なのは、パッチ(patch.xp3)を当てている場合、適当にファイル名を変えちゃうなりして、読まないようにしなければver.2にならないようです。ご注意を。
 「一話&番外編」と比較すると、展開はユニークだったと思いますが、ホラーとしての味わいは若干薄めだったかと思います。いや、もちろん面白かったし、ちゃんと抑えるところは抑えてあるんだけど、自分にとっては、一話と番外編は物凄く気に入ってるので、これは仕方が無いのかも。
 第三話(リメイク)は何時出るのでしょうか?なんとも待ち遠しい。
309幽霊相談室 「Reason of Detective」「夏、セミ、少女」の作者さんによる推理物の短編AVG。幽霊に頼まれて他殺の原因を推理します。(吉里吉里製)
 私は四つのエンディングをコンプリートするのに相当苦労しました(二時間くらいか?)。その原因が「黄色いもの」を出すのを忘れていただけだったというのが情けないのですが、逆に言うとアレなしでは多分、私にはコンプリート不可能でした。黄色い物が出せれば、程なくクリアです。
 この作者さんの作品は、ミスリーディングの上手さと同時に、既成概念を逆手に取る上手さが際立っていると思います。何とか新しい反応が無いかあらゆる選択肢を試すんですが、作者さんに「それは推理じゃない。」と言われている様な、後ろめたい気持ちがしてきます。
 この作品では、ところどころで「ん?」と思う事や、「アレ?」と思うことはあるのに、それが推理の文字入力に全く結びつけられないし、また物証の一点に固執しても、解決に辿りつかない。間違った推理を何度繰り返しても、樋山の言質をいくら引き出しても、無駄。分岐までの伏線と、分岐後の結末の中から文字通り組み合わせて、答えを出すしかありません。そういう意味では、この話の中で出てくる全てのシュチュエーションに無意味なものはほとんど無いと言える気がします(ミスリードも含めて)。
 絵は素材で組み合わせてある為、デザインの統一感の無さによる違和感は否めませんが、LUNABLESSさんのとこの立ち絵にぴったり合う主人公の性格は見事でした。キャラの立たせ方の上手さは「Reason of Detective」「夏、セミ、少女」の時にも思いましたが、立ち絵を決めてから、固めていくのか?キャラを作ってから、立ち絵を探すのか?素晴らしいハーモニーを生み出す仕組みが気になります。
 シンプルなシステムでいて、例えば人物リストはメニューバーから見れる、文字入力にはコピーペーストや人物リストが利用できるなど、痒い所に手が届く快適な設計でした。気軽に楽しめて、かつ達成感の得られる良い作品でございました。ただ、キャラが立っている割には全体的に感情移入出来ないお話というか、END01の最後の二人のやり取りが、私には納得し難かったです。
310変調・幽霊相談室 「幽霊相談室」の番外編的な作品で、枠の中と外で相互作用しながらストーリが進行します。(吉里吉里製)
 フリーノベル作家の元に送られてきた、二次創作ノベルゲームを訝しげにプレイするお話。プレイ時間は、一つのエンディングに約20分程度。五つのエンディングが有り、私の場合、真面目にやって完全コンプリートまで約2時間半掛かりました。システムは「幽霊相談室」とほぼ同じで快適でした。「直前の選択肢に戻る」が特に。
 やってみた感想としては、一種のネタ作品というか、かなり遊んでいる内容で、これまでの作風とは少し違った印象を受けました。作者自身を登場させるなど、メタフィクションの要素を過分にとり入れておきながらも、枠の外と内のストーリに整合性を持たせ、最後は上手くオチが作ってあり、綺麗にまとめてありました。この辺の上手さは流石です。
 ノベル作者や絵師、レビュアの業界ネタ的な要素を扱っているのも新鮮で、描写の中には「へーなるほど」とうなずきながら読み進めるシーンも多かったです。ただ強いて言えば「幽霊相談室」と同じく、リスクを考慮すると理解しにくいシチュエーションがあったように思います。これは推理物の殺人事件としてロジックを組む上で、仕方ない事なのかもしれませんが、それでももう少し読み手に受け入れやすいように心情を描写して貰わないと「そんな事で殺人!?」という拒否反応を読者が起こすのではないでしょうか?
 この作品では例の「黄色いモノ」システムが採用されていないので「幽霊相談室」に比べると難易度は高かったように思いますが、結局は文字入力に何を入れるかが決め手になるという意味では同じで、その決め手となる文字入力の回数が多かったというのが難しさの原因であるような気がします。
 エンディング01にたどり着く為のヒントを少しだけ書きますと、犯人はアウターストーリで仄めかされている通りの「実在」の人です。その通り入力です。動機、目的は「B」の場合と同じです。で、色々展開があった後に、もう一回推理で、今度は展開の結末に従って犯人を入力(あれ、星辰ちゃんは死んでたっけ?)・・・これが一番難しいかも。これで、プレイログに二つコンプリートが出れば完了です。
 ホシノちゃんの実際の性格がどんな感じなのか、それがとても気になりました。
311南月島の人魚 序章を含め、全22章に及ぶNスク製長編ノベル(一般小説としては短編ですが、デジタルノベルの中ではという意)。選択肢はありませんが読み進むだけでも、私の場合8時間以上かかりました。
 本編は、男二人の大阪の大学生と女二人の長野からの大学生を中心に進み、沖縄の孤島に向かう旅路で出会い、共にその島の人魚伝説と神隠しの謎に迫っていく少しホラーティックなストーリ。終章では地質学者のケイタさんによって、ちょっと違った視点から、事の顛末が語られます。
 また、クリア後の四つのおまけの内、外伝では言い伝えの元となった昔話、あとがきでは作中に登場する映画の監督と島の関わりを描いています。
 これ読みながらずうっと思い出してたのが安彦さんの「巨神ゴーグ」。私が大好きな作品の一つです。ストーリ展開が良く似ていて、色んな所が置き換わってはいるんですが、結末もほぼ同じという事で、私は結構楽しめました。それでも「ケイタさん」と「船長」が同じ仕事(CIA関係)だったっていうのはさすがに読めませんでした。なかなか良いどんでん返しで、オマージュのようにも思えてしまうのですが、そこがまたファンには嬉しく、ほくそ笑んでしまうところでも有ります。
 立絵は少女マンガ風(ジャニーズ風ピーコに違和感が・・・、でもヒナは良く合っていました)、システムも派手なシスカマなどあまり無く(チョコチョコ動いたりはするのですが、残像が残ったりします)、一見地味に思えましたが、何より良く練ってあるストーリが作品を光らせていたように思います。流石は、懸賞で最終選考まで残った作品ですね。あまり強い恋愛要素がない事も、その手の物が苦手な私には有難いですねー、淡い位で丁度いい。
 残念だったのは、やはり冗長に思える部分が多々あった事。特に5章くらいまでは、結構ー長く感じました。そこからは、徐々に盛り上がってきて、途中少し中だるみますが、15章以降は一気に最後まで読んでしまいました。
 島の人々の人間模様や、沖縄という独特な土地の歴史的な関わりなど、本来描こうとしているテーマを、「人魚」という幻想的なモチーフを使って一つの作品に仕上げた印象です。読み応えがありました。
312突き落とし幽霊 Nスク製のショートホラーです。
 「学校の階段の怪談」という事で、題材的にはオーソドックスな「突き落とされる」筋ですが、エンディングはどちらも若干捻ってありました。選択肢は一箇所で、エンディングは二つ、全体で10分掛からないプレイ時間です。BGMは無く、不気味な効果音が良い雰囲気を醸し出していおりました。
 学校建築に並々ならぬ興味を寄せている私としては、(素材?にしては上手いカットがあるなあと・・・)使われている階段の写真に何故か心惹かれました。この色合いと、曲線とネットの組み合わせがツボのようです。
 「Nスクのアンチエイリアスって、いまいちなのかな」と思ってしまったほど、画面が小さくて字が読みにくいところも有りますが、作品としてはコンパクトに纏まっていて、程よく楽しめました。
313ママ大好き Nスク製の短編ノベル。喫茶店のウェイターから小話として「地方新聞にひっそりと載った母子の焼死事件」にまつわる真相を聞くお話。
 選択肢なし、プレイ時間約30分、短いといっても内容が重いので、かなり読み応えがあります。
 最近の世相を反映してか、主人公は25歳で5歳の子持ち、結婚の経緯で親と疎遠、旦那と離婚、派遣社員、育児ノイローゼ&DV気味であります。しかも、子供を一人で家にほったらかして夜遊びと、一体どうなってんだ?という気もしてきますが、描写される主人公の心情を読み進めると、「解りたくないんだけど、解る」気持ちになっていきます。
 作者さんの文章が上手いですね、「そっち行っちゃダメだろ〜」という方向に主人公が進んでいくので、ついつい話に惹き込まれてしまいました。
 で、これ以上無いって言うくらいの、予想通りの結末に、何か心締め付けられるような、ホッとするような不思議な読後感が有りました。
 私的に解釈すると、ある種のリアリティに読者の心を引っ掛ける実験のような作品と捉えました。顛末は重要ではなく、さりげない表現に隠されたシチュエーションが、幾重にも折りこまれていて、その何処かに心が引っ掛かるように出来てるような、そんな印象を受けました。
 ピアノのBGMが静かで清涼感を持っており、ともすればドロッとしがちなストーリを昇華させ、また美しい経ち絵が読者を惹き付け、しかも表情が登場人物の性格をよく反映していました。
 ストーリ上、のっぺりした演出でしたが、音楽・立ち絵の使い方はなかなか良かったと思います。
314新聞部七つ不思議 ツクール2000製ホラーADV。どっかで聞いたようなタイトルですが、高校の新聞部が七不思議の企画を記事にしようと、夜の学校で語り部を集めて怪談話を聞くというお話。もちろん、お約束のごとく6人しか集まりません。
 怪談は「オカルト部の七不思議の話」「帰り道の幽霊の話」「包帯の男の話」「別荘の訪問者の話」「四階のてけてけの話」「洋館の日本人形の話」の六本。どれも怖さは感じませんでした。
 探索中に突発的に絵が出てくるんですが、どうにも安っぽい感じがリアクションに困ってしまいます。でもこれが無いとホラーっぽさが失われてしまうような気もするし・・・。
 エンディングは一種類は確認しましたが、ツクールの操作性で、このマルチエンディングをコンプする気力は出ませんでした。
 しかし、雰囲気的にはそれなりに楽しめた気がしますし、このネタをツクールでやるところには、幾ばくかの斬新さを感じた気がします。
315よだか
Elementary combat
 吉里吉里製、SFノベル。遠い未来、地球外の生命体に侵略を受け続ける大人の居なくなった地上で、自分達の地域を守る為に最後の防衛線として徴兵された、二つの地域の小学生達の戦いの物語です。
 プレイ時間約4時間、八紘光小学校と附属ラグエル小学校の二つの舞台で、並行してほぼ独立にストーリが展開します。
 作者さんがエースコンバットZEROにインスピレーションを受けて作られた本作は、三部作の第一話だそうで、選択肢はありますが、誰から話を聞けるか程度の違いで、ストーリの分岐はない様です。
 全員小学生男子だけのお話で、テーマとしては男(の子)同士の友情を扱っている訳ですが、単純にBLと割り切ってしまえる程軽いものではなく、むしろ人間模様は子供とは思えないほど重く複雑になっています。
 ストーリ構成も複雑になっているようで、八紘光とラグエルは完全に独立ではなく部分的に絡んでおり、しかも時系列も異なっているようです。その中でどういう読み進め方をするべきか?まあ、好きに読めば良いんでしょうけど、ラグエル編の最後を見ると、「やよい」がどうなったか気になりますが、八紘光編の「蜂」で「今年あった前例」として、整備士が負傷した事がようらから語られており、これは多分やよいで、生きている事が確認できます。また、この事から、八紘光編の開始時点でラグエルの「菊」での戦闘は終了している事がわかります。
 また、八紘光編のラストで現れる「クルセイダー」は恐らく「一三」で、菊での戦闘から時間が経っているのか、言動から幾らか成長している事が窺えます。で、続編へと続くようですが、今後どういう絡み方をするのか非常に楽しみですね。私は、ほぼ交互に読みましたが、話の筋としてはそれぞれを一気に読んだ方が集中できたような気がします。
 タイトルから、本作は宮沢賢治の「よだかの星」のオマージュと思われますが、よだかの姿はまさに、父親の罪を背負うシズルの姿に重なります。この作者さんは「カムパネルラ」という作品もリリースされていますが、これも宮沢賢治の銀河鉄道の夜の二次創作的な作品なんですよね。雰囲気的にも、テーマ的にも似た部分が多い気がします。
 小学生だし絵もやわらかいタッチですが、内容は結構ハードで、小松左京の宇宙漂流とか、ヴァイファムとか、ガンパレードマーチを思いだしました。子供だけで頑張ってる姿はなんか感情移入しちゃいますね。
316Q.S.S 〜Quadriennale Short Stories〜 吉里吉里製、オムニバスノベル。選択肢の無い11編のショートストーリの詰め合わせです。
 各エピソードのタイトルは、「ぬいぐるみ」「ずっとずっと」「初恋のくれた道」「首脳陣会議」「空」「Re-play」「檻の外のライオン」「食べてしまいたいほど好き」「秘め事」「矇」「殺してしまいたいほど好き」最後の二編以外は、作者さんのHPで公開されていた短編小説が原作だそうです。
 内容は現代設定の物が多いですが、中世のものもあり、恋愛、コメディ、切ない思い出、御伽噺・・・など、分野も多岐に渡っています。全部読み終わるにはだいたい、三時間位じゃないでしょうか?一本は15〜20分程度で、それぞれは完全に独立した話(「食べてしまいたいほど好き」と「殺してしまいたいほど好き」は連作だけど内容は独立している)なので気軽に読めて、ちゃんとオチがあるので読み応えも有ります。短いお話ですが、プロットがしっかりしており、先が気になってどんどん読み進めてしまいました。印象としては、「踏切」等に似てますね。
 僅かな影絵等は有りますが、立ち絵は無く、主に素材に頼って作られており、吉里吉里は初めてとの事で、凝った演出などは有りませんが、しっとりとしたBGMは雰囲気によく合っていて良かったです。
 殆どの話が面白かったんですが、私の個人的な趣味では「首脳陣会議」「Re-play」がいまいちで、「ぬいぐるみ」「ずっとずっと」「空」が印象的でした。「檻の外のライオン」「矇」が微妙ですね、話は良いんだけど読み終わると、何かもやもやします。
317記憶の水源 Nスク製、短編の御伽噺。生贄の風習が残るとある民族の少女と少年の悲劇的なお話です。
 だいたい50分位のプレイ時間でしょうか?分岐は一切無く、エンディングまで静かなBGMが導いてくれます。
 内容は、地獄少女の身の上話みたいなシチュエーションですね。後半、かなり生き方に関わるメッセージ性が濃くなってくるのですが、押し付けがましさが無くファンタジックに昇華させてあったのが良かった。
 HPで公開されている小説版とは多少違っているみたいですが、私はあのチャルが刃を剥くシーンは驚きました。「よくも兄ちゃんを見殺しに!」って事なんでしょうが、余りに唐突に思えたので。
 この作者さんの作品をプレイするのは二本目ですが、その間に幾つかの作品を公開されています。
 一本目の作品の印象を一言で言うと「玉石混淆」で、凄く印象的な部分があるのに、全体ではそれを見え難くしてしまっているような気がしました。
 この6作品目を見て思ったのは、着実に良い面を伸ばしているなぁという事。
 ただ、演出面での見せ方に良さや新鮮さがあるとはいえ、解りやすい娯楽性があるわけではなく、読者に対してはあまり高い意識が有るとは言えない作品だったように思います。
 フリーだからこそ、自分の感性や創造力を自由に表現して良い訳で、そこに商業にはない新たな可能性がある・・・という事を思い出させてくれる作品でした。
318マニアクスヘブン まぜまぜノベル製、推理AVG。
 クリスマスの日、14歳の主人公が、ネットゲー引き篭もりニートの父親を、ハッキングしてネット上で殺害したところ、リアルでも殺されており、劇場型連続模倣殺人事件へと進展するお話。
 プレイ時間はハッピーエンドまで約3hr、選択肢はそう多くはありませんが、推理の難易度としてはそれ程高くありません。私は一箇所だけ武器の選択を誤りましたが、それ以外はノーミスでハッピーエンドに辿り着きました。Badエンドになっても、ちゃんとフォローとヒントが用意されており、非常にプレイしやすかった。
 内容としては、ネットと警察をモチーフとしており、TV版攻殻の「笑い男」事件を彷彿とさせました。素子も居ますし(笑)。性格もそのまんまでしたね。(本作品中には、現実に存在す作品、「地獄少女」、「職業・殺し屋」、「デスノート」、ディズニーなんかの名前も出てきます。)
 主人公の少年は、ちょっと可愛そうなんですよね。母親が亡くなってから、父親がひきニートになって、ろくにかまって貰えず、学校にも行かず、ネットゲームに付き合わされて、それでも父親の事を愛して、なんとか現実に引き戻そうと努力していた。
 結果的にその努力が、父親を失う原因となり、その事で苦悩する主人公を、本庁のサイバー犯罪専門刑事、玲(性格は素子、或いは虚無への供物の久生?)が、保護観察としてひきとって、彼女なりのやり方で励ましてやるんですが、その心のやり取りは無骨ながら心温まる描写で、思わず涙を誘いました。(本編では特に触れてないんだけど、主人公に服を買ってやるんですが、その服が彼女の趣味丸出しでワロタ。)
 殺人の舞台となるネットゲームについても上手く描写されており、特にコミュニティでの掲示板のやり取りなどは、余りに自然すぎて逆に怖くなりました。
 サーバやオフ連動イベントの運営についても、なかなかリアリティがあり、サイバー犯罪対策室などといっても、別段何の設備も無い、なんていう描写は妙に納得させられました。そういう意味では、あまり不自然に感じる要素が少なかった。
 パテントの件なんか、有りそうな話ですよ。
 昔じゃ無理だったけど、2002年の特許法改正以降、プログラムも特許出せるようになったし。
 でも本件はどちらかと言うと、ビジネスモデル特許みたいな物だろうから、権利行使とか難しそうだけど。
 文章は殆どが、会話で進行し、モノローグは少なく、非常に読みやすかったですね。
 何より、脇を含めて、キャラがよく立っていたと思います。
 絵もオリジナルで、女性向けの立ち絵なんですが、私にも抵抗は無かったですね。読んでると性格と良く馴染んでくるし。
 演出でも、シャープに場面を切り替えたりして、読み手の興味を引くのが上手かった。
 総合的に見て、私が今年(2009年)、これまでプレイした中では、ピカ一の面白さでした。
 システムがフラッシュプレーヤなんで、操作性でかなり躊躇していましたが、こういった優秀作品が出てくると・・・、「まぜまぜノベル」、侮れない存在に思えてきました。結構、ポテンシャル高いかも。
 クリエイターにやさしいゲーム作成ツールは間口が大きいですよね。
 でもその分、プレーヤは、粗製乱造と操作性に悩まされるわけです。
 でも、かつてのコミックメーカが、その後吉里吉里に移植され、名作となる、あの「True Remenbrance」を生んだ訳ですから、作りやすさが「優れたクリエイター」をノベル製作に引き込む原動力となっている事は否めないでしょう。
 しかしそれも過去の事、製作ツールも進化しています。
 クリエイター・フレンドリであっても、ユーザビリティの高いノベル製作ソフトは実現可能な気がしてきました。
 「まぜまぜノベル」は基本、フラッシュで動作するオンラインノベルゲームの作成プラットフォームで、予めリソース(背景写真、立ち絵、音、BGM、オリジナル素材を登録も可能)が用意されており、組み合わせるだけでブラウザ上で簡単にノベルが作成できます。
 しかも、フラッシュプレーヤとしてDL配布すれば、気軽にセーブが行えるようになります。
 フラッシュでノベルゲームといえば、ENTERキーや読み飛ばしが効かず、やたらマウスをクリックする必要があったり、バックログが無かったりしましたが、「まぜまぜ」に関して言えばそれらは解消されているように見えます。
 しかし、セーブ数が少なかったり、マウスの反応が悪かったり、まだまだ改良の余地は有るようですが・・・。(他にもチャプター容量や二次創作制限なども)
 プレーヤの操作性としては、現段階で吉里吉里やNスクに敵わないとしても、とにかく、ブラウザで手っ取り早く形に出来て、立ち絵のコントロールも、動的な演出効果も手軽、プレイヤーにもとりあえず必要な機能が揃うという意味では、かなりとっつきやすくて強力なツールとして使えそうな気がします。
 今回の作品は、ただのページめくりノベルではなく、いろいろな演出効果も見られましたし、フラッシュとしての動的な美しさも感じられ、そのポテンシャルが引き出されていたように思います。
 ただ、残念に思えるのはエンディングですね。
 結構、感動的な最後なのに、「Happy End」だけでは、物足りないような・・・、もうちょっと余韻があっても良い様な・・・。
 あっさりし過ぎて、読後感を逸してしまいました。
 ああ、なんか本当にもったいない。
 でも、十二分に満足しました。
 そして、題名の「マニアクスヘブン」
 全体を言い当てていて、妙。
※セーブ機能がついているDL版をお勧めします。
319四ツ夜怪談 まぜまぜノベル製(オンラインFlash)、短編オムニバスホラーノベル。
 318をやった後、気に入ったんでこの作者さんの他の作品もプレイしてみたところ、以前プレイして、セーブ出来ずに途中で止めてそのままの作品があることに気がつきました。改めてプレイしてみたところ、なかなか良い都市伝説風怪談話でした。
 レポート作成に忙しい大学生の主人公が、差出人不明のメールに書かれた怪談を4夜連続で読む話。怪談は「小さな手」「掘る人」「助手席に座る」「とおるちゃん」の四話。似たものを何処かで聞いた事がある様な話も幾つか有りましたが、じわっと来るような怖さがありました。私は。第二夜の掘る人が好きですね。消えちゃうとことかが特に好き。実際にその場に居合わせたらと思うと、ぞっとする。
 第四夜で選択肢を間違うとBadEndになりました。途中の選択肢は適当に選んでると殆どがGoodEndになるんですが、ちゃんと「自分が犯人である」という法則に従って選択すると、エンディングつきのTrueEndにたどり着けます。フルコンプでも二時間くらいは掛かるので、やっぱりセーブ出来ないのはちょっとしんどいんですが、読み飛ばしも出来るし、それ程長い話でもないので、一気に読みきれました。
 立ち絵も無く、全体的に動きも少なく、オーソドックスなタイプの作品でしたが、怪談としての内容はなかなか読み応えがありましたよ。プレイした感じでは「山荘で」に近いかも。
320- 神社 - 脱出系Flashアドベンチャー。プレイ時間約15分、気軽に遊べて結構面白い。
 半島っぽいところから日本に向かって発射されたミサイルを神社の設備を使って打ち落とすゲームです。(シュールだなぁ)
 「防衛系神社アドベンチャー」と銘打ってあるとおり、オープニングでミサイルが打ち上げられたら、いきなり神社の前に立たされています。神秘の力で対抗するのかと思いきや、結構現実的(?)な原理を利用するところが笑える。その割には、神話のディティールに拘っているのがまた可笑しい。
 システムが快適で、ストレスを感じず遊べたのは良かった。若干、判定の辛い部分もありますが、何度か試せばコツも掴める筈。難易度はわりと低い部類と思います、私はノーヒントで最後のパスワードまで楽に行けました。
 詰まりそうなところをヒント:遊び方をよく読もう、アイテムはcheckで確認する。アイテム同士を組み合わせる事も必要。同じアイテムを何度も繰り返し使う。火縄銃には火を。二階に上がるには、色々な場所を調べる、入り口を見つけた後も良く調べる。パスワードに関連するのはあの記号と屋根の図と時計と指の方向、組み合わせて自分で考える。
 この神社シリーズは全部で5作品で完結ですが、プレイヤーはとんでもなく数奇な運命を辿るようです。(笑)
321雨の声 雨の音と静かなBGMが落ち着く、選択肢のないYuuki! Novel製短編ノベル(読了まで約二時間半)。ジャンル的には恋愛ものに入るんでしょうが、微妙にホラー&ファンタジックな要素が有ります。
 子供の頃から、自分以外の別の少女「クグリ」と頭の中で会話できる14歳の少年が、雨の街で架空のデートを重ねる話です。
 序盤の展開の遅さや説明的な部分はかなり読み進めるのに抵抗を感じましたが、背景写真の雰囲気の良さに助けられて読み進み、中盤はとにかく「雨」の印象。私自身が雷雨や夕立など、雨の雰囲気が大好き(実際は、週末と水曜に降られるのは困るのですが・・・)な事もあり、かなり雰囲気に引き込まれました。後半は、恋愛モノのストーリに突入してストーリに飲み込まれ、一気に読み終わりました。
 読みながら、このストーリがどのように結末するのか、ずっと考えていたのですが、どうしても変態的な事しか思い浮かばず、私の心が汚れているのを感じて落ち込みました・・・・・・。実際には、ある事件をきっかけにストーリは健全な青少年らしく動き出します。この展開は驚きましたし、同時に上手いと思いました。
 それと、面白いなと思ったのは、クグリの両親の話は結構出てくるのに、主人公の両親の話はほとんど出て来ない事。しかも一人暮らししているような印象すら与えます。この辺が上手くラストにリンクしていて、読者に無用な心配をさせないようになっているのを感じました。
 最後のシーンは、エンドロールも無くぷっつり切れるのですが、特におまけ要素も無く、その後が凄く気になるだけに、ちょっと残念でした。但し、本編そのもの終わり方としては、良かったと思います。
 ノベルゲームとしての完成度については、改善の余地が見られるものの、全体的なストーリは良質で、Nスクや吉里吉里にして貰えれば、もっと多くの読者に手に取って貰えそうな気がします。そもそもそれだけの価値がある作品だと思いました。
 Yuuki!って事も有り、読み返せないのが残念なんですが、内容的にもそれ程長くない上、動画が含まれている訳でも無いのに240MB(展開すると300MBを超える!)というのは驚きました。音楽や効果音がWAVファイルだったりするんでしょうか?確かに雨の音の効果音は重要なガジェットだし、実際良かったけど、それだけでこのサイズになるのはちょっといただけませんでした。
 ・・・・・・昔プレイした「水槽と雨」を思い出しながら、この作品を読んでいました。根っこの部分は「水槽と雨」に似ているんだと思います。梅雨時はこういった話が強く印象に残りますね。
322アリスは鳥籠ver 1.02の感想: 吉里吉里製、本格的なサイコサスペンス・ノベルです。
 内容は、主人公であるゴスロリな詠美が、母を殺害して逃亡する、メンヘラな物語。
 選択肢は無く、本編完了後に更に続編が続き、全部で10章から成ります。読み終わるのに、凡そ四時間掛かりました。
 立ち絵は有りませんが、美しいポートレイト・背景写真と、一部に好印象な鉛筆画が含まれており、縦書きの文章と相まって、センスの良いシャープなデザインです。あ、一部に残酷な表現がありますので、レーティングは15歳以上推奨です。(私はそれ程気になりませんが、多少血が出ますので)
 伏線の良く練られたプロットは、さながらプロの物書きの様に洗練されていました。また、登場する人物も魅力的で、特に探偵と助手はなかなかいい味を出していますね。
 そして、続編の「三津木君」彼の造形は非常に素晴らしかった。人間の奥深さを感じるほどに。それぞれの書き分けの上手さを慮るに、作者さんはかなりの愛情を各キャラクターに注いでいるように思えました。それが例え藤木であってもです。
 テーマという面では、「人間の弱さ」と「成長」を強く感じました、他にも色々な要素は有ったと思いますが、ストーリ展開と魅力的なキャラを上手く融合して、高い娯楽性を獲得している点で、完成度の高い良質な作品だったと思います。
 個人的に特に気に入ったのは、続編で一瞬登場した「麻里子」です。鳥肌が立つようなホラー演出でした。こういうの大好き。
 現在は公開停止中ですが、必ずや再開されると私は信じています。
追記:「斎河高校探偵団女子部」の製作休止は期待していただけに残念です。名前だけで、かなりツボりそうな予感がしてたのに・・・・・・。
323Dolphins Were Monkeys
case 1
 タイトルの古い歌の題名と同じく、懐かしさ一杯の古き良きAVGが帰ってきました。LiveMaker製、本格的推理AVG。
 アメリカ北西部の都市で探偵業を営む主人公がある婦人の依頼で失踪した夫の行方を調査します。
 メインの捜索パート(当り外れがはっきりしている選択肢数個からなり、単純ですが多少推理パートにも影響します)と推理パート(練習問題3問と推理18問から成る)に分かれていて、推理に成功すればその先の推理披露とエピローグへと進む事が出来ます。実質的には一本道で、マルチエンドではありません。
 いやー来ましたね、私の趣向にストライクの作品が。これはもうね、J.B.ハロルドですよ。しかも初期のリバーヒルソフトの雰囲気を目指している!と確信したのは、作者さんが「80年代から90年代の古き良きアドベンチャーゲームをイメージして作りました。」という、ゲーム紹介のありがたい言葉を読む前から既に感じていました。
 単色ソラリゼーションな背景画像、舞台となるアメリカの街並み、落ち着いた音楽、悲哀の満ちたストーリ、そしてパブ。タバコこそ出てきませんでしたが、私が永く欲していたものを非常に分かりやすく形にして下さいました。
 ハロルド以外にも、「The Man I Love」とか、「探偵物語(ドラマ)」とか、色々な名作を思い出させる要素が沢山散りばめられていて、とにかく懐かしさと、そしてきっと期待通りのストーリに違いない!とドキドキしながらプレイを始めました。
 ・・・・・・それが、コレほどまでの長旅になるとは思いもしませんでした。
 ある意味、「マンハッタン・レクイエム」越えてるというか、歴代のフリーノベルでこれ程までに最初から繰り返しプレイした作品はないだろうと思われます。それ位に、難しかった!
 推理物が得意で自信のある方は、是非、是非プレイして頂きたいですね。私なんか解くのに一週間程掛かりましたからね、推理パートまでのプレイ時間は実質20分位だと思うんですけど、考えながらプレイしたらそこだけで15時間はやってたと思います。
 下手な事は言えないですけど、結構良く出来てると思うんですよね、これは真剣に推理して良いと思います、ていうかそうじゃないと、情報が少な過ぎて推理パート越えられないと思います。エクセルにスクショを貼って、情報を整理して、推理パートの最後の反応(「惜しい」が出た時の嬉しさと言ったらもう・・・・・・)をチェックしながら少しずつ選択肢を狭めて行って最後はえいやで正解にたどり着きました。この過程はね、まるでJ.B.ハロルドになって取り調べしてる時の気分でした。
 そして、私自身はこの結末に結構驚きました。核心に近づいた時、素直に「え、嘘・・・まさか?」って言葉が出ましたもん。まあ、それくらい手応えと満足感の得られる作品って事です。
 第二話もあるようですし、続編が待ち遠しいんですけど、予告編を見る限り、オカルティックな要素が有るようで、これはこれでまた違った世界を楽しませてもらえそうです。
 伏字で少しだけヒントを書いておきます:「捜索パートでは車を調べて置きましょう」「先ず犯人を決めて、推理を組み立てましょう。上手く行かなければきっと犯人を間違えてます。」「落しものや手掛かりは余り深く考えすぎない方が良いでしょう。」「臭いで気づけよ、と云う気はしました。
 皆さん是非頑張って推理を完成させて下さい。
 あと誤字とかで少し気になることも。トムの早退時刻ですけど、二時だったり三時だったりするんですが、これは多分二時が正解だと思います。推理する上でちょっと混乱したんで書いておきます。他に「反抗」→「犯行」、「本島」→「本当」。システム的には特に不満はありませんでしたが、ちょっとアイキャッチが多いかなっていう気はしました。次回作では更にクオリティが上がりそうな、そんな器の大きさを感じる素晴らしい作品でした。
 ついでに、case#1の副題は「雲霞の500マイル」なんですが、この雲霞は虫の事だと思っていましたが、あの羽は違ったんですね・・・、やられました。マスターとの無駄話も意外な所に繋がっているモンです。
324ラスティ混沌旅社から 吉里吉里製、懐古アドベンチャー的ノベルゲーム。
 疲れて帰ってきたアパートに、間違って投函されたホテルのキーによって、見知らぬ南の島へと飛ばされ、時空を徘徊するお話。
 全編ShadeとVueを使った自作の3DCGで構成されています(一枚だけ立ち絵あり)。その気合の入りようは商業作品並みと言っても過言ではないでしょう。まさに美しい自然を模倣したCG風景の世界をプレイヤーが”観光旅行”するかのような作品です。ただ美しいと言うだけでなく、いうなれば"わび錆び"的な部分に非常に強い思い入れを感じます。あらゆるデザインが、とにかく渋い。
 この作者さんの特徴として、ヘタに長々とBGMを効かさないところに独特のテンポと雰囲気を感じます。私はどちらかと言うと、そのテンポに乗ったキャラクターたちの魂の入った掛け合いがとても気に入っていたのですが、今回はキャラクターに重点を置いた内容ではなく、その掛け合いが少ない点で少し残念でした。
 ともすれば、ビジュアル面にのみ目が行きがちになるところですが、この作品、前作をプレイした人間には色々と心に引っ掛かるシーンが多かったのではないでしょうか?私はフルコンプ後、ガジュアを最初からやり直しまして痛く感心致しました。サブタイトル「story before "gajua"」の名の通り、この作品の舞台は前作主人公ミントの生まれたその日のお話になっています。
 また、gajuaで明かされなかった幾つかの疑問、例えば、ミン・ガジュアの実際の作り方、その目的、父の名、母の仕事、なんかがさり気無く明かされています。地図も同じです。前作、ガジュアが色々と奥深い設定である事に驚きました。そういう意味では、表面上は美しいCG作品と見せかけて、実態はマニアックなサイエンスフィクションと言えるかも知れませんね。
 新聞記事との関連で、ヴェイユ夫人の旦那さんと、この主人公の10年後のシーンが関係ありそうな気がして、う〜んとか、エルサさん外見に似合わず意外とおっちょこちょいなのね、とか、色々思ってしまいました。
 分岐は幾つかありますが、基本的に四点で四つのエンディングです。一回終了してないと到達できないエンディングも有るようですが、「倉庫」のエンディングリストで分岐の発生する場所が地図との相関から推測出来るので、フルコンプは前作同様それ程難しくは無いでしょう。
 若干ヒントを書いておくと、#2は池のフラグが立っていれば、方向ナビに新たな選択肢が増える場所があります。向きに気をつけて。それ以外は特に詰まるところは無いでしょう。
 システム的にはver.1.05で安定してプレイできますが、移動については結構癖があり、同じところをぐるぐる回ったり、自分の向きがわからなくなって大変でした。移動は主に方向ナビのクリックorカーソールキーで行えた方が操作性は良かったと思います。履歴もホイールで見れず、右クリックでメニュー画面から行かなくてはならないのがちと不便。
 やり終わって気になったのは、プロカってサイコ・・・!? #1のエンディングの蝉は何?(前作のジャックに似てる?)#4のエンディングの母さんって???・・・結局はまだよく分かってないのかも。
 これはこれで好きなのですが、次はこの作者さんが作った、別のジャンルの作品も是非プレイしてみたいですね。
325現代怪奇譚〜学校七不思議〜 コミックプレーヤ3製、和風ホラー伝奇ノベル。
 肝試しで学校に忍び込んだ四人が、七不思議を検証するうちに、後戻り出来ない深みに嵌まって行くお話。
 プレイ時間は凡そ三時間程掛かりました。選択肢が無く読み進めるだけなんですが、何故かなかなか進まず、一週間ほど掛かって少しづつ読み進めました。多分、かなり遅い方だと思います。決して、読みにくい文章だとは思わなかったのですが・・・・・・。
 後、システム上注意すべきは、コミックプレーヤである事。ランタイム要ります、バックログありません、アンチエイリアスありません、でもセーブはどこでも出来ます。
 シチュエーションとしては、オーソドックスな学校モノの怪談。前半は和気藹々と進行するのですが、後半かなり凄惨な事態へ・・・、ラストはシリーズの伝奇モノの様なスタイルになっていました。
 怖かったか?と聞かれると、微妙な気持ちですが、七不思議そのものはなかなか雰囲気があって良かった。ただ、色んな作品のエッセンスを詰め込み過ぎて、何やらちぐはぐな印象も。作者さん自身があとがきで仰っているように、色々やりたい事を盛り込んだ結果、作品そのものが中途半端になってしまったような気がしました。自作音楽を諦めた件は、一本の作品を完成させるのは、本当にモチベーションの維持が大変なんだなぁと改めて思いました。
 突然現れる立ち絵にはびっくりさせられるんですが、一番驚いたのは月でした(笑)。エンディング後のタイトル画は雰囲気があって良かったなぁ、月と屋上と長髪が良く合っていて、デザイン的に割と好き。
326雨ではなく、雪でなくC.M.74版: LiveMaker製、短編恋愛ノベル。
 一緒に育った従兄妹三人の三角関係を30歳前後の結婚を控えた大人という条件で描いています。
 急に東京に出てきた従妹の「深雪」と久し振りに会う事になった主人公「令太」は、電話で「私、結婚する!」と言われて動揺してしまう。だが深雪もどうやら令太の事がまだ好きらしい。
 一方、主人公の兄「理一」は、大人になった今でも、ずっと深雪を待ち続けている。主人公だけが「妹の兄(のような存在)として頭では割り切っているのに、徹しきれていない」という、どっちつかずな状態のまま。
 それを「みぞれ:雪のような、雨のような」と表現しており、若き日の思い出の鍋と相まって、何気に美しい。
 ・・・・・そう、上手い絵も、クラッシックなピアノソロを多用したBGMも、この文章も、全体として調和を保っており、どれ一つ出すぎた物が無かった。
 甘い恋愛も、ロマンティックな演出も無く、微妙なリアリティを描いたからこそ、高い完成度に到達した作品だったような気がします。
 選択肢は無く、エンディングまで20分くらい、短いですが何か心を惹き付けられる良い作品、私は最後あたりで主人公がモノローグの中で言う「東京では、本物の冬は良く冷えたステンレスくらいにしかない」っていうのと、深雪が令太に問うた「好きってなんだろうね?」って言う言葉が凄く印象的だったなぁ。
327はらいやばなし Nスク製、和風ファンタジーノベル。
 仲間4人で蝋燭立てて、百物語ならぬ五物語をやるお話。主人公の話す怪談(妖怪とか出てくる、まんが日本昔話のような話)のみ本編で語られる。
 モノクロの画面とか、ホラーっぽく見せかけて実はホラーでないのは、前作「雨と猿」と似てるかも・・・、でも主人公の子供時代の傍若無人っぷりは、処女作「鏡の中の」の主人公兄弟を思い出しました。
 長さ的には、コレまでの作品に比べるとコンパクトですが、それでも読み終わるのに40分掛かりました。割とすんなり読めちゃうので、長いとまでは感じませんでしたが。
 プレイ中に音量を弄らされたりとか、これまでの作品同様、独特の雰囲気を持ったユニークな作品です。如何にも田舎な感じとか、奇人「はらいや」の異常っぽさとか上手く表現されていて、流石はこの作者さんと思いました。
 しかし今回のオチはイマイチ実感が無く、なんとなく「そうですか。」っていう感じの終わり方で、前二作と比べると読後の印象が薄い気がします。前二作も感動的なお話ではないんですが、読んだ後に何故か心に残るものがありました。
 今回は全体的に軽めのお話で、ホラーとしてもファンタジーとしても中途半端だったように思います。
328ム■クイ Nスク製、短編心霊ホラー。
 幼い主人公が一人で住む廃屋のような平屋に、誰かがやってくるところから始まり、子供のモノローグのみでお話が進行します。
 主人公が幼く、拙い言葉で話す上に所々文字が■で虫食いになっており、文章が多少読みにくくなっていますが、その分想像力を掻き立てられます。読み進むうちに主人公の境遇が明らかになり、最後はタイトルの意味に繋がります。
 プレイ時間は10分程度と短いのですが、その短い時間でポイントとなる情報が間接的に簡潔に表現されており、想像して楽しむホラーとしてはかなり良く出来ていたと思います。
 最近の事件とかでよくあるように「体が小さい」って事は、他の同年代の子と比較してって事でしょうから、要するにそういう事なんでしょうね。
 テーマとして「家族愛」を挙げていますが、タイトル画像以外に家族愛が微塵も無い事と、主人公が無自覚に羨望しているのが悲しかったです。
 ところで、この子は男の子だよね?それとも僕っ娘?
329群青蝶 15分ほどで読める、Nスク製の短編ホラーでした。
 母親に連れられて、祖母に会いに田舎へやって来た主人公の少年が、近くの神社で青い蝶を見てしまう話。
 前作「CD」シリーズ同様、素朴な感じの小学生の視点と思考で物語が進行し、登場人物達(母親・祖母)の立ち絵は皆、顔が黒塗りになっており、それだけでも既に異様な雰囲気が醸されています。
 読み進む内、直ぐに「祖母」の状況や「母親」の状況は理解出来ますが、どの様にストーリが転がって行くのかは最後の選択肢が出てもまだ読めませんでした。この選択肢によって、DeadEndとGoodEndに分かれ、それぞれの伏線が上手く回収されて終わります。
 短い製作期間で作られた短い作品とはいえ、なかなかにテーマ性が感じられる部分があり、特に「食品添加物」の件は、「えー、中国製の毒物混入であぼんなんてー、そんなっ!」と、すっかりミスリードされてしまいました。そのシーンのループサウンドが、偶然かも知れませんが読み進むに連れて音量が大きくなるので、余計にミスリードされそうで、ドラマなんかで良く使われていて単純なんだけど、こういう演出は効果的なんだよね。
 readmeで「ホラーのようで、ホラーじゃない」と作者さんが弁明しておられますが、いえいえ全然、和風の怪談でしたよ。雰囲気も薄暗くて印象が良かったし。確かに身震いするような怖い話では無いので、バリバリのホラーを期待するのは無理が有りますが、ちゃんとオチのある立派なお話でした。
 ただ、蝶に魅せられていく描写が弱かった為か、あまり主人公に感情移入出来なかった。唐突な行動が如何にも子供なんですが、そこはもう少し丁寧に魅せられていく内面の描写があっても良かった気がします。
 先日、なかなかレッドポイントできないルートを本気で登っていた時に、厳しいムーブで指を突っ込んだポケットホールドの中に、めちゃくちゃデカイ蛾が入っていて、指を抜いた瞬間、穴の中で暴れ回った挙句に転がり落ちて行った蛾が青黒かった事から思ったのは(まあ、どうでもいい事か)、この作品の暗い神社の雰囲気で出てくるのは、普通、蛾だろうと言う事なんですが、蝶と蛾には明確な区分は無いそうですね。現にドイツでは、蝶→昼の蝶"Tagfalter"、蛾→夜の蝶"Nachtfalter"と、基本的に同じものとして扱っているようです。
 ちなみに、本作品で出てきた民間伝承的な蝶の概念は、実際に存在するようです。世界的に見ても、蝶は荘子の「胡蝶の夢」なんかで出てくるような、夢と現実の狭間の存在として描かれる事が多いのが不思議ですね。・・・蛾じゃ駄目か?
330ユウレイのいた道 久し振りに正統派の幽霊ノベルに出会った気がしました。霊感がある高校生の主人公が通学路で出会った小学生の女の子の幽霊の願いを叶えるお話。
 読み終わるのに約一時間半、読後感の素晴らしい素敵な作品でした。
 ADVRUN製のノベルをプレイしたのは久し振りなのですが、今回はそのポテンシャルの高さについて再認識させられたような気がします。アンチエイリアスも綺麗だし、動的な演出もスムーズで、ユーザの操作性の面から見ても吉里吉里と比べて、あまり遜色無いような印象です。
 内容については、フリーにおけるその筋の代表作「Moonlight Blue」や「ゆうとっぷ」等の成仏モノにカテゴライズされるような、少しコミカルで、切ないようなお話です。
 でもステロタイプな焼き直しではなく、この作品の良さや独創性は幾つも感じました。
 一つには、ストーリが単純で一方的な視点では無く、等身大の高校生である主人公の取った選択が必ずしも正しいと言い切れ無い事。ストーリの初期の段階で、読者の多くはこの物語の核心部分を容易く見通せるでしょう。その上で考える事は、この事件をどの様に決着させるか、その事に興味が集中します。
 この作品では、そこは実は単純ではありません。主人公の取った行動に対しては色んな考え方があって良いと思うし、ここに選択肢などを一切持込まなかった事(ここ重要)から考えて製作者の方々はその事を許容したんじゃないかと考えます。特に主人公にいちいちその場で言い訳をさせなかった事に私は拍手を送りたい、そして実はその時の主人公の本当の気持ちを「作品冒頭」でさりげなく吐露している事が本当にカッコいいと思いました。
 それからもう一つ挙げるなら、選曲と効果音の使い方がとにかく洗練されている事、演出という面でも友達からの携帯電話が転機となるシーンは特に感心しました。更に、舞台となる場所(河川敷、橋脚のトンネルなど)のチョイスが、私の「夕闇」魂のツボを刺激しました。アイキャッチも適切な頻度だったと思うし、展開の間仕切りとして良く機能していたと思います。
 付け加えると、サブで出てくる幽霊キャラの立たせ方もとても良かった。ゆうとっぷの親子幽霊みたいな感じで、死と言うものに対して色々考えさせる役どころでした。
 総じて、非常に良く出来た作品だったと思います。全てがハッピーとは行きませんが、ラストの締め方はこれ以上無いって言うくらいの清清しい余韻が残る読後感ですよ!
331ネガイノ屋上 ワンプレイ10分以内と短いけど、なかなか楽しませてくれるNスク製ショートホラー。
 選択肢で五つのエンディングに分岐し、コンプリートに約30分掛かりました。「午前零時に学校の屋上から飛び降りると願いが叶う」という噂を信じた男女の物語。立ち絵とかはありません。
 風音のような単調な効果音がエンドレスに流れる中、屋上から飛び降りる主人公を何度も繰り返す内に、メタフィクションに突入して、主人公の気持ちに変化があらわれ、何と無くハッピーに丸く収まる筋です。
 メタの壁をぶち破る瞬間が二回くらい有るので、混乱して読んでしまいましたが、なかなか上手く出来ていて感心しました。
 包丁を研ぐような効果音が頭にこびりつきます。
332はじめてのかていか〜死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?〜 某掲示板の「死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?」スレを原作にした、6タイトルのオムニバス。収録は「はじめてのかていか」(readme.txtにはタイトルが間違えて書いてある・・・)「四つ足の赤ちゃん」「自殺志願」「ガラス瓶」「消えた自殺者」「ご自由にお使いください」です。私は(多分)、全部読んだ事が無い話でした。あんまりメジャーなネタじゃないと思います。おまけで自作の物も同梱されていました。
 私が好きな話は「自殺志願」ですね。多分一番コワい。見せ方も一番良かった。
 この洒落コワネタのホラーノベル作品は様々な作者が幾つもリリースしています。それぞれ味があって良いんですが、この作品は素材の使い方に統一性が無く、結構大雑把な印象を受けました。BGMの選曲は原作に良くあっていたと思います。
 ノベルを作ろうと思った時に、どうして原作ネタを題材に選ぶかを考えて見ると「これをノベルにしたい」って思うか、「コワいノベルを創りたいけど良い話が思いつかない」の二つくらいが直ぐに想像出来ます。
 その場合、話の筋は知ってる人は知ってる訳で、動機は別でも如何に上手く見せるかが目的になろうかと思います。
 つまりそういう時にこそ、作者さんの演出の力量が測られるのでは無いかという気がしてまいります。
 例えば、古典落語なんか、何回聞いて知っていても、やっぱり上手い人がやると全然面白いですからね。同じ演題を見比べて見ると(聞き比べるのもまた良いんですが)どこに上手さがあるのかよく分かったりします。
 最近、素材だけ共通にしてシナリオの上手さを競うコンテストがあるようですが、逆にシナリオ同じで、演出の上手さを競うコンテストって言うのも面白いんじゃないか?そんな事を、ふと思ったりしました。
 どちらかと言うと作者同士の演出の勉強会みたいになるかもしれませんが、人によって全然違う作品に見えたりすれば、一般の人にもきっと面白いと思う。
333ほん呪! durbbing girls revival fest リングの二次創作のようでほとんど二次創作じゃない、ちょっぴりホラー風味のコメディノベルです。40分ほどで一話分が読めます。Nスク製。
 レンタルビデオ店でバイトする学生であるところの主人公が、意図せず呪いのビデオに重ね撮りしてしまい、貞子に呪われるお話です。
 シリーズ物の第一話ということで、四人ほどのキャラクターが出てきて、どたばたを繰り広げる訳ですが、これがなかなか面白いです。私は読んで無いですが、少し前に流行った「仏像と同棲する漫画」にプロットが似てるような・・・、というかこれは、漫画読んでるノリですね、テンポ良くどんどん読めちゃいます。
 台詞の無いシーンとかでも、パンさせたり、音だけ流してみたり、微妙にサブリミナルだったり、演出が秀逸でした。
 とにかく絵が上手いですね。普通のノベルゲームと少し違って、Flashアニメ的な構図やループサウンドの使い方が凄く良かったです。
 で、それだけじゃなくてちゃんとホラー演出の部分は、怖いんです。あのまま、ホラーの方に進んでしまうのかと一瞬思ったくらいです。この部分は少し懐かしささえ感じました。数年前まではこんな感じの良いホラーノベルが結構あったんだよなあ・・・・・・
 文章は読みやすくて上手だったんですが「世間ずれ」の所はちょっと引っ掛かりました。まあ良くある間違いですが、歳の所為か最近こう言うのがやけに気になる。自分の事には気がつかないんだけれども・・・、つまり私はホントに「世間擦れ」しているって証明だよね。
 第二話も近々公開されるようなので、続きを楽しみに待っています。
334探し屋トーコ
完全版
 捜索パートは有るけど、推理パートのない探偵モノAVG。
 探偵に憧れを抱く高校生の主人公が、担任教師のつてで女探偵に出会い、助手として成長して行くお話。
 zappingもあり、複数視点で読めるけど、分岐やマルチエンディングはなく、コンプリートまで概ね10時間程度でしょうか?それぞれにプロローグが存在する全七話と、四つののエピローグから構成され、最終話で完結されています。
 進路指導の社会勉強として、弱小探偵事務所のトーコに会いに行った主人公は、彼女と彼女が明かす「現実の探偵の仕事内容」に幻滅しますが、やがて仕事としての探偵を意識し始めた主人公は、やはり探偵という職業に心惹かれて行くことになります。
第一話「探偵というお仕事」:指輪探しの話。
第二話「幸か不幸か」:ゴスロリ少女と社会の闇。
第三話「夢の値段」:家出少年モラトリアーム。締めのレッテのモノローグがgood。
第四話「日常の対価」:犯罪加害者と家族。
第五話「どいつもこいつも」:駄菓子屋のバーちゃんの事で胸がいっぱい。
第六話「夢という名の逃げ道」:復讐、ターニングポイント。
最終話「探偵という生き方」:それぞれの旅立ち。それも人生。
 作中では(コナンくんとかの)いわゆる探偵モノの虚実性を指摘して、社会的に成り立つ探偵業を分り易く説明してくれますが、このへんのリアリティは本なんかで調べたのでしょうか?結構、すんなり受け入れられたし、割と描写に説得力がありました。・・・・・・でもそんな地味な題材で物語になるのか?と思っていたのですが、ところがどっこい、従来の探偵モノよろしく、ちゃんと人物が、各エピソードが魅力的に描かれていました。
 こういったリアル探偵モノを題材とした作品としては「ソリューション・ゲーム」というのを読んだことがあるのですが、これは大企業のグループ会社が調査業務を親会社から請け負って代行し、コーポレート・ガバナンスや不祥事の内部処理の手助けをするっていう小説なんだけど、ショボイ横領とかでも、そこにもちゃんと推理や事件解決の要素が詰まってる。
 そういうふうに見たら、あらゆる仕事が推理的な要素を含んでるとも思えるんだけど、そこをどういうふうに題材として捉えて魅力的に描くかって、結局プロジェクトXみたいなものかなーと思ったり。
 でもこの物語が素晴らしいと思ったのは「分かりやすさ」じゃないかなーと。小難しくリアリティを書き連ねる事はせず、青臭ささえ感じる登場人物にセリフを吐かせたからこそ、伝えるべき事をストレートに読者に伝えられたのではないかという感想を抱きました。
 これって夕闇にも通じるんだけど、社会問題なんかの闇の部分に、子供達が自分の頭で考えて向きあっていく姿って、心を打つんだよね。それが正しいとか間違ってるとかじゃないんだよね、大人のモノさしで測っちゃ駄目で、そこのところがちゃんと表現されてる気がしました。
 音楽はよく聞く素材ですが、絵は完全にオリジナルですね。今風じゃない粗い絵だけど、味があって描き慣れた感じで上手かった。特にトーコの意地悪そうな表情なんか、彼女の性格をよく表現してあったと思います。逆に片桐は、見た目と正反対にめちゃめちゃいい奴で驚いた!
 あと文章は、こういったAVG風の小窓に短く表示される方が、自然と会話文が主体になるし、私は各セリフを集中して読む事が出来ました。ザッピングの対象によっては、ノベル形式の前面レイヤー方式のテキスト画面が表示される場合もありましたが、それはそれで悪くなかったですけどね。あとNスクで多いんだけど、履歴を遡れる範囲が狭いっていうところがちょっと不便なところです。
 矛盾も割と少なかったし、プロットもかなり良く練られており、ただ長いだけでなく、すべてのストーリと登場人物たちの成長が、最終章のエンディングへと繋がっています。また、この長さで全く中だるみを感じる事が無かった点で、明らかにレベルが高く、やり終えた後に「本当に良いゲームをプレーしたな」という満足感が味わえました。作者さん達に感謝!
335死舞草 全四話で「完結」する、姉妹の非現実的な体験を綴った吉里吉里製ホラーノベルゲームです。
 分岐は有りますが、基本的に難しい選択肢は無く、順番に読んでいけば自然と読み終える事が出来、コンプリート後には設定なども含めたCG集とBGM集が閲覧出来ます。
 探検、肝試しなど、オーソドックスな題材ですが、集められた「素材」には、私の目をかなり惹きつける魅力が有り、ホラー演出的にもなかなかそそられるものがありました。
 この主人公である、妹と姉は二人とも鈍い感じなので、最初から何か妙な焦燥感を感じながらプレイを始めた私ですが、途中で利発そうな幼なじみが出てきてほっとしたのも束の間、実は隼人君まで鈍くてワロタ。
 「"すみれ"だけで支えて行くのか?このまま最後まで支えられるのか?」と思いきや、二話からきっぱり居なくなっている、という展開にも驚きました。
 ストーリとしては、いろんな部分で綻びがあるものの、構成としては悪くなかった様に思います。ただ、最後の話だけが、妙な違和感をもたらし、どうにも微妙な気持ち……。
 結末がアリか?ナシか?で言ったら「アリ」だとは思うのですが、そこに至る過程を期待していただけに、いきなりな感じがやっぱり納得いかないのかも……。
 個人的には、背景写真と加工が素晴らしく、この雰囲気だけでも「プレイして良かった」と感じました。お姉ちゃんの絵も可愛かったし。
 プラグインでセーブポイントがズレない様にしてあるのも良かった。
 細かい事だけど、そんな所にも配慮が感じられるのは嬉しい。
 それから静かなピアノのソロや、トワイライトシンドローム・ティックな、ガジェットは素晴らしかった。でも、ちぐはぐな印象を受ける事も事実。
 色んな要素を入れようとして、全体を上手く統一出来ていない事が、今ひとつ完成度を高められなかった一因だった様に思います。
 この作品はネットでの突発的企画物とのことで、まとめ上げるのはどれほど大変な事か、私には想像も出来ません。「鉄は熱いうちに打て」って感じかもしれませんが、これで終わってしまうのも残念な感じがしますね。
33672 15分程度のNスク製短編ノベル。第2回 One dot contestの出品作品。
 主人公が72時間、変な機械を着けて、面識の無い二人きりで隔離されたまま過ごすバイトのお話。
 テーマが「お互い好きだって何となく分かっているのに告白出来ないままの人達」というはっきりとした物なのに、作品の中ではその関係は少し複雑になっています。ですが、話の筋自体は素直で分かりやすいお話でした。最後は少ししんみりした感じ。
 今回の制約条件は「製作期間は一週間。シナリオは20KBまで。テーマに沿った作品を仕上げること。姿形が全く同じ人物を必ず登場させること。二十分以内に一度はクリア出来るように仕上げること。登場人物はモブキャラを含めて五人まで。背景に使用出来る画像は十五枚まで。BGMは五曲まで」という事だそうですが、本作は誤って6人の人物を登場させたため失格!…とはならず、特別賞。と言う事は、それさえ無ければ優勝したかも知れない作品と言うことでしょうか?
 確かに、的確にテーマを外さず、制約条件を作品の面白さに昇華している点は素晴らしかった。姿形が全く同じ人物を必ず登場させる為に、結構無茶な設定になっているのですが、同じ人物がいっぱい出てくるところは純粋に面白かったし、ラストの親子三代、同じ立ち絵なところも、コミカルさを狙っていて笑えた。
 CDシリーズを製作されているサークルさんの作品ですが、今回はシナリオライターの方が違うそうで、あれ、でもreadmeの方にはいつもの方がクレジットされてるし、文章の感じや登場人物も違和感が無かったのは何故?って思ったりしました。
 制約は作品の出来をある範囲に押し込める力学があると思いますが、逆にそれを新たな可能性に変える力や、少ないリソースで確実に完成させ、限界に挑戦するモチベーションを高める効果があるのをこの作品で感じました。
337渇望スル島 Nスク製、ホラーノベルです。
 廃墟マニアサイトの管理人が仲間に呼びかけて、オフ会で廃墟無人島に行くお話。シナリオは分岐点一つで、四つに分岐ですね。「食いしんぼ編」「侵略者編」「殺人幽霊編」「SHINOBI編」全四編で、私はこの順番でクリアしました。
 予想外に楽しめて、プレイして良かったと久しぶりに思えた作品でした。分岐点はそれと分かる所にありまして、それ以外の選択肢は、即死か大きな影響無しかどっちかです。※SHINOBI編だけ、他のシナリオをクリアしてないと選択できないです。
 全編攻略には、二時間くらい掛かるにしても、難しくて詰まるというような事はまず無いと思われます。既読スキップも有りますし、良心的な造りですね。
 さてプレイしてみての感想ですが、ピンポイントに笑えるところがあったり、ノスタルジックだったり、和む要素があったり、色々盛りだくさんではあるんですが、基本ホラーがメインディシュな作品だったように思います。
 シナリオの名前に騙されたりしましたけど、ホラー要素をバラエティたっぷりに盛り込んだコース料理を食べた印象ですね。
 ただちょっと、SHINOBI編だけは別格で、コメディと下ネタが多くなっています。
 とは言え、私としては全編通して一番好きなくだりは、SHINOBI編でのキリコからFMS君への精神攻撃でした。何人たりとも、恥ずかしい過去には絶えられません。あの部分だけテンポが突き抜けてましたね。変な声で笑ってしまった。
 あとどうでも良い事が気になったりするんですが、根津君は、名を金八と言うそうだが、これはパロ?
 作者の方は、主婦だそうで、ホモネタ(普通に笑えるネタです)とか、あーなるほどと思ったりもしましたが、なかなかバイタリティのありそうな人だなぁと思いました。特にテーマ曲を自分で歌われているというのは凄いなぁと。
 いままでも作者さんが歌わないにしても、肉声付きのテーマ曲って色々ありましたけど・・・・・・、今回は違和感なかったなぁと、むしろ上手かったなぁと、いやほんとに感心いたしました。
 総じて言うと、シナリオや演出に非常に沢山の要素を盛り込んであって、ものすごいパワーが伝わってくるんですが、盛り込みすぎて作品や登場人物の印象がちぐはぐになり、統一感が無く、全体的に中途半端に感じられました。その一方で、音楽や効果音、背景のチョイス、は素晴らしかった。特に軍艦島の廃墟写真をパンさせる演出なんかは、感涙モノですね。それと絵がキャラに馴染んでて良かった。流石、服とかヘアースタイルに気を配って、女性が描く立ち絵って花があっていいなぁと、その割には女性らしからぬ線の太さに、また秘めたパワーを感じるんですが。
338破鍋に綴蓋 Nスク製、超短編学園恋愛ノベルです。
 10分。EXTRAまで含めても、15分くらい。すごく短い、そこがちょっと残念な作品・・・・・・。
 放課後、友達を待っていた女主人公がクラスメートの男子に声をかけられて、禅問答するお話。雰囲気とか、掴みとかOKなのに、凄い期待できそうな感じなのに、起承転結の「起」が来て、「盛り上がってて悪いんだけど、私門限あるから帰るわー。」って感じで「完」
 ・・・・・・シンプルな事は結構なことです。オチもありました。何となくメッセージみたいなものもあったと思います。でも、無理に短く終わらせなくても、あそこから始まっていく物語があっても良かった。それくらい、もったいない気のする掌編でした。
 この後、事件に巻き込まれたり、彼氏が死んだり、バンド組んだりする筈だったのに・・・少なくとも、読んでる最中の私の脳内では、そんな妄想が湧いていました。
 勝手なことを書いておりますが、なかなか良い立ち絵を作者さんが上手く使いこなしてだけに、この短さが本当に惜しまれました。
339ぼくというモノ Nスク製、ホラー系ノベルです。
 選択肢もなく15分程で終わります。絵は綺麗ですが、多少グロな部分が有りますのでレーティングは15歳以上との事。グロと言っても、絵がそうなだけで、精神的には全く問題ありません。
 人間になったばかりで口の聞けない小学生位の容姿の主人公が、公園に立ち寄る女子高生さえと会うのを楽しみにして待っているお話。
 話の筋としては、普通の子どもが、お姉ちゃんに優しくしてもらって、好意を募らせた挙句に最後にはキレる。という、なんだか今時の子供に有りそうで、実は無いお話のようにも思えるのですが、根本的に主人公が普通じゃないってところに、そこはかとないメッセージ性を感じる。感じるんだけど、やっぱりよくわからない。「主人公は、本当は単にラリってるだけじゃないのか?」というような気のした作品でした。そういうテーマだったら怖いかも。
 効果音とか音楽とか絵とか背景とかデザインとか、すごく統一されていて全体的な仕上がりは良かった。文章も上手いよね。最後に、あーなるほど!ってして貰えると嬉しかったな。
340外道の日 ツクール2000製の推理探偵物RPG&AVG。プレイ時間は実質3時間位でしょうか?分岐は有りません。
 何者かに殺された私立探偵が死後、案内人セツナに導かれて、自分の殺人事件を含めた連続失踪事件の真相を調査する話です。
 登場人物総勢30人という、かなり複雑な推理モノで、結末を予測するのはなかなか難しいと思います。
 ゲームはRPGパートがベースになり、ボスキャラを倒す事で得られる「証言」を道具として「使う」事によりAVGパートに突入します。このシステム自体も、常人には思いつかないアイデアですが、更に凄いのがRPGパートの概念で、ステージの色によって、相手に負けなければならなかったり、勝たなければならなかったり、普通じゃないです。
 基本的にチートが可能なんで、RPGが嫌いな人でもある程度サクサク進めますが、それでも後半の敵は色々考えないと簡単には倒せなかったりします。
 ただまあパズルみたいなもんで、ちゃんと理屈で考えれば何とかなりますから、ご安心を。
 AVGパートは、メモ取りが必要なレベルかと思います。エンディングは一つですが、無事終わっても、意味が分からない方もおられるかも知れません。
 めんどくさい人の為に、人物紹介を書き出しておきます。ちなみにネタバレは反転していますので最初は絶対に読まないことをおすすめします(本編を読み終わっても分からない人用です)。

不動国行:探偵。主人公。元刑事。
セツナ:死後の世界の案内人。

国分菜野:最初の行方不明者。家出常習。友彦の店でバイト。伊恩、国行殺害の犯人。
宝生空花:第二の行方不明者。車を運転。菜野の親友。失踪四日後に大災害。
布施伊恩:第三の行方不明者。布施の娘。空花の剣道部の後輩。

石崎輪廻:黒髪ストレート。推理好き。
不動千歳:国行の娘。中学生。飛鳥の妹。
成実優雅:凌駕の双子の妹。
成実凌駕:優雅の兄。友彦の店でバイト。女装癖。那由多、空花、千歳殺人の犯人。怪しい女の正体。
護摩堂哲子:赤髪ツインテール。
立花那由多:友彦の妻。
立花友彦:菜野のバイト先の店長。菜野と不倫。

根本如実:不動に手紙を送ったとされる人物。実は本人ではない。
鈴木法月:菜野の最後の目撃者とされているが・・・。副住職。色々危ない人。
近藤浅美:バス通学組。
芹沢香歩:バス通学組。
加持恵:自転車通学組。菜野失踪の日はバスを使った。
下平亮子:自転車通学組。
国分仁路:菜野の父
国分巴:菜野の母(継母)
国分里佳子:菜野の実母
大内紫衣:菜野の近所の人。犬の散歩中に菜野と空花を目撃。
高野聖二郎:前の浮気調査の依頼者。国行を逆恨み。
六原光:朝、宝生の偽物を目撃。
恐神真言:白髪。失踪した三人が密談していたのを目撃。優雅が空花のロッカーをあさってるのを目撃。
釈泉:菜野失踪の朝、凌駕と優雅を目撃。
布施序:東阿弥署刑事で伊恩の父。実は不動の同僚。
久遠一信:伊恩の大学の同級生。交通事故死。
不動飛鳥:優雅の大学の友達。

郷田摩耶:新たな犠牲者。

 この作者さんは結構有名な方で、私も5年ほど前に今はもう消滅したとあるHPに掲載された「他人の家」の紹介文読んで心惹かれ「そば処五三郎」(HP)を訪れてその独特の世界にいたく感動したのを覚えています。
で、今回の作品はこれまでの作風をホンのちょっと醸し出しながらも(RPGパートとか、副住職とか)かなり真面目にドラマ性を追求した感じがあって、30人の書き分けや各段階における推理展開の緻密さに驚きを隠せませんでした。
 この人はこういう事も出来るんだ、流石だ、と思いましたね。
341カノウセカイ 選択肢なし、二部構成の吉里吉里製ミステリ&青春ノベル。
 ツクール製AVG作品「カノウセイ」の列車事故から半年後、5人達が遭遇する二つのパラレルワールドを描いています。今回はホラー的な要素は有りません。
 第一部「False Sequel」では、猟奇的な負の思考が支配するミステリとサスペンスの世界で、主人公たちは連続殺人事件の当事者となって行きます。猜疑心と精神の不安定がもたらす負の連鎖を誰も止める事は出来ません。しかし、その真相は実に驚くべきものでした。加奈と綾乃の思考がいまいち腑に落ちませんが、後半はかなりぐぐっと惹き込まれていきます。
 一方、第二部「True Sequel」では、各々が自分のコンプレックスを乗り越えて、相互の理解と協調によって、ハッピーエンドへ向かって進んでいくストーリです。露骨な青春物語になっており、展開もセリフも意図的に青臭く表現されているため、「もしかして、これは夢オチなのでは?」と勘ぐらせる程でした。「カノウセイ」の続編としては、このTS方が分かりやすさと言う意味で正当なエピローグに相応しく思えますが、私自身はFSの方がプロットとしても、内容としてもはるかに楽しめました。
 全体的に、思いつめた登場人物が多く、メンヘラに共通する要素がかなり色濃く出ています。私はこの作品をプレイした時期を同じくして丁度「メンヘラちゃん」を読んでいたのですが、数年の時が経ってから、いじめられっ子がいじめっ子に謝られる心理描写については、両作品で全く同じ表現がなされており、かなり説得力のある展開だったように思えました。特に、私にとってショックだったのは、神林とその同僚が社長に裏切られたとか騒ぎ出すくだりで、全く状況を理解出来なかったのですが、他人に対して極端に信用したり極端に猜疑したりするあたりが、既にメンヘラ・チックであり、そういう所がピンポイントに凄いリアルで、この作品の本当のテーマではないかと感じました。
 システムとしては、吉里吉里にして貰ってありがたかったのですが、立ち絵もなく一人称が激しく変わるのでその展開についていくのがちょっとしんどかったです。ヘルプで、登場人物の説明が何時でもどこでも見れるのは非常に良かった。この方式を採用している作者さんは今までにも数人居ましたが、私はこのやり方が非常に気に入っており、いちいち右クリックでオプション画面を持ってくるよりは、メニューバーから直接開けるやり方に操作性の良さを感じます。
 前作がコンパク銀賞を貰っている作者さんだけにテーマ表現力がずば抜けており、今回もひとつの作品として、かなり出来は良かったと思います。プレイする人によって、好き嫌いが分かれそうな内容ではありますが、必ずしも前作を知らない人にも広く楽しめる内容だったんじゃないかなと私は思います。あいまい目次はやっぱり使い道がよくわかりませんでした(笑)。
342ホワイトノイズ
Web公開版
 吉里吉里製ツインヒロイン型サスペンスAVG。
 殺人鬼多加子と両親を殺され復讐に燃える瑞希の伝奇物バトルを描いています。殺人嗜好についてかなり突っ込んだ描写を行っていますから、一応全年齢対象ですが、レーティングはあったほうが良かったかもしれません。
 プレイ時間約6時間、途中の選択肢により多加子ルート、瑞希ルート、共通ルートへと分岐しており、それとは別にBadEndも用意されています。
 これらの攻略についてはどれか一つでもルートを終えると閲覧できるようになる「おまけ」に詳しく説明されています。全ルートを攻略すると、長めの映画を見たような、なんだか感慨深いものを感じました。結構ボリュームのある作品です。
 ありていに云うと、よくある伝奇物で、幾つかのシーンや描写にはオマージュを感じました。ただ、ひとつの物語としては(伏線の回収は完璧ではないものの)しっかり完結しており、その完成度は高い様に思われます。
 登場人物の性格と立ち絵の関係がどうもしっくり来ないのは、結局最後まで続きましたが(多加子って美人なんでしょうか?)、イベント絵は構図が良くなかなか綺麗でした。
 また動画とか、文章を表示しながらの動的な演出は印象的で素晴らしかった。ゲームのデザインそのものは良く出来てます。
 その一方で、設定の部分にはかなり謎が残ります。あのエヴァンゲリオンの結末にでも出てきそうな、「再生」のプロセス描写は、何故彼女達のみに起こり得たのかなど、一通り読んだだけではちゃんと読み取ることが出来ませんでした(あれら諸々の描写が単なる演出の小道具と考えてしまうのは、如何にも味気ない)。また、主要キャラ達の心情や行動にもしばしば共感しにくいところがあり、そういった部分で少し消化不良感は残りましたね。あともうちょっと謎そのものにタイトルを絡めて欲しかった。でも、エンディングは凄く良かったかも。
 本筋と関係ないけど気になったのは「灯油撒き散らし⇒ジッポライターで着火」のところです。これは多分、成立しないでしょうね。時々、映画やドラマでこういう表現があるから記号のようになっていて違和感を感じませんが、灯油の引火点は40度以上ですから、こんな風にコンクリートに撒いても無駄ですね、普通に臭いだけで火はつきません。布に湿らせてライターで火をつければ延焼はするでしょうけど、一瞬にして火だるまとかはかなり難しいのでは?
 軽油だったらもっと着き難いし、ガソリンだったら一瞬で燃焼・爆発するだろうし、だからこういう時に使えるのは実はアルコールなんですね。エタノールなら引火点13度ですから一瞬の内に火の海で瑞希も丸焼きです。
343青鬼 ツクールXP製ホラーAVG。
 肝試しで洋館に忍び込んだ学生4人が、青鬼に追い掛け回されるおはなしです。
 ツクーツによくあるタイプのホラーAVGで、最初に画面を見たときに期待した通りの出来でした。私がプレイに要した時間は約3時間。最短でも、30分以上は掛かると思います。
 途中にパズル有り、追いかけアクションありで、そういうのが苦手な人には向いてないかも知れません。しかも、パズルの中にはひとつだけ不条理なものがあったりします(まあ、冷静に考えればおかしいと気づくレベルですが・・・・・・)。ちなみにパズルそのものはどれも割と簡単なものばかりで、且つ面白かったです。鬼に追いかけられて逃げまわるのは、慣れるまではかなり苦痛で、XPの操作性の問題もあり、大分イライラさせられました。マニュアルを見ると、鬼への対処法が書かれていますが、私はとにかく逃げまわるだけで、一度、タンスに隠れた事もあるのですが、なぜか見つかってやられてしまいました。
 全体的に見ると難易度は難しめで、作者さんのヒントや攻略を見ないと厳しい気はします。
 この作品で特に私が印象深かったのは、鬼の顔・・・じゃなくて、鬼の出現のさせ方です。結構いい感じでプレーヤの心理の裏側を突いてきます。まさかこんなところで出てこないだろう、とたかをくくっていると、見事に裏をかかれてりして、ホラーとしての緊張感が感じられ、プレイしている時の楽しさはかなりのものです。
 その一方で、ストーリというか、謎の様なものは、解き終わっても殆なんにもわかりません。「青鬼」である必然性、何故「青鬼?」に対しては、全く答えてくれません。あと、会話のテンポもちょっと変な感じで、説明なく、演出とか雰囲気で分からせちゃうような、強引な展開が多い気がしました。
 素材がバラバラで統一感が無い点は、普通なら欠点と言うべきところですが、この作品は逆にその事で結構笑わせてくれます。多分、わざとやってるんじゃないかという気がしますが、一番最初にキャラ絵が出てきたときは、「ありゃ、これは乙女ゲー?」と思ったのに、その次に出てきた絵が、そこはかとない笑いを誘ってきました。しかも主人公がいったい誰なのか、暫く把握できない状態が続き、ザッピングするのかと思いきや、固定という、見た目のオーソドックスさからしたら、意表をつく導入部でした。
 久しぶりに、このタイプのゲームが出来て良かったです。まだまだ、このジャンルは奥が深そうだと、この作品をプレイしてそう感じました。
 最後に、攻略を見てもクリア出来ない方々にアドバイスを「ヒントや暗号はスクリーンショットを取って、画像処理ソフトに貼りながらプレイしましょう。結構、回転させたり反転させたりが多いです。」「アイテムは何度も使います。取り返せるモノは取返しましょう。」「鍵は必ずタンスの部屋にあります。床を丹念に調べましょう。」
344四宮怪異譚 YU-RIS製ミステリーホラーサウンドノベルです。
 民俗学専攻の大学生四人が、無人の神社に泊まりこみで御神体の調査を行ううちに、心霊体験や霊障を受けるおはなし。
 選択肢は有りません。大体、一時間位で読み終わりました。
 私にとって久しぶりの和風ホラーノベル作品で、パッケージ用のイラストからも期待感が高まる中、playさせて頂きました。
 民俗学専攻の男女四人ということですが、何れも今風の学生っぽい風貌で、怪しさは微塵もありません。教授から与えられた課題のための調査と言うことではあるものの、何となくお泊りでの肝試し的な雰囲気の中で和気藹々と「合宿」がスタートします。ところが、いきなり本物が現れてびっくり。「ちょっとだけ怖いホラー」と言う触れ込みでしたが、充分怖いよ、と思ってしまいました。
 とは言うものの、全体的に見るとホラー一辺倒と言うのではなくて、あくまでフォークロアな要素を主体にストーリは展開し、所謂、「鬼」の概念や「神仏習合・廃仏毀釈・神社合祀」について言及している点が特に興味深かったです。
 最後に、全員が霊障に掛かる辺りなんかは、「トワイライト…」や「夕闇…」なんかを思い出して思わずニンマリしてしまいました。教授も終始「アラマタ」的なポジションでいい感じですし。
 総合的に見ると、確かに私のツボにはまりそうな和風のホラー作品でした。細かいことを言えば、絵や話づくりのレベルと比較して、効果音の使い方や演出面で、もう一歩の印象を受けましたし、要素は凄く良いものを配置しているのに、個々のキャラクタにまだ魂が入りきっていない感じはしましたが、しかしそれらを上回って今後が期待できる楽しい作品でした。シリーズ化されると良いなと思います。
 YU-RISはバックログが無いのでしょうか?確かあった気がするのですが・・・・・・、この点は不便ですねぇ。公開間もないのに、私の見た範囲では誤字が全く見当たらなかったのは驚きでした。
345雨の日と雨の日の次の日 Nスク製、現代ファンタジーノベル。
 農学部の学生が植物園と文学部で体験するファンタジーの世界を少しの青春を交えて描いた、一人称のラブストーリと言ったところでしょうか。
 選択肢は二箇所あります。エンディングは三個、コンプリートするには、三時間位かかりました。
 非常に叙情性が高く、文章のセンスがずば抜けて良かったです。えり「さん」が消しゴムフーフーするとことか、ラメ付きのシャーペンを体を揺らして見るエンディングのところは、芥川の小説の話と相まって、寒イボ立ちました。なんて言うか、そのままじゃなくて一段深くなってる処が特にね。
 この複雑な話の内容を完全に理解するのは難しいのですが、私がこのストーリから受けた印象は、この主人公は「キョン」君じゃないかって事なんですよ。「ハルヒ」を全く見てない私が言うのも何ですけど、概念的な部分にはかなり共通したところを感じるんだけど気のせいかなぁ。ファンタジーの描かれ方は村上春樹のように思えました。透き通ったような世界観が特に。ノスタルジーを誘う風景の描き出し方は、恒川光太郎の「風の古道」を思い出させました。そして、吉田キャンパスの見慣れた風景が私をより深く世界に浸透させてくれた様な気がします。他にもオマージュが一杯詰まっていたような気もしますがとにかく凄い作品だった。
 何よりも、音楽の使い方、演出、文体が奏でるハーモニーとしての雰囲気の秀逸さが、この作品の全てです。今後が更に期待できる、注目の作者さんですね。
346Kiitos!
ver201012
 吉里吉里製、ファンタジー・ノベル。
 若き見習いドジっ娘召喚士と、かつて魔王から世界を救ったロリコン・ひきニート召喚士の心の通い合いを描いたお話・・・とでも表現すべきでしょうか?
 全11話、各話にOP・EDが付いており、6話からはOPが変わります。各話は3〜10分程度、あっという間に終わる印象ですが、短いながらも起承転結があり、登場人物ひとりひとりに魂が入っていた様に感じました。
 読み終わってみると、確かに作者さんの仰るように「魔王復活劇」的、オーソドックスなお話なんですが、流石この作者さんだけあって、かなり捻ってあり、そしてテンポが、言葉の繰り出し方が上手い!それ故に、オーソドックスである事を忘れて物語に入り込み、一喜一憂できました。
 最後も、大団円・・・・・・か、どうかはちょっと微妙ですが、なかなか感動的でした。
 ファンタジーRPGっぽい話だったんですけど、主人公であるマルーに一見して精神的成長が見られなかった(召喚術の事はさておき)のが珍しいと思いました。でもよく考えると、たまさんの話に出てくる主人公は微妙に成長してないような気がします。話の後に成長を残しているというか、少なくとも今回の主人公には、将来素敵なオトナに成長して欲しいという願いが込められているような気がしました。
 エンディングは三つ。マルーの選択支によって、各男性キャラのフラグが貯まりその大小の関係で、第11話の内容が三つ(フィリオED、ロアルドED、ヴァルED)に分かれます。・・・・・・基本、乙女ゲーだったんですね、この作品。
 物語の筋は変わりません。最後のオチがちょっと違う程度。どれも笑顔で読み終われる締め括りです。
 コンプリート(一時間掛からないと思います)すると、タイトルの意味を教えてくれる、作者さんの「ありがとう」を読むことが出来ます。
 攻略方法としては何のコツもありませんが、2, 3, 4, 5話にそれぞれ1ないしは2個の選択肢がありますので、これを適当に選択しては11話を読む、と言うやり方でOKです。
 絵も音楽も良かったんですが、特に両方が作品によくマッチしていた事が素晴らしかったですね。
 これまで読んだ作品みんなそうだったんですが、恣意的にスロースタートにしてある、毎回「今回はいまイチかもー・・・」と思いながら読み始めて、最後には「やられたー」ってなって読み終わる。
 完全に、作者さんに翻弄されている印象ですね。
 各話のOP・EDはちょっとくどい印象ですが、飛ばせますので問題ありません。
 青いたぬき→ド●えもん、ギャルゲーがBLに変わってる恐怖、市役所と保健所の細かい差し替え、NHK春ちゃんの出現。ツンデレの兄ちゃんが公務員就職決定するも、使い難さからいきなり左遷されるくだり、は私のツボでした。
 Kiitos!はシェアウェアですが、クリスマスプレゼントでフリー公開されたみたいです。ダウンロードはKUMYSさんのHPの「ほのぼの裏日記」記事[2010/12/24]からです。(期間限定かも)
347放課後の住人たち Nスク製、学校怪談風サウンドノベル。
 学校の飛び降り自殺事件を巡って、高校生三人組(八神優希、城御川こみち、楠隆二)が噂の真相に迫ります。
 分岐無し、二時間半程で読み終わる手軽さの割には余りにもよく出来た素晴らしいお話でした。本タイトルはシリーズ物だそうで、今回は優希の友達だった「堀川さくら」が事件の被害者であった為か、彼女を中心にストーリが展開します。
 女子・女子・男子の組み合わせ、『放課後』というタイトルの冠、これだけでもう十分に期待せずに居られないシチュエーションであり、私はすかさず「夕闇通りBGM」をループにしたままでプレイを開始しました。簡単に言うと、キャスティングは夕闇とトワイライトがくっついたような印象で、隆二はサンゴ、こみちがミカ、優希はナオっぽい感じです。この組み合わせで、誰が肝心の心霊現象を視るんだ?と思うんですが、実のところ、これで最後まで上手くいっちゃうんです。結構、絶妙なバランスかも。
 この話の中では、一年前に無くなった「さくら」と「ある人」の関係が、一連の怪現象を読み解くポイントになっているのですが、優希のさくらを信じる気持ちが最後までぶれなかったお陰で、この「誰にも見えて無かった心霊現象」が実は重要な役割を果たしていた事が最後に分かります。そこがなかなか感動的ですね。「結局「記憶の暴走」がこの話のテーマだったように思います。そこに本当に記憶があったとしても、心は別物かも知れない。しかもその事を本人がちゃんと知ってて、でも振りまわされてる。さくらの本当の心は、記憶を持つ「彼女」の中ではなくて実は優希の心の中にちゃんとあったのだと私は思います。
 話を盛り上げるホラー演出も非常に良かったですね。時にはゾクリとしてしまうくらいに怖いシーンも有りましたし、素材がちょっと粗っぽい部分もありましたが効果音の使い方は効果的で適切でした。背景の使い方はなかなかユニークで、多分写真や2D素材をトレースしてるんだろうけど、演出にあわせて上手く弄ってあって、味があります。特にそれが上手く嵌まっていたのが夢のシーンですね、あれは美しかった。
 最初に見た時、立ち絵はあまり気にしていなかったんですが、読み進むうちにやけにしっくりと馴染んでしまい、特に優希が可愛くてしかたなく思えて来ました。キャラの造り方が、三人の中で一番良かったと思うんですよね、陸上競技に励む余りただ一人補習を受けていたり、活発なんだけど体が大きい所為か少しおっとりしていてでも芯の強い女の子って感じです。
 ああ、でも一番良かったのはストーリですね。途中で大きな破綻が無く、最後まで事件性と、心霊現象を引っ張り続けた。最初のシーンのモノローグこそ、まさにそれに尽きると言うものです。
 さて次回作のサブタイトルは「呪い」という事で、最後に少しだけ宣伝がついていましたが、もちろんプレイする気満々で、でも余り期待せずに待たせていただきます。皆さん同じ思いでしょうが、期待の大きい作品に限って続きが出ないのがこのフリーの世界の常識なもんで。期待している作者さんにこそプレッシャーを掛けないで気長に待つ、そして潔く諦める。フリー読者はこういうスタンスで居れば出たら「ラッキー!」と思えるものです。
348Pain 吉里吉里製、短編ビジュアルノベル。
 両親を失って兄の元に身を寄せた中学生の麻衣が虐待の末、さらに酷い運命に翻弄される感動のストーリ。
 10分程で読めてしまう短いお話で立ち絵もなく背景素材が数枚程度のシンプルな作品ですが「人生はシンプルじゃないよ」って感じの内容でした。
※以下ネタバレの為伏字 まぁ正直ここまでやられれば、中学生がグレてタバコを吸い始めたとしても一向に不思議はありませんしその方が可愛気もありますが、この主人公はどうも気に障る性格をしているせいか絶望的に救われない結末が却って因果応報を感じてしまいます。
 しかし彼女を一方的に攻めるのはフェアじゃないかもしれません。「ツン」が強すぎて少しも「デレ」ないと、こう言う不幸を招くという人生教訓がこの作品のテーマだったように思います(私的にですが)。
 前半でちょこっとでもデレておけば、必ずストーリは変わって陳腐になっていた筈で、そこを曲げないで突き抜けた作者さんの力量こそが素晴らしかったと思います。

 あの封筒の裏に書かれた字の美しさを見る限り、中学生じゃなくて私なら必ずや兄の正体を見破っていたでしょうがね。
 一生懸命・・・かどうかはわかりませんが不器用なこの兄妹は色んな意味で「痛い」っていうのが結論です。
349TRAM CITY ROULETTE 吉里吉里製、長編ビジュアルノベル。
 架空の都市トラムシティに住む「大江正二郎」のラノベ風探偵ヒーロ物語と、それを執筆する作家「逆瀬川菫」の所謂入れ子構造の劇中劇。ACT3まで全部読むと10時間以上掛かります。
 劇中劇の御多聞に漏れず枠の外の状況が内の展開に大きく影響する訳ですが、そこが「スリリング」に演出されているところにこの作品の面白さがあります。
 枠外で「あ、おま…、そんな私事を勝手に活字にねじ込みやがって!」とか、「ああー…、どんどん駄作になっていく……」という緊張感…というか、焦燥感が、ACT1からじわじわ湧き上がりACT2ではそれが取り返しのつかないとこまで行ってしまう。「もう、どうすんのコレ?」って諦観の境地に達するまでとことん読者をリーディングする演出が素晴らしい!
 なんせ、枠中の人がわりと真剣にやっているのに、枠外の人がそれを「あちゃー」とか言いながら自虐的に眺めてたりして、そういう構図が物凄いリアルに思えてきちゃいます。
 それをACT3でどう上手く料理するのかと思ったら・・・予想通りの結構オーソドックスな終わり方をするんで妙な肩透かしをくらいました。
 もっととんでもない展開になるかと期待していましたが・・・。
 振り返ってみると、全体的に手堅いんですよね。アマチュアぽくない一昔前を感じさせるゲーム画面とか、枠からはみ出さず大きな冒険はしていない印象で、妙な玄人っぽさを感じたのも事実です。ちゃんとした一個の商品になってるイメージ。
 元はシェアという事もあって、やりたい事をアナーキーにやって終わりっていうのではなくて、ちゃんと商品としての体裁を気にしているっていうか、そこら辺の意識は高かった様に思います。毎回、むやみにかっこいいクレジットとか特に。

 ところで私の興味を惹いたのは、作家と担当編集のやりとりの部分です。編集ってあれくらい突っ込んだところまで矯正するのが当たり前なんでしょうか?取り組み姿勢とか、キャラクターの細かい性格の事まで。かなり権限が大きく責任が重大だなと思いました。
 だからこそ一見女々しいことを言っている逆瀬川の寝言もまんざらではないと思います。
 瑞希はなんか偉そうな事をいったりしてますが、作家に踏み込んで意見を言ってる以上、無責任な態度をとるべきでは無い訳で読者側の代表としての客観性を保持しつつも、「立場」まで突き放してはいけないと思いました。
350不条理な話 Nスク製、5編の物語とおまけの1編のオムニバス。各話は5〜10分の短編でタイトル通り日常現代の荒唐無稽な内容。
 近頃はノベルに手を付けようとして直ぐやめるということを永らく繰り返していたのだが、本作を初めて立ち上げた時には久しぶりにオープニング・タイトル画面で激しく惹きつけられた。
 BGMや背景がとてもマッチしており、こういう雰囲気を大切にする作品には心動かされる。
 "ゲームを始める"を何度も選択する事で次々に新しい話が読めるようになる。「精神科」「引きこもり女と自殺男」「人間仮面」「生霊」「片われ」は、どれもオリジナルな内容で、個人的は「生霊」がホラーぽくて好きだ。よくあるオムニバス形式のオーソドックスな短編ホラーではあるが、ろうそくを灯したり、フラグで選択肢が出現するようになったり、タイトル画面のあるところをクリックすると強制終了したり、そこをマウスオーバーしたら効果音が出たりと、遊び心やプレーヤを楽しませる仕掛けも多い。
 一方で、本編部分は殆ど演出がなく単調で残念に思えた。全体的にセンスが良いので、次回作では是非、本編でも趣向を凝らした演出を楽しんでみたい。
351朝焼けの謳 吉里吉里製、感動系のビジュアルノベル。読了まで約3hr。
 東京に似た架空のスラムで、ホームレスの主人公(19歳)が幼女を育てる17歳の少女と出逢い、寝食を共にする話。
 テーマが明確であり、伝えたい事がよく伝わってきた。確かに突っ込みたくなるくらい演出が誇大な部分はあるが、意図がはっきりしてるしなにより共感できた。またプロットがしっかりしているので、終章へと向かうストーリ展開に無駄がなく、各章のサブタイトルは内容によくマッチしていたと思う。
 絵は上手いのだがギャルゲー然としているので最初はどうも抵抗感があった。しかし暫くすると慣れ、物語に惹き込まれてしまってからは、だんだん内包するテーマがシリアスに思えてくる。
 一見すると、ボーイ・ミーツ・ガールなのだが、登場人物は実は少年少女の姿を借りているだけで、根底にあるのは現代の少子化社会に潜む心の問題だと思った。
 登場人物たちはお互いの生き方を否定しあったりするが、物語そのものは多様な生き方を否定するものではなく、何かを押し付けるような内容では無い。
 ただそれでも生きていこうとするモチベーションが単純な「愛」なのかそれとも別の何かなのか気持ちはもやもやする。
 個人的にはボイスは要らないが、声優さんは上手だったと思う。音楽に聞きなれた素材が使われている事以外、背景素材等もセンスが良くて美しく、立ち絵とも合っており総合的に完成度は高かった。
 読了後におまけ等が無かった点は少し寂しい。
352ほん呪!第2話&第3話本当は5ヶ月くらい前に二話目を読み終わってたけど、三話目を読んで面白かったので、twitterから引っ張ってきて纏めて書いてしまおう。どちらも一時間掛からない位の長さです、ええっと・・・・・・

第二話
 絵の巧さも相まって強烈な漫画的印象を与える稀有なシリーズ作品の第二話。
 トランジションが素晴らしく、インサートカットに惜しみなく大量の一枚絵を使うなど、もったいない贅沢さは健在。
 お話の内容的には、読み終わった直後では不明な点も多く、もう一回読み直さないと前作を通した話の筋が理解出来ない状態。後半のクライマックスシーンでもわかりづらい描写が続いて、原因→展開の因果関係が掴めず置き去りにされていまい終にはフォローできなくなってしまった。
 とは言え、やや唐突ではあるもののラブコメ的な展開が貞子の可愛さを強調してきており、ストーリ的にも主人公の元カノ過去話など、今後の伏線と思しき展開も垣間見せ、続編への展開に大いに期待させます。
 それにしても、ミ●と化した貞子が、貞子と思えないくらい可愛いのは驚きました。タイトル画面見たときには、てっきり新キャラかと思いましたが。
 あと、前作と違いホラー要素(演出)はほぼ皆無でした。前作も基本ラブコメでしたがホラーっぽいところはきっちり怖い演出がなされていて映像的に怖かったのでそこは少し残念。
 なんか久しぶりにデジタルノベルを読んだ気がする。最近保守的になっちゃってて新しいモノに手は出なくなってるし、ノベルよりも他のジャンルのほうが面白い気がするしなぁ。
 プレイ動画とデジタルノベルの娯楽としての境界が良くわからなくなってるっていうのもあるのかも。デジタルノベルとしての良さを活かせてると思える作品は数える程ですね。

第三話
 回を重ねるにつれて、貞子の可愛さが意図的に強調されてきて、今回はそれが爆発してしまいましたね。髪切るのは反則ですわ。
 今回は最初から最後までふんだんにパロディを繰り出して、その合間にストーリが進行するという普通のノベルとは一線を隔した珍しい展開でした。
 本当に最後までふざけてふざけて、最後にえ?って感じで終わります。でもまぁ、今回も基本、安心の品質で読めるラブコメ・漫画でしたね。ホント地味に絵が巧くて多い。間のとり方も。
 時々暴走してるけど。
 今回のベストネームは「40秒で帰宅しな!」でした。絶妙なドーラおちにツボった。
353僕の宝物Flash製(AdobeAir配布)ホラーノベル。
 夏休みに古い鍵を見つけた主人公が、昔の記憶を頼りにかつて住んでいた土地を訪ね、忘れていた記憶を取り戻すお話。
 選択肢はなく、だいたい30分位で読みおわる。ストーリ的には、別段目新しい要素はなく、大体予想通りに展開する。
 この作品のテーマは「人間の記憶の曖昧さ」。
 人は無意識に自分の心を守るようになっており、「健忘」はまさにそれである。寧ろ、忘れることは本能であり不安な記憶を四六時中抱えたまま生き続ける事は実際には不可能なのだろう。
 しかし、あまりにも強烈な記憶を消そうとするとどうなるのだろうか?自己暗示的に稚拙かつ勝手な理屈で不安の埋め合わせをしているうちに、記憶そのものが塗かわってしまうのかもしれない。
 それこそ、あの日論理性を失なって長持ちの鍵を締めた主人公のように・・・。
 つまり、もう一つのテーマは「人間の勝手さ」であろう。
 システムに関してだが、Flashをノベルに使うと「バックログが読めない」とか「キーボードのコントロールを受け付けない」とか、色々不満が出たりするが、この作品はLemoNovelで作られていて、大体今書いたような事は解消しつつ、Flashの動画再生等にも対応しており、web上でのプレイとダウンロードでのプレイに特別な配慮なく対応する。
 スクリプトも他のノベルシステムに比べてシンプルな部類なので、あまり難しいことを考えなくても比較的簡単に私小説をノベルゲームに置き換えられるだろう。部分的にフラッシュ動画を挟めば綺麗な演出を見せることも出来る。また、特徴的な機能として最新版のアップデート機能があり、フリーソフトに搭載する機能としてはまだ珍しい。ただインストーラで配布される点については多くのユーザにとっては敬遠される要因となるだろう。
 随所の動画演出は的確で、短いがきちっと一つの作品に完結していた点で評価出来るが、全体的には強く印象に残らず何か強烈に打ち出すべき「個性」が欠けていたように思う。あと、内側からどうやって鍵を締めたのかは謎だ。(或は薬物か?)
354月が夕陽を見る間 Nスク製、私小説。彼女と別れた主人公32歳が、海辺のホームで不思議な女性と出会い、現実と妄想の狭間の世界と交わっていく。
 非常に穏やかな雰囲気で、落ちたBGMの中ゆったりと物語を読むことが出来た。作者の日記or夢時間が元になっているということで、冒頭のシーン以降は荒唐無稽で空想的な描写が続くが、不思議と破綻を感じずただただ主人公の感傷を共感の無いままに受け入れていくような作品。彼等は一体なんだろう?ひょっとすると付喪神かもしれない。
 日常から抜け出て、ファンタジックな世界に触れる事に憧れるのに大人も子供も関係ない。でも僕ら大人は気分によっては、ほんの少しの日常の違いが新鮮で印象的になることを皆知っている。
 では、それが一体何になるのか?私の場合それは「心の開放」だと思う。
 そこから積極的に何かを得る事は無意味に思える。あくまで、解き放たれる何かがあれば充分だと思う。
 本作品でも主人公は一連の出来事で、いつしか心が解放されていたように見える。
 読者もそんな感覚を心地よく感じられればこの作品の狙いはほとんど成功してるのだろう。
 途中で歌が入って驚いたが(作者の方ではありませんが。バービーのイマサのギターを彷彿とさせる)、BGMと画像の調和がよくとれた美しさが印象的だった。
 テキストの表示されるウィンドウに描かれた「草」がどの画面にも上手く溶け込んでいたのも驚いた。すっきりとしたデザインが素晴らしい。タイトルと蕪村の句のマッチングもgood!
355孤独 夜の学校を舞台にした3Dホラーアドベンチャーゲーム。普通に迷いながらプレイして3hr位掛かった。迷わなければ多分40分くらい?
 女主人公たちが、閉じ込められた夜の学校で、空から降りてきた正体不明の化物に襲われつつ、一連の原因となる過去の事件を調べて奔走する話。
 フリーのノベルゲームはここまで来たか、トワライトシンドローム「再会」をほぼ個人で作れてしまう時代が遂にやってきたと言う感じ。(もちろん基本的な部分でと言う意味だが)
 本作品をエポックメイキングとして、これからこのタイプの作品が増えてくる事を望んでるけど、実際のところLua/C++やDirectXなどを使ってゲームシステム自体がオリジナルに作れらているようで、かなりレベルが高い。
 ゲームとしては、従来からよくある学校脱出AVGを3Dに置き換えただけと言えなくもないけど、演出、効果音、脚本面で、しっかり作られており、何より安定動作している点で個人で出来る3Dゲームの完成度としては驚愕に値する。操作性は悪くなかったし、最後の写真のところではちょっと詰まったけど、それ以外は割とすんなり進めて、謎解きゲームとしての面白さもゲームバランスも調度良かった。
 特に学校モデルに関しては私がやりたかった事にかなり近いレベル。ちょっとまじめに色々逡巡してしまった。
 3D操作のゲームとはいえ、基本的に逃げまわったり武器で攻撃するような忙しないゲームではなく、そういったところはほとんどがムービーのように進行する。(一箇所だけ武器を振り回すシーンがあるが・・・)
 ラストも凄かった・・・・・・。結局のところriddle storyで終わっていて、如何にも続きそうな気配が今後を期待させる。
 人物モデルには改善の余地はあるかも知れないが、とにかく圧倒的に凄いインパクトだった。私的には今年ピカイチの作品。これをひな形として、フリーならではのアイデアや趣向を凝らしたホラーをこれからももっと楽しんでみたい。
 

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